10 / 11
第10話
しおりを挟む
火星、木星間アステロイドベルト(小惑星帯)宙域
───ガベイロス級宇宙戦艦ゴルバトフ───
「艦長!サーシャ司令官よりデータ通信です」
「読め」
「了解!『敵右翼残存艦隊の殲滅戦後の掃討戦は艦載機隊に任せよ。これを以て第ニ次作戦は終了とする。そして速やかに敵左翼艦隊の攻撃に移行せよ』以上です」
「うむ『了解した』と伝えよ」
「了解しました!」
『掃討戦』とは、殲滅戦後、更に敵を一つ残らず撃破する、という作戦である。
今回の戦いの目的は『敵の殲滅』である。
殲滅戦が終了した、という状況でも、例えば動力系を切った敵戦闘艦が、あちこちに浮遊している戦闘艦などの残骸に隠れていれば、レーダーなどでキャッチする事は難しい。
そのため、更に掃討戦を実施して敵を完全に殲滅しなければならない。
あと考えるべき事は、どの段階で掃討戦に移行するか、という事。これはその戦闘の状況によって変わる。
「敵右翼残存艦数は?」
「約150です」
「こちらの損害は?」
「撃破、戦闘不能となったのは8隻です」
「うむ」
火星軍主力艦隊は未だ約2000隻が健在。ほぼ損害はないといえる。
しかし、敵反乱軍の残存艦は約150隻とはいえ、殲滅した、とは言えない。
「よし、味方全艦への回線を繋げ、オープンでだ」
「了解──繋ぎました」
「全艦に命令!適度な距離を保ちながら、全火力を用いて攻撃。艦載機隊は1個連隊を残して各母艦に帰投せよ。いいか。間違っても突出したり接近して攻撃するな!損害が増えるだけだ!かかれ!」
敵右翼残存艦隊は火星軍主力艦隊より集中砲火を浴びて、その数を瞬く間に減らしていった。
艦載機隊は命令通り、1個連隊を残して各母艦へと帰投した。
「現在、探知可能な敵右翼残存艦はほぼありません」
「再度味方全艦への回線を繋げ」
「了解──繋ぎました」
「これにて第二次作戦は終了とする。戦闘中の1個連隊の艦載機隊はこのまま掃討戦に移行。全艦第一次作戦時のフォーメーションに再集結せよ。これより第三次作戦を開始する。目標敵左翼残存艦隊!」
火星軍主力艦隊は、再度第一次作戦時と同様に約500隻づつ4つのグループに集結して、敵左翼残存艦隊へ向かった。
「CB-03及び敵左翼残存艦隊の状況は?」
「CB-03は艦載機隊を伴い、既に戦闘宙域を離脱しています。敵旗艦はCB-03によって撃破されました。それにより敵艦隊は混乱状況に陥っている模様です」
「ほぅ。CB-03の戦闘記録を検索、報告してくれ」
「了解」
旗艦となる戦闘艦には、作戦行動中の全艦の行動、戦闘記録などがリアルタイムで受信、記録するシステムが装備されている。
「CB-03は最大戦速で敵右翼残存艦隊へと向かい、敵射程圏内に入る前に艦載機隊が発艦。艦載機隊は敵旗艦への、及び離脱航路上の敵艦隊を攻撃。おそらくCB-03の航路を確保するためだと思われます。
CB-03が敵右翼残存艦隊に接近中に敵艦載機が発艦。味方艦載機隊の半数は敵宇宙空母へと向かい攻撃。
CB-03は敵艦載機を攻撃しながら敵左翼残存艦隊に突入。さらに敵旗艦に接近し、空間魚雷にて敵旗艦を撃破。その後は艦載機隊と共に戦闘宙域から離脱したようです」
ロゴスキー中将は「なんと!」と呟き、続く非常識な、という言葉は言わなかった。
「敵、味方の損害は?」
「味方はCB-03はほぼ無傷。艦載機は4機が撃破、または戦闘不能となったようです。パイロットは回収されています。
敵は戦闘艦約50隻が撃破、または戦闘不能。敵艦載機は約600機が撃破、または戦闘不能となったようです」
「なんだと!」
CB-03の驚くべき戦績にロゴスキー中将は驚愕した。
「敵戦闘艦約50隻撃破、戦闘不能はまだ分かる。いやそれも驚くべきものだが、敵艦載機約600撃破、戦闘不能だと!」
「はい、敵はCB-03から艦載機が発艦したことを確認し、敵もそれに呼応する様に艦載機を発艦させたようです。理由はよく分かりませんが、発艦した敵艦載機は1000機を超え、CB-03に攻撃したようです」
「は?たった1隻に1000機以上だと!」
ロゴスキー中将は少し考えて。
「おそらく敵の司令官は闇雲に艦載機の出撃命令を出したのだろう。余程混乱していたのか、慌てていたのか、その両方か」
敵艦載機隊がCB-03の艦載機隊に向かわなかったのは、CB-03の艦載機隊は散開しており、効率を考え、先に母艦であるCB-03の攻撃を優先したからであった。
いくら艦載機とはいえ、最大戦速で航行中の敵艦を的確に攻撃する事はかなり難しい。
数が多ければ良い、というのは状況による。
敵が大群なら良いが、今回は1隻である。多ければ良い、というものではない。
更に、宇宙航空戦艦は対艦載機戦用の武装は他の戦闘艦に比べて遥かに強力である。
たとえ敵艦載機が1000機であろうが、無策で接近してくるならただの的に過ぎない。
そういう状況であれば、撃破、戦闘不能約600機という数も、不可能な数字ではない。
ロゴスキー中将はある事に気がついた。
「そうか!だから艦載機隊には敵戦闘艦を攻撃させ、CB-03は敵艦載機と敵旗艦に集中した、ということか」
「なるほどです」
「いや、少し考えば分かることだ」
CB-03の搭載している艦載機は2個大隊72機なので、1000機を超える敵艦載機への迎撃は自殺行為である。
今回の作戦は『斬首、ゼネコン作戦』であり、CB-03の予定航路を広げるのが艦載機隊の主任務である。
何も敵艦を撃破、戦闘不能する事に拘る必要はない。威嚇射撃するなどして予定航路から離れさせるだけでも良いのである。
ただし、敵宇宙空母は今後の作戦のために少しでも減らしておいた方が良いと考え、ベータ大隊には積極的に撃破、戦闘不能とするように攻撃させたのである。
火星軍主力艦隊は、左翼残存艦隊の戦闘宙域に到達した。
「CB-03及び敵の様子はどうだ」
別に、いちいち報告させなくても、スクリーンを見れば大体分かる。クルーの意思統一のためにあえて確認するのである。
「CB-03及び艦載機隊は戦闘宙域外で待機している模様。敵左翼残存艦約1350。混乱しているのか、戦闘態勢ではありません」
「うーむ。敵旗艦撃破は予想以上の効果があったようだ」
敵左翼残存艦隊はロゴスキー中将の予想通り、混乱して身動きが取れなくなっていた。
敵左翼残存艦隊の予定航路視点(火星軍主力艦隊の攻撃前の視点)で、左側からは火星軍主力艦隊が接近。右側には何をするか分からない宇宙航空戦艦がいるため、挟撃されている様に感じており、さらに旗艦を失った事により命令系統が崩壊。誰しもが動けず、言葉さえ発する事が出来なくなっていた。
「よし!考える暇を与えるな!直ちに第三次作戦を開始する。全艦に通達せよ!」
「了解!」
火星軍主力艦隊は戦闘態勢に移行した。
「3号発射用意!目標敵左翼残存艦隊中央!」
「3号の発射準備を開始します」
3号は2号と同じプロセスで、発射準備が開始された。
「3号発射!」
「3号発射します!」
3号も2号と同じ様に急速発進した。
敵艦隊も気づいてはいるが、何も出来なかった。
「3号ターゲットに到達します」
「カウントダウン開始。3、2、1、スーパーチャージャー点火!」
眩い閃光の後、凄まじい衝撃波。遅れて轟音が響き渡った。
「3号の爆発を確認!───敵残存艦数…約600」
「うむ。混乱しているとはいえ、敵右翼残存艦隊よりは分散していたから、少し多く残ったか。が、問題はない。全艦に回線を繋げ」
「了解──繋ぎました」
「全艦包囲陣形に展開、攻撃を開始する。必要以上に突出したり接近するな!適度な距離から全火力で攻撃せよ」
「艦長、艦載機隊はどうしますか?」
「先の敵右翼残存艦隊戦では艦載機は掃討戦以外あまり必要がなかった。今回はいつでも緊急発進出来るようにして待機せよ」
「了解しました」
敵左翼残存艦隊は火星軍主力艦隊の集中砲火を浴びて、みるみるうちに撃破されていった。
まさしく『袋の鼠』状態である。
「うーむ。右翼残存艦隊より手応えがないな。3号の爆発でシステム系に異常が出た、とかか?」
「いや、それはないと思います。戦闘艦はあらゆる放射線や電磁波、重力干渉などの対策がなされているので」
「そうか。そうだな」
「おそらく、旗艦を失った事や、何をするか分からないCB-03の存在によるものだと思います」
「なるほど」
「CB-03とその艦載機隊は恐ろしいですね。味方で良かったと本当に思います」
「そうだな。彼女らが敵などと考えたくもないな」
敵右翼残存艦隊は為す術もなくその数を減らされていった。
「勝ったな」
『それフラグ!』と、サーシャなら言うだろう。
「艦長!敵戦闘艦が急速接近中です。数10…12、増えています!最大戦速?いや、フルパワーです」
「特攻か!なに、慌てることはない。近くの部隊と連携して撃破せよ。落ち着いてな」
「了解しました──『第106及び217水雷戦隊、急速接近してくる敵の迎撃にあたれ』」
『水雷戦隊』とは、古代の地球に於いて、ある国での海軍の艦隊の部隊の名称で、機雷や魚雷、爆雷などを使った水雷戦を行うことを目的とした部隊の事であるが、ここでは、高速宇宙巡洋艦や宇宙突撃駆逐艦など、高速での戦闘を想定して編成された部隊の事である。なお、名称は当時巡洋艦や駆逐艦など、比較的高速の洋上艦艇で構成されていたので、その模倣である。
「艦長!敵宇宙突撃駆逐艦が突っ込んできます!あと90」
「何!すり抜けたか!緊急回避!急げっ!」
ゴルバトフは接近する敵艦との衝突を避けるため、緊急回避を実施した。
───ガベイロス級宇宙戦艦ゴルバトフ───
「艦長!サーシャ司令官よりデータ通信です」
「読め」
「了解!『敵右翼残存艦隊の殲滅戦後の掃討戦は艦載機隊に任せよ。これを以て第ニ次作戦は終了とする。そして速やかに敵左翼艦隊の攻撃に移行せよ』以上です」
「うむ『了解した』と伝えよ」
「了解しました!」
『掃討戦』とは、殲滅戦後、更に敵を一つ残らず撃破する、という作戦である。
今回の戦いの目的は『敵の殲滅』である。
殲滅戦が終了した、という状況でも、例えば動力系を切った敵戦闘艦が、あちこちに浮遊している戦闘艦などの残骸に隠れていれば、レーダーなどでキャッチする事は難しい。
そのため、更に掃討戦を実施して敵を完全に殲滅しなければならない。
あと考えるべき事は、どの段階で掃討戦に移行するか、という事。これはその戦闘の状況によって変わる。
「敵右翼残存艦数は?」
「約150です」
「こちらの損害は?」
「撃破、戦闘不能となったのは8隻です」
「うむ」
火星軍主力艦隊は未だ約2000隻が健在。ほぼ損害はないといえる。
しかし、敵反乱軍の残存艦は約150隻とはいえ、殲滅した、とは言えない。
「よし、味方全艦への回線を繋げ、オープンでだ」
「了解──繋ぎました」
「全艦に命令!適度な距離を保ちながら、全火力を用いて攻撃。艦載機隊は1個連隊を残して各母艦に帰投せよ。いいか。間違っても突出したり接近して攻撃するな!損害が増えるだけだ!かかれ!」
敵右翼残存艦隊は火星軍主力艦隊より集中砲火を浴びて、その数を瞬く間に減らしていった。
艦載機隊は命令通り、1個連隊を残して各母艦へと帰投した。
「現在、探知可能な敵右翼残存艦はほぼありません」
「再度味方全艦への回線を繋げ」
「了解──繋ぎました」
「これにて第二次作戦は終了とする。戦闘中の1個連隊の艦載機隊はこのまま掃討戦に移行。全艦第一次作戦時のフォーメーションに再集結せよ。これより第三次作戦を開始する。目標敵左翼残存艦隊!」
火星軍主力艦隊は、再度第一次作戦時と同様に約500隻づつ4つのグループに集結して、敵左翼残存艦隊へ向かった。
「CB-03及び敵左翼残存艦隊の状況は?」
「CB-03は艦載機隊を伴い、既に戦闘宙域を離脱しています。敵旗艦はCB-03によって撃破されました。それにより敵艦隊は混乱状況に陥っている模様です」
「ほぅ。CB-03の戦闘記録を検索、報告してくれ」
「了解」
旗艦となる戦闘艦には、作戦行動中の全艦の行動、戦闘記録などがリアルタイムで受信、記録するシステムが装備されている。
「CB-03は最大戦速で敵右翼残存艦隊へと向かい、敵射程圏内に入る前に艦載機隊が発艦。艦載機隊は敵旗艦への、及び離脱航路上の敵艦隊を攻撃。おそらくCB-03の航路を確保するためだと思われます。
CB-03が敵右翼残存艦隊に接近中に敵艦載機が発艦。味方艦載機隊の半数は敵宇宙空母へと向かい攻撃。
CB-03は敵艦載機を攻撃しながら敵左翼残存艦隊に突入。さらに敵旗艦に接近し、空間魚雷にて敵旗艦を撃破。その後は艦載機隊と共に戦闘宙域から離脱したようです」
ロゴスキー中将は「なんと!」と呟き、続く非常識な、という言葉は言わなかった。
「敵、味方の損害は?」
「味方はCB-03はほぼ無傷。艦載機は4機が撃破、または戦闘不能となったようです。パイロットは回収されています。
敵は戦闘艦約50隻が撃破、または戦闘不能。敵艦載機は約600機が撃破、または戦闘不能となったようです」
「なんだと!」
CB-03の驚くべき戦績にロゴスキー中将は驚愕した。
「敵戦闘艦約50隻撃破、戦闘不能はまだ分かる。いやそれも驚くべきものだが、敵艦載機約600撃破、戦闘不能だと!」
「はい、敵はCB-03から艦載機が発艦したことを確認し、敵もそれに呼応する様に艦載機を発艦させたようです。理由はよく分かりませんが、発艦した敵艦載機は1000機を超え、CB-03に攻撃したようです」
「は?たった1隻に1000機以上だと!」
ロゴスキー中将は少し考えて。
「おそらく敵の司令官は闇雲に艦載機の出撃命令を出したのだろう。余程混乱していたのか、慌てていたのか、その両方か」
敵艦載機隊がCB-03の艦載機隊に向かわなかったのは、CB-03の艦載機隊は散開しており、効率を考え、先に母艦であるCB-03の攻撃を優先したからであった。
いくら艦載機とはいえ、最大戦速で航行中の敵艦を的確に攻撃する事はかなり難しい。
数が多ければ良い、というのは状況による。
敵が大群なら良いが、今回は1隻である。多ければ良い、というものではない。
更に、宇宙航空戦艦は対艦載機戦用の武装は他の戦闘艦に比べて遥かに強力である。
たとえ敵艦載機が1000機であろうが、無策で接近してくるならただの的に過ぎない。
そういう状況であれば、撃破、戦闘不能約600機という数も、不可能な数字ではない。
ロゴスキー中将はある事に気がついた。
「そうか!だから艦載機隊には敵戦闘艦を攻撃させ、CB-03は敵艦載機と敵旗艦に集中した、ということか」
「なるほどです」
「いや、少し考えば分かることだ」
CB-03の搭載している艦載機は2個大隊72機なので、1000機を超える敵艦載機への迎撃は自殺行為である。
今回の作戦は『斬首、ゼネコン作戦』であり、CB-03の予定航路を広げるのが艦載機隊の主任務である。
何も敵艦を撃破、戦闘不能する事に拘る必要はない。威嚇射撃するなどして予定航路から離れさせるだけでも良いのである。
ただし、敵宇宙空母は今後の作戦のために少しでも減らしておいた方が良いと考え、ベータ大隊には積極的に撃破、戦闘不能とするように攻撃させたのである。
火星軍主力艦隊は、左翼残存艦隊の戦闘宙域に到達した。
「CB-03及び敵の様子はどうだ」
別に、いちいち報告させなくても、スクリーンを見れば大体分かる。クルーの意思統一のためにあえて確認するのである。
「CB-03及び艦載機隊は戦闘宙域外で待機している模様。敵左翼残存艦約1350。混乱しているのか、戦闘態勢ではありません」
「うーむ。敵旗艦撃破は予想以上の効果があったようだ」
敵左翼残存艦隊はロゴスキー中将の予想通り、混乱して身動きが取れなくなっていた。
敵左翼残存艦隊の予定航路視点(火星軍主力艦隊の攻撃前の視点)で、左側からは火星軍主力艦隊が接近。右側には何をするか分からない宇宙航空戦艦がいるため、挟撃されている様に感じており、さらに旗艦を失った事により命令系統が崩壊。誰しもが動けず、言葉さえ発する事が出来なくなっていた。
「よし!考える暇を与えるな!直ちに第三次作戦を開始する。全艦に通達せよ!」
「了解!」
火星軍主力艦隊は戦闘態勢に移行した。
「3号発射用意!目標敵左翼残存艦隊中央!」
「3号の発射準備を開始します」
3号は2号と同じプロセスで、発射準備が開始された。
「3号発射!」
「3号発射します!」
3号も2号と同じ様に急速発進した。
敵艦隊も気づいてはいるが、何も出来なかった。
「3号ターゲットに到達します」
「カウントダウン開始。3、2、1、スーパーチャージャー点火!」
眩い閃光の後、凄まじい衝撃波。遅れて轟音が響き渡った。
「3号の爆発を確認!───敵残存艦数…約600」
「うむ。混乱しているとはいえ、敵右翼残存艦隊よりは分散していたから、少し多く残ったか。が、問題はない。全艦に回線を繋げ」
「了解──繋ぎました」
「全艦包囲陣形に展開、攻撃を開始する。必要以上に突出したり接近するな!適度な距離から全火力で攻撃せよ」
「艦長、艦載機隊はどうしますか?」
「先の敵右翼残存艦隊戦では艦載機は掃討戦以外あまり必要がなかった。今回はいつでも緊急発進出来るようにして待機せよ」
「了解しました」
敵左翼残存艦隊は火星軍主力艦隊の集中砲火を浴びて、みるみるうちに撃破されていった。
まさしく『袋の鼠』状態である。
「うーむ。右翼残存艦隊より手応えがないな。3号の爆発でシステム系に異常が出た、とかか?」
「いや、それはないと思います。戦闘艦はあらゆる放射線や電磁波、重力干渉などの対策がなされているので」
「そうか。そうだな」
「おそらく、旗艦を失った事や、何をするか分からないCB-03の存在によるものだと思います」
「なるほど」
「CB-03とその艦載機隊は恐ろしいですね。味方で良かったと本当に思います」
「そうだな。彼女らが敵などと考えたくもないな」
敵右翼残存艦隊は為す術もなくその数を減らされていった。
「勝ったな」
『それフラグ!』と、サーシャなら言うだろう。
「艦長!敵戦闘艦が急速接近中です。数10…12、増えています!最大戦速?いや、フルパワーです」
「特攻か!なに、慌てることはない。近くの部隊と連携して撃破せよ。落ち着いてな」
「了解しました──『第106及び217水雷戦隊、急速接近してくる敵の迎撃にあたれ』」
『水雷戦隊』とは、古代の地球に於いて、ある国での海軍の艦隊の部隊の名称で、機雷や魚雷、爆雷などを使った水雷戦を行うことを目的とした部隊の事であるが、ここでは、高速宇宙巡洋艦や宇宙突撃駆逐艦など、高速での戦闘を想定して編成された部隊の事である。なお、名称は当時巡洋艦や駆逐艦など、比較的高速の洋上艦艇で構成されていたので、その模倣である。
「艦長!敵宇宙突撃駆逐艦が突っ込んできます!あと90」
「何!すり抜けたか!緊急回避!急げっ!」
ゴルバトフは接近する敵艦との衝突を避けるため、緊急回避を実施した。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
ワイルド・ソルジャー
アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。
世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。
主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。
旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。
ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。
世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。
他の小説サイトにも投稿しています。
再び君に出会うために
naomikoryo
SF
僕たちは宇宙の中で存在している、地球上のものでいえばエネルギー生命体に近い存在だ。星間塵(せいかんじん)を糧として、宇宙空間であれば何万光年も生きていける。
気の合う同じ種族の異性とは合体することで一つの生命体となり、気持ちが変われば分裂して個々となり、離れて行く。言葉は持たないが一種のテレパスを使って感情を伝え合うことができる。
僕たちは、とある彗星に流され引力を持つ星に、途中で分裂させられながら降りてしまった。宇宙に戻ることも出来ず、ただ少しずつエネルギーを失いながら消滅するしかなくなっていた僕は、最後にもう一度彼女と出会うことを望んでテレパスを送り、何とか移動し続けるしかなかった・・・
空色のサイエンスウィッチ
コーヒー微糖派
SF
『科学の魔女は、空色の髪をなびかせて宙を舞う』
高校を卒業後、亡くなった両親の後を継いで工場長となったニ十歳の女性――空鳥 隼《そらとり じゅん》
彼女は両親との思い出が詰まった工場を守るため、単身で経営を続けてはいたものの、その運営状況は火の車。残された借金さえも返せない。
それでも持ち前の知識で独自の商品開発を進め、なんとかこの状況からの脱出を図っていた。
そんなある日、隼は自身の開発物の影響で、スーパーパワーに目覚めてしまう。
その力は、隼にさらなる可能性を見出させ、その運命さえも大きく変えていく。
持ち前の科学知識を応用することで、世に魔法を再現することをも可能とした力。
その力をもってして、隼は日々空を駆け巡り、世のため人のためのヒーロー活動を始めることにした。
そしていつしか、彼女はこう呼ばれるようになる。
魔法の杖に腰かけて、大空を鳥のように舞う【空色の魔女】と。
※この作品の科学知識云々はフィクションです。参考にしないでください。
※ノベルアッププラス様での連載分を後追いで公開いたします。
※2022/10/25 完結まで投稿しました。
H.E.A.V.E.N.~素早さを極振りしたら、エラい事になった~
陰猫(改)
SF
人生が終わると言う都市伝説のあるVRゲームを購入した坂田糀はその真相を知るべく、H.E.A.V.E.N.と呼ばれるゲームを始める。
しかし、そのゲームは思いもよらない代物であった。
陰猫(改)が送る実験的な小説第……何弾だっけ?
今回はリアル過ぎたVRを私なりに書いて見ました。
今回もなろうから持って来ました。
ジャンル別にVRがないのでキャラ文芸と言う形でお送りしますーーって、なんか、SF扱いになってる!
Σ(; ゚Д゚)!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる