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第3話
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木星の公転軌道上にあるハブステーションゲート付近に、連邦軍の各艦隊が集結した。
位置的には、敵を前方として、ハブステーションゲートが後方である。
第5世代ササクラーエンジンは予想以上に優秀で、最大戦速での航行を長時間継続しても、安定しており何ら問題が無かった。
しかし、最大戦速というのは、艦の制御や障害物の探索など、航行に集中しなければならないため、巡航速度とするわけにはいかない。
このため、かなり時間的余裕を持って集結する事が出来た。
集結した艦の総数は、予定通り11万隻。
しかし念の為、1万隻は遊撃部隊として探知圏外に待機していた。
従って、ここに集結しているのは、敵と同数の10万隻である。
反乱軍は1万隻を1つの艦隊として、10個艦隊で侵攻してきている。
特に陣形があるわけでも、10個艦隊が別方向から、という事でもない。
範囲は広いが、10万隻が同方向から近づいて来る。
何か策があるのかは分からないが、どう考えても大群のゴリ押しに思える。
連邦軍もこのような大艦隊を想定したシュミレーションもしていないので、同じように1万隻を1つの艦隊として、ハブステーションゲートを守る盾のように展開していた。
現在まで実戦の小競り合いはせいぜい10隻程度であり、シュミレーションでも最大で数十隻での作戦行動である。
何故、数万の艦が各惑星軍にあるのかと言えば、単に宇宙は広いからである。
警備するにせよ、偵察するにせよ360度全方位である。また、多数ある輸送船などの護衛も必要だ。
フォーメーションなどの艦隊機動は数十隻が限界であり、演習はしているが実戦経験はない。
宇宙海賊退治も10隻程度で十分であった。
衝突やフレンドリーファイアーを防ぐ艦隊機動を行うためのデータリンクシステムもあるが、それもせいぜい1000隻が限界であろうし、もちろん実績もない。ただ理論的に可能というでけである。
このままでは恐らく、10万対10万の殴り合いになるだけだろう。
連邦軍の総司令長官は、反乱軍に話し合いによる事態の収拾を打診したが、反乱軍は問答無用で射程圏内に入り次第攻撃してきた。
とても戦術と呼べるものではなかった。
やはり、というべきか。反乱軍は狂信者的思想で侵攻してきたのだ。
連邦軍は始めこそ苛烈に攻撃してくる反乱軍に押されていたが、ダメ元で衝突、フレンドリーファイアー防止データリンクシステムを全艦に有効にするように指示、実行した結果、艦隊機動がスムーズとなり、自主的に100隻程度の個別艦隊として、ある程度戦術的な反撃が出来るようになった。
10万対10万といっても、20万の艦が混戦しているわけではない。
最前線の数隻から数十隻があちこちで交戦しているのである。
連邦軍の方が組織的に(実戦経験のある者からすればお粗末ではあるが)交戦しているが、反乱軍は狂信的......良い言い方をすれば積極的に交戦している。
このため、良い言い方ではお互い互角、端的に言えば単なる消耗戦である。
連邦軍もこのような意味のない消耗戦は一刻も早くやめたいのだが、ここで反乱軍を食い止めなければ、地球が制圧されてしまう。
始めるのは簡単だが、終わらせるのは難しい。
ただ、時間と共にお互いに損害を増やすだけだった。
お互いに艦隊の損耗が半分になった頃、連邦軍の総司令長官はあることに気付いた。
反乱軍は分散しているのである。それも連邦軍から見て右側が敵艦が少なく、左側が多い。
つまり、左側の反乱軍は逃げる事を考え、積極的に攻撃していないのだ。
そこで連邦軍の総司令長官は全艦に一度後退し、右寄りの位置に集結するよう命じた。
全艦隊の作戦行動は初めてなので、モタモタとしながらではあるが、順次集結ポイントへ移動した。
後退しても、連邦軍総司令長官の読み通り、左側の反乱軍は追撃してこなかった。
おおよそ集結が完了した時には、右側の反乱軍はほぼ壊滅していた。
そして、左側の反乱軍は反転し、散り散りに逃走して行った。
こうして、木星の公転軌道上での反乱軍との戦いは終わった。
残存艦艇は、正確な数は不明だが、敗走した反乱軍の総数は約4万隻。
連邦軍は約5万隻。待機していた遊撃部隊1万隻と併せて、計約6万隻であった。
宇宙空母などに搭載された艦載機は今回出撃しなかったので損害は無し。
結果として、連邦軍の勝利で終わった。
その後、連邦の調査団は、海王星に赴き、今回の事態は軍の暴走であった事を確認。
反乱軍に加担した者は既に海王星の警察により逮捕、勾留されていた。
天王星も同様であった。
処遇は各国に任された。
残る問題は、敗走した反乱軍の対処。
太陽系辺境である海王星軍及び天王星軍。
半壊した連邦軍の再編成。
失った戦闘艦の製造について、である。
しかし、敗走した反乱軍の総数約4万隻は一番の脅威である。
これをどうにかしないと、後が続かない。
再度地球に侵攻しないとも限らない。
そこで作戦が検討される事となった。
検討結果、敗走した反乱軍が再集結して4万隻で再度侵攻する事はほぼ無いとの結論に至った。
するなら奇襲の類であろう。
そこで、地球に2万隻。火星、木星、土星、天王星、海王星に各8千隻を配置。
金星は地球軍がカバーする。
そして、各々の惑星軍で、担当領域を索敵し、発見次第撃滅する、という索敵撃滅作戦を実施する事が決定した。
位置的には、敵を前方として、ハブステーションゲートが後方である。
第5世代ササクラーエンジンは予想以上に優秀で、最大戦速での航行を長時間継続しても、安定しており何ら問題が無かった。
しかし、最大戦速というのは、艦の制御や障害物の探索など、航行に集中しなければならないため、巡航速度とするわけにはいかない。
このため、かなり時間的余裕を持って集結する事が出来た。
集結した艦の総数は、予定通り11万隻。
しかし念の為、1万隻は遊撃部隊として探知圏外に待機していた。
従って、ここに集結しているのは、敵と同数の10万隻である。
反乱軍は1万隻を1つの艦隊として、10個艦隊で侵攻してきている。
特に陣形があるわけでも、10個艦隊が別方向から、という事でもない。
範囲は広いが、10万隻が同方向から近づいて来る。
何か策があるのかは分からないが、どう考えても大群のゴリ押しに思える。
連邦軍もこのような大艦隊を想定したシュミレーションもしていないので、同じように1万隻を1つの艦隊として、ハブステーションゲートを守る盾のように展開していた。
現在まで実戦の小競り合いはせいぜい10隻程度であり、シュミレーションでも最大で数十隻での作戦行動である。
何故、数万の艦が各惑星軍にあるのかと言えば、単に宇宙は広いからである。
警備するにせよ、偵察するにせよ360度全方位である。また、多数ある輸送船などの護衛も必要だ。
フォーメーションなどの艦隊機動は数十隻が限界であり、演習はしているが実戦経験はない。
宇宙海賊退治も10隻程度で十分であった。
衝突やフレンドリーファイアーを防ぐ艦隊機動を行うためのデータリンクシステムもあるが、それもせいぜい1000隻が限界であろうし、もちろん実績もない。ただ理論的に可能というでけである。
このままでは恐らく、10万対10万の殴り合いになるだけだろう。
連邦軍の総司令長官は、反乱軍に話し合いによる事態の収拾を打診したが、反乱軍は問答無用で射程圏内に入り次第攻撃してきた。
とても戦術と呼べるものではなかった。
やはり、というべきか。反乱軍は狂信者的思想で侵攻してきたのだ。
連邦軍は始めこそ苛烈に攻撃してくる反乱軍に押されていたが、ダメ元で衝突、フレンドリーファイアー防止データリンクシステムを全艦に有効にするように指示、実行した結果、艦隊機動がスムーズとなり、自主的に100隻程度の個別艦隊として、ある程度戦術的な反撃が出来るようになった。
10万対10万といっても、20万の艦が混戦しているわけではない。
最前線の数隻から数十隻があちこちで交戦しているのである。
連邦軍の方が組織的に(実戦経験のある者からすればお粗末ではあるが)交戦しているが、反乱軍は狂信的......良い言い方をすれば積極的に交戦している。
このため、良い言い方ではお互い互角、端的に言えば単なる消耗戦である。
連邦軍もこのような意味のない消耗戦は一刻も早くやめたいのだが、ここで反乱軍を食い止めなければ、地球が制圧されてしまう。
始めるのは簡単だが、終わらせるのは難しい。
ただ、時間と共にお互いに損害を増やすだけだった。
お互いに艦隊の損耗が半分になった頃、連邦軍の総司令長官はあることに気付いた。
反乱軍は分散しているのである。それも連邦軍から見て右側が敵艦が少なく、左側が多い。
つまり、左側の反乱軍は逃げる事を考え、積極的に攻撃していないのだ。
そこで連邦軍の総司令長官は全艦に一度後退し、右寄りの位置に集結するよう命じた。
全艦隊の作戦行動は初めてなので、モタモタとしながらではあるが、順次集結ポイントへ移動した。
後退しても、連邦軍総司令長官の読み通り、左側の反乱軍は追撃してこなかった。
おおよそ集結が完了した時には、右側の反乱軍はほぼ壊滅していた。
そして、左側の反乱軍は反転し、散り散りに逃走して行った。
こうして、木星の公転軌道上での反乱軍との戦いは終わった。
残存艦艇は、正確な数は不明だが、敗走した反乱軍の総数は約4万隻。
連邦軍は約5万隻。待機していた遊撃部隊1万隻と併せて、計約6万隻であった。
宇宙空母などに搭載された艦載機は今回出撃しなかったので損害は無し。
結果として、連邦軍の勝利で終わった。
その後、連邦の調査団は、海王星に赴き、今回の事態は軍の暴走であった事を確認。
反乱軍に加担した者は既に海王星の警察により逮捕、勾留されていた。
天王星も同様であった。
処遇は各国に任された。
残る問題は、敗走した反乱軍の対処。
太陽系辺境である海王星軍及び天王星軍。
半壊した連邦軍の再編成。
失った戦闘艦の製造について、である。
しかし、敗走した反乱軍の総数約4万隻は一番の脅威である。
これをどうにかしないと、後が続かない。
再度地球に侵攻しないとも限らない。
そこで作戦が検討される事となった。
検討結果、敗走した反乱軍が再集結して4万隻で再度侵攻する事はほぼ無いとの結論に至った。
するなら奇襲の類であろう。
そこで、地球に2万隻。火星、木星、土星、天王星、海王星に各8千隻を配置。
金星は地球軍がカバーする。
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