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第1話
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広大な宇宙。
バリオン。(宇宙の構成成分のうちの正体が明らかになっている物の事を言う)つまり星や動植物を作っている物質は、この宇宙の約4%に過ぎない。
残りの約23%はダークマターという未知の物質で占められており、約73%はダークエネルギーと呼ばれる正体不明のもの。
この時代の科学力でもそれは同じであった。
その昔、人類は増え続ける人口に対し、その生存圏を砂漠や極寒地、地下、そして宇宙に求めた。
しかし、地球内に新たな場所を造る事は、主に気候変動やプレートテクトニクスなど、環境の変化によって、困難を極めた。
研究者達は、「それなら宇宙に」と早々に結論づけ、開発に着手した。
元々あったスペースコロニー計画やテラフォーミング計画を大幅に修正し実行した結果、テラフォーミング計画はコストパフォーマンスが合わない事と、地球内における環境の変動と同等の問題点に直面し、断念した。
しかし、スペースコロニー計画は既に完成間近であった軌道エレベーターの技術も相まって、意外にアッサリと成功した。
巨大なスペースコロニーの建設には大量の資材が必要であり、当初人海戦術のように、各国はロケットを量産して打ち上げ、チマチマと運んでいたが、やがてそれも限界を迎える。
それから約一世紀後。事態は意外な分野から発見されたものによって好転する。
超新星爆発の研究の過程で、偶然発見されたトルマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界を超えた中性子星(中性子星と言えるかは分からないが)に存在した高速中性子である。もちろん、この高速中性子は今までのものとは別物である。
発見者のマコト・ササクラ博士に因んで、ササクラー粒子と命名された。
この高エネルギーを持つササクラー粒子は、少しのエネルギーを与える事で自己増殖するため、当時の研究者たちはそれを利用して研究、開発すれば、ある種の永久機関として使えるのでは?という結論に達した。
そして、このササクラー粒子の研究を進め、制御を可能にしたエンジン。「ササクラーエンジン」の開発に成功。それを搭載した大型宇宙船を完成させたのであった。
開発に成功した大型宇宙船によって、スペースコロニー計画は飛躍的に進歩を遂げ、また、小惑星帯などから新しい鉱物資源が発見されたりと、計画的にも技術的にも大きく向上し、別の次元へと変わっていくのであった。
時は過ぎ、人類はその生存圏を太陽系全域まで拡大させていた。
各惑星や衛星の静止軌道上に建設されたスペースコロニーは、当初10万人規模のものであったが、徐々に増え、1000万人を超える規模のコロニーも多数存在するようになっていた。
外惑星、つまり火星、木星、土星、天王星、海王星にはそのような巨大なコロニーが複数存在している。
内惑星、つまり水星、金星は太陽風などの影響もあって、そのような巨大なコロニーは無く、特に水星付近のコロニーは流刑地のようになっていた。
外惑星のコロニーは、こうなるともはやコロニーと呼べなくなった。
コロニーとは植民地という意味もあり、実際、各コロニーは地球の各国に所属していた。
しかし、ここまでの規模になると、もはや地球の各国では管理が難しく、実際各外惑星のコロニー郡で自治権を獲得してる惑星もあり、実質的に独立国家として機能していた。
因みにこの巨大なコロニーは浮遊都市と呼ばれている。
そして、複数の浮遊都市によって構成されるその国は浮遊都市国家と呼ばれている。
各惑星間の移動は、ササクラー粒子を応用して製造されたゲートと呼ばれる装置が開発され、それを設置する事で空間跳躍が可能となった。
つまり、例えばゲートを地球と火星に設置すれば、地球側のゲートと火星側のゲート双方向に空間跳躍する事が出来る。
このゲートを各惑星に設置する事で、移動時間は大幅に短縮された。
ササクラーエンジンが第5世代になった時、画期的なスーパーチャージャーの開発に成功。搭載する事によって、宇宙船でも空間跳躍が可能となった。
それに伴う機器も開発され、制限はあるものの、宇宙船の自由度も向上した。
しかし、問題も増えた。
宇宙海賊である。
彼らは積み荷のみならず、宇宙船そのものも強奪する。
輸送船も武装すれば戦闘艦となる。
各国の軍も当然戦闘艦は開発してきた。
輸送船団には護衛艦が随伴し、宇宙海賊対策はしてきた。
もちろん、ササクラーエンジンが第5世代となる前から、宇宙海賊は存在していた。
それまでは、宇宙海賊如き大した脅威では無かったが、第5世代となる事で、事態は変わった。
空間跳躍で逃げられれば追跡はかなり難しい。
これまでは、地球内の国家間で争う事も少なかったが、協調する事も少なかった。
それは、このころになると、兵器の威力も21世紀初頭のそれより遥かに強力なものとなっており、国家の主義主張や宗教の違いなどにより小競り合いなどはあるものの、国家間の争いは国家どころか地球という惑星規模の破滅となる。もはや、例えば冷戦などという国家間が牽制し合う事によってかろうじて平和が保たれるものではなくなっていた。1つの国で惑星をも破壊することが可能なのである。
そのため、地球内の各国は、国家という概念や民族意識などが徐々に薄れ、やがて地球国という1つの国家となった。
それは各惑星も同じで、惑星内の主義主張なども統一化され、惑星国家として機能していた。例えば地球国、火星国、木星国など…という国家である。
しかし、宇宙海賊という共通の脅威の出現により、各惑星国家は同盟を結び、共闘する事となった。
いわゆる各惑星国家による連邦国家の誕生である。
この頃には、外惑星の各惑星の人口も億単位となり、各々独立しているので、正確には太陽系連邦と言うべきであろう。
この事で宇宙海賊の脅威はかなり軽減された。
これにより、軍も統一化され連邦軍として編成された。地球軍、火星軍、木星軍……海王星軍などが1つの連邦軍として組織されたのである。
この連邦軍により、今度は外宇宙対策が検討された。太陽系より外側からの脅威の対策である。
実際、宇宙海賊の本拠地も、太陽系より外側に存在していたのだ。
その本拠地も連邦軍によって制圧されたが、他にいないとも限らない。
地球外生命体の可能性もある。知的生命体だけではない。知性がなくても虚威になりうるもの、また彗星など、各浮遊都市や更に各惑星そのものに大きな損害が出るものが接近してくる可能性も少なくない。
当然探索、索敵はしているが、太陽系に侵入するもの全てを探知し、対策出来るものでもない。
そこで連邦軍は、太陽系の辺境として海王星に巨大な宇宙要塞を建設し、大艦隊を配置させた。
太陽系守護の要として。
しかし、この事が裏目に出るとは誰しもが予想していなかった。
バリオン。(宇宙の構成成分のうちの正体が明らかになっている物の事を言う)つまり星や動植物を作っている物質は、この宇宙の約4%に過ぎない。
残りの約23%はダークマターという未知の物質で占められており、約73%はダークエネルギーと呼ばれる正体不明のもの。
この時代の科学力でもそれは同じであった。
その昔、人類は増え続ける人口に対し、その生存圏を砂漠や極寒地、地下、そして宇宙に求めた。
しかし、地球内に新たな場所を造る事は、主に気候変動やプレートテクトニクスなど、環境の変化によって、困難を極めた。
研究者達は、「それなら宇宙に」と早々に結論づけ、開発に着手した。
元々あったスペースコロニー計画やテラフォーミング計画を大幅に修正し実行した結果、テラフォーミング計画はコストパフォーマンスが合わない事と、地球内における環境の変動と同等の問題点に直面し、断念した。
しかし、スペースコロニー計画は既に完成間近であった軌道エレベーターの技術も相まって、意外にアッサリと成功した。
巨大なスペースコロニーの建設には大量の資材が必要であり、当初人海戦術のように、各国はロケットを量産して打ち上げ、チマチマと運んでいたが、やがてそれも限界を迎える。
それから約一世紀後。事態は意外な分野から発見されたものによって好転する。
超新星爆発の研究の過程で、偶然発見されたトルマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界を超えた中性子星(中性子星と言えるかは分からないが)に存在した高速中性子である。もちろん、この高速中性子は今までのものとは別物である。
発見者のマコト・ササクラ博士に因んで、ササクラー粒子と命名された。
この高エネルギーを持つササクラー粒子は、少しのエネルギーを与える事で自己増殖するため、当時の研究者たちはそれを利用して研究、開発すれば、ある種の永久機関として使えるのでは?という結論に達した。
そして、このササクラー粒子の研究を進め、制御を可能にしたエンジン。「ササクラーエンジン」の開発に成功。それを搭載した大型宇宙船を完成させたのであった。
開発に成功した大型宇宙船によって、スペースコロニー計画は飛躍的に進歩を遂げ、また、小惑星帯などから新しい鉱物資源が発見されたりと、計画的にも技術的にも大きく向上し、別の次元へと変わっていくのであった。
時は過ぎ、人類はその生存圏を太陽系全域まで拡大させていた。
各惑星や衛星の静止軌道上に建設されたスペースコロニーは、当初10万人規模のものであったが、徐々に増え、1000万人を超える規模のコロニーも多数存在するようになっていた。
外惑星、つまり火星、木星、土星、天王星、海王星にはそのような巨大なコロニーが複数存在している。
内惑星、つまり水星、金星は太陽風などの影響もあって、そのような巨大なコロニーは無く、特に水星付近のコロニーは流刑地のようになっていた。
外惑星のコロニーは、こうなるともはやコロニーと呼べなくなった。
コロニーとは植民地という意味もあり、実際、各コロニーは地球の各国に所属していた。
しかし、ここまでの規模になると、もはや地球の各国では管理が難しく、実際各外惑星のコロニー郡で自治権を獲得してる惑星もあり、実質的に独立国家として機能していた。
因みにこの巨大なコロニーは浮遊都市と呼ばれている。
そして、複数の浮遊都市によって構成されるその国は浮遊都市国家と呼ばれている。
各惑星間の移動は、ササクラー粒子を応用して製造されたゲートと呼ばれる装置が開発され、それを設置する事で空間跳躍が可能となった。
つまり、例えばゲートを地球と火星に設置すれば、地球側のゲートと火星側のゲート双方向に空間跳躍する事が出来る。
このゲートを各惑星に設置する事で、移動時間は大幅に短縮された。
ササクラーエンジンが第5世代になった時、画期的なスーパーチャージャーの開発に成功。搭載する事によって、宇宙船でも空間跳躍が可能となった。
それに伴う機器も開発され、制限はあるものの、宇宙船の自由度も向上した。
しかし、問題も増えた。
宇宙海賊である。
彼らは積み荷のみならず、宇宙船そのものも強奪する。
輸送船も武装すれば戦闘艦となる。
各国の軍も当然戦闘艦は開発してきた。
輸送船団には護衛艦が随伴し、宇宙海賊対策はしてきた。
もちろん、ササクラーエンジンが第5世代となる前から、宇宙海賊は存在していた。
それまでは、宇宙海賊如き大した脅威では無かったが、第5世代となる事で、事態は変わった。
空間跳躍で逃げられれば追跡はかなり難しい。
これまでは、地球内の国家間で争う事も少なかったが、協調する事も少なかった。
それは、このころになると、兵器の威力も21世紀初頭のそれより遥かに強力なものとなっており、国家の主義主張や宗教の違いなどにより小競り合いなどはあるものの、国家間の争いは国家どころか地球という惑星規模の破滅となる。もはや、例えば冷戦などという国家間が牽制し合う事によってかろうじて平和が保たれるものではなくなっていた。1つの国で惑星をも破壊することが可能なのである。
そのため、地球内の各国は、国家という概念や民族意識などが徐々に薄れ、やがて地球国という1つの国家となった。
それは各惑星も同じで、惑星内の主義主張なども統一化され、惑星国家として機能していた。例えば地球国、火星国、木星国など…という国家である。
しかし、宇宙海賊という共通の脅威の出現により、各惑星国家は同盟を結び、共闘する事となった。
いわゆる各惑星国家による連邦国家の誕生である。
この頃には、外惑星の各惑星の人口も億単位となり、各々独立しているので、正確には太陽系連邦と言うべきであろう。
この事で宇宙海賊の脅威はかなり軽減された。
これにより、軍も統一化され連邦軍として編成された。地球軍、火星軍、木星軍……海王星軍などが1つの連邦軍として組織されたのである。
この連邦軍により、今度は外宇宙対策が検討された。太陽系より外側からの脅威の対策である。
実際、宇宙海賊の本拠地も、太陽系より外側に存在していたのだ。
その本拠地も連邦軍によって制圧されたが、他にいないとも限らない。
地球外生命体の可能性もある。知的生命体だけではない。知性がなくても虚威になりうるもの、また彗星など、各浮遊都市や更に各惑星そのものに大きな損害が出るものが接近してくる可能性も少なくない。
当然探索、索敵はしているが、太陽系に侵入するもの全てを探知し、対策出来るものでもない。
そこで連邦軍は、太陽系の辺境として海王星に巨大な宇宙要塞を建設し、大艦隊を配置させた。
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