6 / 6
第6話(最終話)
しおりを挟む「ふぅ~ようやく見つけたわ。死ぬかと思ったけど...」
「見つかって良かったですね」
「貴女は元気ね」
「忍者ですから」
「あっそ」
ようやく、やっと、マジ、ホントに、よ~うやく見つけた一株の「星の雫」を大切に仕舞って、てくてくと下山する2人であった。
しばらくすると...
「馬?」
「馬のようですね」
近づいてみると...
「あ、血だ」
「どうやら怪我してるみたいですね」
「う~ん」
「ポーションは無いのですか?」
「ええ、ほんの薬草採取のつもりで、ここまで大変だとは思わなかったのよ。だから持ってないわ」
「チッ、使えねー」
「何か言った?」
「いえ、何も...」
ディアナは悩んだ。マジ悩んだ。やっぱり悩んだ。
「うぐぐ...ん~仕方ない、乗りかかった船だ」
「馬、ですけど...」
「やかましいわっ」
コポコポ
「何してるんですか?」
「ポーション作ってるの」
「え、作れるのですか?」
「当たり前でしょ!私これでもポーション職人よ」
「いえ、材料があるのかな?と」
「あるわよ」
「まさか」
「ええ、「星の雫」よ」
「いいのですか?」
「いいのよ、「星の雫」はまた取りに来れるけど、この子には「また」は無いからね」
「グスン。お嬢様は優しいですね」
「放っておいたら寝覚めが悪いだけよ」
「そうですか」
「よし!出来た」
ディアナは馬?に近づき、エリクサーを飲ませた。
馬?が虹色に輝き、傷が一瞬で治った。
「どう?お馬さん」
その時、大きな音を立ててバッサとユニコーンが現れた。
『妾の息子に何をしている』
親ユニコーンはお怒りの様だ。
「えっと、馬...じゃなくてユニコーンのお子様でしたか。すみません、怪我していたので、エリクサーで勝手に治療しました。
『何?エリクサーじゃと?』
「はい、頂上で採った「星の雫」を使いました」
『ほ「星の雫」...それはなんと...礼をいう、人の女よ」
しばらくすると子供ユニコーンがムクリと起き上がった。
『あ、あれ?痛くない?』
『おお、アレクシス。気分はどうじゃ?どこか痛いところは?』
『は、母上、えっと、はい大丈夫です』
『そこの人の女が治してくれたようじゃ、礼を』
『あ、はい。ありがとうございました』
「いえ、いいんですよ」
『そなた、名前は?』
「あ、申し遅れました。私はディアナ。ディアナ・シュナイダーと申します。こちらはメイドのシノブです」
「シノブです」
『うむ、息子が世話になった。感謝する。ディアナ、シノブ』
「いえ、材料があって良かったです」
『妾も礼をせねばならんな。アレクシス』
『はい、母上』
『人の姿になって、彼女らをミスリルの鉱脈へ連れて行ってくれ』
『分かりました』
アレクシスは人の姿に変身した。
「キャーーーーーー細マッチョォーーーキャーーーーーー」
『え、ディアナはどうしたのじゃ?』
「あ、え、えっと、お嬢様は、その、細マッチョが好き、というか」
『なんと!人の姿のアレクシスが、その細まっちょというのか?」
「は、はい、そうです」
『ディアナとやら』
「あ、はい...」
『我らはあまり人の縄張りには行かん。なのでディアナとシノブが時々来るが良い。ああ、ミスリルの鉱脈で何かあればアレクシスに頼れば良い。もちろんアレクシスは人の姿でな』
「あ、あ、あ、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
テッテレー!ディアナとシノブに細マッチョ(ユニコーン)のお友達ができた。
『ミスリルの鉱脈は好きに使うが良い。採掘は任せる』
お礼を言ってからユニコーンの母親と別れ、人の姿になったアレクシスと一緒にミスリルの鉱脈に行き、アレクシスとも別れ、2人は帰路についた。
人の姿になったアレクシスにディアナが終始ベタベタしていたのは内緒である。
「ふんふん~細マッチョぉ~ふんふん~アレクシスぅ~ふんふん~」
「超ご機嫌ですね。謎の歌、歌ってるし」
「そう?」
「そうですよ」
超ご機嫌なディアナ、とシノブは、すっかり忘れていた薬草採取の依頼を思い出し、ちょちょいと採取してギルドに帰って来たのであった。
~からん~
「「「「ディアナの姉御、シノブ殿、お勤めご苦労様でした」」」」
「な、な、なんだ。てかムショ帰りかっ!」
ギルドに入るとギラド(ディアナを殴った奴)のパーティが出迎えた。
「姉御、今朝は殴って申し訳ありやせんでした。我らパーティはディアナの姉御とシノブ殿の舎弟になりやす」
「別にそんなのいいのに」
「そういうわけにはいきやせん。我らにも冒険者としてのプライドってのがありやす」
「あはは...そうなのね」
テッテレー!ディアナとシノブにゴリマッチョ(ギラドとそのパーティ)の舎弟ができた。
そして、薬草を納品して、冒険者としての初日が終了したのであった。
ーーーーーー
シュナイダー侯爵邸
「ふぅ、今日は疲れたわね」
「お嬢様ぁ~湯浴みの準備できましたよ」
「はーい」
しばらくした頃...
「ぎゃぁぁぁぁぁぁーーー」
「お嬢様っ!どうしました?」
「こ、これ...」
「これは二の腕...というか...えっと」
「な、何なの?」
「じ、上腕二頭筋ですね」
「え、じゃ、これは?」
「三角筋ですね」
「ええっ...これ」
「僧帽筋です」
「こここれも...」
「はい、腹直筋上部ですね。いやぁ~綺麗に6つに分かれてますねー」
「ううぅ、これは?」
「大腿四頭筋です」
「すぅ~はぁ~...で、では、こ、これは?」
「はい!大胸筋です。お胸まで...ぷぷっ。いやーお嬢様もマッチョですねー」
「やかましいわっ!」
一日で筋肉がつくのかは疑問だが...異世界あるあるだな。
「ないわっ!。くそ」
ーーーーーー
しばらくしたある日、ディアナのドレッサーにそれは置かれていた。
『第38回マッチョ競技会「女子の部」の書類審査の結果、ディアナ・シュナイダー様 「合格」です。エントリーNo.3です。集合時間に遅れないようにお願い致します』
「なんじゃこれぇぇーーー」
「あ、お嬢様。エントリーしておきましたよ」
「てめーかぁぁーーー」
ーーーーーー
「ねぇ、マジでこんな格好で出るの?」
「マジです。ささ、ここまで来たらちゃんとしましょう」
「これ...ビキニ...より布の面積小さくない?てかシノブ!てめーが嵌めたんだろーがー」
「コラコラ、侯爵令嬢がそんな汚い言葉、使ってはいけません。もうすぐ出番ですからね」
「ぐぬぬ」
『皆様お待たせしましたぁ。第38回マッチョ競技会、女子の部。今回のエントリーはなんと!過去最多!!158名です~ぱちぱちぱち。それではエントリーNo.1から5番の方はステージへおねがいします』
「ささ、お嬢様。出番ですよ」
「ううっ。恥ずかし過ぎる」
『おおお、皆様。麗しの美女達。しっかりと目に焼き付けてくださぁーい。では、まずはリラックスポーズでーす。さぁ~フロントからぁ、サイド右~バックからぁサイド左。そしてフロントに戻ります』
会場は熱狂に包まれた。
『ではぁ~メインイベントぉ「フロントダブルバイセップス」からのぉ~「サイドチェスト!」...さ~てキメのポーズはぁ~「モストマスキュラー」だぁぁぁぁっ!』
こうして、第38回マッチョ競技会、女子の部は大成功に終わった。
「ううう~」
まぁ一人、微妙なのも居るが、問題ない。
「やかましいわっ!!」
ーーーーーー
その後、ディアナはアルト商会に正式採用され、メイドのシノブと共に、没落したヴォルフ伯爵の代わりにナイス商会を立て直し、新しくミスリル部門を設立。アルト商会はもちろん、シュヴァルツ子爵家(カールに無理矢理彼女にされそうになったヘレナの実家)にも協力を依頼して、アルディア山脈のミスリル鉱脈を開発し、アルト商会は多大な利益によって、国内最大手の商会となった。
ある日...
「お嬢様ぁ~どこへ行くのですかぁ?」
「ん?アレクシスのとこ。細マッチョ成分補給よ」
「そうですか」
これはいつもの事、変わらない日常であった。
部屋の片隅にちょこんと置かれた謎の置き物には、こう記されていた。
【第38回マッチョ競技会 女子の部 ディアナ・シュナイダー 優勝】
おわり
25
お気に入りに追加
45
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説


婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

婚約破棄されたので歴代最高の悪役令嬢になりました
Ryo-k
ファンタジー
『悪役令嬢』
それすなわち、最高の貴族令嬢の資格。
最高の貴族令嬢の資格であるがゆえに、取得難易度もはるかに高く、10年に1人取得できるかどうか。
そして王子から婚約破棄を宣言された公爵令嬢は、最高の『悪役令嬢』となりました。
さらに明らかになる王子の馬鹿っぷりとその末路――

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。

姉の陰謀で国を追放された第二王女は、隣国を発展させる聖女となる【完結】
小平ニコ
ファンタジー
幼少期から魔法の才能に溢れ、百年に一度の天才と呼ばれたリーリエル。だが、その才能を妬んだ姉により、無実の罪を着せられ、隣国へと追放されてしまう。
しかしリーリエルはくじけなかった。持ち前の根性と、常識を遥かに超えた魔法能力で、まともな建物すら存在しなかった隣国を、たちまちのうちに強国へと成長させる。
そして、リーリエルは戻って来た。
政治の実権を握り、やりたい放題の振る舞いで国を乱す姉を打ち倒すために……

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

通称偽聖女は便利屋を始めました ~ただし国家存亡の危機は謹んでお断りします~
フルーツパフェ
ファンタジー
エレスト神聖国の聖女、ミカディラが没した。
前聖女の転生者としてセシル=エレスティーノがその任を引き継ぐも、政治家達の陰謀により、偽聖女の濡れ衣を着せられて生前でありながら聖女の座を剥奪されてしまう。
死罪を免れたセシルは辺境の村で便利屋を開業することに。
先代より受け継がれた魔力と叡智を使って、治療から未来予知、技術指導まで何でこなす第二の人生が始まった。
弱い立場の人々を救いながらも、彼女は言う。
――基本は何でもしますが、国家存亡の危機だけはお断りします。それは後任(本物の聖女)に任せますから
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
私も細マッチョが良き(๑•̀ㅂ•́)و✧
筋肉ムキムキでも構わないけど…暑苦しくなければ←何故上から(^︺^💧)..