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最終話

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「それでは始めます...の前に」

 私はホールの中間あたりに直径約10メートルくらいの場所を確保してもらった。
 騎士たちが椅子やテーブルを移動させている。

「それでルナ嬢、何をなさるのですか」
「お友達を呼ぶの」
「はあ...お友達ですか」
「そのお友達を怒らせたら、もう手がないから、あのバ...元...ああ、もいいや。あのバカフィリップが絶対喋らないようにしてください」
「分かりました」

 バカは縛られて猿轡を噛まされていた。
 そうしていると、国王が騎士に連行されてきた。

「ルナ嬢、いったいこれは何事だ」
「聖女システムの事を話しました」
「んなっ、裏切ったのか!」
「裏切ったのは陛下でしょう。全国民を」
「魔道具ができれば問題なかろう」
「陛下は時を渡る魔道具なんてものが本当に出来ると思っているのですか?」
「其方はやると言ったではないか」
「それはいくら出来ないと言っても、陛下から「やると言えば良いのだ」と命令されたからです」

 私と陛下が口論していると宰相が。

「ルナ嬢、そろそろ」
「あ、すみません」

 私は作ってもらった中央のステージ?に立った。

「それではみなさん、これから私のお友達を呼びます。怒らせたら終わりです。この国は滅びます。騒がず、そして静かにしてください」

「なんだ?」「何がはじまるんだ」「魔女でも呼ぶのか?」とざわついた。

「だから静かにっていったでしょうが!やっぱりやめようかしら」
「る、ルナ嬢申し訳ありません。こら!皆の者!騒がずに!」

 宰相が怒鳴ると静かになった。



 私はソフトボール大の丸い水晶のようなものを掲げた。そして...


「リアぁーごめーんちょと来てぇー」


 すると水晶のようなものが輝いた。


「やっほー」


 二十歳はたちくらいの美女が現れた。



「いらっしゃい」
「ルナちゃんお久~」
「ごめんね、急に呼び出して」
「ああ、いいわよ、ちょっと暇してたし」
「どうせサボってたんでしょ」
「ひっど~い。ちゃんと仕事してるわよ」
「ほんとかなぁ~」

 私たちが世間話をしていると、しびれを切らした宰相が。

「ルナ嬢、その方は?」
「あ、ごめんなさい。この人はリア。私のお友達です」
「え?」

 またまたキョトンだ。キョトンの日だな。

「あ、リートリア。この世界の女神です」

 え

 ええ

 えええ

 えええええええええええええええええええええええっ


 わお、デジャヴ。


 暫くして静かになると、ザ!っと全員が跪いた。

 ああ、最近バカばっかり相手してたから、この国(この世界)の人たちは唯一神、女神リートリアへの信仰が篤いのを忘れていたわ。
 まあ放っておこう。

「で、ルナちゃん、どうしたの?何か困った事でもあったの?」
「あのね、このバカフィリップが聖女システムの制御室に入ったらしいのよ」
「はぁぁ、やっぱり人間はダメね。一旦滅ぼしてリセットしようかしら」
「いや、それがね、このバカフィリップとそのバカ国王とあのバカイザベラが酷いだけでその他の人はわりとまともなのよね」
「それを周りの人が放置していたのなら同罪じゃない?」
「それはそうなんだけどね」

 すると宰相が。

「恐れながら女神様。私たちも限界でクーデターの準備をしておりました」
「制御室ひとつ守れない貴様たちがか?」
「ひっ!」

 女神リートリアの鋭い眼光で宰相が悲鳴をあげた。

「んなっ宰相、そんな事を考えていたのか」
「王族の横暴は目に余ります」

 みんながそれぞれガヤガヤと議論し始めた。そんな時。

「おい!女神!俺を助けろ!」

 バカフィリップがまたバカ発言をした。執念で猿轡を外したようだ。あの野郎フィリップしばく。絶対ぜってーしばく。

「コラ!よさんかフィリップ」

 国王が止めようとしてるがもう遅い。

「今、その虫けらが何と申した」

 リアが怒った。終わった。

「ひぃぃっ」ビビるバカフィリップ

 ゴゴゴゴという効果音が鳴っていると錯覚するくらいの怒りのオーラがリートリアから放たれた。

「リア、ちょっと待って。あの尖塔には誰も居ないから、ちょこっと神罰を落として」
「分かったわ」

 リートリアが手を翳した。



 ピカッ

 ドドドドドドドドドドドドドドド

 どっかぁ~ん


 尖塔は粉々に砕け散った。



 私はツカツカとバカフィリップに近寄ると。

「お前いい加減にしろよ!まだ分からんのか?お前は既に国民全員を殺すような事をしたんだぞ!そしてこれで2度目だ!。そんなに国を滅ぼしたいのか?それともお前の頭に神罰を落とされたいのか?その前に私が半殺しにするけどな!!」

 私が怒りをぶつけると。

「あ、いや、ボクは...」

 ぶるぶる震えながら、何か言おうとしているが、言葉が出ないみたいだ。
 バカフィリップも、本物の「力」というものを目の当たりにして、ようやく怒鳴れば何とかなる、という考え方が間違いだと気づき始めたようだ。

「おい国王!これでもこのバカフィリップを庇うのか?」
「そ、それは...」
「そしてそこの騎士!私は黙らせろ!って言ったよな!そんな簡単な事すら出来ないのか?」
「も、申し訳ございません。女神様のご顕現に呆けておりました」
「ああああもう。少しでも何とかしようと思った私がバカだった。リア!もういいや。この国、いやこの大陸ごと沈めちゃって!」
「大陸かあ、後が面倒くさいのよね、地殻プレートが歪んで、マグマの偏流で他の大陸の...」
「ああもういいわ、この国だけで」

 すると宰相が。

「ルナ嬢、いやルナ様、このバカ共の事は私が責任を持って処理し、今後このようなことがないように致します。何卒!何卒!!」

 縋り付いてきた宰相に若干引いてしまった。まあそうよね。国が滅ぶんだし。

「このバカ共をこんな事になるまで放置していた人達に、どうにかできるか分かったものではないな」

 もう何も信じられなくなった。 
 あれほど喋らせるなと言ったのに。
 どうしてそんな簡単なことさえ守れないのか…

 私はかつてないほど怒っていた。怒りが湧き出て溢れるみたいに。

「ルナちゃん、落ち着いて」

 珍しくリアが慰めてくれたので少し落ち着いた。

「はぁー。今までのストレスが爆発しそうだったわ。ありがとうリア」

 扉が開き、新たな人物が登場した。

「突然の訪問、申し訳ございません。女神様の顕現の知らせにより参りました。ああ女神様、ご尊顔を拝し歓喜に打ち震えております」

 また場がキョトンとなった。

「ああ、申し遅れました、私は女神教で大司教をさせて頂いています、ガルシアと申します。此度の王家の悪行については聞き及んでおります。女神様のお気のままにしてください。我々も愚か者達と共に地獄へ参る所存です」
「ガルシアさんね、貴方の祈りは聞こえていましたよ。でも私というよりルナちゃんに聞いたほうがいいわよ。彼女いま、とぉっても怒っているから」
「おおお、私の祈りをお聞き頂いていたとは...それではルナ様、いえ聖女様、お気のままにして下さい」
「せ、聖女?」

 いつの間にか聖女になっていた。なんでだ!

「女神教、あまり活動してなかったように思うけど」
「はい、王家より活動を制限されておりました」

 またテメーらか!!

「はあ、なんか疲れたわ......宰相さん」
「はい、何でございましょう」
「あと、よろしく」
「は?」
「だから、後は任せたから好きにしてってこと」
「あ、は、え?」
「あら、「バカ共の事は自分が責任を持って処理し、今後このようなことがないようにする」みたいな事いってたじゃない」
「あ、はい」
「少なくともその大司教さんは信用できるみたいだし。だからあとは任せた」
「はい!分かりました...それで、ルナ様はどうされるのですか?」
「私はとっとと国を出ます」
「そ、それでは魔法道具研究所は?」
「あら、彼らは私が鍛えたのよ。私がいなくても大丈夫よ。無能な文官と騎士達と違って」
「そ、それは」
「私は王太子の仕事もしてたのよ。王宮の実態は知っているわ」

「そうですか」と言って宰相は後ろを見て。

「内務局長、騎士団長聞いたな」
「はい、申し訳ございません。これからは心を入れ替えて職務に邁進する所存です」
「面目ございません。以後死ぬ気で鍛え直します」

 宰相たちは、私に深々と頭を下げた。

「ルナ様にはまだここに居てほしかったです。お詫びも含めて」
「魔道具だけじゃなく、女神のお友達、聖女。これだけのことやらかしたから、私を取り込もうとする輩がわんさか現れるわよ。それこそ国外からも」

「それもそうですな」と宰相は笑った。

「リア、王家が愚かになる要素として、ここの聖女システムが強すぎるんだって」
「あらそうね、ここのは初期のだからまだ力加減が不安定だったのよ」
「調整出来る?」
「ええ、大丈夫よ」
「まあ、今弱くなっても今までのがあるから、数年は今の状態だろうけどね」

 私はみんなを見渡しました。

「それではみなさん、お世話になりました。もうバカな事はやめてね。たぶん次は問答無用でリアが神罰落とすわよ」

「「「かしこまりました!!」」」

 私はリアに捕まりました。

「それでは、バカフィリップが切った聖女システム再起動!」

 ピカっと辺りが輝いた。

「じゃ!」

 手を振っていたルナと女神リートリアはふっと姿を消した。










 ー ここは神界のサロン ー



「依頼完了っと!」

「ルナちゃんお疲れ様」

「今回は自滅っぽかったね」

「滅ぼさなかったケースが1つ増えたわね」

「滅ぼす方が簡単だけど、依頼達成ポイントが減るからね」

「あの国はどれくらい持ちそう?」

「さあ?世代が変わればまた同じことが起きるんじゃない?」

「そうね、50~60年くらいは持つだろうけどね」

「ま、またバカ出たら、その時はどっかーんかな、いい加減付き合ってられん。しかし、あんな作戦よく考えたわね」

「あら、ルナちゃんが元日本人で、あの国のルナちゃんに転生したのは事実でしょ。最後は女神のゴリ押しだけど」

「まぁそうだけどね」

「あ、そうそう、また依頼が来たのよ」

「どこ?」

「メソフィアラ」

「ああ、いっつもドンパチやってる世界ね」

「次はルナちゃんが女神役する?」

「どっちでもいいけど、チートで私TUEEEも面白そう」

「あそこは魔法が強力だからね」

「ま、どっちでも何とかなるでしょ」

「それもそうね。じゃ、いきますか」

「ちょっと地球に寄ってから。カップラーメン買ってくる」

了解ラジャー




 二人の旅はまだ始まったばかりだ!






 おわり
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