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【幕間④】アクレシア帝国軍侵攻、同盟軍反抗作戦2(マロン王国、本陣)
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同盟軍によるアクレシア帝国軍に対する反抗作戦が開始した。
ドリアドア公国軍は既にルーンの街へと向かっている。
同盟軍も第1、2の部隊と第3、4の部隊に別れて、それぞれの戦場へと向かった。
補給部隊はシュナイダー侯爵軍の護衛で守られている。
見ただけで分かる。最強の精鋭部隊だ。
万が一補給部隊が急襲されることがあっても撃退出来るだろう。
偵察部隊から報告が入った。
アクレシア帝国軍は予想通り北西辺境に向けて進軍している。
複縦陣の長い隊列である。
まぁ、8万もの軍を移動させるなら、それしかないのではあるが。
もうすぐエルクラド王国軍と接触するだろう。
無能な軍にはさっさと退場してもらいたい。
居るだけで邪魔だ。
同盟軍には愚かな軍は必要ない。無能な上層部も要らない。
次の偵察部隊の報告によると、アクレシア帝国軍は、エルクラド王国軍との交戦に入ったとの事だ。
予想通り開戦開始後、直ぐに戦線は崩壊、中央突破された。
そして、左右に展開した帝国軍に包囲されている、との事。
なんと、総司令官である王太子と側近、軍の将官は既に撤退、いや逃げ出していたのである。
予想はしていたが、実際にそうなると、怒りと呆れが同時に襲ってくる。
もう、エルクラド王国軍は全滅するだろう。
しかし、脆弱とはいえ1万の軍なのだ。それなりには時間が掛かるだろう。
ガイエル総司令官は少しだけアクレシア帝国軍に同情した。
面倒ごとが増えた。
エルクラド王国軍に言いたい。ここは観光地ではないぞ、戦場だぞ、と。
◆
その頃、第4軍であるマロン王国軍の本陣では、少し奇妙な状況になっていた。
本陣は、ちょうど戦場が見渡せる、少し高台の条件の良い場所に構えている。
本陣内では、国王陛下、王妃陛下、そしてなぜかユミコ王女殿下が居る。
国王も王妃も反対する第4軍の司令官、ユウキ・ネルソン大将の意見を無視して、戦場に赴いている。
オルレア王国の王族も参戦しているのに、自分達だけ本国に居られるか、と。
王太子殿下も参戦を希望したが、王族が全員本国を離れるわけにはいかないので、泣く泣く国に残っている。
それにしても、なぜ王女殿下がここに?
ネルソン司令官はずっと考えていた。
それよりも、だ!
なぜ、ローズ嬢とメイドのリーナ嬢までここに居るのだ?
それも二人ともメイドの格好をして。
まだリーナ嬢は分かる。
彼女はローズ嬢の専属メイドだから。
しかし、ローズ嬢は違う。
故郷では筆頭侯爵家のご令嬢だと聞いた。
動きやすいドレス姿ならわかる。
しかし、リーナ嬢と全く同じメイド姿なのである。
現在のネルソン司令官の頭の中は「???」である。
しかし、国王、王妃、王女のお世話を完璧に行っており、護衛が数人傍で控えているだけだ。
王宮のメイドでは慣れない戦場で、ここまで完璧に王族のお世話ができるメイドや侍女はいないだろう。
他には女性騎士にでもお願いするしかないのではあるが、騎士にメイドの真似事をするのも難しい。
気持ちは複雑であるが、心の中でローズ嬢とリーナ嬢に感謝するのであった。
「王妃陛下、これが今、大陸で流行っているオルレア王国産のギード茶ですわ。少しキツめの茶葉なので、初めはとっつきにくいかも知れませんが、慣れれば大変味わい深く美味しいですわ」
マロン王国の王妃陛下は一口飲むと目を見開いた。
「あら、本当ね、コクがあるわね」
「はい、茶葉の発酵時間が他のものよりも長く出来るので、そのコクが引き出せるのです」
通常の茶葉であれば、ここまで発酵させると腐ってしまう。それほどに強い茶葉なのである。
「それでは淹れ方が難しいのでは?」
「いいえ、出来るだけ熱いお湯でティーカップを温めて、抽出時間を通常の半分にするだけですわ」
「貴女は本当に博識なのね、これもシュナイダー商会で?」
「いえ、茶葉は先日設立した、私の商会に任せた、と父に押し付けられました」
「あはは、それは分かるわ。茶葉に関しては貴女の方が、知識も技術もあるからね」
王妃陛下はそう言って大笑いするのであった。
「お嬢...ローズ様、後方約300メートル。恐らく2人です」
こっそりとローズにだけ聞こえるようにリーナが言った。
ここでもお嬢様呼びは禁止である。
「ええ、分かっているわ」
そう言って、おかわりのお茶を淹れ、王妃陛下に差し出した。
「王妃陛下、少し外の空気に触れたいのですが」
「良いわよ、ごめんなさい、ずっと窮屈だったわね」
「ありがとうございます」
お礼を言うと、ローズとリーナは本陣の出入口に向かって優雅に歩いて行った。
王妃陛下は、無骨な騎士や兵士がたくさん居る本陣だから、と思って気を使っていたが、ローズとリーナはそんな事は微塵も苦にならないのであった。
2人は本陣を出ると、ご令嬢とは思えない速さで、本陣の後方へ駆け出した。
しばらくすると、のんきに歩いているアクレシア帝国軍の偵察部隊の姿が見えてきた。
やはり2人だ、偵察部隊にしては緊張感がない。
それも仕方がなかった。
それにしても…
何で敵が本陣の中から分るんだ!
また、思わず突っ込んでしまった。
でも「え、メイドなら当然でしょ」と真顔で答えるだろう。それがローズクォリティーなのだ。
偵察部隊の2人は少しサボっている間に、偵察部隊の本体とはぐれてしまっていたのだ。
通常、偵察部隊というのは優秀な人材が選ばれる。
それは、適中にこっそりと侵入して、必要な情報を正確に持ち帰らなければならないからである。
万が一、敵と遭遇した場合、他の敵に知られないように始末する戦闘力も備えていなけばならないのだ。
並の兵士には務まらない任務を遂行する能力が求められる。
しかし、近年は平和が長く続いていた。
そのため、この2人も実戦経験は盗賊の討伐程度で、このような大規模な戦争の経験は無い。
それは、前皇帝が侵略戦争には反対であったからである。
温厚だったわけではない。
戦争には金が掛かる。
ただでさえ国は財政難なのだ。
更に昨年の不作で税収も少ない。
戦争などやっている場合ではないのである。
現皇帝は「敵から奪えば良い」という考え方をしている。
もう、それは皇帝の考え方ではなく盗賊の頭目と同じ思考である。
今回の、エルクラド王国への侵攻も、財政に余裕がある状態で実行したわけではない。
浪費癖のある皇帝自身が財政難を引き起こし、国庫を空にしたのである。
だったら敵から奪え、というなんとも幼稚な理屈での侵攻作戦なのであった。
ローズとリーナが発見した偵察兵は割と優秀な方であった。
優秀であるからこその油断である。
この近辺に敵が居る情報はない。
しかし彼らはそういった意味では優秀ではなかった。
敵がこんな所にいるわけがない、思い込んでいた。
実はこういう所に敵は潜んで居るものなのである。
偵察兵もローズ達に気がついたが、ローズは恐ろしい速さで偵察兵に近づくと、みぞおちにボディーブローを一発。幸か不幸か、その偵察兵は自前の鎖帷子を着ていたのである。
一発くらってよろけはしたものの、戦闘力が奪われてはいない。
反撃しようと抜刀する瞬間。
バッキーン!
突如リーナのドロップキックが首筋に炸裂した。
ほぼ水平に物凄い速さで飛んできた。どれだけジャンプ力があるのか。
もう一人の偵察兵は、思わぬ強敵との遭遇に恐怖して逃げ出した。
先ほどまで、美人なメイドと小柄なメイドだと侮っていたのだが、もうそのような考えは無くなっていた。
リーナは着地した後、逃げる偵察兵を追いかけ、あっと言う間に近づいてジャンプし、偵察兵の肩の上に飛び乗った。肩車をしている様になっている。
そして、偵察兵の目を塞いで視界を無くし、リーナを引き剥がそうとその場で暴れている所に、ローズが接近し、今度は鎖帷子を警戒して、男性の急所に膝蹴りを...
「ぐばぼぉ」
急所にモロに膝蹴りを食らった偵察兵は、悲鳴を上げて倒れた。
しばらくは使用不能である。
リーナは気絶している2人をロープでぐるぐる巻に縛り上げた。
どうしてロープなど持っているか?メイドだからである。
手の届かない高い場所ではロープを引っ掛けて登らなければならない。
メイドの常識である。
そんなワケあるかっ!
また、思わず突っ込んでしまった。ローズといいリーナといいどう考えても普通のメイドではない。
そして、ミノムシ状態の敵の偵察兵を、おおよそ2人の体格からすれば絶対に不可能だと思われるのだが、ずるずると引きずって本陣へと帰って行った。
本陣へと帰還した2人は気絶して、ロープでぐるぐる巻にされている敵の偵察兵を、ネルソン司令官に引き渡した。
「ろ、ローズ嬢、それは?」
「本陣の後方、約300メートル付近に居た敵兵です。恐らく広範囲索敵していた斥候かと」
「それで、捕まえてきた、と...」
ローズはメイドならこれくらい出来て当然だ。という顔をしている。
いやいや、普通のメイドはそんな事出来ません!
「はい、尋問官の方にでもお願いして、敵の情報など引き出せば、と思いまして。あの...ダメでしたでしょうか?」
「えっ、あ、い、いや、助かる、よくやってくれた。ありがとう」
「いえ、これしきの事は...さ、リーナ、あとは専門の方に任せましょう。私達はここまでよ」
いやいや、敵兵を捕まえるのもメイドの仕事ではない。
しばらくして、息を切らせて走ってきた伝令兵が本陣に入って来た。
「伝令!本隊より連絡!先ほど戦闘が開始されました!」
ついに接敵。戦いが始まった。
ドリアドア公国軍は既にルーンの街へと向かっている。
同盟軍も第1、2の部隊と第3、4の部隊に別れて、それぞれの戦場へと向かった。
補給部隊はシュナイダー侯爵軍の護衛で守られている。
見ただけで分かる。最強の精鋭部隊だ。
万が一補給部隊が急襲されることがあっても撃退出来るだろう。
偵察部隊から報告が入った。
アクレシア帝国軍は予想通り北西辺境に向けて進軍している。
複縦陣の長い隊列である。
まぁ、8万もの軍を移動させるなら、それしかないのではあるが。
もうすぐエルクラド王国軍と接触するだろう。
無能な軍にはさっさと退場してもらいたい。
居るだけで邪魔だ。
同盟軍には愚かな軍は必要ない。無能な上層部も要らない。
次の偵察部隊の報告によると、アクレシア帝国軍は、エルクラド王国軍との交戦に入ったとの事だ。
予想通り開戦開始後、直ぐに戦線は崩壊、中央突破された。
そして、左右に展開した帝国軍に包囲されている、との事。
なんと、総司令官である王太子と側近、軍の将官は既に撤退、いや逃げ出していたのである。
予想はしていたが、実際にそうなると、怒りと呆れが同時に襲ってくる。
もう、エルクラド王国軍は全滅するだろう。
しかし、脆弱とはいえ1万の軍なのだ。それなりには時間が掛かるだろう。
ガイエル総司令官は少しだけアクレシア帝国軍に同情した。
面倒ごとが増えた。
エルクラド王国軍に言いたい。ここは観光地ではないぞ、戦場だぞ、と。
◆
その頃、第4軍であるマロン王国軍の本陣では、少し奇妙な状況になっていた。
本陣は、ちょうど戦場が見渡せる、少し高台の条件の良い場所に構えている。
本陣内では、国王陛下、王妃陛下、そしてなぜかユミコ王女殿下が居る。
国王も王妃も反対する第4軍の司令官、ユウキ・ネルソン大将の意見を無視して、戦場に赴いている。
オルレア王国の王族も参戦しているのに、自分達だけ本国に居られるか、と。
王太子殿下も参戦を希望したが、王族が全員本国を離れるわけにはいかないので、泣く泣く国に残っている。
それにしても、なぜ王女殿下がここに?
ネルソン司令官はずっと考えていた。
それよりも、だ!
なぜ、ローズ嬢とメイドのリーナ嬢までここに居るのだ?
それも二人ともメイドの格好をして。
まだリーナ嬢は分かる。
彼女はローズ嬢の専属メイドだから。
しかし、ローズ嬢は違う。
故郷では筆頭侯爵家のご令嬢だと聞いた。
動きやすいドレス姿ならわかる。
しかし、リーナ嬢と全く同じメイド姿なのである。
現在のネルソン司令官の頭の中は「???」である。
しかし、国王、王妃、王女のお世話を完璧に行っており、護衛が数人傍で控えているだけだ。
王宮のメイドでは慣れない戦場で、ここまで完璧に王族のお世話ができるメイドや侍女はいないだろう。
他には女性騎士にでもお願いするしかないのではあるが、騎士にメイドの真似事をするのも難しい。
気持ちは複雑であるが、心の中でローズ嬢とリーナ嬢に感謝するのであった。
「王妃陛下、これが今、大陸で流行っているオルレア王国産のギード茶ですわ。少しキツめの茶葉なので、初めはとっつきにくいかも知れませんが、慣れれば大変味わい深く美味しいですわ」
マロン王国の王妃陛下は一口飲むと目を見開いた。
「あら、本当ね、コクがあるわね」
「はい、茶葉の発酵時間が他のものよりも長く出来るので、そのコクが引き出せるのです」
通常の茶葉であれば、ここまで発酵させると腐ってしまう。それほどに強い茶葉なのである。
「それでは淹れ方が難しいのでは?」
「いいえ、出来るだけ熱いお湯でティーカップを温めて、抽出時間を通常の半分にするだけですわ」
「貴女は本当に博識なのね、これもシュナイダー商会で?」
「いえ、茶葉は先日設立した、私の商会に任せた、と父に押し付けられました」
「あはは、それは分かるわ。茶葉に関しては貴女の方が、知識も技術もあるからね」
王妃陛下はそう言って大笑いするのであった。
「お嬢...ローズ様、後方約300メートル。恐らく2人です」
こっそりとローズにだけ聞こえるようにリーナが言った。
ここでもお嬢様呼びは禁止である。
「ええ、分かっているわ」
そう言って、おかわりのお茶を淹れ、王妃陛下に差し出した。
「王妃陛下、少し外の空気に触れたいのですが」
「良いわよ、ごめんなさい、ずっと窮屈だったわね」
「ありがとうございます」
お礼を言うと、ローズとリーナは本陣の出入口に向かって優雅に歩いて行った。
王妃陛下は、無骨な騎士や兵士がたくさん居る本陣だから、と思って気を使っていたが、ローズとリーナはそんな事は微塵も苦にならないのであった。
2人は本陣を出ると、ご令嬢とは思えない速さで、本陣の後方へ駆け出した。
しばらくすると、のんきに歩いているアクレシア帝国軍の偵察部隊の姿が見えてきた。
やはり2人だ、偵察部隊にしては緊張感がない。
それも仕方がなかった。
それにしても…
何で敵が本陣の中から分るんだ!
また、思わず突っ込んでしまった。
でも「え、メイドなら当然でしょ」と真顔で答えるだろう。それがローズクォリティーなのだ。
偵察部隊の2人は少しサボっている間に、偵察部隊の本体とはぐれてしまっていたのだ。
通常、偵察部隊というのは優秀な人材が選ばれる。
それは、適中にこっそりと侵入して、必要な情報を正確に持ち帰らなければならないからである。
万が一、敵と遭遇した場合、他の敵に知られないように始末する戦闘力も備えていなけばならないのだ。
並の兵士には務まらない任務を遂行する能力が求められる。
しかし、近年は平和が長く続いていた。
そのため、この2人も実戦経験は盗賊の討伐程度で、このような大規模な戦争の経験は無い。
それは、前皇帝が侵略戦争には反対であったからである。
温厚だったわけではない。
戦争には金が掛かる。
ただでさえ国は財政難なのだ。
更に昨年の不作で税収も少ない。
戦争などやっている場合ではないのである。
現皇帝は「敵から奪えば良い」という考え方をしている。
もう、それは皇帝の考え方ではなく盗賊の頭目と同じ思考である。
今回の、エルクラド王国への侵攻も、財政に余裕がある状態で実行したわけではない。
浪費癖のある皇帝自身が財政難を引き起こし、国庫を空にしたのである。
だったら敵から奪え、というなんとも幼稚な理屈での侵攻作戦なのであった。
ローズとリーナが発見した偵察兵は割と優秀な方であった。
優秀であるからこその油断である。
この近辺に敵が居る情報はない。
しかし彼らはそういった意味では優秀ではなかった。
敵がこんな所にいるわけがない、思い込んでいた。
実はこういう所に敵は潜んで居るものなのである。
偵察兵もローズ達に気がついたが、ローズは恐ろしい速さで偵察兵に近づくと、みぞおちにボディーブローを一発。幸か不幸か、その偵察兵は自前の鎖帷子を着ていたのである。
一発くらってよろけはしたものの、戦闘力が奪われてはいない。
反撃しようと抜刀する瞬間。
バッキーン!
突如リーナのドロップキックが首筋に炸裂した。
ほぼ水平に物凄い速さで飛んできた。どれだけジャンプ力があるのか。
もう一人の偵察兵は、思わぬ強敵との遭遇に恐怖して逃げ出した。
先ほどまで、美人なメイドと小柄なメイドだと侮っていたのだが、もうそのような考えは無くなっていた。
リーナは着地した後、逃げる偵察兵を追いかけ、あっと言う間に近づいてジャンプし、偵察兵の肩の上に飛び乗った。肩車をしている様になっている。
そして、偵察兵の目を塞いで視界を無くし、リーナを引き剥がそうとその場で暴れている所に、ローズが接近し、今度は鎖帷子を警戒して、男性の急所に膝蹴りを...
「ぐばぼぉ」
急所にモロに膝蹴りを食らった偵察兵は、悲鳴を上げて倒れた。
しばらくは使用不能である。
リーナは気絶している2人をロープでぐるぐる巻に縛り上げた。
どうしてロープなど持っているか?メイドだからである。
手の届かない高い場所ではロープを引っ掛けて登らなければならない。
メイドの常識である。
そんなワケあるかっ!
また、思わず突っ込んでしまった。ローズといいリーナといいどう考えても普通のメイドではない。
そして、ミノムシ状態の敵の偵察兵を、おおよそ2人の体格からすれば絶対に不可能だと思われるのだが、ずるずると引きずって本陣へと帰って行った。
本陣へと帰還した2人は気絶して、ロープでぐるぐる巻にされている敵の偵察兵を、ネルソン司令官に引き渡した。
「ろ、ローズ嬢、それは?」
「本陣の後方、約300メートル付近に居た敵兵です。恐らく広範囲索敵していた斥候かと」
「それで、捕まえてきた、と...」
ローズはメイドならこれくらい出来て当然だ。という顔をしている。
いやいや、普通のメイドはそんな事出来ません!
「はい、尋問官の方にでもお願いして、敵の情報など引き出せば、と思いまして。あの...ダメでしたでしょうか?」
「えっ、あ、い、いや、助かる、よくやってくれた。ありがとう」
「いえ、これしきの事は...さ、リーナ、あとは専門の方に任せましょう。私達はここまでよ」
いやいや、敵兵を捕まえるのもメイドの仕事ではない。
しばらくして、息を切らせて走ってきた伝令兵が本陣に入って来た。
「伝令!本隊より連絡!先ほど戦闘が開始されました!」
ついに接敵。戦いが始まった。
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