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3 お茶会
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ローズの住んでいるエルクラド王国には3つの派閥がある。
王派閥、貴族派、中立派の3つだ。
勢力的には4:4:2。
王派閥と貴族派は目に見えて対立しているわけではないが、明らかに貴族派は王家に非協力的である。
この大きな2つの勢力が拮抗しているため、法改正案にしろ開発事業案にしろ議題がなかなか進まない。
この対立の裏にはとても下らない理由がある。
この国には3つ公爵家がある。
王派閥筆頭のドリアドア公爵家、貴族派筆頭のバーグ公爵家、中立派筆頭のヴァイス公爵家。
このドリアドア公爵家とバーグ公爵家の仲が微妙に悪いのである。
それには、前国王が関係している。
前国王は、隣国のオルレア王国との同盟強化のため、隣国の王女を娶ったが、どういうわけか当時の筆頭公爵家の令嬢を正妃とし、隣国の王女を側妃としたのである。
これに激怒した隣国のオルレア王国と、戦争になりかけたのである。
やむを得ず、隣国の王女の家系の者を本国から数名呼び寄せ、要職に就かせたり、多額の賠償金や条件の悪い取引などでなんとか緊張状態は緩和されたが、隣国との関係は最悪であった。
さらに、その多額の賠償金によって王家は弱体化し、当時の筆頭公爵家が事実上の実権を握っていたのである。
つまり、その当時の筆頭公爵家の家系がドリアドア公爵家で、隣国の王女の家系がバーグ公爵家なのである。
ちなみにヴァイス公爵家は先々代の家系なので、この争いには関係はないが、権力もない。
さらに、現王家の正妃は関係改善のため、隣国の王女なのである。
従って、筆頭王派閥のドリアドア公爵家とも仲がいいとはいえない微妙な関係なのである。
つまり、王家、王派閥、貴族派共に微妙な関係であり、その中でドリアドア公爵家とバーグ公爵家が対立しているだけなのである。
それも激しく対立しているわけではなく、王家の邪魔をするための口実のようなものだ。
実に下らない。
この関係改善のため、現王太子の婚約者はドリアドア公爵家のユリーナ嬢である。
王家と王派閥の関係強化のためである。
ちなみにローズのシュナイダー侯爵家は中立派である。
そして、中立派にはもうひとつの侯爵家がある。エスクリダ侯爵家である。
この2つの侯爵家にはある共通点がある。
領地が狭く、目立った産業がない、という事だ。
シュナイダー侯爵領には南部に小さな穀倉地帯。エスクリダ侯爵領には東部に小さな鉄鉱山があるだけだ。
それでもシュナイダー侯爵家は筆頭でエスクリダ侯爵家も上位侯爵家である。
それは、大陸中に手を伸ばしたシュナイダー商会の税収入が物凄いからである。
領地からの収入が少ないために商会を立ち上げた、とも言える。
エスクリダ侯爵はシュナイダー商会の副会長。
このシュナイダー侯爵家とエスクリダ侯爵家だけで、王国の全税収入の約8%にもなるのだ。
そういった事情により、数ある侯爵家の中でも、この2家はとても仲がいいのである。
◆
ふんふん♪
今日はご機嫌なリーナ。
何故なら今日はエスクリダ侯爵家のミランダ嬢のお茶会に招かれているからである。
久しぶりのローズお嬢様モードなのである。
テキパキとお嬢様を飾り付ける。もちろんリーナはニコニコとした満面の笑みである。
対象的にローズはご不満のようだ。朝からご機嫌斜めなのだ。
ローズは絶世の美人というわけではないが、王族も含めた高位貴族の中でもかなり上位に入る美女である。
まだ少し幼なさはあるものの、高位貴族である気品も備えている。
ドレスやアクセサリーを身に纏い、程よくメイクアップされたローズは社交界でも注目を集める容姿である。
間違ってもメイドのような事をする、または出来るとは想像をもする事は出来ないであろう。
リーナのレディースメイドの本領発揮である。
不正をしたアーネル元子爵家の次女で、ローズの2つ下、当時8歳。現在14歳
父は犯罪者、姉は既に結婚し、母は実家から出てこない。後を継いだ長男は借金で余裕がない。
その時にローズに引き取られたのである。
孤児院しかないと思っていた所だったので、リーナはローズにとても感謝しているのである。
のほほんとした雰囲気のリーナだが、ローズと一緒にマナーや勉強を一緒にしているので学業もメイドとしても優秀なのである。
もし、貴族学園に入園しても、現在でも上位となるだろう。メイドとしても他の高位貴族家に仕えるメイドより優秀なのである。
ある意味スーパーメイドキャロルの弟子のようなものだ。
「は~い、できましたよ」
「ありがとう」
ローズを完璧な令嬢に仕上げて大満足のリーナだった。
「ローズいらっしゃい」
「お招きありがとう、ミランダ」
今日はミランダのエスクリダ侯爵領から、伯爵令嬢と数名の子爵、男爵令嬢も招待されていた。
「皆さん、こちらシュナイダー侯爵家のローズ、私のお友達なの、よろしくね」
「よろしくおねがいします」
「「「「よろしくおねがいします」」」」
ローズはミランダとは小さい頃からの幼馴染で、唯一の友人であり、親友でもある。
今日ははじめましての方が多い。
ローズはメイドなので、あまり社交には興味ないのである。
それを知っているミランダの配慮なのではあるのだが...
挨拶もそこそこに、お茶会が始まった。
「あら、このお茶...」
「流石ローズね。分かった?」
「ええ、隣国オルレア産のギード茶かしら、ミランダ」
「正解!貴女やっぱり凄いわねぇ」
「この淹れ方...やはりね...」
「え、ローズ?何か言った?」
「ううん、何でもないわ」
ローズは少し考えてから席を立った。
「ミランダ、ごめん、ちょっとお花を摘みに」
「分かったわ」
と、トイレに行くふりをして、エスクリダ家のパーラーメイドのところへ。
「こんにちは」
「こ、これはローズお嬢様!何か粗相でもしましたでしょうか?」
「いや、違うのよ」
そして始まるお茶の淹れ方講座。
「あのね、隣国ギード茶は茶葉の発酵度合いがきつくて、淹れ方にコツがいるのよ」
そういって実際に紅茶を淹れる。
「まず、ティーカップは十分に温める事。できるだけ熱いお湯を用意してね」
慣れた手付きでティーカップを温め、お湯を切ってから冷めないように蓋をしておく。
もちろん外側の濡れた所は素早く拭き取っている。
そしてギード茶をティーストレーナーに入れて、ティーカップにお湯を入れ、茶葉の入ったティーストレーナーをお湯に沈める。
「こうやってティーストレーナーを入れてからの抽出時間は、普通の半分の時間でいいの」
そして紅茶が完成した。
「まぁ砂糖やミルクは好みがあるから、いまはこれで飲んでみて」
パーラーメイド達は恐る恐る紅茶を口にした。
「「「こ、これは!」」」
「ね、全然違うでしょ」
「はい、全く違って、物凄く美味しいです」
「これなら隣国出身の王妃陛下も満足するわよ。ギード茶は取引が始まったばかりだからこのことを知っている人は少ないわ!他のメイド達にも教えて上げてね。エスクリダ家のメイドは他の貴族家などとは格が違うところを見せつけてあげましょう」
「「「はい!」」」
「えっと、それからこれも」と紙をパーラーメイドに渡した。
「これ、ちょっとした事なのだけど、これだけでずいぶんとお茶会の印象が変わるわよ」
その紙には、ローズがお茶会で気づいたこと。テーブルと椅子の配置、花瓶の位置、テーブルクロスの貼り方など、細かい注意点が書かれていた。
「特にテーブルが少し高いわね。3センチくらい低くしてね」
パーラーメイド達はそこに書かれていたことで、本当に変わるのか疑問であった。
しかし、全く違うものとなって招待客から絶賛される事になるのは、少し後の話である。
「また分からない事や、相談にはいつでも乗るから、遠慮なく言ってね」
「「「ありがとうございました!」」」
ローズにとっては、ご令嬢との社交より、メイド間交流の方が大切なのであった。
何やってんだ!?!
思わず突っ込んでしまったが、ローズはお茶会でもメイドであった。
王派閥、貴族派、中立派の3つだ。
勢力的には4:4:2。
王派閥と貴族派は目に見えて対立しているわけではないが、明らかに貴族派は王家に非協力的である。
この大きな2つの勢力が拮抗しているため、法改正案にしろ開発事業案にしろ議題がなかなか進まない。
この対立の裏にはとても下らない理由がある。
この国には3つ公爵家がある。
王派閥筆頭のドリアドア公爵家、貴族派筆頭のバーグ公爵家、中立派筆頭のヴァイス公爵家。
このドリアドア公爵家とバーグ公爵家の仲が微妙に悪いのである。
それには、前国王が関係している。
前国王は、隣国のオルレア王国との同盟強化のため、隣国の王女を娶ったが、どういうわけか当時の筆頭公爵家の令嬢を正妃とし、隣国の王女を側妃としたのである。
これに激怒した隣国のオルレア王国と、戦争になりかけたのである。
やむを得ず、隣国の王女の家系の者を本国から数名呼び寄せ、要職に就かせたり、多額の賠償金や条件の悪い取引などでなんとか緊張状態は緩和されたが、隣国との関係は最悪であった。
さらに、その多額の賠償金によって王家は弱体化し、当時の筆頭公爵家が事実上の実権を握っていたのである。
つまり、その当時の筆頭公爵家の家系がドリアドア公爵家で、隣国の王女の家系がバーグ公爵家なのである。
ちなみにヴァイス公爵家は先々代の家系なので、この争いには関係はないが、権力もない。
さらに、現王家の正妃は関係改善のため、隣国の王女なのである。
従って、筆頭王派閥のドリアドア公爵家とも仲がいいとはいえない微妙な関係なのである。
つまり、王家、王派閥、貴族派共に微妙な関係であり、その中でドリアドア公爵家とバーグ公爵家が対立しているだけなのである。
それも激しく対立しているわけではなく、王家の邪魔をするための口実のようなものだ。
実に下らない。
この関係改善のため、現王太子の婚約者はドリアドア公爵家のユリーナ嬢である。
王家と王派閥の関係強化のためである。
ちなみにローズのシュナイダー侯爵家は中立派である。
そして、中立派にはもうひとつの侯爵家がある。エスクリダ侯爵家である。
この2つの侯爵家にはある共通点がある。
領地が狭く、目立った産業がない、という事だ。
シュナイダー侯爵領には南部に小さな穀倉地帯。エスクリダ侯爵領には東部に小さな鉄鉱山があるだけだ。
それでもシュナイダー侯爵家は筆頭でエスクリダ侯爵家も上位侯爵家である。
それは、大陸中に手を伸ばしたシュナイダー商会の税収入が物凄いからである。
領地からの収入が少ないために商会を立ち上げた、とも言える。
エスクリダ侯爵はシュナイダー商会の副会長。
このシュナイダー侯爵家とエスクリダ侯爵家だけで、王国の全税収入の約8%にもなるのだ。
そういった事情により、数ある侯爵家の中でも、この2家はとても仲がいいのである。
◆
ふんふん♪
今日はご機嫌なリーナ。
何故なら今日はエスクリダ侯爵家のミランダ嬢のお茶会に招かれているからである。
久しぶりのローズお嬢様モードなのである。
テキパキとお嬢様を飾り付ける。もちろんリーナはニコニコとした満面の笑みである。
対象的にローズはご不満のようだ。朝からご機嫌斜めなのだ。
ローズは絶世の美人というわけではないが、王族も含めた高位貴族の中でもかなり上位に入る美女である。
まだ少し幼なさはあるものの、高位貴族である気品も備えている。
ドレスやアクセサリーを身に纏い、程よくメイクアップされたローズは社交界でも注目を集める容姿である。
間違ってもメイドのような事をする、または出来るとは想像をもする事は出来ないであろう。
リーナのレディースメイドの本領発揮である。
不正をしたアーネル元子爵家の次女で、ローズの2つ下、当時8歳。現在14歳
父は犯罪者、姉は既に結婚し、母は実家から出てこない。後を継いだ長男は借金で余裕がない。
その時にローズに引き取られたのである。
孤児院しかないと思っていた所だったので、リーナはローズにとても感謝しているのである。
のほほんとした雰囲気のリーナだが、ローズと一緒にマナーや勉強を一緒にしているので学業もメイドとしても優秀なのである。
もし、貴族学園に入園しても、現在でも上位となるだろう。メイドとしても他の高位貴族家に仕えるメイドより優秀なのである。
ある意味スーパーメイドキャロルの弟子のようなものだ。
「は~い、できましたよ」
「ありがとう」
ローズを完璧な令嬢に仕上げて大満足のリーナだった。
「ローズいらっしゃい」
「お招きありがとう、ミランダ」
今日はミランダのエスクリダ侯爵領から、伯爵令嬢と数名の子爵、男爵令嬢も招待されていた。
「皆さん、こちらシュナイダー侯爵家のローズ、私のお友達なの、よろしくね」
「よろしくおねがいします」
「「「「よろしくおねがいします」」」」
ローズはミランダとは小さい頃からの幼馴染で、唯一の友人であり、親友でもある。
今日ははじめましての方が多い。
ローズはメイドなので、あまり社交には興味ないのである。
それを知っているミランダの配慮なのではあるのだが...
挨拶もそこそこに、お茶会が始まった。
「あら、このお茶...」
「流石ローズね。分かった?」
「ええ、隣国オルレア産のギード茶かしら、ミランダ」
「正解!貴女やっぱり凄いわねぇ」
「この淹れ方...やはりね...」
「え、ローズ?何か言った?」
「ううん、何でもないわ」
ローズは少し考えてから席を立った。
「ミランダ、ごめん、ちょっとお花を摘みに」
「分かったわ」
と、トイレに行くふりをして、エスクリダ家のパーラーメイドのところへ。
「こんにちは」
「こ、これはローズお嬢様!何か粗相でもしましたでしょうか?」
「いや、違うのよ」
そして始まるお茶の淹れ方講座。
「あのね、隣国ギード茶は茶葉の発酵度合いがきつくて、淹れ方にコツがいるのよ」
そういって実際に紅茶を淹れる。
「まず、ティーカップは十分に温める事。できるだけ熱いお湯を用意してね」
慣れた手付きでティーカップを温め、お湯を切ってから冷めないように蓋をしておく。
もちろん外側の濡れた所は素早く拭き取っている。
そしてギード茶をティーストレーナーに入れて、ティーカップにお湯を入れ、茶葉の入ったティーストレーナーをお湯に沈める。
「こうやってティーストレーナーを入れてからの抽出時間は、普通の半分の時間でいいの」
そして紅茶が完成した。
「まぁ砂糖やミルクは好みがあるから、いまはこれで飲んでみて」
パーラーメイド達は恐る恐る紅茶を口にした。
「「「こ、これは!」」」
「ね、全然違うでしょ」
「はい、全く違って、物凄く美味しいです」
「これなら隣国出身の王妃陛下も満足するわよ。ギード茶は取引が始まったばかりだからこのことを知っている人は少ないわ!他のメイド達にも教えて上げてね。エスクリダ家のメイドは他の貴族家などとは格が違うところを見せつけてあげましょう」
「「「はい!」」」
「えっと、それからこれも」と紙をパーラーメイドに渡した。
「これ、ちょっとした事なのだけど、これだけでずいぶんとお茶会の印象が変わるわよ」
その紙には、ローズがお茶会で気づいたこと。テーブルと椅子の配置、花瓶の位置、テーブルクロスの貼り方など、細かい注意点が書かれていた。
「特にテーブルが少し高いわね。3センチくらい低くしてね」
パーラーメイド達はそこに書かれていたことで、本当に変わるのか疑問であった。
しかし、全く違うものとなって招待客から絶賛される事になるのは、少し後の話である。
「また分からない事や、相談にはいつでも乗るから、遠慮なく言ってね」
「「「ありがとうございました!」」」
ローズにとっては、ご令嬢との社交より、メイド間交流の方が大切なのであった。
何やってんだ!?!
思わず突っ込んでしまったが、ローズはお茶会でもメイドであった。
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