メイド侯爵令嬢

みこと

文字の大きさ
上 下
2 / 14

2 メイド侯爵令嬢の一日

しおりを挟む
 ローズは15歳のデビュタントを終え、現在16歳。
 2歳上の姉が居て次女である。(姉には婿養子となる婚約者が居る)

 この国の貴族子女は15歳から3年間、貴族学園に通うのが一般的である。
 しかし、ローズはデビュタント前、既にマナーも含め全科目を履修済なのである。
 それも全て最高の「秀」評価。中でも外国語は高位貴族なら2ヶ国は必須で3ヶ国出来れば「秀」評価となるが、ローズは5ヶ国をマスターしている。
(実際には更に古代語も出来るのだが、そのようなものが必要なのは王宮の考古学者くらいなのである)
 元々ローズ自体も優秀なのだが、彼女はスーパーメイド、キャロルの転生者なのである。
 大学生が小学生レベルのマナーや知識を勉強しているようなものなのだ。

 学園は勉学だけではない。との意見も出たが、筆頭侯爵家であり、シュナイダー商会長の娘でもあるので、お近づきになりたい者。良からぬ事を考える者。などが多数現れて煩わしいだけである。また、敵も多い。
 ローズの実力については家庭教師達に守秘義務を徹底させているので、知るものは非常に少なく、幸い王家にも知られていない。(王子には既に婚約者が居るのだが...)
 なので、そのような所に態々行くこともない。との結論が出て、結局学園には通わない事となった。

 デビュタントの時...

「ローズは何がしたい?」
「メイド」
「「「やっぱり」」」

 という事で現在に至る。


 ローズの一日としては...

 ローズは早朝のハウスメイドの仕事を終え、ローズのレディースメイド(お嬢様担当メイド)であるリーナに起こされ、またメイドの格好に着替たあと、迷わずメイドミーティングに参加する。
 リーナが朝、ローズを起こし、身支度をするのに拘るのは、ローズがメイドをしてしまうので、普段はレディースメイドとしての自分の出番がこれしかないからである。その後のリーナはハウスメイドをしている。
(一般的にメイドと呼ばれているのがこのハウスメイドである)

 メイド長より本日のスケジュール、担当、注意点などが説明された。

「何か問題点はあるかしら?」メイド長が質問する。
「客室担当が足りません」

 客室担当とは貴賓室や客室などを維持管理するメイドで、一般的にはチェインバーメイドと呼ばれる専門職である。そういった部屋には高価な物(アンティークな置物や芸術品、絵画など)があるため、メイドなら誰でもいいというわけではない。

「では、お嬢...ローズ、ヘルプをお願い」
「分かりました」

 ローズはメイドの時は「お嬢様呼び、敬語禁止令」を出しているのである。
 なんとも使用人からすればいい迷惑である。
 そして、ローズは全てのメイド(専門職含む)が可能なので、どこでもヘルプができるのである。

「それでは解散」

 メイド長の号令で、みんなが動き出した。

 ローズはそのままダイニングルームに向う。
 侯爵家家族の朝食である。

「お父様、お母様、お姉様、おはよう御座います」
「「「おはよう、ローズ」」」

 そして、ローズも朝食のテーブルに...つかず、迷わず控えているメイドの横に立つのであった。
 もちろんメイドとして、紅茶などを淹れたり朝食の補助をするためだ。

 最初の頃は難色を示した家族だったが、現在は諦めている。

 ちなみに紅茶などを淹れるのは、スティルルームメイドという専門職があり、これはお菓子も担当し、そういったものが保管された専用の部屋があり、その維持管理もし、パティシエも居る場合もあるが、シュナイダー侯爵家ではせいぜい茶葉の管理くらいである。

 しかし、紅茶などを淹れる、というのも誰でもいいというわけではない。
 美味しいお茶会を淹れるのも、難しい作業なのだ。
 侯爵家では、お客様の対応をするパーラーメイドという専門職が兼任する。
 ちなみに、侯爵家でお茶会などをする場合も、このパーラーメイドが担当をする。

「ローズ、今日は何をするのだ?」
「客室担当のヘルプです、お父様」
「そうか」

 なんともまあ寂しい家族の会話である。


 朝食終了後、シュナイダー侯爵と姉は執務室(姉は女侯爵となるため、侯爵の補佐である)夫人は自室へと戻った後、ローズは他のメイド達と食器などを片付け、自分も朝食となるのだ。もちろん他のメイド達と共に。

 その後、それぞれ役割の場所へと向う。


 昼食は、タイミング的に様々なので、その時々、その場所で。


 ディナーもメイドをするというローズの意見は、家族の大反対(涙目)により却下され、ディナーだけは家族と一緒にとる事となっている。

 その後、再びメイドミーティングで本日の報告と統括を終えた後、就寝まで自由となる。


 これが、おおよそのメイド侯爵令嬢ローズの一日である。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

記憶喪失となった転生少女は神から貰った『料理道』で異世界ライフを満喫したい

犬社護
ファンタジー
11歳・小学5年生の唯は交通事故に遭い、気がついたら何処かの部屋にいて、目の前には黒留袖を着た女性-鈴がいた。ここが死後の世界と知りショックを受けるものの、現世に未練があることを訴えると、鈴から異世界へ転生することを薦められる。理由を知った唯は転生を承諾するも、手続き中に『記憶の覚醒が11歳の誕生日、その後すぐにとある事件に巻き込まれ、数日中に死亡する』という事実が発覚する。 異世界の神も気の毒に思い、死なないルートを探すも、事件後の覚醒となってしまい、その影響で記憶喪失、取得スキルと魔法の喪失、ステータス能力値がほぼゼロ、覚醒場所は樹海の中という最底辺からのスタート。これに同情した鈴と神は、唯に統括型スキル【料理道[極み]】と善行ポイントを与え、異世界へと送り出す。 持ち前の明るく前向きな性格の唯は、このスキルでフェンリルを救ったことをキッカケに、様々な人々と出会っていくが、皆は彼女の料理だけでなく、調理時のスキルの使い方に驚くばかり。この料理道で皆を振り回していくものの、次第に愛される存在になっていく。 これは、ちょっぴり恋に鈍感で天然な唯と、もふもふ従魔や仲間たちとの異世界のんびり物語。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

処理中です...