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シーン27 歩道橋
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咲良 「お姉ちゃん、ごめんね、私、もう、出来ないかもしれない。」
*背後から、ケイトが息を切らして走って来る。顔に絆創膏が貼ってある。
ケイト 「はあ、足早いねー。やっと追いついた。」
咲良 「・・・。」
ケイト 「どうしたの?仕事中じゃないの?」
咲良 「・・・。」
ケイト 「え?無視? 無視ですか?」
ケイト 「木ノ下さーん!!!木ノ下咲良さーん!!」
咲良 「え?え?」
ケイト 「ちょっと大丈夫!?昼間の歩道橋で物思いにふけるとか、だいぶ凹んでるとお見受けしたけど。」
咲良 「あなたは・・・あ!!! あの時の!!!」
ケイト 「そう、化粧してもらった。動画のお陰で自分でもある程度は出来るようになったわよ。」
咲良 「でも、どうして、ここに?」
ケイト 「今日は大事な日だから、また木ノ下さんに、お化粧してもらおうと思ったんだけど・・。
さっき、百貨店飛び出す時に何かに当たらなかった?」
咲良 「ええ、どうだろう。」
ケイト 「俺だよ!! 俺に当たったんだよ! そして、転んで顔に怪我しました。」
咲良 「え、ええ!!すみません!!もう、私、やらかしてばかりで・・いっそ死にます!」
ケイト 「違う違う違う!! どさくさに紛れて何をしようとしてんの!!
かすり傷、こんなのかすり傷だから!」
咲良 「でもーーーー。(泣きだす。)」
ケイト 「情緒!! 情緒が不安定過ぎる!!!・・・何があったわけ?言ってごらんなさいよ、俺に。
ほら、逆に言いやすいでしょ、関係ない俺にだったら。」
咲良 「カクカクシカジカ。」
ケイト 「良い子ね。8文字で全て伝えるなんて。
へえ、そんな事があったの。でも、木ノ下さんはやってないって事だよね。」
*咲良、うなづく。
ケイト 「自分のせいじゃないなら、やってないって言えばいいよ。」
咲良 「それが出来たら、」
ケイト 「これが案外難しいよね。」
咲良 「え?」
ケイト 「わかんのよ、俺には。実はさ、俺、顔に自信がなくてね。」
咲良 「そんな綺麗なのに?」
ケイト 「ありがとう。でも、なんて言うのか、素顔を見せるのが怖いっていうか、
人と目を合わせるのが怖いっていうか。
うちの家異常だったから。自分を変えたかったんだけど、無理で。
で、昔、化粧した事あるのよ。これなら、違う自分にってね。
そしたら、親父には一晩中けちょんけちょんに怒られるわ、
兄貴には気持ちがられて罵声を浴びせ続けられるわ、犬は吠えまくるわで。
トラウマよ、トラウマ。」
咲良 「酷い。」
ケイト 「それで海外へ逃げたわけ。で、久しぶりに日本に帰ってきて、家族と会おうと思って。
化粧して行ってやろうと思ってさ、
勇気振り絞って化粧品売り場に行ってみたら、何の偏見ももたずに真剣に選んでくれる
あなたと出会ったわけ。あ、言っておくけど、俺の恋愛対象は女だからね。」
咲良 「家族はどうだったんですか?」
ケイト 「気持ち悪がられた。でも、言い返してやったよ。うるさいってね!!」
咲良 「そうですか。お役に立てたなら、良かったです。美容部員になった甲斐があって(泣きだす。)」
ケイト 「ちょっとちょっと!泣かないでよ!!じゃあさ、こうしよう。
今日、俺は、俺にとってスゲー一歩を踏み出すの。
とても勇気が必要で、今でもドキドキしてる。俺、頑張るから、木ノ下さんは、その会社の人に
やってない!って言うの。
ただそれだけ。あとは、しんどくなったら、すぐ逃げなさい。どう?」
咲良 「それだけでいいんですか?」
ケイト 「それだけでいい。出来る?」
*咲良 頷く。
ケイト 「あと、その木ノ下さんがデザインした新商品、譲ってもらってもいい?」
咲良 「え?」
*町田が走り込んで来る。町田は顔に怪我をしている。
町田 「いた!!!咲良ちゃん!!」
咲良 「え?町田さん!?ってか、何で怪我してるんですか?」
ケイト 「何?彼氏?」
咲良 「上司です!」
ケイト 「あ、そう。丁度良かったわ、渡したいものがあるの。」
町田 「え?」
ケイト 「その前に、まずは絆創膏あげるわ。」
町田 「え、ああ、はい。」
SE16 転換音
*照明変化
*荻野部長が電話をしながら、走ってくる。
*町田は絆創膏と書類をケイトから受け取っている。
荻野 「出ない、なぜ、出ないんだ。町田君。」
*町田、漸く着信に気付き、電話を取る。
荻野 「あ、出た! もしもし、町田君かい?ビンゴだよ!ビンゴ!!ああ、じゃあ、後で。」
*荻野、走り去る。
SE16 転換音
*照明変化
町田 「これは・・。君は一体?」
ケイト 「弟よ。ロマンス社の社長、織田の弟。」
町田・咲良 「えーーーー!!!!」
ケイト 「さあ、俺も頑張るから、木ノ下さんも頑張るんだよ!」
町田 「何をですか?」
ケイト 「カクカクシカジカなのよ。」
町田 「咲良ちゃんにそんな過去が・・。」
ケイト 「便利、これ超便利。」
町田 「それで、やってないって言う、か。丁度いい、一緒に行こう!」
咲良 「え?」
町田 「さあ、行くよ!」
咲良 「ちょ、ちょっと!」
*町田、さくらを引っ張っていく。
ケイト 「・・・俺も頑張るから、木ノ下さんも頑張るんだよ!」
*照明変化
SE16 転換音
*背後から、ケイトが息を切らして走って来る。顔に絆創膏が貼ってある。
ケイト 「はあ、足早いねー。やっと追いついた。」
咲良 「・・・。」
ケイト 「どうしたの?仕事中じゃないの?」
咲良 「・・・。」
ケイト 「え?無視? 無視ですか?」
ケイト 「木ノ下さーん!!!木ノ下咲良さーん!!」
咲良 「え?え?」
ケイト 「ちょっと大丈夫!?昼間の歩道橋で物思いにふけるとか、だいぶ凹んでるとお見受けしたけど。」
咲良 「あなたは・・・あ!!! あの時の!!!」
ケイト 「そう、化粧してもらった。動画のお陰で自分でもある程度は出来るようになったわよ。」
咲良 「でも、どうして、ここに?」
ケイト 「今日は大事な日だから、また木ノ下さんに、お化粧してもらおうと思ったんだけど・・。
さっき、百貨店飛び出す時に何かに当たらなかった?」
咲良 「ええ、どうだろう。」
ケイト 「俺だよ!! 俺に当たったんだよ! そして、転んで顔に怪我しました。」
咲良 「え、ええ!!すみません!!もう、私、やらかしてばかりで・・いっそ死にます!」
ケイト 「違う違う違う!! どさくさに紛れて何をしようとしてんの!!
かすり傷、こんなのかすり傷だから!」
咲良 「でもーーーー。(泣きだす。)」
ケイト 「情緒!! 情緒が不安定過ぎる!!!・・・何があったわけ?言ってごらんなさいよ、俺に。
ほら、逆に言いやすいでしょ、関係ない俺にだったら。」
咲良 「カクカクシカジカ。」
ケイト 「良い子ね。8文字で全て伝えるなんて。
へえ、そんな事があったの。でも、木ノ下さんはやってないって事だよね。」
*咲良、うなづく。
ケイト 「自分のせいじゃないなら、やってないって言えばいいよ。」
咲良 「それが出来たら、」
ケイト 「これが案外難しいよね。」
咲良 「え?」
ケイト 「わかんのよ、俺には。実はさ、俺、顔に自信がなくてね。」
咲良 「そんな綺麗なのに?」
ケイト 「ありがとう。でも、なんて言うのか、素顔を見せるのが怖いっていうか、
人と目を合わせるのが怖いっていうか。
うちの家異常だったから。自分を変えたかったんだけど、無理で。
で、昔、化粧した事あるのよ。これなら、違う自分にってね。
そしたら、親父には一晩中けちょんけちょんに怒られるわ、
兄貴には気持ちがられて罵声を浴びせ続けられるわ、犬は吠えまくるわで。
トラウマよ、トラウマ。」
咲良 「酷い。」
ケイト 「それで海外へ逃げたわけ。で、久しぶりに日本に帰ってきて、家族と会おうと思って。
化粧して行ってやろうと思ってさ、
勇気振り絞って化粧品売り場に行ってみたら、何の偏見ももたずに真剣に選んでくれる
あなたと出会ったわけ。あ、言っておくけど、俺の恋愛対象は女だからね。」
咲良 「家族はどうだったんですか?」
ケイト 「気持ち悪がられた。でも、言い返してやったよ。うるさいってね!!」
咲良 「そうですか。お役に立てたなら、良かったです。美容部員になった甲斐があって(泣きだす。)」
ケイト 「ちょっとちょっと!泣かないでよ!!じゃあさ、こうしよう。
今日、俺は、俺にとってスゲー一歩を踏み出すの。
とても勇気が必要で、今でもドキドキしてる。俺、頑張るから、木ノ下さんは、その会社の人に
やってない!って言うの。
ただそれだけ。あとは、しんどくなったら、すぐ逃げなさい。どう?」
咲良 「それだけでいいんですか?」
ケイト 「それだけでいい。出来る?」
*咲良 頷く。
ケイト 「あと、その木ノ下さんがデザインした新商品、譲ってもらってもいい?」
咲良 「え?」
*町田が走り込んで来る。町田は顔に怪我をしている。
町田 「いた!!!咲良ちゃん!!」
咲良 「え?町田さん!?ってか、何で怪我してるんですか?」
ケイト 「何?彼氏?」
咲良 「上司です!」
ケイト 「あ、そう。丁度良かったわ、渡したいものがあるの。」
町田 「え?」
ケイト 「その前に、まずは絆創膏あげるわ。」
町田 「え、ああ、はい。」
SE16 転換音
*照明変化
*荻野部長が電話をしながら、走ってくる。
*町田は絆創膏と書類をケイトから受け取っている。
荻野 「出ない、なぜ、出ないんだ。町田君。」
*町田、漸く着信に気付き、電話を取る。
荻野 「あ、出た! もしもし、町田君かい?ビンゴだよ!ビンゴ!!ああ、じゃあ、後で。」
*荻野、走り去る。
SE16 転換音
*照明変化
町田 「これは・・。君は一体?」
ケイト 「弟よ。ロマンス社の社長、織田の弟。」
町田・咲良 「えーーーー!!!!」
ケイト 「さあ、俺も頑張るから、木ノ下さんも頑張るんだよ!」
町田 「何をですか?」
ケイト 「カクカクシカジカなのよ。」
町田 「咲良ちゃんにそんな過去が・・。」
ケイト 「便利、これ超便利。」
町田 「それで、やってないって言う、か。丁度いい、一緒に行こう!」
咲良 「え?」
町田 「さあ、行くよ!」
咲良 「ちょ、ちょっと!」
*町田、さくらを引っ張っていく。
ケイト 「・・・俺も頑張るから、木ノ下さんも頑張るんだよ!」
*照明変化
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