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6.
殺気
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窓も開けていないのに、カーテンが揺れた。
今までなら、そんな事が起こったら、可能な限り想像を巡らせ、それまでしていた作業をストップしていたが……
今の 昂佳にとっては、それが、ずっと待ちかねていた合図をやっと得られたかのように、瞳を輝かせた。
「師匠~!! また現れて下さったのですね~!! 待ってましたよ~!!」
昂佳の嬉々とした声に深い溜め息を漏らしながら、透明化スーツから顔を出して見せた 叶愛。
「しつこいぞ! 私は 叶愛と名乗っただろう! 私が現れた事で喜ぶな! この前は偵察だけだったが、今回は決行するのだからな!」
「決行……とは? 何をですか?」
能天気な 昂佳の様子に呆れつつ、深呼吸し少し間を置いてから、ゆっくりした口調で答えた 叶愛。
「これから、私は、天津昂佳を亡き者にする!!」
「ええ~っ!!」
叶愛の整った形状の口元から思いもよらない物騒な言葉が飛び出し、目を白黒させた。
「 昂佳、覚悟はいいか?」
「そんな~!! どうして、僕が死ななくてはならないのですか? わけ分かりません! 僕が師匠に何をしたと言うのですか?」
透明スーツで隠れている手がレーザー銃を握っているのが分かり、慌てて、ジタバタ自己弁護に取りかかった 昂佳。
「これが最期という事に免じて教えてやる事にするか。天津昂佳は、私の先祖だ」
「僕が師匠の先祖……? そんなのにわかには信じられないですが……これで、師匠が僕の前に現れたわけが納得出来ました! でも、ご先祖様は大切に扱わなくてはならないって、師匠は親から習わなかったのですか? 第一、僕がいなくなったら、師匠の御両親達も、当然、師匠自身も生まれて来ないんですよ!」
今すぐ殺される事などは全く不本意で、 昂佳は何とか叶愛を説得しようとする。
「家族なんざ糞くらえだ! 私は、この世に存在したくないのだ!」
暴言を吐いた叶愛。
「どうして? 師匠は、こんなに魅力的な緋色の瞳をしていて、 類稀な美少女なのに! 存在してなかったら、この世の男達が哀しみます~! そんなの、もったいないですよ~!」
自分を殺したい理由がそれだったと知り、耳を疑った。
「ぬけぬけと申すな! この瞳の色こそが、私にとっては大問題なんだ!」
「師匠は、こんなキラキラ輝く宝石のように……そう、ガーネットのように美しい瞳をしているのに」
叶愛の瞳にジッと見入る 昂佳。
今まで、不気味に扱われた事は多々有ったものの、こんなに間近で宝石に例えられるほど美しいなど愛でられた経験の無かった 叶愛は、 昂佳の言葉を素直には受け止められなかった。
ただし、せっかく宝石を例えにされたものの、 叶愛の存在している時代は、ガーネットの価値観が現代とは異なっていた。
「ガーネット……? そんな禍々しい石などに例えられるとは! あの血を連想すると忌み嫌われ、世の中に流通しなくなった石の事か? それは、私にとって全く嬉しい形容ではない!」
「22世紀では、ガーネットがそんな風な扱いをされているんですか? 僕が知っている限りでは、ずっと昔から、ガーネットは『勝利の石』や『信頼と愛の石』として親しまれてきた美しい宝石ですよ! 僕は1月生まれだから、誕生石がガーネットだって知って、すごく嬉しかったんです!」
「誕生石? 私も1月生まれだが……1月の誕生石は、アンモナイトだ!」
叶愛の言葉に 昂佳は吹き出さずにいられなかった。
「アンモナイトって……化石じゃないですか~! 化石がガーネットに取って変わって1月の誕生石って......? そんなの役不足ですよ~!」
22世紀の宝石事情が随分変化してそうな事に興味を持った 昂佳。
今までなら、そんな事が起こったら、可能な限り想像を巡らせ、それまでしていた作業をストップしていたが……
今の 昂佳にとっては、それが、ずっと待ちかねていた合図をやっと得られたかのように、瞳を輝かせた。
「師匠~!! また現れて下さったのですね~!! 待ってましたよ~!!」
昂佳の嬉々とした声に深い溜め息を漏らしながら、透明化スーツから顔を出して見せた 叶愛。
「しつこいぞ! 私は 叶愛と名乗っただろう! 私が現れた事で喜ぶな! この前は偵察だけだったが、今回は決行するのだからな!」
「決行……とは? 何をですか?」
能天気な 昂佳の様子に呆れつつ、深呼吸し少し間を置いてから、ゆっくりした口調で答えた 叶愛。
「これから、私は、天津昂佳を亡き者にする!!」
「ええ~っ!!」
叶愛の整った形状の口元から思いもよらない物騒な言葉が飛び出し、目を白黒させた。
「 昂佳、覚悟はいいか?」
「そんな~!! どうして、僕が死ななくてはならないのですか? わけ分かりません! 僕が師匠に何をしたと言うのですか?」
透明スーツで隠れている手がレーザー銃を握っているのが分かり、慌てて、ジタバタ自己弁護に取りかかった 昂佳。
「これが最期という事に免じて教えてやる事にするか。天津昂佳は、私の先祖だ」
「僕が師匠の先祖……? そんなのにわかには信じられないですが……これで、師匠が僕の前に現れたわけが納得出来ました! でも、ご先祖様は大切に扱わなくてはならないって、師匠は親から習わなかったのですか? 第一、僕がいなくなったら、師匠の御両親達も、当然、師匠自身も生まれて来ないんですよ!」
今すぐ殺される事などは全く不本意で、 昂佳は何とか叶愛を説得しようとする。
「家族なんざ糞くらえだ! 私は、この世に存在したくないのだ!」
暴言を吐いた叶愛。
「どうして? 師匠は、こんなに魅力的な緋色の瞳をしていて、 類稀な美少女なのに! 存在してなかったら、この世の男達が哀しみます~! そんなの、もったいないですよ~!」
自分を殺したい理由がそれだったと知り、耳を疑った。
「ぬけぬけと申すな! この瞳の色こそが、私にとっては大問題なんだ!」
「師匠は、こんなキラキラ輝く宝石のように……そう、ガーネットのように美しい瞳をしているのに」
叶愛の瞳にジッと見入る 昂佳。
今まで、不気味に扱われた事は多々有ったものの、こんなに間近で宝石に例えられるほど美しいなど愛でられた経験の無かった 叶愛は、 昂佳の言葉を素直には受け止められなかった。
ただし、せっかく宝石を例えにされたものの、 叶愛の存在している時代は、ガーネットの価値観が現代とは異なっていた。
「ガーネット……? そんな禍々しい石などに例えられるとは! あの血を連想すると忌み嫌われ、世の中に流通しなくなった石の事か? それは、私にとって全く嬉しい形容ではない!」
「22世紀では、ガーネットがそんな風な扱いをされているんですか? 僕が知っている限りでは、ずっと昔から、ガーネットは『勝利の石』や『信頼と愛の石』として親しまれてきた美しい宝石ですよ! 僕は1月生まれだから、誕生石がガーネットだって知って、すごく嬉しかったんです!」
「誕生石? 私も1月生まれだが……1月の誕生石は、アンモナイトだ!」
叶愛の言葉に 昂佳は吹き出さずにいられなかった。
「アンモナイトって……化石じゃないですか~! 化石がガーネットに取って変わって1月の誕生石って......? そんなの役不足ですよ~!」
22世紀の宝石事情が随分変化してそうな事に興味を持った 昂佳。
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