緋色の瞳をした少女との約束

ゆりえる

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消えた未来人

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「あ~!! 未来人が、僕の前に現れた!! しかも、これほどまでに見目麗しい美少女が……あ~、我が師匠!!」

「だから、私は、師匠でも何でもなくて、ただの未来人……あ~、なんかもう、説明するの面倒臭くなった! 今すぐ、記憶を奪った方が手っ取り早い!」

 そう言いながら、 叶愛のあんは左胸のポケットから、手の平大の三角錐型をした部分的記憶喪失装置を取り出した。

「せっかく、こんなまたとない体験しているのに、そうはさせるか!」

  昂佳こうかは 叶愛のあんの手に握られていた三角錐の物体を力づくで奪い取った。
 
「これを、師匠の方に向けて発射したなら、もしかして、師匠の記憶が無くなるのかな~?」

「図々しい! これを未開人なんかに、扱えるか!」

  叶愛のあんは再び消却用のレーザー銃を出し、 昂佳こうかに奪い取られた三角錐の部分的記憶喪失装置を狙い撃ちした。

「あ~あ、モッタイナイな~! でもこれで、僕の大事な大事な記憶は、いつまでも健在です、師匠!」

 ドヤ顔している 昂佳こうかに対し、イラつきを隠せない 叶愛のあん

「またいつか出向いて、寝ているうちに、照射してやる!」

「えっ、師匠、また来てくれるんですね! いつだって、僕は大歓迎ですよ~!」

  叶愛のあんの言葉にいちいち反応し、嬉しがっている様子の 昂佳こうかに呆気に取られ、忘れるところだったのを思い出した。

「師匠じゃない! いいか、私の事は他言無用だからな!! もしも、破ろうものなら、破った瞬間、消却ビームを浴びせて亡き者にする!」

  叶愛のあんは端末に 昂佳こうかの姿を写し、モニター登録画面にセットした。

「そのタブレットは、現代のよりずっと高機能そうですね~、師匠!」

「まあ、さっき消却したこの時代の端末よりは、かなり優れ物には違いない! それから、私は、師匠などという呼び名ではなく、叶愛《のあん》というれっきとした名前が有る!」

「 叶愛のあんちゃんっていうのか~! 名前まで、何だか美少女っぽいな~! 僕は、天津あまつ昂佳こうか!  こうって呼ばれる事が多いかな」

 未知の武器を沢山所有している相手を前に、親しみを込めて満面の笑みを向けている 昂佳こうか

「 昂佳こうかの言動は、この端末に全て記録されているからな! 友達や家族にバラそうものなら、即時に私の知るところとなる! 遠隔地とて容赦しないぞ! 私は、いつでもタイムトラベルでも瞬間移動も出来る!  昂佳こうかは、私からは逃げ切れないのだ! 覚悟しておくように!」

「瞬間移動も出来るんですか~! あっ、そうか、タイムトラベラーだし、時間も空間も自由自在なんですね~! でしたら、師匠、僕にお供させて下さいよ~! 僕は、この世界、あまり楽しめないし、毎日テスト地獄で、もうコリゴリなんです~!」

「うるさい! 情けない泣き言など言わず、励め!」

 言うが早いか、 叶愛のあんは瞬く間に消えた。

「あれっ、 叶愛のあんちゃんがいない! 消えた? 師匠、出て来て下さいよ~!」

  叶愛のあんが透明化したと思い、また手をバタバタさせて、気配を探ろうとしていた 昂佳こうか
 
 先刻からずっと、 昂佳こうかの部屋が騒々しいと思い、ソッと近付いていた母と妹の 風美ふうみがドアを開けた。

「昂、バタバタ暴れている音と独り言が、さっきからずっと聞こえて来てるんだけど……」

「中二病臭くてヤバすぎだって、兄貴」

 2人が部屋を見回そうとして、乗り込んで来ようとしているのを力づくで押し出した 昂佳こうか

「プライバシーの侵害! 人の部屋を勝手に覗くなよ~!」

 母や妹に、 叶愛のあんが見付かったら一大事と思い、2人が侵入しようとするのを食い止めた。

 2人が去ったのを確認し、また手をバタバタ振りまくったところで、もう何の手応えも感じられなかった。

「我が師匠の 叶愛のあんちゃん、ホントに去ってしまっていたんだ......」

 急に寂しくなったと同時に、先刻までの出来事が実体験なのか、確信を持てなくなりそうだった昂佳《こうか》。

  昂佳こうかが、お菓子の残骸以外、何の痕跡も残っていない自分の部屋で、呆然としていた頃には、 叶愛のあんはとっくに、22世紀に戻り、自宅で何事も無かったかのように見せかけていた。
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