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未来人
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目的地をセットし、着地先がハンモックの上で、思いがけず足を取られた叶愛。
ハンモックが引っくり返り、お菓子などの置いてある足場の悪い位置に転げ落ちた。
かなり痛みを感じてはいたが、タイムトラベラーは現地人に見付かってはいけないという大鉄則が有り、声を押し殺した。
その部屋にいた昂佳は、透明化して見付からないはずの叶愛にとって予測外の行動に出始めた。
野生の勘が働いたのか? 透明人間探しに意気込み、手をバタつかせながら、部屋の隅々まで移動し出した。
それをかわすように、必死で動きまくる叶愛だったが、瞬間移動すると良い事に気付いた。
座標軸をセットするまでの時間稼ぎに、西日が強く入っている窓に下げられていたレースのカーテンを開け、目くらましをしようと試みた。
太陽は眩しく、直視しては目を傷めるという常識が、この時代以前には有った事を認識していた叶愛。
ところが、西日攻撃が、昂佳には効かなかった。
「わざと西日で眩しくさせて、目くらましさせようとしたようだけど、そんなの、僕には効かないよ! 見たらいけないと言われると、恐いもの見たさで余計に見たくなるから、太陽は小さい頃から見慣れてた。凝視して見ても、太陽が緑になったりピンクになるだけで、別に何ともないし」
22世紀の人間にとっては、当たり前の目の日光浴だが、21世紀以前までずっと禁忌だったはずだったのでは……?
自分が信じていた歴史が、目の前で覆されて驚いた叶愛。
同時に、それこそが、自身が確かめたかった事に他ならなかった。
判明できた気の緩みで、暫し呆然となり、座標軸をセットしそびれていると、次の瞬間、昂佳に左腕を取られていた。
「捕まえた~! 透明人間だ~!」
透明人間……って?
その不可解な誤解に、つい憤慨せずにいられなかった叶愛。
「なんだ! この時代にないものなんだから、少しくらい、怖がってくれたらいいものを! 大体、この眩しいはずの状態だというのに、何故に私を見付ける事が出来た?」
「わっ、ホントに透明人間なんだ! この決定的瞬間、動画撮影しなくては!」
昂佳が、スマホに手を伸ばそうとした瞬間、叶愛は膝下に隠していたレーザー銃で、スマホを瞬く間に破壊し跡形も残らなくした。
「何するんだ~! 2か月前の誕生日に、やっと買ってもらったばかりなのに!」
「やむを得ないのだ! この時代に、痕跡を残したら、私が罰せられる! 第一、私は、透明人間などではない!」
そう言って、透明化スーツの頭部だけ外した叶愛。
すぐ下に妹がいるから、毎年この時期には見慣れていた、お雛様。
そのお雛様に引けを取らないほど色白な顔に映える艶々の長い黒髪、しかも宝石のように輝く緋色の瞳をしている美少女。
首から下は透明スーツで見えず、生首が浮かんでいるようなグロテスクな状態にも関わらず、昂佳はその美しさに息を呑み見惚れ続けた。
「透明化に……撃つと跡が何も残らなくなる銃、何より二次元の世界から飛び出したかのような類稀なる美少女……僕にとって、憧れ以外の何ものでもないものが、ここに揃っている!! これはもう……、是非に、師匠と呼ばせて下さい!!」
昂佳の発言に、耳を疑った叶愛。
叶愛の行動は、22世紀の人類なら、その科学の力で、誰もが使いこなせていることだった。
だというのに、何故に、同年代くらいの少年から、自分が師匠などと呼ばれなくてはならないのか?
「ちょっと、待て! かなり勘違いしているようだが、私は、別に超能力者でも何でもない! ただ、かなり後に生まれて来ただけの存在だから!」
その言葉の意味が率直に伝わるどころか、昂佳にとっては、逆効果だった。
「って事は、未来からやって来た、未来人って事なの?」
「つまりは、そういう事だ!」
そういう事が、この時代に日常茶飯事的に起こっているわけがないはずだが、思いの外、昂佳が疑わず受け止めている様子に、安心した叶愛。
ハンモックが引っくり返り、お菓子などの置いてある足場の悪い位置に転げ落ちた。
かなり痛みを感じてはいたが、タイムトラベラーは現地人に見付かってはいけないという大鉄則が有り、声を押し殺した。
その部屋にいた昂佳は、透明化して見付からないはずの叶愛にとって予測外の行動に出始めた。
野生の勘が働いたのか? 透明人間探しに意気込み、手をバタつかせながら、部屋の隅々まで移動し出した。
それをかわすように、必死で動きまくる叶愛だったが、瞬間移動すると良い事に気付いた。
座標軸をセットするまでの時間稼ぎに、西日が強く入っている窓に下げられていたレースのカーテンを開け、目くらましをしようと試みた。
太陽は眩しく、直視しては目を傷めるという常識が、この時代以前には有った事を認識していた叶愛。
ところが、西日攻撃が、昂佳には効かなかった。
「わざと西日で眩しくさせて、目くらましさせようとしたようだけど、そんなの、僕には効かないよ! 見たらいけないと言われると、恐いもの見たさで余計に見たくなるから、太陽は小さい頃から見慣れてた。凝視して見ても、太陽が緑になったりピンクになるだけで、別に何ともないし」
22世紀の人間にとっては、当たり前の目の日光浴だが、21世紀以前までずっと禁忌だったはずだったのでは……?
自分が信じていた歴史が、目の前で覆されて驚いた叶愛。
同時に、それこそが、自身が確かめたかった事に他ならなかった。
判明できた気の緩みで、暫し呆然となり、座標軸をセットしそびれていると、次の瞬間、昂佳に左腕を取られていた。
「捕まえた~! 透明人間だ~!」
透明人間……って?
その不可解な誤解に、つい憤慨せずにいられなかった叶愛。
「なんだ! この時代にないものなんだから、少しくらい、怖がってくれたらいいものを! 大体、この眩しいはずの状態だというのに、何故に私を見付ける事が出来た?」
「わっ、ホントに透明人間なんだ! この決定的瞬間、動画撮影しなくては!」
昂佳が、スマホに手を伸ばそうとした瞬間、叶愛は膝下に隠していたレーザー銃で、スマホを瞬く間に破壊し跡形も残らなくした。
「何するんだ~! 2か月前の誕生日に、やっと買ってもらったばかりなのに!」
「やむを得ないのだ! この時代に、痕跡を残したら、私が罰せられる! 第一、私は、透明人間などではない!」
そう言って、透明化スーツの頭部だけ外した叶愛。
すぐ下に妹がいるから、毎年この時期には見慣れていた、お雛様。
そのお雛様に引けを取らないほど色白な顔に映える艶々の長い黒髪、しかも宝石のように輝く緋色の瞳をしている美少女。
首から下は透明スーツで見えず、生首が浮かんでいるようなグロテスクな状態にも関わらず、昂佳はその美しさに息を呑み見惚れ続けた。
「透明化に……撃つと跡が何も残らなくなる銃、何より二次元の世界から飛び出したかのような類稀なる美少女……僕にとって、憧れ以外の何ものでもないものが、ここに揃っている!! これはもう……、是非に、師匠と呼ばせて下さい!!」
昂佳の発言に、耳を疑った叶愛。
叶愛の行動は、22世紀の人類なら、その科学の力で、誰もが使いこなせていることだった。
だというのに、何故に、同年代くらいの少年から、自分が師匠などと呼ばれなくてはならないのか?
「ちょっと、待て! かなり勘違いしているようだが、私は、別に超能力者でも何でもない! ただ、かなり後に生まれて来ただけの存在だから!」
その言葉の意味が率直に伝わるどころか、昂佳にとっては、逆効果だった。
「って事は、未来からやって来た、未来人って事なの?」
「つまりは、そういう事だ!」
そういう事が、この時代に日常茶飯事的に起こっているわけがないはずだが、思いの外、昂佳が疑わず受け止めている様子に、安心した叶愛。
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