思いがけず、生き延びて

まだ気付かない人達に⑷

思いがけず、生き延びて

　大好きなヒマラヤブラック岩塩のお風呂にゆっくりノンビリと入って、スッキリ爽快気分！
　湯上りは、氷たっぷりのジンジャーエールにシークワーサーの果汁を入れて、いっそう爽快感に包まれた！
　テレビのニュースは、きっと不安が募りそうだから、残りの時間はパソコンを起動して、楽しそうな動画を選んで見ようとした。

　ふと、その時、いつもは目に入らないのに、高校の卒業アルバムが目に止まった。
　動画も良いけど、せっかくだから、今日は、いつもと違う時間を過ごすのも良いかも知れない。
　
　卒業アルバムのページをめくると、3年生全員と教員達の写真の次のページは、私の在籍していた3年A組。
　
　懐かしい.....

　達筆な字も含めて、その頃、大好きだった、生徒会の書記の中原君。
　今頃、何しているんだろう？
　井谷君みたいに家庭持っていて、家族と終わりの時を迎えようとしているのかな？

　所帯持ちといえば、私の1番の親友だった、岸沼理佳！
　彼女は、まだ地元にいて、肝っ玉母さんみたいになっているのかな？
　何だか、理佳の声が聴きたくなった。

　何年ぶりだろう？
　今、電話してもいいかな？

　2コールで携帯に出た。

「理佳、今、電話していて大丈夫？」

　年賀状では、わんぱくそうな2人の未就学児の母になっているから、今、19時くらい、ちょうど忙しい時間だったかも知れない。
　でも、もう少ししたら、寝かし付けの時間かも知れないし、迷惑そうだし。
　
「早苗、懐かしい～！何年ぶりなのかな？いきなり、どうしたの？」

　えっ、その反応って？
　もしかして、理佳、知らない？

「ねっ、理佳って、テレビとか見ない人？ネットとかは？」

「今、うちの人は、出張中だし。そんなの見ている暇無い、パートから戻って幼稚園に迎えに行ったが最後、毎日、怒涛の忙しさだから！」

　だったら、知らなくても無理は無い。
　私は、今、理佳に知らせるべき？
　知ってしまうと余計な心配事が増えて、やる事が手に付かなくなるかも知れない。
　
　でも、やる事って、明日、今までの地球は無いとしたら、それは必要かどうか？
　それは、理佳自身が決めるしか無いから、伝えよう。
　ご主人も離れているそうだから、今できる、最善の事をして欲しい！

「理佳、忙しいところ悪いけど、落ち着いて聞いてね」

「落ち着くも何も......で、何の話？」

　忙しない様子ながらも、耳を傾ける理佳。

「実はね、信じられないかも知れないけど、地球人はあと6時間で全滅するの」

　ためらいがちに話すと、理佳は爆笑した。

「何よ、それ、ドッキリ番組みたい！どうしちゃったの、早苗？昔から、夢見がちなところがあったけど、いきなり電話して来て、そんな妄想押し付けるとかって、マジ無いわ！」

「理佳の気持ち分かるけど、本当なの。これは、決定事項みたい。後6時間しかないから、その6時間を大切に過ごして欲しいの！」

　信じてもらえそうにないけど、それでも、私は伝えるしかない！