カナリアン彼女と僕の二次元的時間

第4章

冬温Ⅱ

「何か他に、ご用はございますか？」

「いや、そろそろ、涼夏すずかが目覚める頃だから、そちらで待機していてくれ」

　涼夏すずかは、ナルコレプシー(過眠症)でもあり、よく食事しながらとか、会話しながらも睡魔に襲われるが、昼間は、短時間睡眠となる事が多い。
　
　外出先で、寝落ちするのを避ける為に、家にいる時には、睡魔が襲うタイミングで寝させておいてあげなくてはならない。

　この持病ゆえに、学校へ通えず、通信教育で卒業資格を取っていた。
　まあ、ナルコレプシーなどは、涼夏すずかの抱える病気の中では、まだ可愛いものなのだが......
　そのナルコレプシーですら、理解出来ずに、涼夏すずかに暴言を投げつける男達も多かった。

　それより、立葉たてはが調べてくれた、あの濡れネズミ男に関してのデータが気になった。

　今回、涼夏すずかのお眼鏡に止まった男は、どんな男なのだろう？

　学生服姿だったから、あの辺に通う高校生か。
　涼夏すずかの外観年齢より年下......
   今までの相手は、涼夏すずかの外観年齢の同い年から年上で、年下は初めてのケース。
　
　涼夏すずかは、濡れネズミ男を気に入ったようだが、それは、恋愛対象としてなのか？
　捨て猫の付属品のような感覚で、捉えているだけなのだろうか？

　　名前　草丘泉李せんり

　生年月日　2004年10月1日生まれ　
　血液型　O型
　住所　木場田町3丁目2番地　木場田荘203
　身長　170㎝
　体重　53㎏
　出生時体重　3058ｇ
　出生時身長　48㎝
　アプガースコア　9/10
　既往症　無し
　虫歯　5本(治療済み)
　足の指　ギリシア型
　視力　右1.5/左1.0
　握力　右38㎏/左35㎏
　聴力　異常無し
　靴のサイズ　25.5㎝
　特技　書道、珠算
　資格　英検3級、書道2段、珠算1級
　現在の習い事　無し
　友人　2名(クラスメートの長田、真壁)
　交際歴　皆無
　前科　無し
　好きな食べ物　唐揚げ、ピザ
　嫌いな食べ物　サザエ、ナマコ
　性格　温厚　
　趣味　マンガ、アニメ
　家族編成　父、母、弟
　健康状態　良好
　将来の夢　アニメ作家
　学校　木場田高校普通科　2年A組
　部活　アニメ研究部
　得意教科　国語
　苦手教科　数学
　欠席　0日


　立葉たては、よく短時間で、ここまで細かく調べ上げたな。
　毎度の事ながら感心せずにいられない。
　
　このデータを見た限り、あの濡れネズミ男は、そんな悪い感じはしない。
　オタク的で、軟弱そうなイメージは有るが、マイナス面は、その程度だろうか？

　いや、待てよ。
　オタクという事は......

　濡れネズミ男は、二次元の存在であるマンガやアニメに出て来る女の子が大好きという事だ。

　あの平面的で、自分に対して、何の意思もさず、発声してくる事も無い架空の存在にしか興味を示していない。
　そのキャラクターをどんなに好きでも、実体化してないのだから、会話も一緒に食事も出来なければ、触る事すら出来ない。

　そんな存在に恋しているような男だとしたら......

　それはマイナスどころか、涼夏すずかにとっては、またとない、うってつけの人材ではないか！

　交際歴が無いのなら、涼夏すずかを手玉に取って、利用するような魂胆も無いだろう。
　甘い言葉で手懐けてから襲うような下心も、恋愛初心者なら、そうそう持ち合わせていないだろう。

　交際回数からいくと、涼夏すずかの方が断然先輩なのだから、まあ年齢的にも先輩だし、濡れネズミ男に主導権を握らせないでいられる。

　今まで、年下路線は未経験だったから分からなかったが、これは意外にも、運命的なほど、申し分のない相手かも知れない！
　
　もしも、涼夏すずかが次のアクションに出るつもりなら、俺には反対する理由が見当たらないのかもな。