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自分に出来る方法で
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颯天が、その場にそぐわない発言をした事で、透子は一瞬、ポカンとなった。
「どうして、そんな事を……」
「あっ、こんな時にする話題じゃないっていうのは、僕も分かってます! でも、こんな時だからこそ、伝えておきたかったんです!」
顔全体が赤く染まっているが、それをカバーしてくれる暗闇に味方されているように感じられながら、透子に訴え続けた颯天。
「宇佐田君……」
十分驚いてから、笑い出した透子。
「そんな笑わなくても、新見さん……」
「だって、こんなエイリアンが接近して緊迫している状況で、宇佐田君が、そんな話をし出したから……」
先刻までのエイリアンに対する恐怖感も薄れただけでなく、その存在さえ忘れてしまったかのように、ひたすら笑っている透子。
(透子さんの恐怖感を抑えるのには役立ったかも知れないけど……ここまで笑われてしまうと、何だか、僕は本当に、透子さんにとって眼中に無い存在なのだと、再認識させられてしまう……)
「すみません、こんな時に、そんな話をしてしまって……」
「ううん、ごめんなさい。私こそ、こんなに笑ってしまって……」
謝りながらも、まだ笑い声が収まらない透子。
エイリアン達はだんだんと自分達に近付いているように、壁を強打している音が響いて来るが、透子は、もはや気にかけていない様子。
(透子さんが、笑い上戸だって事は知っていたけど、僕の真剣な想いに対しても、こんな風に笑われてしまうのは、失恋確定のようで虚しい……)
「すごく笑ってしまったけど、本当は、嬉しかった。ありがとう、宇佐田君」
(嬉しかった……って、透子さんに言われた! でも、僕の告白のような言葉に対しての返事は、それだけ……? 透子さんの心の中には、目白さんがいるって事なのかな……? もうここまで来たら、恥も外聞も無いから、確かめてみよう!)
「あの……聞いてもいいですか? 新見さんは、今は、目白さんと、お付き合いをしているんですか?」
玉砕する覚悟で透子に尋ねた。
「えっ、目白さんと? どこから、そんな噂が流れているのかしら? 目白さんは……そうね、とても親切で頼れる隊員だけど、別にお付き合いしたいとは思った事も無いわ」
透子の言葉に安堵して、胸を撫でおろした颯天。
「それじゃあ、新見さんには、目白さんではなくて他の隊員で、誰か付き合っている人とかいるんですか?」
透子が一緒にいられて安心出来るような相手は、自分ではなく誰なのかを知りたかった颯天。
「いいえ、付き合っている隊員はいないわ」
エイリアン達の壁を叩く音が迫っている最中だったが、その透子の言葉をハッキリと聴き取れた颯天の心は舞い上がった。
(透子さんと付き合っている隊員はいない!! 今、そうハッキリと言っていた! 聞き間違えではない! という事は、まだ僕にだって、チャンスが有るって事なんだ!)
「付き合っていなくても、誰か、好きな隊員とかいるんですか?」
一応、そこも確認しておきたかった颯天。
「……いない事は無いけれど。でも、ほら、私の状況って、堕ちて行く瀬戸際って感じで、それどころではないし……」
(やっぱり……透子さんには、好きな人はいるんだ! でも、所属替えをさせられてしまう状況だからな。生真面目な性格の透子さんだから、中途半端な状況での荒木さんとの結婚も断ったし、そんな感じで、超sup遺伝子が覚醒して活躍出来るようになるまでは、恋愛なんていうのは、二の次と思っているのかも知れない! よ~し、僕だって、その頃までに、能力を覚醒させて、透子さんと肩を並べても恥ずかしくない人間にならなくては!)
颯天は、透子と歩む未来を描き、ますます闘志を燃やした。
「そうですか、分かります! やっぱり、隊員として活躍出来るまでは、恋愛よりも任務優先ですよね!」
透子の意見に大賛成した颯天。
「そう思っていたのだけど……今までにないほどの強敵のエイリアン達と 対峙して、今更だけど、後悔を覚えているわ……」
「後悔ですか……?」
「だって、こんな苦境に置かれているのよ、私達……エイリアン達に、今にも殺されようとしているのだとしたら、へんに片意地張らずに、もっと素直な気持ちで生きていたら良かったって思っている……」
(透子さんは、誰よりもストイックだから、けっこう、感情とか抑えていたに違いない! だけど、こんな今、殺されるかも知れないって状況に 晒されたら、今まで抑えていた事とかについて、後悔してしまう気持ちも分かる気がする……それにしても、透子さんが、そうやって気持ちを押し殺して来た相手って、一体誰なんだろう……? 例えば、僕とかだったら、透子さん以上に未熟者過ぎて、とても恥ずかしくて公表なんか出来たもんじゃないから……あっ、そうなのかな……? もしかして、その相手が、僕という可能性も有るのかな……?)
つい、自分の都合の良いように憶測が進んでゆく颯天。
「どうして、そんな事を……」
「あっ、こんな時にする話題じゃないっていうのは、僕も分かってます! でも、こんな時だからこそ、伝えておきたかったんです!」
顔全体が赤く染まっているが、それをカバーしてくれる暗闇に味方されているように感じられながら、透子に訴え続けた颯天。
「宇佐田君……」
十分驚いてから、笑い出した透子。
「そんな笑わなくても、新見さん……」
「だって、こんなエイリアンが接近して緊迫している状況で、宇佐田君が、そんな話をし出したから……」
先刻までのエイリアンに対する恐怖感も薄れただけでなく、その存在さえ忘れてしまったかのように、ひたすら笑っている透子。
(透子さんの恐怖感を抑えるのには役立ったかも知れないけど……ここまで笑われてしまうと、何だか、僕は本当に、透子さんにとって眼中に無い存在なのだと、再認識させられてしまう……)
「すみません、こんな時に、そんな話をしてしまって……」
「ううん、ごめんなさい。私こそ、こんなに笑ってしまって……」
謝りながらも、まだ笑い声が収まらない透子。
エイリアン達はだんだんと自分達に近付いているように、壁を強打している音が響いて来るが、透子は、もはや気にかけていない様子。
(透子さんが、笑い上戸だって事は知っていたけど、僕の真剣な想いに対しても、こんな風に笑われてしまうのは、失恋確定のようで虚しい……)
「すごく笑ってしまったけど、本当は、嬉しかった。ありがとう、宇佐田君」
(嬉しかった……って、透子さんに言われた! でも、僕の告白のような言葉に対しての返事は、それだけ……? 透子さんの心の中には、目白さんがいるって事なのかな……? もうここまで来たら、恥も外聞も無いから、確かめてみよう!)
「あの……聞いてもいいですか? 新見さんは、今は、目白さんと、お付き合いをしているんですか?」
玉砕する覚悟で透子に尋ねた。
「えっ、目白さんと? どこから、そんな噂が流れているのかしら? 目白さんは……そうね、とても親切で頼れる隊員だけど、別にお付き合いしたいとは思った事も無いわ」
透子の言葉に安堵して、胸を撫でおろした颯天。
「それじゃあ、新見さんには、目白さんではなくて他の隊員で、誰か付き合っている人とかいるんですか?」
透子が一緒にいられて安心出来るような相手は、自分ではなく誰なのかを知りたかった颯天。
「いいえ、付き合っている隊員はいないわ」
エイリアン達の壁を叩く音が迫っている最中だったが、その透子の言葉をハッキリと聴き取れた颯天の心は舞い上がった。
(透子さんと付き合っている隊員はいない!! 今、そうハッキリと言っていた! 聞き間違えではない! という事は、まだ僕にだって、チャンスが有るって事なんだ!)
「付き合っていなくても、誰か、好きな隊員とかいるんですか?」
一応、そこも確認しておきたかった颯天。
「……いない事は無いけれど。でも、ほら、私の状況って、堕ちて行く瀬戸際って感じで、それどころではないし……」
(やっぱり……透子さんには、好きな人はいるんだ! でも、所属替えをさせられてしまう状況だからな。生真面目な性格の透子さんだから、中途半端な状況での荒木さんとの結婚も断ったし、そんな感じで、超sup遺伝子が覚醒して活躍出来るようになるまでは、恋愛なんていうのは、二の次と思っているのかも知れない! よ~し、僕だって、その頃までに、能力を覚醒させて、透子さんと肩を並べても恥ずかしくない人間にならなくては!)
颯天は、透子と歩む未来を描き、ますます闘志を燃やした。
「そうですか、分かります! やっぱり、隊員として活躍出来るまでは、恋愛よりも任務優先ですよね!」
透子の意見に大賛成した颯天。
「そう思っていたのだけど……今までにないほどの強敵のエイリアン達と 対峙して、今更だけど、後悔を覚えているわ……」
「後悔ですか……?」
「だって、こんな苦境に置かれているのよ、私達……エイリアン達に、今にも殺されようとしているのだとしたら、へんに片意地張らずに、もっと素直な気持ちで生きていたら良かったって思っている……」
(透子さんは、誰よりもストイックだから、けっこう、感情とか抑えていたに違いない! だけど、こんな今、殺されるかも知れないって状況に 晒されたら、今まで抑えていた事とかについて、後悔してしまう気持ちも分かる気がする……それにしても、透子さんが、そうやって気持ちを押し殺して来た相手って、一体誰なんだろう……? 例えば、僕とかだったら、透子さん以上に未熟者過ぎて、とても恥ずかしくて公表なんか出来たもんじゃないから……あっ、そうなのかな……? もしかして、その相手が、僕という可能性も有るのかな……?)
つい、自分の都合の良いように憶測が進んでゆく颯天。
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