燃えよ、想いを乗せ

ゆりえる

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敵の接近

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 その音には聞き覚えが有った。
 つい先刻、颯天はやてが、ここに避難する前に聴いていたビースト型巨大エイリアンの唸り声そのものだった。

(どうして、ここに、あのエイリアンの声が聴こえて来るんだ? 僕と透子さんは安全な領域に避難させられているはずじゃなかったのか……?)

「新見さん、このシェルターには、エイリアン達でも不可侵なはずですよね? それなのに、この声は……どういう事なんだと思いますか?」

「どうなっているの……? こんなのおかしいわ! ここは、エイリアン達が侵入する事なんて出来ないはず! どの施設よりも頑丈な設計なのに……!」

 今まで、実戦で何体ものエイリアン達の侵略を目撃していた透子ですら、戸惑わずにいられない様子でいる。

「もしかして、エイリアン達にだけ分かっている、どこかに別の侵入出来るような経路が存在していたという事ですか?」

「まさか、そんな……! 私は、危険そうな時に、ここへ何度か避難していた事が有ったけど、これまでは、そんな風にエイリアン達に侵入されるなんて事は無かったわ!」

「それなのに、ここにこうして敵が迫っているというのは、もしかして、特殊フィールド内が、最悪の事態になっている可能性も有るって事ですか……?」

 最悪の事態……

 颯天の発した言葉を耳にした透子が、瞬時に青ざめた。

 大和撫子隊も含めた地球防衛隊総動員でも、エイリアン達の侵攻を食い止められなかったという事態は、透子にとっては想像し難いものだった。
 彼らは、これまで、どんな強豪なビースト型巨大エイリアン達が侵略して来た時でも難無く撃退していた。

 今まで築かれて来た彼らへの絶対の信頼が、突如、無残に打ち砕かれて行くのを透子は受け入れる事が出来なかった。
 それは、すなわち、共に戦って来た隊員達の死を意味するものであるのかも知れないのだから……

(地球防衛隊総動員で戦って、敵に敗れた……? いやだ!! そんな事が有ってたまるものか!! 引退したとはいえ、かつて最強と言われていた黒龍である芹田先生だって、さっき現場に向かって行ったじゃないか! エイリアン達との空中戦では、天下無双と評されて来た荒木さんだって、同期の中でずば抜けた頭角を最初から現わしていた雅人だって、あの現場に加わっていたはずじゃないか! それなのに、そんな残酷な結果になるわけなんてない!! そんな事は絶対に信じない!!)

「取り敢えず、エイリアン達が接近している今、私達がここにいるのは危険だわ! 何か、すぐに対策を立てないと!」

「新見さん、隊員達は……?」

 まだ颯天は、生き残っている隊員達がエイリアン達に追い付いて、土壇場で自分達を救い出してくれる事を願っていた。

「分からない……もう、こんな状況じゃあ、彼らには何も期待出来ないかも知れないわ……」

(透子さんは……本当に、隊員達が全滅したと思っているのだろうか? そんな恐ろしい事を簡単に認めていいのだろうか? 彼らは、今までずっと、どんな敵をも凌駕して来た精鋭達だったのに……確かに、芹田先生が、今までに無いほどの難局とはこぼしていたけど……)

「だけど、今まで隊員達は、どんなエイリアンにも屈した事なんかなかったじゃないですか! それが、隊員達全員でかかっても無理だったなんて、僕には絶対に信じられないです!!」

「私だって……私だって、そんな事を認めたくなんかないわ! でも、今、エイリアン達がバリアを破って、ここに接近しているのだけは確かな事なの! 今は、取り敢えず、私達が何とか生き残る為のすべを見付けなくてはならないのよ……」

 透子の言葉の語気が、だんだんと弱まって来ているのを感じた颯天。
 
(後輩の僕の前では、何とか弱気にならないように努力しているとはいえ、透子さんも不安なんだ……そりゃあそうだよ、今までこんな事態なんか無かったのだから! だけど、僕らが何とか生き残る術……って? そんな手段なんか、最初っから無いに決まっているのに……だって、残された僕らは、この通り、龍体に変身できる術も身に付いていなくて、あまりにも非力過ぎるじゃないか! 最強の存在と言われていた隊員達が敗れたというのに、こんな軟弱過ぎる僕らで何が出来る? 出来る事なんて、ただ敵から見付からないように、隠れる事くらいしかないじゃないか!)
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