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予想外の正体
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何度となく思い出したところで、芹田のその言葉は、まだ信じるには至らないままであるが、それでも透子の心を熱く占めていた。
「慰めじゃなくて、芹田先生は、本気で言っているのだと思います! 僕もさっき、芹田先生から、思いがけず勇気をもらいました!」
今までとは少し表情の違う透子に、芹田が言った通り、何か二人の会話で透子の関心を引く事が有ったのだろうと予想した颯天。
「芹田先生が、宇佐田君にも勇気を……?」
「はい、あの時は……いきなりサイレンがなって、僕らは研修中だったので……敵が侵入して来るというのは、頭では分かっていたつもりでしたが、それが、どんなに巨大なのか想像も出来なかったです。あんなビーストのような形状の巨大エイリアンを目の当たりにして、僕は怖気づいて……その上、隊員達の龍体への変身に圧倒されて……僕のような偽物隊員なんて、ここにいる資格も無いと思ったのです! だから、僕は、この場から一刻も早く抜け出そうとして……」
負け犬のような行動に出た事を透子に晒すのは恥ずかしかったが、透子も颯天に対して弱い面を何度も見せて来たのだから、さほど抵抗は無かった。
「宇佐田君、この実践中に抜け出そうとしたの?」
透子は、驚いた表情をした後に笑い出した。
「だって、あんな風に隊員達が龍体に変身して、あんなエイリアンと戦っている姿なんて、僕には予想もつかなくて! 僕は不正をして、隊員に加わったと思っていたので、そんな僕なんかが、ここにいたって、龍体に変身できるわけが無いし、到底無理だと思ったんです!」
颯天の必死の剣幕に、笑うのを止めた透子。
「そうよね……私も以前、宇佐田君のように、初めて龍体に変身する隊員達を目にした時、愕然となったわ! それからも、自分の後輩達までがどんどん変身して、エイリアン達と互角に戦っているのを目にする度に、自己嫌悪に陥っていたわ……それでも、半ばやけになりながらも、今日まで諦めずに、いつかは自分も変身出来て、一隊員として貢献出来るものだと信じ続けていた。これからも、例えゼロに近い可能性だったとしても、努力し続けようとしていた……」
(透子さんは、いつだって、裏で沢山絶え間ない努力を続けて来た人なんだ……それは、僕にだって分かっている! 分かっているからこそ、人事異動を間近に控えた彼女が、この先の自分の事のように感じられてしまって、尚更不憫でならない……)
「新見さんが、努力を惜しまない人だっていうのは、僕はもちろん、芹田先生も分かっていますし、期待しているのだと思います! 芹田先生は、今は、あんな風な冴えないただの古典教師ですけど、ちゃんと人を見る目が有るような気がします!」
颯天が颯天なりの言い回し方で芹田を褒めていると、陰鬱そうに見えていた透子の表情がまた変化し、我慢できない様子で笑い出した。
「新見さん……?」
そんな透子のコロコロ変わる顔面に、自分の思考が付いて行けない颯天。
「ごめんなさい、つい堪え切れなくて笑い出してしまって……だって……芹田先生を冴えない古典教師って……芹田先生は、ただの古典教師なだけじゃないわ!」
「えっ……?」
(ただの古典教師なだけではない……って? どういう事なんだ……?)
「芹田先生は、とても偉大な人なのよ! 古典の授業で、龍の件について習っていたでしょう? 芹田先生は、かつて孤軍奮闘していた、向かうところ無敵の黒龍だった人なの!」
「芹田先生が、黒龍……? それは、どう贔屓目に観ようとしても信じられないです……」
透子の言葉があまりにも意外過ぎて、受け入れられない様子の颯天。
(あの芹田先生が……? 緑が現れる前に孤軍奮闘を続けていた伝説の黒龍……? ただ古典を教えているだけの存在では無かったとは……!)
「芹田先生は、古典教師という立場だけではなく、かつては黒龍だった。そして、龍体についての古典の唯一の伝承者よ。彼は、龍体化した時にチャネリングする事が出来るようになるの。それだけではなく、芹田先生は、千里眼でもあるの。その能力が宿っているのぱ、芹田先生だけなのよ」
その発言から、透子がいかに芹田を尊敬しているかが伝わって来た颯天。
(そうか……千里眼である芹田先生は、いつか僕や透子さんが覚醒する事をちゃんと分かっているんだ! だからこそ、芹田先生の言葉は深みが有るんだな……)
「芹田先生が、太鼓判を押してくれたら、不可能そうな事だって、実現出来そうな気がするの!」
透子が悲観的になりつつも、明るさを失わずにいられる理由は、芹田に認められ励まされているという事によるものなのだと、やっと理解出来た颯天。
「そんな芹田先生に認められているのですから、新見さんは、これからも前進有るのみですね!」
「ええ! 宇佐田君に先を越されないように頑張るつもりよ! 例え、職場が移動するとしても!」
張り切っている透子を見て安心した颯天。
「新見さんがいつものような感じに戻って良かったです! でも、僕だって、新見さんに負けないように頑張ります!」
見つめ合って笑った颯天と透子。
(やっぱり透子さんには、笑顔が似合っている! 芹田先生は、彼女をこうして励ませただけでもスゴイのに、伝説の黒龍だったなんて……これからは、芹田先生を見る目を変えないと!)
……とその時
耳をつんざくような音を間近に聞いた二人。
「今のは……?」
二人は背筋がゾッとなる感覚を覚えながら、お互いの目を合わせ続けた。
「慰めじゃなくて、芹田先生は、本気で言っているのだと思います! 僕もさっき、芹田先生から、思いがけず勇気をもらいました!」
今までとは少し表情の違う透子に、芹田が言った通り、何か二人の会話で透子の関心を引く事が有ったのだろうと予想した颯天。
「芹田先生が、宇佐田君にも勇気を……?」
「はい、あの時は……いきなりサイレンがなって、僕らは研修中だったので……敵が侵入して来るというのは、頭では分かっていたつもりでしたが、それが、どんなに巨大なのか想像も出来なかったです。あんなビーストのような形状の巨大エイリアンを目の当たりにして、僕は怖気づいて……その上、隊員達の龍体への変身に圧倒されて……僕のような偽物隊員なんて、ここにいる資格も無いと思ったのです! だから、僕は、この場から一刻も早く抜け出そうとして……」
負け犬のような行動に出た事を透子に晒すのは恥ずかしかったが、透子も颯天に対して弱い面を何度も見せて来たのだから、さほど抵抗は無かった。
「宇佐田君、この実践中に抜け出そうとしたの?」
透子は、驚いた表情をした後に笑い出した。
「だって、あんな風に隊員達が龍体に変身して、あんなエイリアンと戦っている姿なんて、僕には予想もつかなくて! 僕は不正をして、隊員に加わったと思っていたので、そんな僕なんかが、ここにいたって、龍体に変身できるわけが無いし、到底無理だと思ったんです!」
颯天の必死の剣幕に、笑うのを止めた透子。
「そうよね……私も以前、宇佐田君のように、初めて龍体に変身する隊員達を目にした時、愕然となったわ! それからも、自分の後輩達までがどんどん変身して、エイリアン達と互角に戦っているのを目にする度に、自己嫌悪に陥っていたわ……それでも、半ばやけになりながらも、今日まで諦めずに、いつかは自分も変身出来て、一隊員として貢献出来るものだと信じ続けていた。これからも、例えゼロに近い可能性だったとしても、努力し続けようとしていた……」
(透子さんは、いつだって、裏で沢山絶え間ない努力を続けて来た人なんだ……それは、僕にだって分かっている! 分かっているからこそ、人事異動を間近に控えた彼女が、この先の自分の事のように感じられてしまって、尚更不憫でならない……)
「新見さんが、努力を惜しまない人だっていうのは、僕はもちろん、芹田先生も分かっていますし、期待しているのだと思います! 芹田先生は、今は、あんな風な冴えないただの古典教師ですけど、ちゃんと人を見る目が有るような気がします!」
颯天が颯天なりの言い回し方で芹田を褒めていると、陰鬱そうに見えていた透子の表情がまた変化し、我慢できない様子で笑い出した。
「新見さん……?」
そんな透子のコロコロ変わる顔面に、自分の思考が付いて行けない颯天。
「ごめんなさい、つい堪え切れなくて笑い出してしまって……だって……芹田先生を冴えない古典教師って……芹田先生は、ただの古典教師なだけじゃないわ!」
「えっ……?」
(ただの古典教師なだけではない……って? どういう事なんだ……?)
「芹田先生は、とても偉大な人なのよ! 古典の授業で、龍の件について習っていたでしょう? 芹田先生は、かつて孤軍奮闘していた、向かうところ無敵の黒龍だった人なの!」
「芹田先生が、黒龍……? それは、どう贔屓目に観ようとしても信じられないです……」
透子の言葉があまりにも意外過ぎて、受け入れられない様子の颯天。
(あの芹田先生が……? 緑が現れる前に孤軍奮闘を続けていた伝説の黒龍……? ただ古典を教えているだけの存在では無かったとは……!)
「芹田先生は、古典教師という立場だけではなく、かつては黒龍だった。そして、龍体についての古典の唯一の伝承者よ。彼は、龍体化した時にチャネリングする事が出来るようになるの。それだけではなく、芹田先生は、千里眼でもあるの。その能力が宿っているのぱ、芹田先生だけなのよ」
その発言から、透子がいかに芹田を尊敬しているかが伝わって来た颯天。
(そうか……千里眼である芹田先生は、いつか僕や透子さんが覚醒する事をちゃんと分かっているんだ! だからこそ、芹田先生の言葉は深みが有るんだな……)
「芹田先生が、太鼓判を押してくれたら、不可能そうな事だって、実現出来そうな気がするの!」
透子が悲観的になりつつも、明るさを失わずにいられる理由は、芹田に認められ励まされているという事によるものなのだと、やっと理解出来た颯天。
「そんな芹田先生に認められているのですから、新見さんは、これからも前進有るのみですね!」
「ええ! 宇佐田君に先を越されないように頑張るつもりよ! 例え、職場が移動するとしても!」
張り切っている透子を見て安心した颯天。
「新見さんがいつものような感じに戻って良かったです! でも、僕だって、新見さんに負けないように頑張ります!」
見つめ合って笑った颯天と透子。
(やっぱり透子さんには、笑顔が似合っている! 芹田先生は、彼女をこうして励ませただけでもスゴイのに、伝説の黒龍だったなんて……これからは、芹田先生を見る目を変えないと!)
……とその時
耳をつんざくような音を間近に聞いた二人。
「今のは……?」
二人は背筋がゾッとなる感覚を覚えながら、お互いの目を合わせ続けた。
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