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救われる思い
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芹田の話を予想だにしていなかった 颯天は、ポカン口を開けたまま、聴かされ続ける事になった。
「まあ正確に言うと、肌質の違いというのかな? 蒙古斑の部分が、色はともかく、他の肌の部位と違い、あたかも龍の 鱗のようなザラザラ感が有るかどうかの方が大事なんだ!」
(鱗……? ザラザラ感……?)
予想もしていなかった芹田の言葉に、颯天は、思わずスーツの上から 尾骶骨の辺りを触ってみたが、当然、それでは分からなかった。
「龍に変身が出来る超sup遺伝子を持つ者達は皆、尾骶骨の辺りに、龍体の名残りを強く残して生まれて来ているのだよ。生後しばらくの間は、蒙古斑が邪魔して分かりにくいが、成長と共に消えない蒙古斑が残っている者には、もちろんその可能性が強いわけだ。だが、例え蒙古斑自体が消えてしまっても、その部位に鱗のようなザラザラした皮膚が残っている場合は、超sup遺伝子所持者なんじゃよ」
(僕の読みが外れていた……? いや、そこまで外れていないのだけど、100%の正解というわけではなかった……超sup遺伝子所持者かどうかが、蒙古斑で判定されていたわけではないなら、まだ、僕にも、僅かながらでも可能性が残っている!)
「高等部卒業前検査に、君らが受けた検査機器は、その部位の色ではなく、そういった肌質を感知する仕様になっているんだ。よって、君が即席で作ったという、尻もちの青あざに反応したわけではないのだ! 安心したまえ! 」
(僕の即席、青あざに反応したわけでは無かった……その検査機器が反応したという事は、僕にも、ここにいる皆と同じように、その鱗のような肌質がちゃんと尾骶骨部分に有るって事なんだ! 僕は、偽物なんかじゃなかった! ここに残っている資格が、最初から有ったんだ!!)
諦めきれず、卑怯な手段まで使って居続けた颯天の、後ろめたく思い続けて来た心のしこりが、瞬く間に玉砕した。
「君は未覚醒かも知れないから、覚醒済みの周りの連中に対し引け目を感じているかも知れないが、超sup遺伝子所持者として、自信を持って、ここに居続けても良いのじゃよ!」
芹田の言葉が、今までの自分の惨めさや葛藤を包み込んでくれたように暖かく感じられ、気付いた時には、颯天は 嗚咽していた。
「ありがとうございます! 芹田先生の言葉で、僕は救われました!」
「納得してくれたなら、良いのじゃ! さてと、我々も現場に戻るとするかね?」
「はい!」
泣きっ面を他の訓練生達や隊員達の前で 晒せないと思い、慌てて涙を手で拭った颯天。
芹田に誤解だった事を指摘され、今までの自身の憶測が愚かしく感じられるほど、颯天は歓喜していた。
そんな浮ついた気持ちのまま、芹田と共に現場へ戻っていたが、それまでの成り行きを思い出し、急に現実に引き戻された。
「おお~っ! 何という事じゃ! これは、 甚だ見当違いじゃった! 事態は、レベル3どころの騒ぎではない! レベル4、いや、もしかするとレベル5の可能性も有る! 君らは、すみやかに、この場から退避せねばならぬ!」
颯天に伝えながら、他の訓練生達を探して見回した芹田。
『芹田先生、宇佐田君以外の研修生達は、まとめて彼らの訓練室へと避難させました!』
(この声は……? 龍体化している大和隊の誰かの声……? どうなっているのだろう? 耳を通して聴こえたものではない……あっ、このジャンプスーツの仕様? それとも、この特殊なヘルメットに、何か受信できる装置が 施されているのだろうか?)
当然、隊員の声が聴こえているであろう芹田の表情を覗くと、先刻、颯天と話していた時の笑顔の人物と、同一とは思い難いほど険しい表情に変わっていた。
(退避と芹田先生は言っていたし、他の訓練生は既に避難済みだという事だから、今は、かなりヤバイ状況に違いない! こんな中、訓練生は避難したと言っていたけど、透子さんはどうなのだろう? 龍体化が出来ない透子さんも、ここにいては危険な存在なのでは……?)
その場に、姿の見当たらない透子が気がかりな颯天。
「まあ正確に言うと、肌質の違いというのかな? 蒙古斑の部分が、色はともかく、他の肌の部位と違い、あたかも龍の 鱗のようなザラザラ感が有るかどうかの方が大事なんだ!」
(鱗……? ザラザラ感……?)
予想もしていなかった芹田の言葉に、颯天は、思わずスーツの上から 尾骶骨の辺りを触ってみたが、当然、それでは分からなかった。
「龍に変身が出来る超sup遺伝子を持つ者達は皆、尾骶骨の辺りに、龍体の名残りを強く残して生まれて来ているのだよ。生後しばらくの間は、蒙古斑が邪魔して分かりにくいが、成長と共に消えない蒙古斑が残っている者には、もちろんその可能性が強いわけだ。だが、例え蒙古斑自体が消えてしまっても、その部位に鱗のようなザラザラした皮膚が残っている場合は、超sup遺伝子所持者なんじゃよ」
(僕の読みが外れていた……? いや、そこまで外れていないのだけど、100%の正解というわけではなかった……超sup遺伝子所持者かどうかが、蒙古斑で判定されていたわけではないなら、まだ、僕にも、僅かながらでも可能性が残っている!)
「高等部卒業前検査に、君らが受けた検査機器は、その部位の色ではなく、そういった肌質を感知する仕様になっているんだ。よって、君が即席で作ったという、尻もちの青あざに反応したわけではないのだ! 安心したまえ! 」
(僕の即席、青あざに反応したわけでは無かった……その検査機器が反応したという事は、僕にも、ここにいる皆と同じように、その鱗のような肌質がちゃんと尾骶骨部分に有るって事なんだ! 僕は、偽物なんかじゃなかった! ここに残っている資格が、最初から有ったんだ!!)
諦めきれず、卑怯な手段まで使って居続けた颯天の、後ろめたく思い続けて来た心のしこりが、瞬く間に玉砕した。
「君は未覚醒かも知れないから、覚醒済みの周りの連中に対し引け目を感じているかも知れないが、超sup遺伝子所持者として、自信を持って、ここに居続けても良いのじゃよ!」
芹田の言葉が、今までの自分の惨めさや葛藤を包み込んでくれたように暖かく感じられ、気付いた時には、颯天は 嗚咽していた。
「ありがとうございます! 芹田先生の言葉で、僕は救われました!」
「納得してくれたなら、良いのじゃ! さてと、我々も現場に戻るとするかね?」
「はい!」
泣きっ面を他の訓練生達や隊員達の前で 晒せないと思い、慌てて涙を手で拭った颯天。
芹田に誤解だった事を指摘され、今までの自身の憶測が愚かしく感じられるほど、颯天は歓喜していた。
そんな浮ついた気持ちのまま、芹田と共に現場へ戻っていたが、それまでの成り行きを思い出し、急に現実に引き戻された。
「おお~っ! 何という事じゃ! これは、 甚だ見当違いじゃった! 事態は、レベル3どころの騒ぎではない! レベル4、いや、もしかするとレベル5の可能性も有る! 君らは、すみやかに、この場から退避せねばならぬ!」
颯天に伝えながら、他の訓練生達を探して見回した芹田。
『芹田先生、宇佐田君以外の研修生達は、まとめて彼らの訓練室へと避難させました!』
(この声は……? 龍体化している大和隊の誰かの声……? どうなっているのだろう? 耳を通して聴こえたものではない……あっ、このジャンプスーツの仕様? それとも、この特殊なヘルメットに、何か受信できる装置が 施されているのだろうか?)
当然、隊員の声が聴こえているであろう芹田の表情を覗くと、先刻、颯天と話していた時の笑顔の人物と、同一とは思い難いほど険しい表情に変わっていた。
(退避と芹田先生は言っていたし、他の訓練生は既に避難済みだという事だから、今は、かなりヤバイ状況に違いない! こんな中、訓練生は避難したと言っていたけど、透子さんはどうなのだろう? 龍体化が出来ない透子さんも、ここにいては危険な存在なのでは……?)
その場に、姿の見当たらない透子が気がかりな颯天。
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