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素朴な疑問をぶつけたが……
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「おい、朝より顔がヤバいぞ、颯天! 何か有ったのか?」
トレーニングを終え、入浴後、ビールを2缶持参し、雅人の部屋を訪れた颯天の顔の表情から、色んな予想が過った雅人。
「聞いてくれよ~、雅人! 実は、なんと、さっき透子さんと遭遇したんだ!」
大袈裟な颯天の言い方に何事かと思っていたが、遭遇という言葉を耳にして、一気に気が抜けた雅人。
「なんだ~。遭遇しただけなら、昼だってもう見かけてたじゃん! そんなに仰々しく言うなよ!」
「いや、それが違うんだって! 遭遇じゃなくて、そう、信じられない事に、透子さんと会話したんだ~!」
興奮状態で、雅人に抱き付いた颯天。
「いきなり、抱き付くなよ~! コワい奴だな~!」
颯天の予期せぬ行動には警戒しながらも、現場研修から戻り、上機嫌でいる颯天の様子に、雅人も内心ホッとしていた。
「だって、僕が透子さんと面と向かって話せるなんて事、有り得ないくらいに思っていたからさ! テンション上がらずにいられないだろっ!」
「まあ、颯天の気持ちは分からないでもない。だからといって、ハグは止めて、まずは乾杯でもしよ~ぜ!」
雅人に言われて初めて、自分の取った衝動に気付かされ、慌てて雅人から離れた颯天。
「ごめんごめん、つい興奮して!」
2人はビールを開栓し乾杯した。
「それで、新見さんとは何を話したんだ? いや、その前に、まだ現場研修も無いのに、どこで会えたんだ?」
興味津々に尋ねて来た雅人。
「研修後に運動場貸し切り状態でトレーニングしていた時だよ。地球防衛隊の運動場って、マジで贅沢なほど広過ぎないか?」
「あのデカい運動場で、新見さんと会ったのか? そうか……じゃあ、やっぱり、あの噂は本当なのかもな……」
言葉を濁し気味の雅人。
「噂って、何だよ? 気になるな~」
透子に関する事なら、何でも知っておきたい颯天。
「俺もまだ真偽は分からなくて、ただ気になってたんだけどさ……新見さん、あれだけ戦闘能力も高評価されているのに、sup遺伝子未覚醒者だって事を小耳に挟んだんだよ」
「えっ? あの透子さんが、sup遺伝子未覚醒者なのか?」
透子がsup遺伝子未覚醒者という噂などは信じられない颯天だったが、もし噂が真実ならば、運動場で会っても違和感が無かった。
「彼女は、持ち前の運動神経の良さで、その分カバー出来ているらしい。運動場で鉢合わせしたなら、彼女もトレーニングしようとしていたんだろうな。かなりストイックだって評判だし、颯天と同様、人知れず、努力するタイプなのかも知れない」
「それでなのか……さっき、透子さんは、トレーニングしている僕を見て、励ましてくれたんだ。それは、透子さん自身も、僕と同じ不安を抱えているせいかも知れない……」
透子の業績は高評価だったが、sup遺伝子未覚醒者と判断した方が、先刻の透子の言動にも疑問が残らない。
(透子さんも、僕と同じで、sup遺伝子が目覚めず、今でも人目を避けるように誰も利用しない運動場で、トレーニングを続けている人だったとは……)
「片やフィアンセの荒田さんといえば、あの通りの天下無敵の逸材だからな。新見さんのようなストイックな女性だったら、きっと、自分は不釣り合いかも知れないって1人悩んでいそうだな」
雅人が透子の劣等感を察するように言った。
「僕が言うのもなんだけど、僕らから見ると悔しいくらいに、お似合いの2人に見えるのにな。まさか、透子さんの方に、そんな負い目が有るかも知れないなんて。あっ、そう言われてみれば、さっき、透子さんに遭遇した時に、瞼が腫れて赤かったし、ほっぺに涙の痕みたいなのが見えていたんだ。てっきり、荒田さんにプロポーズとかされて、嬉し涙かも知れないと思って、ヤキモチを焼きそうになっていたんだけど……」
先刻の憂いに満ちた透子の表情を思い出した颯天。
「もしも、荒田さんからプロポーズされたとしても、新見さんがsup遺伝子が目覚めて無い事も知ってしまった今は、俺が新見さんの立場だったら、そんなに軽々しくOKしないと思うな……」
「確かに、プロポーズをされたにしては、透子さんの顔の表情は、そんなに幸せ感は漂ってくるような感じはなかったから、やっぱり荒田さんとのゴールインは躊躇っているのかもな」
自分の感情はともかく、透子にとって、荒田は理想的な相手に思えていた颯天。
が、雅人からその透子の噂を聞くと、遠い世界の住人のように感じていた透子が、自分と同じ悩みを共有していると分かり、少し身近な存在に感じられるようになった。
それどころか、透子が荒田との結婚を望まなかったとすると、まだ自分にも可能性が有るようにさえ思えていた。
「で、地球防衛隊の現場訓練初日はどうだった、颯天?」
透子の事より、関心はそこにあった雅人。
「雅人の予想通り、身体測定と健康診断だったよ。あと、現場訓練のスケジュールの説明だけだった」
「初日だから、そうだろうな。それで、肝心の蒙古斑の件はクリア出来たか?」
その件に関しては共犯者であり、発案者でもある雅人の方が颯天本人よりも気にしていた。
「今回もパス出来たよ、サンキュー、雅人! それでさ、聞きたいんだけど、スケジュールに目を通してたら、『変身』という項目が書いてあって、妙にそれが気になったんだけど……雅人、あれは、何なんだ? 甲冑とかを身に付けるって事なのか?」
説明用のパンフレットにその文字を見付けるなり、気になり、ずっと憶測を巡らせていた颯天。
「ああ、『変身』か……それは確かに、初めて実戦で見た時は、俺も世界観が変わるくらいに驚いたよ! あれは、ある意味、神業的にも思える!」
いつも冷静な雅人が、形相を変えるほどの勢いで説明した。
「そうなのか! 雅人から見てそう思えるくらいなら、僕から見たら、もっと驚くんだろうな! そうか、それは楽しみだな~!」
既に雅人は目にしているらしい『変身』という現場研修を一刻も早く、見学したい思いに駆られた颯天。
「ああ、決して期待を裏切らないよ! 変身を目にした颯天の驚く顔が目に浮かびそうだ!」
ビールを飲み干し、声高に笑った雅人。
トレーニングを終え、入浴後、ビールを2缶持参し、雅人の部屋を訪れた颯天の顔の表情から、色んな予想が過った雅人。
「聞いてくれよ~、雅人! 実は、なんと、さっき透子さんと遭遇したんだ!」
大袈裟な颯天の言い方に何事かと思っていたが、遭遇という言葉を耳にして、一気に気が抜けた雅人。
「なんだ~。遭遇しただけなら、昼だってもう見かけてたじゃん! そんなに仰々しく言うなよ!」
「いや、それが違うんだって! 遭遇じゃなくて、そう、信じられない事に、透子さんと会話したんだ~!」
興奮状態で、雅人に抱き付いた颯天。
「いきなり、抱き付くなよ~! コワい奴だな~!」
颯天の予期せぬ行動には警戒しながらも、現場研修から戻り、上機嫌でいる颯天の様子に、雅人も内心ホッとしていた。
「だって、僕が透子さんと面と向かって話せるなんて事、有り得ないくらいに思っていたからさ! テンション上がらずにいられないだろっ!」
「まあ、颯天の気持ちは分からないでもない。だからといって、ハグは止めて、まずは乾杯でもしよ~ぜ!」
雅人に言われて初めて、自分の取った衝動に気付かされ、慌てて雅人から離れた颯天。
「ごめんごめん、つい興奮して!」
2人はビールを開栓し乾杯した。
「それで、新見さんとは何を話したんだ? いや、その前に、まだ現場研修も無いのに、どこで会えたんだ?」
興味津々に尋ねて来た雅人。
「研修後に運動場貸し切り状態でトレーニングしていた時だよ。地球防衛隊の運動場って、マジで贅沢なほど広過ぎないか?」
「あのデカい運動場で、新見さんと会ったのか? そうか……じゃあ、やっぱり、あの噂は本当なのかもな……」
言葉を濁し気味の雅人。
「噂って、何だよ? 気になるな~」
透子に関する事なら、何でも知っておきたい颯天。
「俺もまだ真偽は分からなくて、ただ気になってたんだけどさ……新見さん、あれだけ戦闘能力も高評価されているのに、sup遺伝子未覚醒者だって事を小耳に挟んだんだよ」
「えっ? あの透子さんが、sup遺伝子未覚醒者なのか?」
透子がsup遺伝子未覚醒者という噂などは信じられない颯天だったが、もし噂が真実ならば、運動場で会っても違和感が無かった。
「彼女は、持ち前の運動神経の良さで、その分カバー出来ているらしい。運動場で鉢合わせしたなら、彼女もトレーニングしようとしていたんだろうな。かなりストイックだって評判だし、颯天と同様、人知れず、努力するタイプなのかも知れない」
「それでなのか……さっき、透子さんは、トレーニングしている僕を見て、励ましてくれたんだ。それは、透子さん自身も、僕と同じ不安を抱えているせいかも知れない……」
透子の業績は高評価だったが、sup遺伝子未覚醒者と判断した方が、先刻の透子の言動にも疑問が残らない。
(透子さんも、僕と同じで、sup遺伝子が目覚めず、今でも人目を避けるように誰も利用しない運動場で、トレーニングを続けている人だったとは……)
「片やフィアンセの荒田さんといえば、あの通りの天下無敵の逸材だからな。新見さんのようなストイックな女性だったら、きっと、自分は不釣り合いかも知れないって1人悩んでいそうだな」
雅人が透子の劣等感を察するように言った。
「僕が言うのもなんだけど、僕らから見ると悔しいくらいに、お似合いの2人に見えるのにな。まさか、透子さんの方に、そんな負い目が有るかも知れないなんて。あっ、そう言われてみれば、さっき、透子さんに遭遇した時に、瞼が腫れて赤かったし、ほっぺに涙の痕みたいなのが見えていたんだ。てっきり、荒田さんにプロポーズとかされて、嬉し涙かも知れないと思って、ヤキモチを焼きそうになっていたんだけど……」
先刻の憂いに満ちた透子の表情を思い出した颯天。
「もしも、荒田さんからプロポーズされたとしても、新見さんがsup遺伝子が目覚めて無い事も知ってしまった今は、俺が新見さんの立場だったら、そんなに軽々しくOKしないと思うな……」
「確かに、プロポーズをされたにしては、透子さんの顔の表情は、そんなに幸せ感は漂ってくるような感じはなかったから、やっぱり荒田さんとのゴールインは躊躇っているのかもな」
自分の感情はともかく、透子にとって、荒田は理想的な相手に思えていた颯天。
が、雅人からその透子の噂を聞くと、遠い世界の住人のように感じていた透子が、自分と同じ悩みを共有していると分かり、少し身近な存在に感じられるようになった。
それどころか、透子が荒田との結婚を望まなかったとすると、まだ自分にも可能性が有るようにさえ思えていた。
「で、地球防衛隊の現場訓練初日はどうだった、颯天?」
透子の事より、関心はそこにあった雅人。
「雅人の予想通り、身体測定と健康診断だったよ。あと、現場訓練のスケジュールの説明だけだった」
「初日だから、そうだろうな。それで、肝心の蒙古斑の件はクリア出来たか?」
その件に関しては共犯者であり、発案者でもある雅人の方が颯天本人よりも気にしていた。
「今回もパス出来たよ、サンキュー、雅人! それでさ、聞きたいんだけど、スケジュールに目を通してたら、『変身』という項目が書いてあって、妙にそれが気になったんだけど……雅人、あれは、何なんだ? 甲冑とかを身に付けるって事なのか?」
説明用のパンフレットにその文字を見付けるなり、気になり、ずっと憶測を巡らせていた颯天。
「ああ、『変身』か……それは確かに、初めて実戦で見た時は、俺も世界観が変わるくらいに驚いたよ! あれは、ある意味、神業的にも思える!」
いつも冷静な雅人が、形相を変えるほどの勢いで説明した。
「そうなのか! 雅人から見てそう思えるくらいなら、僕から見たら、もっと驚くんだろうな! そうか、それは楽しみだな~!」
既に雅人は目にしているらしい『変身』という現場研修を一刻も早く、見学したい思いに駆られた颯天。
「ああ、決して期待を裏切らないよ! 変身を目にした颯天の驚く顔が目に浮かびそうだ!」
ビールを飲み干し、声高に笑った雅人。
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