燃えよ、想いを乗せ

ゆりえる

文字の大きさ
上 下
9 / 44
9.

それどころか、手当たり次第

しおりを挟む
 雅人とは毎日のように顔を合わせているというのに、2週間前からそんな事は全く颯天はやての耳には入って無かった。

「雅人、今の今まで、そんな事は一言も言ってなかったじゃん!」

「別に、そんな言うほどの事でも無いと思ってさ……わりぃ」

 寧子にプロポーズされた事など、大した事では無いように捉えている雅人。

「まあ、いいけど。それで、お前は、幕居さんに、どうやって返事したんだ?」

「そんなの決まってるじゃん! 好きな人が、他にいるからって、即、断ったよ」

 雅人の好きな人というのは、もちろん、他でもない淡島花蓮の事だろう。
 颯天も、寧子に対して、透子の事を好きな人とそうキッパリ言い切れるくらい自信が自分に有ったならと、雅人が羨ましく思えた。

「それで、たった2週間で、幕居さんは、雅人から僕に乗り換えたって事なのか……」

「いや、それが違うんだって! 俺は、断って大正解だったよ! 寧子ちゃん、その後、他の同期の男に手当たり次第、プロポーズしまくってたから」

「えっ……?」

 寧子が、雅人にもプロポーズしていた事でも驚いたが、雅人だけではなく、自分に告白される前に、同期の男達皆にプロポーズしていたと聞き、呆然となった颯天。

「驚くだろ~! 俺もさ、心底驚いたというか、女のしたたかさを思い知らされた」

「だけど、最初にプロポーズされたのは、雅人だったんだろう? それは、本気で、後の同期達への告白は、断った雅人への腹いせのような感じだったのかもな」

 寧子が思っているのは雅人だけで、後の同期達への手当たり次第の告白は、雅人に対する当てつけが目的なのだと思われた颯天。

「感情的なものっていうよか、取り敢えず、自分の能力が開花しないから、今のところ一番能力を出せている俺に目を付けただけだろう? 元々、彼女は、ここでは能力の高い結婚相手を見付ける為の腰かけみたいな気持ちだったとか?」

 雅人の声には、寧子を軽蔑してそうな気持ちが込められていた。
 
「確かに、努力するだけ無駄って感じの態度かもな。僕と違って、他の同期と実力差が開いても、気にしてなかったのは、そういう魂胆だったからか……」

「男と違って、能力が覚醒してなくても、超sup遺伝子を持っているってだけで、女性は結婚面で十分優遇されているんだ。それを逆手に取っているんだろう、寧子ちゃんは。地球防衛隊の男性達だって、子孫達に超sup遺伝子を繋げたいだろうからさ」

 能力が出なくて焦っている自分と違い、寧子が余裕を感じさせるような態度だったのは、その違いだったと理解出来た颯天。
 寧子が自分に気が合ってプロポーズをして来たと思い、少し浮ついていた颯天も、雅人から、その事実を知らされ、寧子に対する見方を変えた。

「僕は、いくらsup遺伝子が未覚醒なままでも、諦めて、幕居さんと傷をなめ合うような結婚をする事だけは、望まないよ」

「当然だよ! まあ、寧子ちゃんの事だから、颯天にプロポーズしたのなんて忘れて、今後は地球防衛隊員達にアプローチするだろうな」

「幕居さんに、地球防衛隊員に接触するような機会が有ればだろ? 僕と同じで、未覚醒の彼女だって、向こうの棟に行くのは難しいだろう」

 憧れてはいても、能力を発揮している雅人と違い、道のりが遠く感じている颯天は、寧子に対しても自分と同様だと思っていた。

「そうでも無いよ。俺のような研修ではないにしろ、近々、訓練生達が全員、訓練の一環として、地球防衛隊の業務内容を観察する現場研修が有るらしい」

「えっ、訓練生全員が!」

 自分の夢に一歩近付いたような訓練内容に、目を輝かせた颯天。

「sup遺伝子未覚醒の訓練生達が過去に、その現場研修で、能力が覚醒出来た事例も有ったらしいから、颯天もそうなるかもな!」

「そんな期待させて、無変化なままだったら、むなしくなるじゃん!」

 雅人の情報に期待したかったが、そこで破れた時の自分を想像すると苦しい颯天。

「だから、さっきも言っただろう! 自分を信じる事を諦めるなよ、颯天!」

「あっ、確かにそうだった! 取り敢えず、僕は、その機会にかけてみるよ!」

 雅人に励まされ、前向きにその時を待つ事にした颯天。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

健太と美咲

廣瀬純一
ファンタジー
小学生の健太と美咲の体が入れ替わる話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

入れ替わった恋人

廣瀬純一
ファンタジー
大学生の恋人同士の入れ替わりの話

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

処理中です...