燃えよ、想いを乗せ

ゆりえる

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それどころか、手当たり次第

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 雅人とは毎日のように顔を合わせているというのに、2週間前からそんな事は全く颯天はやての耳には入って無かった。

「雅人、今の今まで、そんな事は一言も言ってなかったじゃん!」

「別に、そんな言うほどの事でも無いと思ってさ……わりぃ」

 寧子にプロポーズされた事など、大した事では無いように捉えている雅人。

「まあ、いいけど。それで、お前は、幕居さんに、どうやって返事したんだ?」

「そんなの決まってるじゃん! 好きな人が、他にいるからって、即、断ったよ」

 雅人の好きな人というのは、もちろん、他でもない淡島花蓮の事だろう。
 颯天も、寧子に対して、透子の事を好きな人とそうキッパリ言い切れるくらい自信が自分に有ったならと、雅人が羨ましく思えた。

「それで、たった2週間で、幕居さんは、雅人から僕に乗り換えたって事なのか……」

「いや、それが違うんだって! 俺は、断って大正解だったよ! 寧子ちゃん、その後、他の同期の男に手当たり次第、プロポーズしまくってたから」

「えっ……?」

 寧子が、雅人にもプロポーズしていた事でも驚いたが、雅人だけではなく、自分に告白される前に、同期の男達皆にプロポーズしていたと聞き、呆然となった颯天。

「驚くだろ~! 俺もさ、心底驚いたというか、女のしたたかさを思い知らされた」

「だけど、最初にプロポーズされたのは、雅人だったんだろう? それは、本気で、後の同期達への告白は、断った雅人への腹いせのような感じだったのかもな」

 寧子が思っているのは雅人だけで、後の同期達への手当たり次第の告白は、雅人に対する当てつけが目的なのだと思われた颯天。

「感情的なものっていうよか、取り敢えず、自分の能力が開花しないから、今のところ一番能力を出せている俺に目を付けただけだろう? 元々、彼女は、ここでは能力の高い結婚相手を見付ける為の腰かけみたいな気持ちだったとか?」

 雅人の声には、寧子を軽蔑してそうな気持ちが込められていた。
 
「確かに、努力するだけ無駄って感じの態度かもな。僕と違って、他の同期と実力差が開いても、気にしてなかったのは、そういう魂胆だったからか……」

「男と違って、能力が覚醒してなくても、超sup遺伝子を持っているってだけで、女性は結婚面で十分優遇されているんだ。それを逆手に取っているんだろう、寧子ちゃんは。地球防衛隊の男性達だって、子孫達に超sup遺伝子を繋げたいだろうからさ」

 能力が出なくて焦っている自分と違い、寧子が余裕を感じさせるような態度だったのは、その違いだったと理解出来た颯天。
 寧子が自分に気が合ってプロポーズをして来たと思い、少し浮ついていた颯天も、雅人から、その事実を知らされ、寧子に対する見方を変えた。

「僕は、いくらsup遺伝子が未覚醒なままでも、諦めて、幕居さんと傷をなめ合うような結婚をする事だけは、望まないよ」

「当然だよ! まあ、寧子ちゃんの事だから、颯天にプロポーズしたのなんて忘れて、今後は地球防衛隊員達にアプローチするだろうな」

「幕居さんに、地球防衛隊員に接触するような機会が有ればだろ? 僕と同じで、未覚醒の彼女だって、向こうの棟に行くのは難しいだろう」

 憧れてはいても、能力を発揮している雅人と違い、道のりが遠く感じている颯天は、寧子に対しても自分と同様だと思っていた。

「そうでも無いよ。俺のような研修ではないにしろ、近々、訓練生達が全員、訓練の一環として、地球防衛隊の業務内容を観察する現場研修が有るらしい」

「えっ、訓練生全員が!」

 自分の夢に一歩近付いたような訓練内容に、目を輝かせた颯天。

「sup遺伝子未覚醒の訓練生達が過去に、その現場研修で、能力が覚醒出来た事例も有ったらしいから、颯天もそうなるかもな!」

「そんな期待させて、無変化なままだったら、むなしくなるじゃん!」

 雅人の情報に期待したかったが、そこで破れた時の自分を想像すると苦しい颯天。

「だから、さっきも言っただろう! 自分を信じる事を諦めるなよ、颯天!」

「あっ、確かにそうだった! 取り敢えず、僕は、その機会にかけてみるよ!」

 雅人に励まされ、前向きにその時を待つ事にした颯天。
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