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ギリギリの位置狙い
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「分かった!」
私の要望に応じて、私の傍に待機している隊長。
隊長にとっては、性格残念男のエリックも大事な隊員だから、負傷させて欠員が出るなんて状態は、極力避けたいに違いない。
「いいか、的はどこでも良いわけではないからな、ティアナ! 今回は、エリックの上衣の左端を狙え」
エリックは、私と隊長から5mほど離れて立ち止まった。
それくらい離れても分かるほど、エリックの顔には不安の色が現れていた。
大丈夫、私はエリックの上衣の左端に命中させる事が出来る!
私の横には、ペアという名目で隊長だっているのだから!
「上衣の左端......」
「バン!」
発砲した瞬間、エリックは目を瞑った。
弾は狙った上衣の左端スレスレ部分に当たった!
やった~!
我ながら、すごい腕前だと感心してしまう!
願わくば、隊長がいなくても、これくらいスイスイと出来るような自分でいたいのだけど.....
「すっげぇ~! 本当にスレスレのところで穴が開いた!」
感心しているのと安堵感で口笛を吹いているエリック。
「今度は、動いているエリックの上衣の右端を狙え! エリック、ティアナを信じて動いてみろ!」
「さすがに動くのはどうかと......」
隊長に指示されたものの、動いている状態では危険を感じるエリック。
「私も動いているエリックを狙うのは、どうかと......」
どうして、隊長は、そんな無謀な事をさせようとするの?
エリックと同様、私だって、その位置を狙える自信が無い!
「大丈夫だ、ティアナ! 自分の腕前を信じろ! お前は、あの時、動いている狼にも命中出来ただろう?」
隊長に激励されて、恐る恐る動いているエリックの上衣の右端を狙って撃った。
「バン!」
エリックは動きながら震え上がっていて、それは私も同様だったけど、いざ撃ってみると、隊長に命じられた位置に、当然の如く命中させていた。
「寿命が縮みそうだよ~! もういいだろ、隊長?」
2発ですっかりお手上げ状態のエリック。
「いや、念には念を入れる! 最後に、左のブーツとの境目内側を狙え!」
「隊長、そんな細か過ぎる指示は勘弁して下さいよ~!」
エリックは恐怖を覚えずにいられない様子。
左のブーツの境目内側......
「そんなギリギリの所を狙っても大丈夫なのかしら?」
リゼットが不安そうに声を漏らした。
「ティアナなら出来るだろう」
撃とうとした瞬間、リゼットに返答する隊長の会話が耳に届いた。
えっ、待って!
何だか、気持ちが急に集中出来なくなった!
「バン!」
撃った直後、エリックが思いっきり顔をしかめ、絶叫した。
「痛~っ!」
えっ、痛いって......?
まさか、エリックの足にあたった......!
私が、戸惑って固まってしまっている間に、皆がエリックの方へ駆け付けた。
「大丈夫か?」
どうしよう......?
外してしまっていた!
私の射撃は百発百中じゃなかったの?
隊長だって、すぐ隣にいたのに......
どういう事なの?
隊長がそばにいても、何発か当てたら、もうそれ以上の射撃能力は無くなってしまうとか......?
だとしたら、私なんて、全然、実戦向きの人材ではない!
「エリック、患部を見せろ!」
隊長が、エリックのブーツを脱がせ、ズボンの裾をまくった。
「なんだ、ほんの擦り剝いたようなかすり傷じゃないか! つくづく大袈裟な奴だな!」
「かすり傷っていったって、弾で出来た傷だから、ハンパ無く痛い! 僕はもう、こんな役回りはゴメンですよ!」
エリックは痛がりながら、ずっと隊長に訴え続けた。
かすり傷と言っていた隊長の言葉を聞いて、ホッとしたけど、私の弾が上手く狙えなかったせいで出来てしまった傷なのは確かだ。
こうなる事を恐れていた。
百発百中なんてヨイショされていたけど、実は、そうじゃなかったっていうのを......
私だって、もう、こんなのイヤだ!
もう、銃を握れる自信が無い!
また誰か傷付けてしまいそうで、怖い!
「エリック、ごめんなさい」
やっと硬直から解放されて、エリックの方へ急いだ。
「気にするなよ。隊長の言葉聞いただろ? かすり傷だよ。ただし、痛いけどな!」
最後に本心を付け足して言ったエリック。
「ごめんなさい」
かすり傷とはいえ傷付けてしまった以上、謝る事以外どうしていいのか分からない。
「そんなに僕に対して、申し訳なく思う気持ちが有るというなら......」
急に何か考えが浮かんだような表情になったエリック。
「有ります! だからごめんなさい」
この場は、とにかく平謝りするしか思いつかない。
「謝ってばかりいられるよりも、仕事終わったら、僕の部屋に来て」
「えっ、それは......」
他ならぬエリックの事だから、何か良からぬ下心が有るのではと思えてならない。
「足、痛たたたたた!」
急に、わざらしく思えるくらい、大袈裟に痛がってくるエリック。
「分かりました! 行きます! 行きますから!」
なによ!
大の大人の癖して、たかがかすり傷程度で、大袈裟に痛がって見せて!
行きたくないけど、行けばいいんでしょ、エリックの部屋に!
私の要望に応じて、私の傍に待機している隊長。
隊長にとっては、性格残念男のエリックも大事な隊員だから、負傷させて欠員が出るなんて状態は、極力避けたいに違いない。
「いいか、的はどこでも良いわけではないからな、ティアナ! 今回は、エリックの上衣の左端を狙え」
エリックは、私と隊長から5mほど離れて立ち止まった。
それくらい離れても分かるほど、エリックの顔には不安の色が現れていた。
大丈夫、私はエリックの上衣の左端に命中させる事が出来る!
私の横には、ペアという名目で隊長だっているのだから!
「上衣の左端......」
「バン!」
発砲した瞬間、エリックは目を瞑った。
弾は狙った上衣の左端スレスレ部分に当たった!
やった~!
我ながら、すごい腕前だと感心してしまう!
願わくば、隊長がいなくても、これくらいスイスイと出来るような自分でいたいのだけど.....
「すっげぇ~! 本当にスレスレのところで穴が開いた!」
感心しているのと安堵感で口笛を吹いているエリック。
「今度は、動いているエリックの上衣の右端を狙え! エリック、ティアナを信じて動いてみろ!」
「さすがに動くのはどうかと......」
隊長に指示されたものの、動いている状態では危険を感じるエリック。
「私も動いているエリックを狙うのは、どうかと......」
どうして、隊長は、そんな無謀な事をさせようとするの?
エリックと同様、私だって、その位置を狙える自信が無い!
「大丈夫だ、ティアナ! 自分の腕前を信じろ! お前は、あの時、動いている狼にも命中出来ただろう?」
隊長に激励されて、恐る恐る動いているエリックの上衣の右端を狙って撃った。
「バン!」
エリックは動きながら震え上がっていて、それは私も同様だったけど、いざ撃ってみると、隊長に命じられた位置に、当然の如く命中させていた。
「寿命が縮みそうだよ~! もういいだろ、隊長?」
2発ですっかりお手上げ状態のエリック。
「いや、念には念を入れる! 最後に、左のブーツとの境目内側を狙え!」
「隊長、そんな細か過ぎる指示は勘弁して下さいよ~!」
エリックは恐怖を覚えずにいられない様子。
左のブーツの境目内側......
「そんなギリギリの所を狙っても大丈夫なのかしら?」
リゼットが不安そうに声を漏らした。
「ティアナなら出来るだろう」
撃とうとした瞬間、リゼットに返答する隊長の会話が耳に届いた。
えっ、待って!
何だか、気持ちが急に集中出来なくなった!
「バン!」
撃った直後、エリックが思いっきり顔をしかめ、絶叫した。
「痛~っ!」
えっ、痛いって......?
まさか、エリックの足にあたった......!
私が、戸惑って固まってしまっている間に、皆がエリックの方へ駆け付けた。
「大丈夫か?」
どうしよう......?
外してしまっていた!
私の射撃は百発百中じゃなかったの?
隊長だって、すぐ隣にいたのに......
どういう事なの?
隊長がそばにいても、何発か当てたら、もうそれ以上の射撃能力は無くなってしまうとか......?
だとしたら、私なんて、全然、実戦向きの人材ではない!
「エリック、患部を見せろ!」
隊長が、エリックのブーツを脱がせ、ズボンの裾をまくった。
「なんだ、ほんの擦り剝いたようなかすり傷じゃないか! つくづく大袈裟な奴だな!」
「かすり傷っていったって、弾で出来た傷だから、ハンパ無く痛い! 僕はもう、こんな役回りはゴメンですよ!」
エリックは痛がりながら、ずっと隊長に訴え続けた。
かすり傷と言っていた隊長の言葉を聞いて、ホッとしたけど、私の弾が上手く狙えなかったせいで出来てしまった傷なのは確かだ。
こうなる事を恐れていた。
百発百中なんてヨイショされていたけど、実は、そうじゃなかったっていうのを......
私だって、もう、こんなのイヤだ!
もう、銃を握れる自信が無い!
また誰か傷付けてしまいそうで、怖い!
「エリック、ごめんなさい」
やっと硬直から解放されて、エリックの方へ急いだ。
「気にするなよ。隊長の言葉聞いただろ? かすり傷だよ。ただし、痛いけどな!」
最後に本心を付け足して言ったエリック。
「ごめんなさい」
かすり傷とはいえ傷付けてしまった以上、謝る事以外どうしていいのか分からない。
「そんなに僕に対して、申し訳なく思う気持ちが有るというなら......」
急に何か考えが浮かんだような表情になったエリック。
「有ります! だからごめんなさい」
この場は、とにかく平謝りするしか思いつかない。
「謝ってばかりいられるよりも、仕事終わったら、僕の部屋に来て」
「えっ、それは......」
他ならぬエリックの事だから、何か良からぬ下心が有るのではと思えてならない。
「足、痛たたたたた!」
急に、わざらしく思えるくらい、大袈裟に痛がってくるエリック。
「分かりました! 行きます! 行きますから!」
なによ!
大の大人の癖して、たかがかすり傷程度で、大袈裟に痛がって見せて!
行きたくないけど、行けばいいんでしょ、エリックの部屋に!
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