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自分だけだった!

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 日常茶飯事というほどでもなかったけど、友人達との会話中、『あれっ......?』と首を傾げたくなる時が、多々有った。

 そんな時いつも、友人のプリシラやマデリンは笑いながら

「ティアナって、本当にユニーク!」

 って言うだけだった。

 みんなそれぞれ、個性が有るんだから。
 ちょっとくらい違っていたって、別に構わないよね!

 そういうのが、たまたま私1人だけ多いような気がしないでもなかったけど、2人の言う通り、私はユニークな個性の持ち主なんだってくらいに、ずっと思い込んでいた......

 今回だって、また、そんな感じだと思っていたのに......

「2人は前世の記憶って、何歳で思い出したの?」

 探求心旺盛なマデリンが、それまでの会話が止んだ隙を狙ってきた。

「私、少し遅めで8歳の時だったの。マデリンは、きっと早かったでしょう?」

 えっ、何......?
 前世の記憶......って?

 マデリンの質問が、聞き間違いだったのかと思えるくらい、てんで会話に付いていけないんだけど......
 どうして、プリシラは動揺する事も無く、フツーに対応してるの?

「そう早かったんだよね~。私は、4歳の時には思い出していたもの!」

 何歳で前世を思い出したとか、そんなわけ分かんない質問の内容で、冗談にしても、よくそんなスラスラと返答を思い付けるものだと感心してしまう!

 私は、何歳にしておこうかな......?

 マデリンが早くて4歳、プリシラが遅めで8歳って言ってたっけ?

 数字は被らないように言った方がいいよね......
 2人より早くするか、遅くするか?
 まあ、たまには、2人を出し抜いた感が有る設定っていうのも、悪く無いかもね!

「4歳で早いなんて笑わせないで! 私なんてね、2歳で思い出したんだから!」

 自慢そうに言うと、2人がキョトンとした顔をした。
 えっ、何......?
 私、なんか、またヤバイ発言していた......?

「ティアナが、そんな早くから目覚めてたなんて予想外だった! てっきり、一番遅そうな感じかと思ってたのに」

「そうよね、ティアナの方が早いのは意外でしかないわ! しかも2歳っていったら、物心がつく前じゃない?」

 元々有りもしない話をでっち上げて盛ろうとしただけだから、早くても遅くても私の中では、そんな大差無いのに......

 そこまで驚くとは!

「で、ティアナは、前世は何だったの?」

 前世の職業って事だよね......?

「えっ、えーと......」

 そこまで考えてなかった!
 どういう答え方すると、2人がウケてくれるかな?

「冒険者みたいな感じだった......」

 たまたま昨日見ていた映画のヒロインがカッコよかったから、そのノリで答えてみた。

「わぁ~、スゴイね~! 私は、看護師だったの! そこの婦長さんと助産師さんの2人が怖くて、毎日かなりビクビクしながら働いていたわ」

 プリシラ、よくそんな詳細まで設定して、すぐに答えられて!
 そっちの方が、よっぽどスゴイよ!

「私は、新聞記者だったの! あっちこっちネタを探して飛び回ってた」

 納得かも、知れない。
 マデリンの活発で好奇心旺盛な性格なら、それは連想しやすい。

「じゃあ、マデリンと、ティアナは前世でも、どこかで出会ってたかも知れなかったのね~! 現世で生まれる何年前に、前世では亡くなっていたの?」

 今度は亡くなった時まで、設定しなきゃならないの~?
 なんか忙しいっ!

 作り話なのに、そんな細かく設定していたら、もう最初に答えた内容を忘れそうで 辻褄つじつまが合わなくなりそう!

 え~と、2歳で前世を思い出して、前世では、私は冒険者で、新聞記者だったマデリンと会っていたかも知れなくて......
 それなら、何年前に亡くなった事にするのが妥当なのかな?

「それがね、私、生まれ変わる直前に亡くなったの。たまにそういう転生もあるんだって」

 私が話すより先に、マデリンが、聞かれる事を予想してシナリオを設定していたように話し出した。

「私は、多分、マデリンの前世の期間ずっと待機していた感じかも。だって、私が前世で亡くなっていたのは、60年前なの......」

 しんみりとした口調のプリシラ。
 2人とも妙に感情移入しているような感じなんだけど、一体どうしちゃったの?
 この2人って、そんな演技派だったっけ?

「それで、ティアナは、前世の私と会ってそうな年代に生きていたの?」

「えっ、どうだっけ......っていうか、この会話内容、いつまで続けるの? 私、もうネタ切れしそうでキツイんだけど!」

 だんだん考えるのが億劫になって来た。
 この前世ワールド感覚の会話をもうそろそろ打ち切りにしもらえないかな~。

「えっ、ちょっと待って! ティアナは、もしかして、作り話していたの?」

 2人から、驚きの眼差しを向けられているんだけど、どうして?
 だいたい2人だって、かなり感情移入しながら、作り話していたくせに!

「プリシラとマデリンが迫真の演技だったから、それに合わせて話すのは、もう私、無理だよ~! 疲れた~!」

 2人の名演技を褒めて、この話はこれで終わらせようとしたのに、ますます2人の驚き方が増している気がしないでもないんだけど......

 何なの?
 私、そんなおかしな事を言ってた?

「私達、作り話じゃないわよ。ねえ、プリシラ?」

「もちろん、なぜ作り話する必要なんて有るの、ティアナ?」

 2人とも、あれは演技じゃなかったの?

「2人が、作り話していると思ってたから、私も、その話に乗ったふりして、頑張って演技していたんだけど......ねぇ、どこから、私、脱線していた?」

 意味わかんない!

 これが、作り話じゃなかったら、何なの?
 前世の記憶なんて、誰にも有るわけ無いのに!
 どうして急に、そんな突拍子も無い事をマデリンは話し出した?

「ティアナって......もしかして、本当に、前世の記憶が無い状態のままなの?」

 驚きに目を見張る2人。
 異形の存在に出会ったかのように、私、見られてる!!

 どうして?
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