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予期せぬ告白
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(大切な話って、何かな......? このタイミングなんだから、もしかしてって事......有り得るよね......?ううん、むしろ、それ以外は無いような気さえする......どうしよう! でも、2人っきりじゃなくて、那知もお母さんもいる前でなんて、想定外過ぎる......こんなみんなの前で、私、どうやって、土田君の気持ちに応えるべきかな......? 告られるにしても、今とかじゃなくて、もう少し経って、心の準備が出来てからが良かったんだけどな。土田君って、意外とせっかちだったりして......)
土田からの告白を期待し、心臓が飛び出そうなくらいドキドキしながら、長身の土田を見上げる澪。
その横で母は、初対面からの突然の、この急展開と思われる状況に付いて行けず、ハラハラしながら、土田がこれから、澪に言わんとしている様子を見守ろうとした。
そんな中、那知だけが、『そう来たか!』と言わんばかりの好奇心旺盛な視線を土田に向け、3人の中では一番余裕を感じさせる態度を取っていた。
土田は、1つ大きな呼吸を置き、いつもと違い視線があちこち落ち着かない状態で話し出した。
「僕は、初めて会った時からずっと、なっちゃんに一目惚れして......」
(えっ、なっちゃん......って、今、言った......?)
土田の言葉がすぐに飲み込めない澪。
今のは、言い間違いか、聴こえ間違いかと、どうしても思いたかった。
「なっちゃんがバイトするようになってから、時間に会えるのが楽しみで......あの......つまり、なっちゃんとお付き合いしたいです!」
三様の思いを描いていた3人を前に、自分の想いを伝え、頭を下げた土田。
(やっぱり、那知なの? 何度も何度も、なっちゃんって、その名前を繰り返してばかりで......土田君、私の事になんて、ただの一言も触れてくれなかった......)
期待していた事と全く違う展開に愕然となった澪。
沈黙がしばらく流れた後、母が口を開いた。
「土田君、ごめんなさいね。思春期って、かなりデリケートな年頃だし、我が家の娘達は、今まで、告白されるとか、そういう免疫が全く無くて、すごく動揺してしまっているの。本当に申し訳無いけど、今日は、これでお引き取りしてもらえるかしら? また今度、落ち着いた時にいらして」
澪や那知の気持ちを察した母が、返事を待つ土田の事も考慮し、なるべく当たり障りの無いように家から去らせようとした。
「あっ、そうですよね......つい勢いに乗ってしまって、すみませんでした。動揺しても当然だと思います。でも、僕の真剣な気持ちだけは、どうしてももう伝えたくて......」
(那知の方しか見ない土田君を見ているのが辛い.....こんな事なら、今日の食事会なんて、無かったら良かった......そうしたら、もう少し長く期待していられたし、もしかすると、時間稼ぎしてる間に、こんなのとは違う展開になってたかも知れないのに......)
打ちのめされそうな思いで、土田を目にしている間も、土田は澪が存在してないかの如く無視している。
那知は土田の視線を避け、俯いて小声で言った。
「ツッチー、もう分かったから......」
その那知の声を聞いた途端、土田は、母や澪の方に一礼してから、出て行った。
土田の足音が遠ざかるなり、澪は抑えていた感情や涙が止めどなく溢れて来た。
「こんな事になって、澪、ごめん......」
「もう知らない! 那知なんて、大っキライなんだから!」
謝る那知を両手で押しのけ、部屋に入った澪。
(那知のバカ! 那知がいなかったら、例え可能性は低くても、私にだって、土田君を振り向かせるチャンス有ったかも知れないのに! ......私と女装の那知が2人で並んだら、私が那知に勝てるわけない......今まで、私、何バカな期待してたの? ....ああああ、もうイヤ! 学校も、勉強も! 土田君に近付く為だけに、苦手な勉強も、高校でのボッチ生活もガマンして、今までずっと頑張って来たのに......その希望が、一気に玉砕した今、もう何のモチベーションも無い状態で、私、どうやって高校生活続けたらいい?)
唯一の癒しであったTwitterすら、見る気も失せてしまっていた。
怒りと悲しみをどこに向けて良いのか分からず、布団相手にひたすらバタバタ手足を動かし続けるしか出来ない澪だったが、いつしか疲れて、泣き寝入りした。
翌朝、目が覚めた時に、昨日の事をただの悪夢だったと思いたかった澪。
そう思い込もうと努めても、部屋着のまま布団の上で倒れ伏していた状況と、鏡に映る泣き腫らした 瞼で、紛れも無い現実だったと受け入れる他はなかった。
(夕べの事が夢だったら、どんなにか良かったのに......もう那知の顔なんて見たくないし、学校で土田君に会った時、私、どんな顔で挨拶したらいいのかも分からなくなってしまってる......)
土田からの告白を期待し、心臓が飛び出そうなくらいドキドキしながら、長身の土田を見上げる澪。
その横で母は、初対面からの突然の、この急展開と思われる状況に付いて行けず、ハラハラしながら、土田がこれから、澪に言わんとしている様子を見守ろうとした。
そんな中、那知だけが、『そう来たか!』と言わんばかりの好奇心旺盛な視線を土田に向け、3人の中では一番余裕を感じさせる態度を取っていた。
土田は、1つ大きな呼吸を置き、いつもと違い視線があちこち落ち着かない状態で話し出した。
「僕は、初めて会った時からずっと、なっちゃんに一目惚れして......」
(えっ、なっちゃん......って、今、言った......?)
土田の言葉がすぐに飲み込めない澪。
今のは、言い間違いか、聴こえ間違いかと、どうしても思いたかった。
「なっちゃんがバイトするようになってから、時間に会えるのが楽しみで......あの......つまり、なっちゃんとお付き合いしたいです!」
三様の思いを描いていた3人を前に、自分の想いを伝え、頭を下げた土田。
(やっぱり、那知なの? 何度も何度も、なっちゃんって、その名前を繰り返してばかりで......土田君、私の事になんて、ただの一言も触れてくれなかった......)
期待していた事と全く違う展開に愕然となった澪。
沈黙がしばらく流れた後、母が口を開いた。
「土田君、ごめんなさいね。思春期って、かなりデリケートな年頃だし、我が家の娘達は、今まで、告白されるとか、そういう免疫が全く無くて、すごく動揺してしまっているの。本当に申し訳無いけど、今日は、これでお引き取りしてもらえるかしら? また今度、落ち着いた時にいらして」
澪や那知の気持ちを察した母が、返事を待つ土田の事も考慮し、なるべく当たり障りの無いように家から去らせようとした。
「あっ、そうですよね......つい勢いに乗ってしまって、すみませんでした。動揺しても当然だと思います。でも、僕の真剣な気持ちだけは、どうしてももう伝えたくて......」
(那知の方しか見ない土田君を見ているのが辛い.....こんな事なら、今日の食事会なんて、無かったら良かった......そうしたら、もう少し長く期待していられたし、もしかすると、時間稼ぎしてる間に、こんなのとは違う展開になってたかも知れないのに......)
打ちのめされそうな思いで、土田を目にしている間も、土田は澪が存在してないかの如く無視している。
那知は土田の視線を避け、俯いて小声で言った。
「ツッチー、もう分かったから......」
その那知の声を聞いた途端、土田は、母や澪の方に一礼してから、出て行った。
土田の足音が遠ざかるなり、澪は抑えていた感情や涙が止めどなく溢れて来た。
「こんな事になって、澪、ごめん......」
「もう知らない! 那知なんて、大っキライなんだから!」
謝る那知を両手で押しのけ、部屋に入った澪。
(那知のバカ! 那知がいなかったら、例え可能性は低くても、私にだって、土田君を振り向かせるチャンス有ったかも知れないのに! ......私と女装の那知が2人で並んだら、私が那知に勝てるわけない......今まで、私、何バカな期待してたの? ....ああああ、もうイヤ! 学校も、勉強も! 土田君に近付く為だけに、苦手な勉強も、高校でのボッチ生活もガマンして、今までずっと頑張って来たのに......その希望が、一気に玉砕した今、もう何のモチベーションも無い状態で、私、どうやって高校生活続けたらいい?)
唯一の癒しであったTwitterすら、見る気も失せてしまっていた。
怒りと悲しみをどこに向けて良いのか分からず、布団相手にひたすらバタバタ手足を動かし続けるしか出来ない澪だったが、いつしか疲れて、泣き寝入りした。
翌朝、目が覚めた時に、昨日の事をただの悪夢だったと思いたかった澪。
そう思い込もうと努めても、部屋着のまま布団の上で倒れ伏していた状況と、鏡に映る泣き腫らした 瞼で、紛れも無い現実だったと受け入れる他はなかった。
(夕べの事が夢だったら、どんなにか良かったのに......もう那知の顔なんて見たくないし、学校で土田君に会った時、私、どんな顔で挨拶したらいいのかも分からなくなってしまってる......)
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