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初めてのお誘い

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「勉強もそんな余裕無くて、ボッチだったら、澪の高校生活しんどそう......」

 澪の思うようにならない心の嘆きに、同情している那知。

「だからこそ、こういう状態の私にとっては、土田君の存在が、天使のように神々しいの!」

 ずっと無理そうな際どいところで勉強をし続け、クラスでは孤独な毎日でも、土田と同じ高校を選んだ事を澪は、決して後悔してなかった。
 現に今、少しずつではあるが、こうして土田に近付く事を達成出来ているのだから。

「あんなビッチ女子なんかに負けないように頑張れ、澪!」

「那知に言われなくたって、もう突き進むしかないから、もちろん、そのつもり!......えっ、待って、うそみたい~!」

【mokk】でツイートしたハロに、【クモノスケ】が『いいね!』のハートマークを付けて、ダイレクトメールまで届いていたのだった。

「見せて、澪。わっ、DМまで送られていて、スゴイ快挙じゃん!」

「信じられない! 初めて、土田君からDМを貰っちゃった~!」

 その【クモノスケ】からのメッセージの内容は

『似たようなタイミングで、同じようなハロを撮影しているようなので、もしかして、道内在住ですか?』

 そのダイレクトメールに対しても『いいね!』をして、慌てて返信する澪。

『はい、空知在住です』

 初めてのDMに対し、北海道在住なだけと答えるのは味気ない。
 かといって、そのままストレートに市町村名を書いて、同じ所に住んでいるアピールをするのは、現時点であまりにも軽率そうに思えた澪は、大まかに地域だけを書いた。

(土田君と繋がっている空の下に、存在しているというシアワセを今、まさにひしひしと感じてしまう! まさか、土田君じきじきに、DМを貰える時が来るなんて~! Twitterやってて、ホントに良かった~!)

 浮かれ調子の澪とは逆に、あまり浮かない様子の那知。

「なぜか那知と一緒の時にばっかり、土田君とバッタリ会う事が多いから、何だか那知の方が土田君と御縁が有りそうで、すごく悔しかったけど、Twitterを見て安心しちゃった~! やっぱり、私と土田君こそが、運命に導かれているんだよね~!」

 いつの間にか、那知をライバル視していた澪が、このダイレクトメールを貰った時点で、那知よりはるかに優位に立った気持ちになっていた。

「そうだったらいいね~」

 急に、あまり乗り気ではない様子になっている言動の那知に対し、彼の土田への気持ちに疑問を感じる澪。

「何だか、イヤな感じな言い方しているよね、那知? ......あっ、見て見て、スゴイ! また、土田君から返信来たよ~! 向こうも、どうやら【mokk】に興味津々みたいなんだけど! あ~、どうしよう! 現実と同時進行形で、まさかTwitterでも急接近出来るなんて! なんかもう、頭がパンクしてしまいそう~!!」

 澪が大興奮しながら、嬉しさの悲鳴を挙げるほどの【クモノスケ】からのメッセージは......

『同じく、僕も空知在住です。一緒の地域に住んでいるのも何かの御縁と思うので、もし良かったら、今度、雲が良い感じの時に、オフ会しませんか?』

「オフ会って、これ、DMだし、私と土田君の2人っきりって事だよね? 嘘みたい! 2人っきりなんて、もろデートみたい!」

 即答でノリノリ状態を晒すのは、さすがに土田から、待ってましたとばかりの暇人と思われそうで、取り敢えず『いいね!』だけにして様子を見る事にした澪。
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