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澪が、土田と恋に落ちた時から着実に練っていった妄想上のライフプランを見事に覆してしまった先刻の出来事!
何の心の準備も無しにいた澪にとっては、せっかくの久しぶり過ぎる土田との会話が、那知についてのあまり好ましくない方向の内容のみで呆気なく終了。
その上、食べようとしていたポテトチップスの袋を抱えていた事や、中学時代のジャージ姿という、どう見てもズボラそうな醜態まで、土田の前で晒してしまったのだった。
まだ興奮冷めやらぬまま、取り敢えず、【mokk】でTwitterにログインし、【クモノスケ】のツイートが変化無いのを確認してからログアウトし、【mio】でログインした。
『急進展過ぎてヤバイっ! 心が、この状態に全然付いていけない! それも残念な事に、自力ではなく、那知の功名でなんだけど......』
いつもなら、学校の宿題の合間に楽しい妄想タイムが始まるのだが、先刻の余韻が強烈過ぎて、勉強に気持ちが入らない。
そればかりか、いつもの楽しい接近シチュエーションの妄想さえもまともに進行が出来ず、気持ちが昂っている澪。
(那知の余計な言動のせいで、私が予定外に振り乱されてる~! あ~ん、もう、こんな事なら、今もまだ、土田君を遠目で見ているだけでも良かったんだけど......)
いつか普通に話せる事を夢見ながら、つまらな過ぎる学校生活も乗り越えていこうとしていたが、いざ土田と話せてしまった後は、それを楽しみにしていた日々の方に、未練がずっと残っている事に気付かされた澪。
まずは土田と話すという当初の目標を達成してしまうと、自分が常日頃の妄想で思い描いていた進行と違ったせいで、その後の目標を設定出来ずにいた。
(これから先、土田君を高校で見かけた時とか、私、どうしたらいい? さりげなく、那知をネタに会話するとか? でも、その時に、那知が男子だって事がバレないように、私、上手く土田君と会話出来るのかな?)
たった1時間足らずの間に、那知のカミングアウトから始まり、土田と2年ぶりに接近し会話出来た事など、澪にとっては、一気に許容量オーバーな出来事が、ドッと押し寄せてきた。
それは澪にとっては、十分過ぎるほどパニックに足るものだった。
とりあえず、翌日の登校時まで、土田と遭遇した時の為に、色んなシチュエーションを想定し、そのそれぞれの状況で自然に話せるように、頭の中で何度も反芻しておく事にした。
そうしておかない事には、もしも土田とバッタリと遭遇した時に、不安で仕方無かった。
が、実際は、澪が色々想定していたシーンには含まれていない展開となった!
翌朝の登校時、今まで通りの生活をしていると起こり得るはずのない事が、その時点から起きた。
友人と一緒にいる土田から、笑顔で挨拶をされたのだった。
その異常事態に、澪は驚愕せずにいられなかった。
「園内さん、おはよう!」
(えっ、私、声をかけられた? ホントに私......? それも、土田君から......? 嘘みたい! この高校に入学してやっと、初めて挨拶された! しかも、その相手がなんと土田君なんて.......!)
爽やかな声で紛れも無く、澪の方に向けられた人懐っこい土田の笑顔。
(うわ~っ! ホントに、これって、現実......? 挨拶だけでなく、土田君の極上過ぎる笑顔もだよ~! 信じられない! 那知のおかげだ~! 那知、ありがとう!)
「......お、おはよう、土田君」
妄想の世界で何度もしていたように、自分からもとびっきりの笑顔を用意するつもりでいたが、あまりに慣れてないせいか、緊張で引き攣った顔になり、しかも、肝心の挨拶までどもってしまった澪。
1人で登校していた澪は、そのまま土田達と並んで歩きたい気持ちもやまやまだったが、さすがに昨日の今日で、そんな事をするのは図々しく感じ、澪の方からすぐに離れて、土田達を早歩きで追い越した。
すると、土田が友人達から質問攻めされているのが、後方から聴こえて来た。
「土田、今の誰?」
「他のクラスの女子じゃん、怪しいな~!」
「そんな別に怪しくないよ、同じバイトの子のお姉さんだから......」
友人達に否定している土田。
(怪しくない......うん、今はまだ仕方ないよね。これからだもん、私達は!)
「バイトのって、まさか、なっちゃんの?」
驚いている声を上げた土田の友人達。
(えっ、那知って、土田君の友達にまで知れ渡っているの?)
「そうだけど......」
友人達の声に比べて、妙に声量が小さくなる土田。
「ズルイ奴だな~、お前ばっかモテちゃって」
「いつの間に、なっちゃんだけでなく、そのお姉さんとまで仲良くなっているんだよ!」
土田の友人達の声が大き過ぎて、距離が開いても、澪の耳に届いて来た。
(やっぱり、友達にも知られているくらい、土田君と那知は仲良しなんだ......それなら不本意では有るけど、やっぱり那知を通じて、土田君の情報を色々ゲットする方が確かに効率良くていいのかも知れない!)
何の心の準備も無しにいた澪にとっては、せっかくの久しぶり過ぎる土田との会話が、那知についてのあまり好ましくない方向の内容のみで呆気なく終了。
その上、食べようとしていたポテトチップスの袋を抱えていた事や、中学時代のジャージ姿という、どう見てもズボラそうな醜態まで、土田の前で晒してしまったのだった。
まだ興奮冷めやらぬまま、取り敢えず、【mokk】でTwitterにログインし、【クモノスケ】のツイートが変化無いのを確認してからログアウトし、【mio】でログインした。
『急進展過ぎてヤバイっ! 心が、この状態に全然付いていけない! それも残念な事に、自力ではなく、那知の功名でなんだけど......』
いつもなら、学校の宿題の合間に楽しい妄想タイムが始まるのだが、先刻の余韻が強烈過ぎて、勉強に気持ちが入らない。
そればかりか、いつもの楽しい接近シチュエーションの妄想さえもまともに進行が出来ず、気持ちが昂っている澪。
(那知の余計な言動のせいで、私が予定外に振り乱されてる~! あ~ん、もう、こんな事なら、今もまだ、土田君を遠目で見ているだけでも良かったんだけど......)
いつか普通に話せる事を夢見ながら、つまらな過ぎる学校生活も乗り越えていこうとしていたが、いざ土田と話せてしまった後は、それを楽しみにしていた日々の方に、未練がずっと残っている事に気付かされた澪。
まずは土田と話すという当初の目標を達成してしまうと、自分が常日頃の妄想で思い描いていた進行と違ったせいで、その後の目標を設定出来ずにいた。
(これから先、土田君を高校で見かけた時とか、私、どうしたらいい? さりげなく、那知をネタに会話するとか? でも、その時に、那知が男子だって事がバレないように、私、上手く土田君と会話出来るのかな?)
たった1時間足らずの間に、那知のカミングアウトから始まり、土田と2年ぶりに接近し会話出来た事など、澪にとっては、一気に許容量オーバーな出来事が、ドッと押し寄せてきた。
それは澪にとっては、十分過ぎるほどパニックに足るものだった。
とりあえず、翌日の登校時まで、土田と遭遇した時の為に、色んなシチュエーションを想定し、そのそれぞれの状況で自然に話せるように、頭の中で何度も反芻しておく事にした。
そうしておかない事には、もしも土田とバッタリと遭遇した時に、不安で仕方無かった。
が、実際は、澪が色々想定していたシーンには含まれていない展開となった!
翌朝の登校時、今まで通りの生活をしていると起こり得るはずのない事が、その時点から起きた。
友人と一緒にいる土田から、笑顔で挨拶をされたのだった。
その異常事態に、澪は驚愕せずにいられなかった。
「園内さん、おはよう!」
(えっ、私、声をかけられた? ホントに私......? それも、土田君から......? 嘘みたい! この高校に入学してやっと、初めて挨拶された! しかも、その相手がなんと土田君なんて.......!)
爽やかな声で紛れも無く、澪の方に向けられた人懐っこい土田の笑顔。
(うわ~っ! ホントに、これって、現実......? 挨拶だけでなく、土田君の極上過ぎる笑顔もだよ~! 信じられない! 那知のおかげだ~! 那知、ありがとう!)
「......お、おはよう、土田君」
妄想の世界で何度もしていたように、自分からもとびっきりの笑顔を用意するつもりでいたが、あまりに慣れてないせいか、緊張で引き攣った顔になり、しかも、肝心の挨拶までどもってしまった澪。
1人で登校していた澪は、そのまま土田達と並んで歩きたい気持ちもやまやまだったが、さすがに昨日の今日で、そんな事をするのは図々しく感じ、澪の方からすぐに離れて、土田達を早歩きで追い越した。
すると、土田が友人達から質問攻めされているのが、後方から聴こえて来た。
「土田、今の誰?」
「他のクラスの女子じゃん、怪しいな~!」
「そんな別に怪しくないよ、同じバイトの子のお姉さんだから......」
友人達に否定している土田。
(怪しくない......うん、今はまだ仕方ないよね。これからだもん、私達は!)
「バイトのって、まさか、なっちゃんの?」
驚いている声を上げた土田の友人達。
(えっ、那知って、土田君の友達にまで知れ渡っているの?)
「そうだけど......」
友人達の声に比べて、妙に声量が小さくなる土田。
「ズルイ奴だな~、お前ばっかモテちゃって」
「いつの間に、なっちゃんだけでなく、そのお姉さんとまで仲良くなっているんだよ!」
土田の友人達の声が大き過ぎて、距離が開いても、澪の耳に届いて来た。
(やっぱり、友達にも知られているくらい、土田君と那知は仲良しなんだ......それなら不本意では有るけど、やっぱり那知を通じて、土田君の情報を色々ゲットする方が確かに効率良くていいのかも知れない!)
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