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思いがけない訪問者
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那知にああ言った手前、ワンピースを回収出来なかった澪は、今日だけ取り敢えず中学の時のジャージを引っ張り出して着る事にした。
(ダサいけど、家だし。ラクだから......)
部屋の姿見に映ったジャージ姿の自分を見た澪。
先刻のワンピース姿の那知と見比べて、明らかに勝てないと思わずにいられない澪。
(例え同じ服装で臨んでも、那知は男なのに、勝ち目無さそう......同じ両親から双子で生まれたのに、神様は不公平過ぎる!)
ネガティブ思考は避けたかったが、まだ頭に、女装の那知が鮮明に焼き付いている澪は落ち込まずにいられない。
こんな時こそ、強い味方のクモノスケ!
澪は、【クモノスケ】のツイートが更新されてないか、チェックした。
(......やっぱり、さっきのツイートのまま。法事後で忙しいんだよね)
ガッカリした途端、空腹な事に気付き、冷蔵庫とお菓子置き場をうろついた。
(また肥えそうだけど、お腹空いたし、夕食までまだ長いし......)
ポテトチップスを1袋持って、階段を上ろうとした時だった。
「ピンポーン」
いつもならテレビドアホンの画面をチェックするが、玄関のすぐそばにいたから面倒で、そのままドアを開けた澪。
「はーい」
ドアの向こうにいたのは、想定外にも土田だった。
(えっ、うそ......!! 私、好き過ぎて、土田君の幻でも見てるの? こんなリアルに......)
驚きのあまりに、ポテトチップスの袋を落とし、頭がパニックになる澪。
「ここ、園内さんのお宅ですよね......? あれっ、高校で見かけた事有るような......?」
(土田君......同じクラスになった事は無いのに、私の事、ちゃんと覚えてくれている! 嬉し過ぎる~!!)
舞い上がりそうな澪。
「はい、皆成高校です!」
ジャージ姿なのを忘れ、顔が緊張でこわばりながらも明るい声で答えた。
「お姉さんいますか?」
(私に姉......? どういう事? 何だか嫌な予感......)
「いえ、姉はいないです」
「それじゃあ、妹さんかな......?」
「妹も......」
(えっ......でも、まさかね......?)
澪が否定しかけた時、那知のドアが開いた音がした。
「あっ、ツッチー! 来てくれたの?」
(なにっ? ツッチーですと!)
階段を駆け足で降りて来て、澪の横に立った化粧+ワンピースのままの那知。
「なっちゃん、この前、忘れ物してたから」
(なっちゃん......って、那知の事? しかも、ちゃん付け! ......問題は、そこではない。問題は、明らかに女装姿の那知と土田君が顔見知りって事! それよか......ジャージ姿の私とワンピース姿の澪って、並んだら絶対ダメなやつじゃない! あ~ん、泣けてくる~!)
カバンからティーン誌を出して那知に渡した土田。
(忘れ物って、那知、いつ土田君の前でしたの? 土田君、どうして、届けてくれるの......? いつの間に、家まで教えてるの......?)
2人の親し気な様子に、疑問が止めどなく湧き上がり頭がパニックになりそうな澪。
「わざわざ届けてくれて、ありがとう! これ、ちょうど見たかったんだ~! 頑張ったんだけど、なかなかうまくメイク出来なくて......」
今の那知の姿に、ピッタリに感じられる甘めの声を出している。
(その声、どこから出してるの、那知? 何だか、私よりずっと女の子してる......)
「キレイに出来ているよ。お姉さんもいる事だし、聞いたり出来て頼れるからいいね~」
やっと澪の方を見て、気遣うように言った土田。
(その私は、いつもスッピンなんですけどね!)
「うん、そうなの! お姉ちゃん、今は、ちょっとオフ姿だけど、頼りになるから!」
わざとらしく澪の腕を組んだ那知。
(オフ姿って......! 大体、那知が私のワンピースを着ているせいで、私が、こんなダサいジャージ姿になっているんだから!)
「それじゃあ、また」
土田は、用事が済むとすぐに出て行き、止めてあった自転車を動かし、その場を去った音がしていた。
「那知~! どういう事?」
(ダサいけど、家だし。ラクだから......)
部屋の姿見に映ったジャージ姿の自分を見た澪。
先刻のワンピース姿の那知と見比べて、明らかに勝てないと思わずにいられない澪。
(例え同じ服装で臨んでも、那知は男なのに、勝ち目無さそう......同じ両親から双子で生まれたのに、神様は不公平過ぎる!)
ネガティブ思考は避けたかったが、まだ頭に、女装の那知が鮮明に焼き付いている澪は落ち込まずにいられない。
こんな時こそ、強い味方のクモノスケ!
澪は、【クモノスケ】のツイートが更新されてないか、チェックした。
(......やっぱり、さっきのツイートのまま。法事後で忙しいんだよね)
ガッカリした途端、空腹な事に気付き、冷蔵庫とお菓子置き場をうろついた。
(また肥えそうだけど、お腹空いたし、夕食までまだ長いし......)
ポテトチップスを1袋持って、階段を上ろうとした時だった。
「ピンポーン」
いつもならテレビドアホンの画面をチェックするが、玄関のすぐそばにいたから面倒で、そのままドアを開けた澪。
「はーい」
ドアの向こうにいたのは、想定外にも土田だった。
(えっ、うそ......!! 私、好き過ぎて、土田君の幻でも見てるの? こんなリアルに......)
驚きのあまりに、ポテトチップスの袋を落とし、頭がパニックになる澪。
「ここ、園内さんのお宅ですよね......? あれっ、高校で見かけた事有るような......?」
(土田君......同じクラスになった事は無いのに、私の事、ちゃんと覚えてくれている! 嬉し過ぎる~!!)
舞い上がりそうな澪。
「はい、皆成高校です!」
ジャージ姿なのを忘れ、顔が緊張でこわばりながらも明るい声で答えた。
「お姉さんいますか?」
(私に姉......? どういう事? 何だか嫌な予感......)
「いえ、姉はいないです」
「それじゃあ、妹さんかな......?」
「妹も......」
(えっ......でも、まさかね......?)
澪が否定しかけた時、那知のドアが開いた音がした。
「あっ、ツッチー! 来てくれたの?」
(なにっ? ツッチーですと!)
階段を駆け足で降りて来て、澪の横に立った化粧+ワンピースのままの那知。
「なっちゃん、この前、忘れ物してたから」
(なっちゃん......って、那知の事? しかも、ちゃん付け! ......問題は、そこではない。問題は、明らかに女装姿の那知と土田君が顔見知りって事! それよか......ジャージ姿の私とワンピース姿の澪って、並んだら絶対ダメなやつじゃない! あ~ん、泣けてくる~!)
カバンからティーン誌を出して那知に渡した土田。
(忘れ物って、那知、いつ土田君の前でしたの? 土田君、どうして、届けてくれるの......? いつの間に、家まで教えてるの......?)
2人の親し気な様子に、疑問が止めどなく湧き上がり頭がパニックになりそうな澪。
「わざわざ届けてくれて、ありがとう! これ、ちょうど見たかったんだ~! 頑張ったんだけど、なかなかうまくメイク出来なくて......」
今の那知の姿に、ピッタリに感じられる甘めの声を出している。
(その声、どこから出してるの、那知? 何だか、私よりずっと女の子してる......)
「キレイに出来ているよ。お姉さんもいる事だし、聞いたり出来て頼れるからいいね~」
やっと澪の方を見て、気遣うように言った土田。
(その私は、いつもスッピンなんですけどね!)
「うん、そうなの! お姉ちゃん、今は、ちょっとオフ姿だけど、頼りになるから!」
わざとらしく澪の腕を組んだ那知。
(オフ姿って......! 大体、那知が私のワンピースを着ているせいで、私が、こんなダサいジャージ姿になっているんだから!)
「それじゃあ、また」
土田は、用事が済むとすぐに出て行き、止めてあった自転車を動かし、その場を去った音がしていた。
「那知~! どういう事?」
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