転生モブ少女は勇者の恋を応援したいのに!(なぜか勇者がラブイベントをスッ飛ばす)

和島逆

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その後の冒険エトセトラ。

挑戦☆墓場のダンジョン④

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 正しい道がわかるということは、つまりは間違った方向もわかるというわけで。

「うっふふふふ、順調ねぇ。アリサのお陰で宝箱の回収がはかどるわぁ~!」

 ほくほくと宝箱の中身を荷物に入れて、ブランカが悪い笑みを浮かべる。

 当初の予定通り、私たちは最短距離でダンジョンをクリアするのじゃなく、行き止まりの宝箱を狙うのを優先していた。
 法術師用の真っ白なローブに、魔力増強の指輪、古代魔術の術式が記された巻物スクロールと、ここでしか手に入らない希少なアイテムがたくさん手に入った。

巻物スクロールはね、戦闘で一回使うと消えてしまうからね。あえて使わず、古代魔術の研究資料として取っておくのよ!」

 ブランカが楽しそうで何よりだ。
 ……もはや悲鳴どころか、うんともすんとも言わなくなったレグロが気がかりではあるものの。

「だいぶ奥まで来たから、そろそろゴールが近いかもしれないな。アリサ、このダンジョンにもボスがいるのだろう?」

 淡々と魔物を倒したエーリクが、輝く大剣を一振りして問い掛ける。私は大きく頷いた。

「そうそう、緑色のブヨブヨした、巨大な魔物ゾンビみたいなのが襲ってくるよ。ちなみにお供の幽霊たちも引き連れてるけど、こっちは足止め程度で構わないかな。倒してもまたすぐ追加されるだけだし」

「了解よ。ならエーリクとレグロがボスに集中して、マリアが防御と回復、あたしが魔術で幽霊を牽制するって布陣でどお?」

「……………ィャ」

「ブランカさん。レグロさんは嫌だとおっしゃっております」

 巨体を縮こまらせたレグロのつぶやきを、マリアがすかさず拾い上げて通訳してくれる。
 ブランカがため息をついた。

「も~、仕方ないわねぇ。じゃあレグロは戦闘には参加しなくていいから、アリサと二人で下がっておきなさい」

「アリサを頼んだぞ、レグロ」

 方向性が決まったところで、私たちは再び歩き出す。
 エーリクの予想通り、最奥まであといくらもないのだろう。耳を澄ませるまでもなく、歌声は石壁に反響するように響き渡っていた。道も枝分かれすることなく一直線に続いている。

 やがて、私たちは大きな扉にたどり着いた。

 エーリクが慎重に耳を押し当て、中の気配を確かめる。目で合図してきたので、私たちも頷いて武器を構えた。

「――よしッ、行くぞ!」

 エーリクが足で扉を蹴破った。

 転がり込むように中に入ると同時に、すさまじい咆哮が響き渡る。


 ――グォオオオオオッ!!!


「ギャーーーッ、お化けえぇ~~~っ!!!」

「壁に張りついてなさい、レグロッ!」

 ブランカが先陣を切って駆け出して、黒檀の杖を一閃させる。すぐさま爆炎が巻き起こり、半透明の幽霊たちが空気に溶けるように四散していく。

 広間の中央にいた、小山ほどもありそうな緑の魔物が体を震わせた。

『グガァァァァッ!!』

「――こっちだ、化け物め!」

 エーリクが石床を蹴り、天井近くまで飛び上がる。輝く大剣を魔物の脳天に叩きつけた。

「チッ」

 しかし、エーリクは低く舌打ちして着地する。
 魔物の額は少しだけ凹んでいるものの、さほどのダメージはなさそうだった。このボスは防御力がとても高く、ゲームでも倒すのに苦労した覚えがある。

「――マリア、法術でボスの防御力を下げて! それからブランカさんはエーリクに加勢してあげて! 確かあいつには、物理攻撃より魔術の方が効いたはずだからっ」

 大声で怒鳴り、私は腰のベルトから【破邪の短剣】を抜き払った。ブランカにボスへの攻撃に回ってもらうなら、お付きの幽霊たちはこちらで食い止めなければいけない。

 レグロが困ったように眉を下げる。

「あ、アリサちゃん……。そりゃ無茶ってもんだぜ、君のへなちょこビームじゃあ」

「誰が私がやるって言いました!? 幽霊と戦うのはレグロさんっあなたです!」

「でええええぇっ!?」

 顔を引きつらせるレグロに、無理やり短剣を握らせる。ごつごつした大きな手に、私の両手を重ねた。

「大丈夫、遠くからビームで脅してやればいいんです! ほら私が手助けするから、レグロさんは目をつぶって剣を振るだけでいいの!」

「おっ、おおおおうっ!!」

 幽霊の集団が襲いかかってくる。
 すかさず私は「右!」「左上っ!」とレグロに指示を出しながら、二人で一緒に【破邪の短剣】を振るった。先ほどとは比べものにならない光線が、あやまたず幽霊たちを貫いていく。

「よッ、よっしゃあ! ざまぁみろお化けどもめ!!」

 声だけは威勢がいいものの、相変わらず顔は土気色のまま。そんな彼を励ましながら、しっかりと手を重ねて幽霊たちを下していく。

「――これで、終わりだっ!」

 はっと気がつけば、エーリクがボスに止めを刺すところだった。
 魔物の額に突き立てた大剣が、眩しいほどの輝きを放つ。


 ――オオオオオ……!


 断末魔の叫びを上げて、魔物の体が跡形もなく崩れ去った。
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