19 / 38
17.まるで、乾いた大地に沁み込むように
しおりを挟む
「……恋人じゃない?」
男が低い声でうなった。
しばし考え込み、ややあって訝るように眉をひそめる。
「いえ、ですが毎日欠かさず言葉を交わし、至極くだらなく面白くもない内容で笑い合っていちゃついていますよね? それにいつも、互いの身を気遣い合っている」
「恋人じゃなくたってそうしますよ。私たちは大事な家族なんだから!」
「……ふぅん。ま、僕は別に餌として機能さえすれば、恋人だろうが家族だろうが構いませんよ。興味も無い」
肩をすくめ、すっと手を壁に向かってかざした。水晶が男の手から離れ、ふわふわと飛んでいく。
「今からこれを使い、勇者たちと接触します。あなたはただ惨めに泣いて助けを求めればいい、簡単でしょう?」
嘲るような笑みを浮かべると、男は口の中で呪文を唱えた。水晶がぐにゃりと歪み、大きく渦を巻く。
ややあって、白い壁一面にエーリクたちの姿を映し出した。
『……っ。アリ、サ……?』
『コ、コリー!? 無事だったのですね!? お父様はご一緒なのですか!?』
驚愕に息を呑むエーリクを押しのけるように、ピンク髪の少女――きっとこれがマリア姫だ――が泣き出しそうに顔を歪める。
後ろにいるのは、魔術師ブランカと拳闘士のレグロだろう。二人ともぽかんとして立ち尽くしている。
「――ふふ。ようやく魔王城に辿り着きましたね」
マリアを完全に無視して、ヴァールがエーリクに悠然と微笑みかけた。
「ですが、勇者様はちっとも遊びに来てくださらない。待ちくたびれてしまったので、暇つぶしに客人をお呼びすることにしたのですよ。――来い」
「痛……っ!」
『アリサ!! 貴様っ、アリサに触れるな!!』
『アリアリ~~~っ!!』
エーリクが怒号を上げ、シンちゃんが小さい翼をぱたぱたさせて懸命に叫んだ。私の体が情けなく震え出す。
(餌になんか、なりたくないのに)
足手まといなんて絶対にごめんなのに。ヴァールの狙い通りに動くだなんてまっぴらなのに。
止めようのない涙が後から後からあふれ出す。
「エーリク……、ごめ、なさいっ」
「ふふふ。魔王城の最奥にてお待ちしていますよ、勇者様。早く来なければ、か弱き娘は魔王様の餌食――ぎゃああッ!?」
ゴオオッ!!
突如、視界が真っ白な光に埋め尽くされた。
どうやらエーリクが攻撃を仕掛けたようで、シンちゃんの姿が大剣へと変わっている。
一瞬のけぞったヴァールが、何事もなかったかのように姿勢を正す。
「は、ははは無駄ですよ愚かな勇者め。これはあくまで映像であり攻撃は無意――ひいいぃッ!?」
ゴオオッ!!
「待っ、ねえ聞いて!? お願い本当に無駄だから!?」
ガンガンガンッ!!
「いやまだ話があるんですッ!! 僕の正体とかあるでしょねぇ聞くべきことが!?」
キィィィィィンッ!!
光の奔流が次々と襲いかかってくる。
痛くも痒くもないものの、激しい音と光の明滅に、ヴァールは完全に怯えてしまっている。私は怖いというより、エーリクのあまりの迫力に息を呑んで見入ってしまった。
ヴァールが私の襟首を引っつかみ、ダッシュで部屋の隅に避難する。
(あ、あ、あ、あの馬鹿勇者~~~ッ! おい人間の娘、お前から話せ! 僕の正体がコリーではなく、魔族の宰相だということをッ!)
ささやき声で命令するヴァールに、私は顔をしかめてみせる。
(ええ~っ、自分で言えばいいじゃない)
(だって聞く耳持ってないだろあの阿呆!!)
ぜえはあと肩を怒らせ、ヴァールが目を血走らせた。
仕方ない。彼にとってこれは切実なのだ。
精神を乗っ取っている以上、今のヴァールはコリーと一心同体。コリーの肉体が死ねば、当然ながらヴァールも一緒に死ぬことになる。
それが嫌なら、ヴァールはとっととコリーの精神から撤退すべきなのだけれど。
(一度離れちゃったら、また乗っ取るまで長い時間がかかることになるんだよね)
ヴァールとしては、コリーの肉体そのものも人質として(特にマリアに対しては)価値がある。ギリギリまでキープしておきたいのが本音だろう。
「……わかりました。私としても、エーリクに人殺しなんてしてほしくないし。コリーさんも可哀想な被害者だし」
ため息をつき、私はヴァールの頼みを了承した。ヴァールの顔がぱっと明るくなる。
「よ、よしッ。では阿呆にでも理解できるよう、しかと伝えるように!」
偉そうに告げるなり、ヴァールは私を引き連れゆうゆうと元の位置に戻った。しかし、すぐにまた顔を引きつらせる。
「ひ……っ?」
『――おい。貴様。宮廷魔術師コリー』
エーリクが殺人鬼のような顔で、まっすぐにヴァールを睨んでいた。
『今の攻撃が無意味なのはわかっている。ブランカが、これは単なる映像だと教えてくれたからな。大体アリサに危険が及ぶような真似を、この俺がするはずがないだろう?』
地を這うような低い声。
ヴァールは生まれたての子鹿のようにぷるぷると足を震わせる。
『――だから、今のは俺とシンちゃんからの警告だ』
大剣から元の姿に戻ったシンちゃんが、ボーッと口から火を噴いた。
『そうだぞぉ~! アリアリに傷一つでもつけてみろ、オレと相棒の怒りでてめーは跡形もなく吹き飛ぶんだかんなっ! わかったかこの優男野郎っ!!』
ヴァールが死んだ魚の目で私を振り返る。ああはいはい……。
仕方なく私は前に出た。『アリサ……!』と手を伸ばすエーリクに、硬い顔で頷きかける。
「……聞いて、エーリク。実はこの男の、コリーの正体は、なんと――……ゲホッ、ごほごほごほッガフごふぅッ!? あっごめ何か引っかごほほッ、ごほほほ!!」
「ええええええ今ぁっ!!?」
『アリサァァァァッ! しっかりしろっ、苦しいんだな!? 待ってろ今すぐ助けに行く!!』
『うおおお~っ、者ども囚われのアリアリを救い出すんだぁぁぁっ!!』
『おっしゃあ任せろ腕が鳴るぜぇっ!!』
『燃えカスすらも残してやらないわ。マリア、アンタも行けそう?』
『ええ、もちろんです。わたくしやお父様を騙したこと――血涙を流して後悔させてやりますッ!』
テッテレー。
私の咳込みでみんなのやる気がアップした。いやじゃなくって。
「ぐ、みず……みず……!」
這うようにテーブルへ移動し、すっかり冷めたお茶を一気飲みする。ふう、生き返った。
「あ~、死ぬかと思ったぁ」
「あああああッ待ってまだ行かないでーーー! 衝撃の事実がまだ残って、ああもう城の中に入ってきたああああ!! いやああああ!!」
映像の中にエーリクたちの姿はもうなく、無人の城下町に寂しい木枯らしが吹いた(気がした)。
男が低い声でうなった。
しばし考え込み、ややあって訝るように眉をひそめる。
「いえ、ですが毎日欠かさず言葉を交わし、至極くだらなく面白くもない内容で笑い合っていちゃついていますよね? それにいつも、互いの身を気遣い合っている」
「恋人じゃなくたってそうしますよ。私たちは大事な家族なんだから!」
「……ふぅん。ま、僕は別に餌として機能さえすれば、恋人だろうが家族だろうが構いませんよ。興味も無い」
肩をすくめ、すっと手を壁に向かってかざした。水晶が男の手から離れ、ふわふわと飛んでいく。
「今からこれを使い、勇者たちと接触します。あなたはただ惨めに泣いて助けを求めればいい、簡単でしょう?」
嘲るような笑みを浮かべると、男は口の中で呪文を唱えた。水晶がぐにゃりと歪み、大きく渦を巻く。
ややあって、白い壁一面にエーリクたちの姿を映し出した。
『……っ。アリ、サ……?』
『コ、コリー!? 無事だったのですね!? お父様はご一緒なのですか!?』
驚愕に息を呑むエーリクを押しのけるように、ピンク髪の少女――きっとこれがマリア姫だ――が泣き出しそうに顔を歪める。
後ろにいるのは、魔術師ブランカと拳闘士のレグロだろう。二人ともぽかんとして立ち尽くしている。
「――ふふ。ようやく魔王城に辿り着きましたね」
マリアを完全に無視して、ヴァールがエーリクに悠然と微笑みかけた。
「ですが、勇者様はちっとも遊びに来てくださらない。待ちくたびれてしまったので、暇つぶしに客人をお呼びすることにしたのですよ。――来い」
「痛……っ!」
『アリサ!! 貴様っ、アリサに触れるな!!』
『アリアリ~~~っ!!』
エーリクが怒号を上げ、シンちゃんが小さい翼をぱたぱたさせて懸命に叫んだ。私の体が情けなく震え出す。
(餌になんか、なりたくないのに)
足手まといなんて絶対にごめんなのに。ヴァールの狙い通りに動くだなんてまっぴらなのに。
止めようのない涙が後から後からあふれ出す。
「エーリク……、ごめ、なさいっ」
「ふふふ。魔王城の最奥にてお待ちしていますよ、勇者様。早く来なければ、か弱き娘は魔王様の餌食――ぎゃああッ!?」
ゴオオッ!!
突如、視界が真っ白な光に埋め尽くされた。
どうやらエーリクが攻撃を仕掛けたようで、シンちゃんの姿が大剣へと変わっている。
一瞬のけぞったヴァールが、何事もなかったかのように姿勢を正す。
「は、ははは無駄ですよ愚かな勇者め。これはあくまで映像であり攻撃は無意――ひいいぃッ!?」
ゴオオッ!!
「待っ、ねえ聞いて!? お願い本当に無駄だから!?」
ガンガンガンッ!!
「いやまだ話があるんですッ!! 僕の正体とかあるでしょねぇ聞くべきことが!?」
キィィィィィンッ!!
光の奔流が次々と襲いかかってくる。
痛くも痒くもないものの、激しい音と光の明滅に、ヴァールは完全に怯えてしまっている。私は怖いというより、エーリクのあまりの迫力に息を呑んで見入ってしまった。
ヴァールが私の襟首を引っつかみ、ダッシュで部屋の隅に避難する。
(あ、あ、あ、あの馬鹿勇者~~~ッ! おい人間の娘、お前から話せ! 僕の正体がコリーではなく、魔族の宰相だということをッ!)
ささやき声で命令するヴァールに、私は顔をしかめてみせる。
(ええ~っ、自分で言えばいいじゃない)
(だって聞く耳持ってないだろあの阿呆!!)
ぜえはあと肩を怒らせ、ヴァールが目を血走らせた。
仕方ない。彼にとってこれは切実なのだ。
精神を乗っ取っている以上、今のヴァールはコリーと一心同体。コリーの肉体が死ねば、当然ながらヴァールも一緒に死ぬことになる。
それが嫌なら、ヴァールはとっととコリーの精神から撤退すべきなのだけれど。
(一度離れちゃったら、また乗っ取るまで長い時間がかかることになるんだよね)
ヴァールとしては、コリーの肉体そのものも人質として(特にマリアに対しては)価値がある。ギリギリまでキープしておきたいのが本音だろう。
「……わかりました。私としても、エーリクに人殺しなんてしてほしくないし。コリーさんも可哀想な被害者だし」
ため息をつき、私はヴァールの頼みを了承した。ヴァールの顔がぱっと明るくなる。
「よ、よしッ。では阿呆にでも理解できるよう、しかと伝えるように!」
偉そうに告げるなり、ヴァールは私を引き連れゆうゆうと元の位置に戻った。しかし、すぐにまた顔を引きつらせる。
「ひ……っ?」
『――おい。貴様。宮廷魔術師コリー』
エーリクが殺人鬼のような顔で、まっすぐにヴァールを睨んでいた。
『今の攻撃が無意味なのはわかっている。ブランカが、これは単なる映像だと教えてくれたからな。大体アリサに危険が及ぶような真似を、この俺がするはずがないだろう?』
地を這うような低い声。
ヴァールは生まれたての子鹿のようにぷるぷると足を震わせる。
『――だから、今のは俺とシンちゃんからの警告だ』
大剣から元の姿に戻ったシンちゃんが、ボーッと口から火を噴いた。
『そうだぞぉ~! アリアリに傷一つでもつけてみろ、オレと相棒の怒りでてめーは跡形もなく吹き飛ぶんだかんなっ! わかったかこの優男野郎っ!!』
ヴァールが死んだ魚の目で私を振り返る。ああはいはい……。
仕方なく私は前に出た。『アリサ……!』と手を伸ばすエーリクに、硬い顔で頷きかける。
「……聞いて、エーリク。実はこの男の、コリーの正体は、なんと――……ゲホッ、ごほごほごほッガフごふぅッ!? あっごめ何か引っかごほほッ、ごほほほ!!」
「ええええええ今ぁっ!!?」
『アリサァァァァッ! しっかりしろっ、苦しいんだな!? 待ってろ今すぐ助けに行く!!』
『うおおお~っ、者ども囚われのアリアリを救い出すんだぁぁぁっ!!』
『おっしゃあ任せろ腕が鳴るぜぇっ!!』
『燃えカスすらも残してやらないわ。マリア、アンタも行けそう?』
『ええ、もちろんです。わたくしやお父様を騙したこと――血涙を流して後悔させてやりますッ!』
テッテレー。
私の咳込みでみんなのやる気がアップした。いやじゃなくって。
「ぐ、みず……みず……!」
這うようにテーブルへ移動し、すっかり冷めたお茶を一気飲みする。ふう、生き返った。
「あ~、死ぬかと思ったぁ」
「あああああッ待ってまだ行かないでーーー! 衝撃の事実がまだ残って、ああもう城の中に入ってきたああああ!! いやああああ!!」
映像の中にエーリクたちの姿はもうなく、無人の城下町に寂しい木枯らしが吹いた(気がした)。
69
お気に入りに追加
158
あなたにおすすめの小説
姫騎士様と二人旅、何も起きないはずもなく……
踊りまんぼう
ファンタジー
主人公であるセイは異世界転生者であるが、地味な生活を送っていた。 そんな中、昔パーティを組んだことのある仲間に誘われてとある依頼に参加したのだが……。 *表題の二人旅は第09話からです
(カクヨム、小説家になろうでも公開中です)
【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!
最強転生悪役令嬢は人生を謳歌したい!~今更SSクラスに戻れと言われても『もう遅い!』Cクラスで最強を目指します!~【改稿版】
てんてんどんどん
ファンタジー
ベビーベッドの上からこんにちは。
私はセレスティア・ラル・シャンデール(0歳)。聖王国のお姫様。
私はなぜかRPGの裏ボス令嬢に転生したようです。
何故それを思い出したかというと、ごくごくとミルクを飲んでいるときに、兄(4歳)のアレスが、「僕も飲みたいー!」と哺乳瓶を取り上げてしまい、「何してくれるんじゃワレ!??」と怒った途端――私は闇の女神の力が覚醒しました。
闇の女神の力も、転生した記憶も。
本来なら、愛する家族が目の前で魔族に惨殺され、愛した国民たちが目の前で魔族に食われていく様に泣き崩れ見ながら、魔王に復讐を誓ったその途端目覚める力を、私はミルクを取られた途端に目覚めさせてしまったのです。
とりあえず、0歳は何も出来なくて暇なのでちょっと魔王を倒して来ようと思います。デコピンで。
--これは最強裏ボスに転生した脳筋主人公が最弱クラスで最強を目指す勘違いTueee物語--
※最強裏ボス転生令嬢は友情を謳歌したい!の改稿版です(5万文字から10万文字にふえています)
※27話あたりからが新規です
※作中で主人公最強、たぶん神様も敵わない(でも陰キャ)
※超ご都合主義。深く考えたらきっと負け
※主人公はそこまで考えてないのに周囲が勝手に深読みして有能に祀り上げられる勘違いもの。
※副題が完結した時点で物語は終了します。俺たちの戦いはこれからだ!
※他Webサイトにも投稿しております。
乙女ゲームの悪役令嬢は断罪回避したらイケメン半魔騎士に執着されました
白猫ケイ
恋愛
【本編完結】魔法学園を舞台に異世界から召喚された聖女がヒロイン王太子含む7人のイケメンルートを選べる人気のゲーム、ドキ☆ストの悪役令嬢の幼少期に転生したルイーズは、断罪回避のため5歳にして名前を変え家を出る決意をする。小さな孤児院で平和に暮らすある日、行き倒れの子供を拾い懐かれるが、断罪回避のためメインストーリー終了まで他国逃亡を決意。
「会いたかったーー……!」
一瞬何が起きたか理解が遅れる。新聞に載るような噂の騎士に抱きすくめられる様をみた、周囲の人がざわめく。
【イラストは自分で描いたイメージです。サクッと読める短めのお話です!ページ下部のいいね等お気軽にお願いします!執筆の励みになります!】
悪役令嬢、第四王子と結婚します!
水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします!
小説家になろう様にも、書き起こしております。
不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜
晴行
恋愛
乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。
見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。
これは主人公であるアリシアの物語。
わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。
窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。
「つまらないわ」
わたしはいつも不機嫌。
どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。
あーあ、もうやめた。
なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。
このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。
仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。
__それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。
頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。
の、はずだったのだけれど。
アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。
ストーリーがなかなか始まらない。
これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。
カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?
それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?
わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?
毎日つくれ? ふざけるな。
……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる