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64.素直な気持ち
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「あっ、クリスくーん! ロッティから聞いたよ、ひどい風邪だったんだって? もう大丈夫なの?」
「いらっしゃい、エレナさんっ。おれならもうカンッペキ全快、絶好調だよ!」
走って出迎えてくれたクリスが、頼もしく己の胸を叩く。
ロッティは安堵の息を吐くと、「これ差し入れです」とお菓子の箱を差し出した。クリスが嬉しげに礼を言う。
――怒涛の建国記念祭から、はや半月。
今日はエレナを伴って、魔石作りの息抜きがてらシベリウスの稽古見学に訪れたのだ。
演劇の稽古風景など初めて目にするエレナが、きょろきょろと興味深そうに周りを窺った。
「すっごい、活気にあふれてるねー。……歌姫クリスティアナの正体が実はクリス君なんだって、ロッティから聞いた時は本当に驚いたけど。こんな重大事実、あたしにまで教えちゃってよかったの?」
「へっへん。もうじき引退公演が始まるからさ、せっかくなら王都でできた友達全員に、クリスティアナの歌を聞いてほしいって思ったんだ」
とは言うものの、王都に来てから演劇漬けだったクリスには、劇団関係者でない友人はそう多くない。カイは元から知っていたし、新たに秘密を明かしたのはエレナとバート夫妻くらいのものだ。
「そうそう、チケットをありがとね! バートは観劇で居眠りする系の罪深いヤツなんだけど、クリス君の歌だけは頬をつねり上げつつ聞くって言ってたよ」
「痛そう!? つか、できれば歌以外も全部起きといてほしいかなー」
ずっこけながらも突っ込むクリスに、エレナは朗らかな笑い声を立てた。台詞合わせをする団員達に目を光らせて、そわそわと足踏みする。
「……ね、ねっ。美貌の歌姫フローラも、シベリウスに復帰したって聞いたんだけど?」
興味津々なエレナの問いに、クリスは一瞬固まった。ややあって、おかしそうに頬をゆるめる。
ちょいちょい、とエレナとロッティを手招きすると、にやりと笑って声をひそめた。
「あっち、あっち。ひっつめ髪に地味~な茶色の服を着て、だっさい白エプロンと三角巾付けて、一生懸命に雑巾がけしてる美人がいるだろ?」
「ええええっ!? あ、あれがあのフローラさんですかぁっ!?」
稽古場にロッティの素っ頓狂な悲鳴が響き渡る。
当然フローラ本人の耳にも届いてしまったようで、フローラがギッと人を殺しそうな顔で振り向いた。他の団員達はどっと笑い出したが、ロッティは青ざめて後ずさる。
「わっ!?」
背中に激しく何かがぶつかって、慌てて振り返った先にはアナがいた。ロッティの肩を支え、いたずらっぽく片目をつぶる。
「フローラにはね、私の代わりにクリスティアナの代役をお願いしたの。公演の最中、万が一クリスの声変わりが始まってしまった時には、フローラが主役を演じるわ」
「え、でも……」
ロッティは戸惑い顔でアナを見上げた。
「……練習、してなくないですか?」
「なんかね、イマイチ気乗りしないみたい。だっておれが全公演やり通せたら、フローラの出番は回ってこないだろー? 練習嫌いなフローラが、練習損になっちゃうんだぜー?」
クリスがからかうように口を挟んだ瞬間、「ちっがうわよ!」という鋭い叫び声が飛んできた。いつの間にかすぐ側まで来ていたフローラが、目を血走らせてクリスを睨みつける。
「あたしは天才だからね、とっくに台詞も歌も完璧に覚えちゃったってだけ! 今掃除してたのは、剣舞の練習が始まるまでの単なる暇つぶしよ、暇つぶし!」
「暇つぶし?……違うでしょう?」
アナが意味ありげに眉を上げた。
途端に硬直するフローラに歩み寄り、その耳元にそっと唇を寄せる。
「新入りは、掃除やお使いを率先してやるものだって言われたからよね? つまりあなたは、これまでの我儘で高飛車な言動を封印して、自分の気持ちに素直になるって決めたってこと。無事に念願成就するかは別として、とても素晴らしいことだと思うわ」
「……っ!」
(……へ?)
フローラが息を呑み、ロッティ達は顔を見合わせた。クリスとエレナの表情から、彼らも今しがたのアナの言葉を理解できていないことが窺える。
真っ赤になったフローラは、「ちがっ」だの「誤解よっ」だのと意味不明な発言を繰り返していたが、劇団長であるダレルがやって来るのを見て口をつぐんだ。
異様な雰囲気に気付いたのか、ダレルが驚いたように足を止める。
「お、おお? 何かあったのか?」
「いいえ、別に。……エレナさん、こちらは私の父のダレルよ。父さん、これから得意先への挨拶回りに行くのよね?」
「おう、公演も迫ってきたことだしなぁ。ちっと行ってくるわ」
のほほんと笑うダレルを見て、「だったら」とアナが手を打った。フローラのエプロンのリボンを解いて、その背中をダレルの方へと押しやる。
「荷物持ちに新入りも連れていくといいわ。ちょうど今なら体が空いてるそうよ」
「えっ!?」
「フローラを? いや、うぅん……。だがまあ、誰もその格好を見て、フローラだとは気付かんか……」
髭を撫でながら独りごちると、ダレルは「よし、なら行くか」と朗らかに笑った。口をパクパクさせたフローラは、ロッティ達の視線に気付いた途端、ツンと取り澄まして背筋を伸ばす。
「仕方ないわね、新入りとして手伝ってあげないこともないわ!」
美しい金髪をいそいそと解き、ポケットから取り出した櫛で整えてダレルの後を追った。二人の背中が消えるのを見送ると、エレナが笑い出しそうな顔でアナを見る。
「……ね、アナ」
「クリス。本番が近いのよ、あなたは早く戻りなさいな」
アナはエレナを無視して、目を白黒させているクリスの肩を押した。クリスは「内緒話かよ」と頬をふくらませつつ、しぶしぶ稽古へと戻っていく。
充分離れたのを確認してから、アナがおかしそうにロッティ達を振り返る。
「わかりやすいでしょう? 以前は私しか気付いていなかったのだけど、今では劇団員の大半が察してるみたいよ」
「あの歌姫フローラが、すっごい意外~!……なんて言ったら、ダレルさんに失礼か。ちなみにアナのお母さんは?」
「健在だけど、私が子供の頃に円満離婚して今は外国にいるの。ちなみにそちらで新しい家庭を築いているわね」
いたずらっぽく告げるアナに、エレナが「なるほどなるほど」と含み笑いする。ロッティひとりだけが、話にさっぱり付いていけてない。
「えぇと……?」
「あれ、もしやロッティにはわかんなかった? あのね……」
エレナからこしょこしょと耳打ちされ、ロッティは目をまんまるにする。あわあわと腕を振り回す彼女を見て、アナとエレナが同時に噴き出した。
「父は朴念仁だから、全く気付いてないけどね。まあ、お互いいい大人なのだし、私は特に応援も反対もする気はないわ」
「アナってば、おっとな~!」
アナは大仰に褒めるエレナにウインクすると、真面目くさった顔でロッティに向き直る。
「父達の話は置いといて。……ロッティさんの恋の話は、あれからどうなったのかしら。聞いても構わない?」
「ひぇっ!?」
「あっ、それあたしも聞きたかった! ほらほらロッティ、吐きなさいよっ」
目を爛々と光らせた二人に詰め寄られ、ロッティは赤くなったり青くなったりする。壁際まで追い詰められて、とうとう白旗を上げてしまった。
「ううう……。実はちょっと、顔を合わせるのが気恥ずかしいっていうか……。魔石作りが忙しいのを理由に、会うのを断ってるっていうか……?」
「えええっ?」
大声を出すエレナに、「だって!」と弁解する。
「ち、中途半端なことを言っちゃった自覚はあるんですっ。恥ずかしくて恥ずかしくて、これは先に魔石を完成させなければと……!」
「なんでそこで魔石が出てくるの!?」
「まあまあ、エレナさん」
半眼になるエレナを、笑いながらアナがいなした。
懐から封筒を取り出して、ひらひらと勿体つけるようにしてロッティに差し出してくる。
「公演初日のチケットよ。二枚入ってるから、フィルさんを誘ってみるといいわ。ちなみにその日の仕事が休みなのは、クリス経由で確認済み」
「うぐっ」
「おっ! いいじゃんいいじゃん、頑張って~!」
潰された蛙のような声を上げながらも、ロッティは勇気を振り絞って封筒を受け取った。胸に抱き締め、決然とこぶしを突き上げる。
「わ、わかりましたっ。でしたら公演までに、何としても魔石を完成させてみせますっ!」
「いや、だからなんで魔石っ?」
ロッティとフィルの魔石交換について知らないエレナは、またも全力で突っ込むのだった。
「いらっしゃい、エレナさんっ。おれならもうカンッペキ全快、絶好調だよ!」
走って出迎えてくれたクリスが、頼もしく己の胸を叩く。
ロッティは安堵の息を吐くと、「これ差し入れです」とお菓子の箱を差し出した。クリスが嬉しげに礼を言う。
――怒涛の建国記念祭から、はや半月。
今日はエレナを伴って、魔石作りの息抜きがてらシベリウスの稽古見学に訪れたのだ。
演劇の稽古風景など初めて目にするエレナが、きょろきょろと興味深そうに周りを窺った。
「すっごい、活気にあふれてるねー。……歌姫クリスティアナの正体が実はクリス君なんだって、ロッティから聞いた時は本当に驚いたけど。こんな重大事実、あたしにまで教えちゃってよかったの?」
「へっへん。もうじき引退公演が始まるからさ、せっかくなら王都でできた友達全員に、クリスティアナの歌を聞いてほしいって思ったんだ」
とは言うものの、王都に来てから演劇漬けだったクリスには、劇団関係者でない友人はそう多くない。カイは元から知っていたし、新たに秘密を明かしたのはエレナとバート夫妻くらいのものだ。
「そうそう、チケットをありがとね! バートは観劇で居眠りする系の罪深いヤツなんだけど、クリス君の歌だけは頬をつねり上げつつ聞くって言ってたよ」
「痛そう!? つか、できれば歌以外も全部起きといてほしいかなー」
ずっこけながらも突っ込むクリスに、エレナは朗らかな笑い声を立てた。台詞合わせをする団員達に目を光らせて、そわそわと足踏みする。
「……ね、ねっ。美貌の歌姫フローラも、シベリウスに復帰したって聞いたんだけど?」
興味津々なエレナの問いに、クリスは一瞬固まった。ややあって、おかしそうに頬をゆるめる。
ちょいちょい、とエレナとロッティを手招きすると、にやりと笑って声をひそめた。
「あっち、あっち。ひっつめ髪に地味~な茶色の服を着て、だっさい白エプロンと三角巾付けて、一生懸命に雑巾がけしてる美人がいるだろ?」
「ええええっ!? あ、あれがあのフローラさんですかぁっ!?」
稽古場にロッティの素っ頓狂な悲鳴が響き渡る。
当然フローラ本人の耳にも届いてしまったようで、フローラがギッと人を殺しそうな顔で振り向いた。他の団員達はどっと笑い出したが、ロッティは青ざめて後ずさる。
「わっ!?」
背中に激しく何かがぶつかって、慌てて振り返った先にはアナがいた。ロッティの肩を支え、いたずらっぽく片目をつぶる。
「フローラにはね、私の代わりにクリスティアナの代役をお願いしたの。公演の最中、万が一クリスの声変わりが始まってしまった時には、フローラが主役を演じるわ」
「え、でも……」
ロッティは戸惑い顔でアナを見上げた。
「……練習、してなくないですか?」
「なんかね、イマイチ気乗りしないみたい。だっておれが全公演やり通せたら、フローラの出番は回ってこないだろー? 練習嫌いなフローラが、練習損になっちゃうんだぜー?」
クリスがからかうように口を挟んだ瞬間、「ちっがうわよ!」という鋭い叫び声が飛んできた。いつの間にかすぐ側まで来ていたフローラが、目を血走らせてクリスを睨みつける。
「あたしは天才だからね、とっくに台詞も歌も完璧に覚えちゃったってだけ! 今掃除してたのは、剣舞の練習が始まるまでの単なる暇つぶしよ、暇つぶし!」
「暇つぶし?……違うでしょう?」
アナが意味ありげに眉を上げた。
途端に硬直するフローラに歩み寄り、その耳元にそっと唇を寄せる。
「新入りは、掃除やお使いを率先してやるものだって言われたからよね? つまりあなたは、これまでの我儘で高飛車な言動を封印して、自分の気持ちに素直になるって決めたってこと。無事に念願成就するかは別として、とても素晴らしいことだと思うわ」
「……っ!」
(……へ?)
フローラが息を呑み、ロッティ達は顔を見合わせた。クリスとエレナの表情から、彼らも今しがたのアナの言葉を理解できていないことが窺える。
真っ赤になったフローラは、「ちがっ」だの「誤解よっ」だのと意味不明な発言を繰り返していたが、劇団長であるダレルがやって来るのを見て口をつぐんだ。
異様な雰囲気に気付いたのか、ダレルが驚いたように足を止める。
「お、おお? 何かあったのか?」
「いいえ、別に。……エレナさん、こちらは私の父のダレルよ。父さん、これから得意先への挨拶回りに行くのよね?」
「おう、公演も迫ってきたことだしなぁ。ちっと行ってくるわ」
のほほんと笑うダレルを見て、「だったら」とアナが手を打った。フローラのエプロンのリボンを解いて、その背中をダレルの方へと押しやる。
「荷物持ちに新入りも連れていくといいわ。ちょうど今なら体が空いてるそうよ」
「えっ!?」
「フローラを? いや、うぅん……。だがまあ、誰もその格好を見て、フローラだとは気付かんか……」
髭を撫でながら独りごちると、ダレルは「よし、なら行くか」と朗らかに笑った。口をパクパクさせたフローラは、ロッティ達の視線に気付いた途端、ツンと取り澄まして背筋を伸ばす。
「仕方ないわね、新入りとして手伝ってあげないこともないわ!」
美しい金髪をいそいそと解き、ポケットから取り出した櫛で整えてダレルの後を追った。二人の背中が消えるのを見送ると、エレナが笑い出しそうな顔でアナを見る。
「……ね、アナ」
「クリス。本番が近いのよ、あなたは早く戻りなさいな」
アナはエレナを無視して、目を白黒させているクリスの肩を押した。クリスは「内緒話かよ」と頬をふくらませつつ、しぶしぶ稽古へと戻っていく。
充分離れたのを確認してから、アナがおかしそうにロッティ達を振り返る。
「わかりやすいでしょう? 以前は私しか気付いていなかったのだけど、今では劇団員の大半が察してるみたいよ」
「あの歌姫フローラが、すっごい意外~!……なんて言ったら、ダレルさんに失礼か。ちなみにアナのお母さんは?」
「健在だけど、私が子供の頃に円満離婚して今は外国にいるの。ちなみにそちらで新しい家庭を築いているわね」
いたずらっぽく告げるアナに、エレナが「なるほどなるほど」と含み笑いする。ロッティひとりだけが、話にさっぱり付いていけてない。
「えぇと……?」
「あれ、もしやロッティにはわかんなかった? あのね……」
エレナからこしょこしょと耳打ちされ、ロッティは目をまんまるにする。あわあわと腕を振り回す彼女を見て、アナとエレナが同時に噴き出した。
「父は朴念仁だから、全く気付いてないけどね。まあ、お互いいい大人なのだし、私は特に応援も反対もする気はないわ」
「アナってば、おっとな~!」
アナは大仰に褒めるエレナにウインクすると、真面目くさった顔でロッティに向き直る。
「父達の話は置いといて。……ロッティさんの恋の話は、あれからどうなったのかしら。聞いても構わない?」
「ひぇっ!?」
「あっ、それあたしも聞きたかった! ほらほらロッティ、吐きなさいよっ」
目を爛々と光らせた二人に詰め寄られ、ロッティは赤くなったり青くなったりする。壁際まで追い詰められて、とうとう白旗を上げてしまった。
「ううう……。実はちょっと、顔を合わせるのが気恥ずかしいっていうか……。魔石作りが忙しいのを理由に、会うのを断ってるっていうか……?」
「えええっ?」
大声を出すエレナに、「だって!」と弁解する。
「ち、中途半端なことを言っちゃった自覚はあるんですっ。恥ずかしくて恥ずかしくて、これは先に魔石を完成させなければと……!」
「なんでそこで魔石が出てくるの!?」
「まあまあ、エレナさん」
半眼になるエレナを、笑いながらアナがいなした。
懐から封筒を取り出して、ひらひらと勿体つけるようにしてロッティに差し出してくる。
「公演初日のチケットよ。二枚入ってるから、フィルさんを誘ってみるといいわ。ちなみにその日の仕事が休みなのは、クリス経由で確認済み」
「うぐっ」
「おっ! いいじゃんいいじゃん、頑張って~!」
潰された蛙のような声を上げながらも、ロッティは勇気を振り絞って封筒を受け取った。胸に抱き締め、決然とこぶしを突き上げる。
「わ、わかりましたっ。でしたら公演までに、何としても魔石を完成させてみせますっ!」
「いや、だからなんで魔石っ?」
ロッティとフィルの魔石交換について知らないエレナは、またも全力で突っ込むのだった。
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