86 / 87
番外編
昔語り【中編】
しおりを挟む
その日その時その瞬間まで、僕の意識は曖昧模糊としていた。
ひどく頼りなく、不安定。まるで寄せては返す波のよう。
――『彼女』という存在そのものが、僕を形作ってくれたんだ。
***
「お代わりをねだる彼女に嬉しくなって、僕は懸命に体を揺らした。ぽとぽとぽとぽと、林檎は落ちた。彼女は大喜びでそれを拾い、芯だけ残して全て綺麗に平らげた……」
うっとりと頬を染め、初代さんは悩ましげな吐息をつく。精霊の実の大樹が、呼応するようにさらさら揺れた。
初代さんは両眼を覆う黒の丸ガラスを少しだけずらすと、荒っぽく目元をこすった。すばやくガラスを戻し、しゅんと鼻をすする。
「……僕は、彼女に伝えたかった。また君のために実を付けるから食べてくれ、と。けれど当時の僕は、声の出し方など知らなかった。言葉など知らなかった。……だって僕は、ありふれた林檎の木に過ぎなかったのだから……」
ガイウス陛下がごくんと唾を飲み込んだ。
「精霊では……なかったのですか?」
掠れ声での問い掛けに、初代さんは唇をきつく引き結ぶ。無視してそっぽを向き、「それからすぐ」と声を荒げた。
「彼女はここを安住の地と定めたのさ。僕の木を中心として、新たな集落を作ってくれたんだ」
それまで別々に暮らしていた種族が、ひとつになった瞬間だった。
結界の内側は作物が豊かに実る楽園で、獣人達は種の隔たりもなく力を合わせた。
獅子の獣人も蛇の獣人も、猫の獣人も熊の獣人も。やがて集落はランダールという名の国となり、フィオナは王と呼ばれるようになった。
震える手を隠すように握り込んだ初代さんが、どっしりと根を張る大樹を見上げる。その細い背中は切なげで、ひどく物悲しい。
「初代さ――」
「しいっ、リリアーナ。邪魔しちゃ駄目」
伸ばしかけた手を突然掴まれて、頬をやわらかな何かがくすぐった。一体いつの間に現れたのか、至近距離からコハクが私を見上げている。
目を丸くする私に、うさぎ耳をふるふる揺らしてかぶりを振った。
「彼が気分を害したら、ここで話が終わることもあるらしいんだ。せっかくなら最後まで聞きたいでしょう?」
琥珀色の真剣な瞳を向けられ、私も慌てて頷いた。唇にしっかりと人差し指を押し当てたところで、隣のガイウス陛下が挙手して口を開こうとする。
泡を食って彼に抱き着いた。
「リリアーナ?」
「あのね、ガイウス陛下。今、コハクが来てるんだけどね――」
小声で今しがたのコハクの言葉を繰り返すと、ガイウス陛下も大慌てで口を塞いだ。こくこくと勢いよく首を上下させる。
ほっとして彼から体を離した――その瞬間。
「そうよ。これからが本番なのよ」
「そうよ。彼がフラれる下りは絶対に聞くべきだわ」
「そうよ。青春大失恋物語なのよ」
鈴を鳴らすような可愛らしい声が響き渡り、初代さんの背中が目に見えて強ばっていく。
かちんと凍りつく私を、ガイウス陛下が不思議そうに見下ろした。コハクはあっちゃあとうさぎ耳を抱え込む。
私達の周囲を飛び回るのは、若草色のワンピースを身に着けた蝶の羽の小人さん。婚姻の儀式で、私に金の鱗粉を振りかけてくれた女の子達だ。
彼女達は開けっぴろげに笑いながら、歌うように囁き合う。
「せっかく彼女のために精霊になったのにね」
「もう彼女には他に好きな男がいたのよね」
「仕方ないわ。恋愛ってタイミングなのよ」
「お前達いいいいいっ!!」
初代さんが大喝した途端、彼女達はきゃあっと叫んで飛び去った。ガイウス陛下がぎょっとして目を剥く。
「しょ、初代殿? 突然どうなさったのです」
ひとり状況に付いていけていないガイウス陛下に説明してあげたいが、初代さんの怒りに油を注ぐことになりそうだ。
陛下の腕にきつく抱き着いて、「後でね」としかめっ面を作る。
ぜえはあと肩で息をした初代さんが、虫でも追い払うように手を振り回した。
「忌々しいおしゃべり共め……! これだから精霊は嫌いなんだっ」
「や、あなたも精霊でしょう……?」
苦笑する私をひと睨みして、初代さんは荒々しく地面に座り込む。あぐらをかいて、大きく舌打ちした。
「話を戻すぞ。――彼女は僕の林檎で命を繋いだと、大層な恩義を感じてくれた。まだ若木だった僕を囲むようにして壁を巡らせ、ランダール王家聖域の箱庭としたんだ」
「……っ。それって……!」
ガイウス陛下と二人して、せわしなく箱庭を見回した。ぐるりと視線を巡らせて――最後は精霊の実の大樹へと釘付けとなる。
言葉を失う私達に、初代さんは大きく頷いた。
「そう、ここだ。そうしてあの大樹が、僕の林檎の木。……当時の僕は、まだ頼りない若木に過ぎなかったが……」
声音に微苦笑が混じる。
ゆらゆらと立ち上がり、大樹へと歩み寄った。陶然として虚空を見つめ、幻の彼女に向かって手を伸ばす。
「彼女は国民の前では決して獣型を崩さなかった。けれど、彼女以外立ち入れないここでなら……彼女は王という責務から開放され、ひとりのうら若き乙女に戻れる。いつも人型に精一杯のお洒落をして、僕の林檎に小さな口でかぶりついていたよ」
美味しいわ、と彼女は幸せそうに林檎の木を見上げた。彼もまた幸せだった。
だから。
「僕は、こう答えたんだ。『君のためならば、いくらでも』と」
彼女はぽとりと林檎を落とし、目を丸くした。
彼自身だって驚いた。だって、ついさっきまで自分は単なる木だったはずなのに。
「僕は、茫然と己の手を見下ろした。頬を触った。唇をなぞった。そうしてやっと、理解したんだ」
――僕は、精霊に生まれ変わった!
青ざめていた初代さんの頬に、みるみる血の気か戻っていく。
「僕は、力強く彼女を抱き締めた。彼女は驚きながらも笑っていたよ。『ずっと助けてくれていたのは、あなただったのね』と」
当初この地を守っていた精霊の結界は、国が広がるうちにいつの間にか消滅したという。
飢えを乗り越えた獣人の中には、精霊の姿が見える者が何人もいた。無論、その内ひとりがフィオナ女王陛下だ。
獣人と交流するうち、精霊達は獣人に心を許した。彼らに加護を与えた。
作物がよく実ったのはそのお陰であって、初代さんはその頃まだ何もしてはいなかったそうだ。
「僕は正直に打ち明けたんだ。僕じゃない、僕はたった今精霊になったばかりだから、と。けれど良かったら、僕と契約して欲しい、とも」
――この先未来永劫、君とこの国を守ってみせるから。
「彼女は美しく微笑んだ。勿論よ、とすらりとした腕を差し伸べてくれた」
そうして、フィオナ女王陛下は彼に名を与えた。
二人は互いの名を呼び合って、しっかりと手を繋ぐ。はじまりの契約が成立した。
そこまで一息に説明して、初代さんは晴れ晴れと微笑んだ。
両手を大きく広げ、己の体にきつく巻き付ける。
「僕はすぐさま彼女を抱き締めた! 太陽のように輝く黄金色の瞳を覗き込み、思いの丈を告白した!『好きです、僕の伴侶になってください!』と……。そう、したら……」
だんだんと声が小さくなっていき、初代さんはがっくりと肩を落とす。猫背になって、私とガイウス陛下とコハクを順繰りに見回した。
しょんぼりして首をひねる。
「彼女が、何と答えたかというと……」
情けなそうに口をつぐんでしまったので、私とガイウス陛下はすばやく目配せを交わし合った。いっせーの、で同時に口を開く。
『他に好きな男がいるからゴメンネ?』
「…………そうだ」
そのまま、やさぐれたように地面に突っ伏してしまった。
ひどく頼りなく、不安定。まるで寄せては返す波のよう。
――『彼女』という存在そのものが、僕を形作ってくれたんだ。
***
「お代わりをねだる彼女に嬉しくなって、僕は懸命に体を揺らした。ぽとぽとぽとぽと、林檎は落ちた。彼女は大喜びでそれを拾い、芯だけ残して全て綺麗に平らげた……」
うっとりと頬を染め、初代さんは悩ましげな吐息をつく。精霊の実の大樹が、呼応するようにさらさら揺れた。
初代さんは両眼を覆う黒の丸ガラスを少しだけずらすと、荒っぽく目元をこすった。すばやくガラスを戻し、しゅんと鼻をすする。
「……僕は、彼女に伝えたかった。また君のために実を付けるから食べてくれ、と。けれど当時の僕は、声の出し方など知らなかった。言葉など知らなかった。……だって僕は、ありふれた林檎の木に過ぎなかったのだから……」
ガイウス陛下がごくんと唾を飲み込んだ。
「精霊では……なかったのですか?」
掠れ声での問い掛けに、初代さんは唇をきつく引き結ぶ。無視してそっぽを向き、「それからすぐ」と声を荒げた。
「彼女はここを安住の地と定めたのさ。僕の木を中心として、新たな集落を作ってくれたんだ」
それまで別々に暮らしていた種族が、ひとつになった瞬間だった。
結界の内側は作物が豊かに実る楽園で、獣人達は種の隔たりもなく力を合わせた。
獅子の獣人も蛇の獣人も、猫の獣人も熊の獣人も。やがて集落はランダールという名の国となり、フィオナは王と呼ばれるようになった。
震える手を隠すように握り込んだ初代さんが、どっしりと根を張る大樹を見上げる。その細い背中は切なげで、ひどく物悲しい。
「初代さ――」
「しいっ、リリアーナ。邪魔しちゃ駄目」
伸ばしかけた手を突然掴まれて、頬をやわらかな何かがくすぐった。一体いつの間に現れたのか、至近距離からコハクが私を見上げている。
目を丸くする私に、うさぎ耳をふるふる揺らしてかぶりを振った。
「彼が気分を害したら、ここで話が終わることもあるらしいんだ。せっかくなら最後まで聞きたいでしょう?」
琥珀色の真剣な瞳を向けられ、私も慌てて頷いた。唇にしっかりと人差し指を押し当てたところで、隣のガイウス陛下が挙手して口を開こうとする。
泡を食って彼に抱き着いた。
「リリアーナ?」
「あのね、ガイウス陛下。今、コハクが来てるんだけどね――」
小声で今しがたのコハクの言葉を繰り返すと、ガイウス陛下も大慌てで口を塞いだ。こくこくと勢いよく首を上下させる。
ほっとして彼から体を離した――その瞬間。
「そうよ。これからが本番なのよ」
「そうよ。彼がフラれる下りは絶対に聞くべきだわ」
「そうよ。青春大失恋物語なのよ」
鈴を鳴らすような可愛らしい声が響き渡り、初代さんの背中が目に見えて強ばっていく。
かちんと凍りつく私を、ガイウス陛下が不思議そうに見下ろした。コハクはあっちゃあとうさぎ耳を抱え込む。
私達の周囲を飛び回るのは、若草色のワンピースを身に着けた蝶の羽の小人さん。婚姻の儀式で、私に金の鱗粉を振りかけてくれた女の子達だ。
彼女達は開けっぴろげに笑いながら、歌うように囁き合う。
「せっかく彼女のために精霊になったのにね」
「もう彼女には他に好きな男がいたのよね」
「仕方ないわ。恋愛ってタイミングなのよ」
「お前達いいいいいっ!!」
初代さんが大喝した途端、彼女達はきゃあっと叫んで飛び去った。ガイウス陛下がぎょっとして目を剥く。
「しょ、初代殿? 突然どうなさったのです」
ひとり状況に付いていけていないガイウス陛下に説明してあげたいが、初代さんの怒りに油を注ぐことになりそうだ。
陛下の腕にきつく抱き着いて、「後でね」としかめっ面を作る。
ぜえはあと肩で息をした初代さんが、虫でも追い払うように手を振り回した。
「忌々しいおしゃべり共め……! これだから精霊は嫌いなんだっ」
「や、あなたも精霊でしょう……?」
苦笑する私をひと睨みして、初代さんは荒々しく地面に座り込む。あぐらをかいて、大きく舌打ちした。
「話を戻すぞ。――彼女は僕の林檎で命を繋いだと、大層な恩義を感じてくれた。まだ若木だった僕を囲むようにして壁を巡らせ、ランダール王家聖域の箱庭としたんだ」
「……っ。それって……!」
ガイウス陛下と二人して、せわしなく箱庭を見回した。ぐるりと視線を巡らせて――最後は精霊の実の大樹へと釘付けとなる。
言葉を失う私達に、初代さんは大きく頷いた。
「そう、ここだ。そうしてあの大樹が、僕の林檎の木。……当時の僕は、まだ頼りない若木に過ぎなかったが……」
声音に微苦笑が混じる。
ゆらゆらと立ち上がり、大樹へと歩み寄った。陶然として虚空を見つめ、幻の彼女に向かって手を伸ばす。
「彼女は国民の前では決して獣型を崩さなかった。けれど、彼女以外立ち入れないここでなら……彼女は王という責務から開放され、ひとりのうら若き乙女に戻れる。いつも人型に精一杯のお洒落をして、僕の林檎に小さな口でかぶりついていたよ」
美味しいわ、と彼女は幸せそうに林檎の木を見上げた。彼もまた幸せだった。
だから。
「僕は、こう答えたんだ。『君のためならば、いくらでも』と」
彼女はぽとりと林檎を落とし、目を丸くした。
彼自身だって驚いた。だって、ついさっきまで自分は単なる木だったはずなのに。
「僕は、茫然と己の手を見下ろした。頬を触った。唇をなぞった。そうしてやっと、理解したんだ」
――僕は、精霊に生まれ変わった!
青ざめていた初代さんの頬に、みるみる血の気か戻っていく。
「僕は、力強く彼女を抱き締めた。彼女は驚きながらも笑っていたよ。『ずっと助けてくれていたのは、あなただったのね』と」
当初この地を守っていた精霊の結界は、国が広がるうちにいつの間にか消滅したという。
飢えを乗り越えた獣人の中には、精霊の姿が見える者が何人もいた。無論、その内ひとりがフィオナ女王陛下だ。
獣人と交流するうち、精霊達は獣人に心を許した。彼らに加護を与えた。
作物がよく実ったのはそのお陰であって、初代さんはその頃まだ何もしてはいなかったそうだ。
「僕は正直に打ち明けたんだ。僕じゃない、僕はたった今精霊になったばかりだから、と。けれど良かったら、僕と契約して欲しい、とも」
――この先未来永劫、君とこの国を守ってみせるから。
「彼女は美しく微笑んだ。勿論よ、とすらりとした腕を差し伸べてくれた」
そうして、フィオナ女王陛下は彼に名を与えた。
二人は互いの名を呼び合って、しっかりと手を繋ぐ。はじまりの契約が成立した。
そこまで一息に説明して、初代さんは晴れ晴れと微笑んだ。
両手を大きく広げ、己の体にきつく巻き付ける。
「僕はすぐさま彼女を抱き締めた! 太陽のように輝く黄金色の瞳を覗き込み、思いの丈を告白した!『好きです、僕の伴侶になってください!』と……。そう、したら……」
だんだんと声が小さくなっていき、初代さんはがっくりと肩を落とす。猫背になって、私とガイウス陛下とコハクを順繰りに見回した。
しょんぼりして首をひねる。
「彼女が、何と答えたかというと……」
情けなそうに口をつぐんでしまったので、私とガイウス陛下はすばやく目配せを交わし合った。いっせーの、で同時に口を開く。
『他に好きな男がいるからゴメンネ?』
「…………そうだ」
そのまま、やさぐれたように地面に突っ伏してしまった。
49
お気に入りに追加
565
あなたにおすすめの小説
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
【完結】もう結構ですわ!
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。
愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/29……完結
2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位
2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位
2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位
2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位
2024/09/11……連載開始
雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
そう言うと思ってた
mios
恋愛
公爵令息のアランは馬鹿ではない。ちゃんとわかっていた。自分が夢中になっているアナスタシアが自分をそれほど好きでないことも、自分の婚約者であるカリナが自分を愛していることも。
※いつものように視点がバラバラします。
不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。
猫宮乾
恋愛
再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる