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1章 謎の聖女は最強です!
ドラゴン、現る!
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「ドラゴンがでたぞーーッ! 北の空だ!」
「総員、直ちに武装! 何としてでもこの国を守れッ!!」
「おい、魔導士たちはまだか!」
恐れをなしたものの悲鳴や、戦いを鼓舞する怒号が城中に響き渡る。ついに、サンクトハノーシュ王国の首都にドラゴンが現れてしまったらしい。
急いで城の外に出ると、すでに空はうっすら白みはじめていた。早朝ではあるものの、ドラゴンの襲撃に備える騎士たちが慌ただしく走り回っている。
やがて、ディルたちは白亜の城をぐるりと囲む城壁に到着した。
城壁には、屈強な体格の騎士たちが、一堂に会している。胸には、輝く黄金の勲章。サンクトハノーシュ王国随一の強さを誇る、第一騎士団の証だ。彼らがここにいるということは、すなわちこの場所が戦いの第一線であることを意味した。ピリピリとした独特の緊張感が満ちている。
騎士たちは初め、ドラゴンに立ち向かわんと緊張した面持ちで北の空を見ていた。しかし、ふいにエミをはじめとした一団に気づいたのか、一様に驚きの声をあげる。
「……これは、聖女様! 聖女様がいらっしゃったぞ!」
「聖女様……。お前たち、さっさと聖女様へ道を開けろ!」
急に現れたエミへの騎士たちの向ける眼差しには、どこか畏怖の念がふくまれていた。
当のエミは「みんなおひさ~!」といつも通り緊張感のない口ぶりで騎士たちに声をかけつつ、軽い足取りで城壁の頂上に向かう。城壁からは城下町を一望できるものの、エミたちは眺めの良い景色をのんびりと見ている暇はなかった。
北の空から猛スピードでドラゴンがこちらに向かっている。大きな翼が羽ばたくたびに、猛烈な風切り音が聞こえてきた。
ドラゴンの登場に驚いたエリックが真っ先に腰を抜かして悲鳴をあげる。
「ひぃ、ひいい、本当にこっちに来てるぞ!」
さすがのサクラも真っ青になって後退りし、ロイはサクラをかばうように立ち、ごくりと生唾を飲む。歴戦の騎士たちもどよめいた。
「な、なんてデカさなんだ……」
そのドラゴンは、超自然的な災禍そのものだった。身体の大きさは、大型の船ほど。漆黒の巨躯が、風を裂いてまっすぐに城に向かっている。
『愚カナ人間ドモヨ。アノ忌マワシキ聖女ノ封印ヲ我は解キタリ! 今一度、我ハコノ国ヲ滅ボサン!』
呪いの言葉が、耳障りに空気を震わす。
その場にいた誰もが、ドラゴンの出現に恐れおののき、本能的にドラゴンが炎によりこの国を蹂躙するのだろうと覚悟した。
サンクトハノーシュ王国随一の頭脳を誇るディルでさえ、ドラゴンに勝てるという算段が一瞬たりとも思い浮かばない。
しかし、聖女エミだけは違った。
「うわあ、ガチおこぷんぷん丸ってんね~~!」
その場に立ち込めた緊張感を一気に弛ませる声でそう言うと、彼女はなにげなく一歩踏み出す。
そして、自分の何倍も大きいドラゴンに向かって、エミはぴょんぴょんと手を振りだした。
「ちょっとちょっと、滅ぼすとか物騒なこと言ってるけどさ、仲よくしようよーっ! ラブ&ピースだってぇ!」
「おい、何をしてるんだ!!」
ディルは面食らってエミを止めようとしたものの、ドラゴンが気付く方が早かった。金色に光る眼が、エミを捉える。
『我ニ対峙スルトハ、ソコノオンナ、聖女カ!』
「はーい、ギャルだけど聖女だよ~!! エミたそって呼んで♡」
『自ラ我ヲ呼ブトハ愚カナ! マズハ、オ前カラ始末シテヤル。死ヌマデタップリ痛メツケツケテヤロウ。我ヲ封印シタ聖女ノブンマデ、苦シムガヨイ!』
「あちゃー。これ、けっこう逆恨みされてる系? 交渉しようとしたけどダメぽよだったよぉ……。あたしやっぱし交渉とか向いてないわ~~。マジぴえん」
エミは悲しそうに呟くと、くるりとディルの方を振り返る。
ちょうど昇ってきた朝日が、後光のようにエミを包みこむ。それはまるで、神々しい宗教画のようだとディルはぼんやり思った。
「あのさ、今からちょっとびっくりするようなことするんだけど……、あたしのことキラいにならないでね?」
「……誓おう。別にどんなことが起こってもお前のことは嫌いにならないと」
「……うん、ありがと」
眩い光の中、エミの眼がどこか自信なさげに揺れたように見えた、次の瞬間。
「……――火球(ファイアボール)」
チュドーン、という感じの音がした。
「総員、直ちに武装! 何としてでもこの国を守れッ!!」
「おい、魔導士たちはまだか!」
恐れをなしたものの悲鳴や、戦いを鼓舞する怒号が城中に響き渡る。ついに、サンクトハノーシュ王国の首都にドラゴンが現れてしまったらしい。
急いで城の外に出ると、すでに空はうっすら白みはじめていた。早朝ではあるものの、ドラゴンの襲撃に備える騎士たちが慌ただしく走り回っている。
やがて、ディルたちは白亜の城をぐるりと囲む城壁に到着した。
城壁には、屈強な体格の騎士たちが、一堂に会している。胸には、輝く黄金の勲章。サンクトハノーシュ王国随一の強さを誇る、第一騎士団の証だ。彼らがここにいるということは、すなわちこの場所が戦いの第一線であることを意味した。ピリピリとした独特の緊張感が満ちている。
騎士たちは初め、ドラゴンに立ち向かわんと緊張した面持ちで北の空を見ていた。しかし、ふいにエミをはじめとした一団に気づいたのか、一様に驚きの声をあげる。
「……これは、聖女様! 聖女様がいらっしゃったぞ!」
「聖女様……。お前たち、さっさと聖女様へ道を開けろ!」
急に現れたエミへの騎士たちの向ける眼差しには、どこか畏怖の念がふくまれていた。
当のエミは「みんなおひさ~!」といつも通り緊張感のない口ぶりで騎士たちに声をかけつつ、軽い足取りで城壁の頂上に向かう。城壁からは城下町を一望できるものの、エミたちは眺めの良い景色をのんびりと見ている暇はなかった。
北の空から猛スピードでドラゴンがこちらに向かっている。大きな翼が羽ばたくたびに、猛烈な風切り音が聞こえてきた。
ドラゴンの登場に驚いたエリックが真っ先に腰を抜かして悲鳴をあげる。
「ひぃ、ひいい、本当にこっちに来てるぞ!」
さすがのサクラも真っ青になって後退りし、ロイはサクラをかばうように立ち、ごくりと生唾を飲む。歴戦の騎士たちもどよめいた。
「な、なんてデカさなんだ……」
そのドラゴンは、超自然的な災禍そのものだった。身体の大きさは、大型の船ほど。漆黒の巨躯が、風を裂いてまっすぐに城に向かっている。
『愚カナ人間ドモヨ。アノ忌マワシキ聖女ノ封印ヲ我は解キタリ! 今一度、我ハコノ国ヲ滅ボサン!』
呪いの言葉が、耳障りに空気を震わす。
その場にいた誰もが、ドラゴンの出現に恐れおののき、本能的にドラゴンが炎によりこの国を蹂躙するのだろうと覚悟した。
サンクトハノーシュ王国随一の頭脳を誇るディルでさえ、ドラゴンに勝てるという算段が一瞬たりとも思い浮かばない。
しかし、聖女エミだけは違った。
「うわあ、ガチおこぷんぷん丸ってんね~~!」
その場に立ち込めた緊張感を一気に弛ませる声でそう言うと、彼女はなにげなく一歩踏み出す。
そして、自分の何倍も大きいドラゴンに向かって、エミはぴょんぴょんと手を振りだした。
「ちょっとちょっと、滅ぼすとか物騒なこと言ってるけどさ、仲よくしようよーっ! ラブ&ピースだってぇ!」
「おい、何をしてるんだ!!」
ディルは面食らってエミを止めようとしたものの、ドラゴンが気付く方が早かった。金色に光る眼が、エミを捉える。
『我ニ対峙スルトハ、ソコノオンナ、聖女カ!』
「はーい、ギャルだけど聖女だよ~!! エミたそって呼んで♡」
『自ラ我ヲ呼ブトハ愚カナ! マズハ、オ前カラ始末シテヤル。死ヌマデタップリ痛メツケツケテヤロウ。我ヲ封印シタ聖女ノブンマデ、苦シムガヨイ!』
「あちゃー。これ、けっこう逆恨みされてる系? 交渉しようとしたけどダメぽよだったよぉ……。あたしやっぱし交渉とか向いてないわ~~。マジぴえん」
エミは悲しそうに呟くと、くるりとディルの方を振り返る。
ちょうど昇ってきた朝日が、後光のようにエミを包みこむ。それはまるで、神々しい宗教画のようだとディルはぼんやり思った。
「あのさ、今からちょっとびっくりするようなことするんだけど……、あたしのことキラいにならないでね?」
「……誓おう。別にどんなことが起こってもお前のことは嫌いにならないと」
「……うん、ありがと」
眩い光の中、エミの眼がどこか自信なさげに揺れたように見えた、次の瞬間。
「……――火球(ファイアボール)」
チュドーン、という感じの音がした。
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