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1章 謎の聖女は最強です!
王子、謀る!
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あれは遡ること4か月前、エミがガシュバイフェンに来る前のこと。
聖女の目を見張る活躍により、ようやく隣国との戦争も終わり、ようやくサンクトハノーシュ王国に平和が訪れた。もはや、人々は軍靴の音に怯えなくても良いのだ。人々は勝利を祝って夜通し歌い、街は戦いの主たる功労者である聖女たちを讃える声で溢れた。
戦後処理で慌ただしかった王宮もようやく落ち着きが戻ってきつつある。時は春過ぎ、サンクトハノーシュ王国が一番輝く季節。
そして、戦争の功労者であった聖女たち、つまりエミとサクラは、それなりに忙しい日々を過していた。
戦いの最前線にいた彼女たちは、二人の王子の婚約者として白亜の城に迎えられ、今やテーブルマナーやダンスの教師たちと戦っている真っ最中だ。二人は第一王子と第二王子の婚約者となったため、将来どちらかが王妃となる。そのため、二人は急ピッチで王妃教育を施されていた。
その日も、サクラとエミはクタクタになって食堂に現れ、夕食の席に着いた。二人は王室御用達の一流家庭教師たちによってみっちりしごかれたのだ。
先に席についていた聖女サクラの婚約者であるロイが、気づかわしげに二人を見つめる。
「二人とも、だいぶ疲労困憊のようだけど、大丈夫? 教育係に言って、すこしカリキュラムを減らしてもらおうか?」
「大丈夫だよ。一人だったら耐えられなかったけれど、エミたそも一緒だし」
サクラは疲れた顔をしながら、それでも朗らかに笑う。ロイはサクラの微笑みを前に少しだけ目元を赤らめると、「それなら良かった」と嬉しそうに頷く。
傍らで二人のやりとりを見ていたエミが、頬杖をついてニヤニヤしながら二人をからかった。
「なぁ~んかロイっぺとサクぴって、最近良い感じだよねぇ~」
「もう、エミたそ! 私はエミたそ一筋で、ロイとはそういうのじゃないから! あと、頬杖ついてるよ! いかなる時も頬杖禁止ってさっき教育係のマリアさんに言われたばっかりでしょ」
「あっ、ヤベ! 忘れてた! ホントこういうの向いてないわ~。サクぴはちゃんとできてるから偉いよお♡ ところで、あたしの彼ピはどこなんだろ?」
エミはキョロキョロと周りを見渡す。エミの婚約者であるエリックの姿はどこにもない。いつものエリックであれば、夕食の時間は誰よりも先に食堂に来て、お気に入りの席でふんぞり返っているのに。
しばらくエリックが来るまで待ったものの、なかなか現れなかったため、三人は仕方なく先に夕食を食べはじめた。
いたって和やかな食事だ。エミとサクラが話すのを、ロイが頷いて聞いている。聖女の二人が話すのは、今日起こった出来事や、異世界の生活のことなど。いつまでも話題が尽きることがない。
しかし、そんないつも通りの楽しい夕食で、思わぬ事件が起こった。
夕食も終盤に入り、デザートが運ばれた時、ようやく第一王子が現れた。見知らぬ金髪の女を同伴し、あろうことか仲睦まじい様子で腕を組んで。
デザートに舌鼓をうっていたサクラとエミは突然の闖入者に驚いて食事の手を止め、顔を見合わせた。
「……あの子、誰?」
「マジで知らんてぃん……」
ロイの顔が曇り、咎めるような視線を兄王子に投げる。
「エリック兄さん、どうしたんだい? ここには兄さんの婚約者のエミ嬢がいる。他の女性と腕を組んで現れるなんて、感心しないよ」
「ロイ、お前は黙ってろ。俺はエミと話をつけるためにここに来たのだ」
ロイの抗議の声に、エリックは一切取り合わず、呆然とするエミに顔を向け、額にかかった輝く金髪をフッとはらった。対するエミは不思議そうな顔をして、つけまつ毛に囲まれた大きな目をシパシパさせた。
「え、あたしに関係ある話なの~?」
「もちろん、お前に関係大ありの話だ」
しばらく咳払いなどをしてもったいぶったあと、エリックは高らかに宣言する。
「聖女エミ。今日をもって、お前との婚約を破棄する。理由は、お前がよく分かっているはずだ。お前みたいな危険な女は、俺の婚約者としてふさわしくない。これは、婚約破棄の正当な理由になりえる」
「えっ……」
「そして、俺の新しい婚約者を紹介しよう。アレキセーヌ嬢だ」
エリックの腕にその豊満な胸を押し付けながら、アレキセーヌと紹介された女はニッコリと勝ち誇った笑みを浮かべた。
「わたくし、今しがた第一王子様にご紹介に与りました、アレキセーヌ・フォン・ボリタリアと申します。どうぞお見知りおきを。よろしくお願いいたしますわ。……ああ、もっとも、聖女エミ様にはよろしくしていただかなくても結構でしてよ」
エミに対する露骨な敵意に、当事者であるエミよりも先にサクラが腹を立てた。サクラは、大事な親友であるエミを傷つけられるようなことを言われて黙っているほど、大人しい性格はしていない。
サクラは立ち上がってキッとアレキセーヌを睨みつけた。
「危険かどうかはともかく、エミたそはこの国の救世主なのよ? その態度、失礼過ぎると思うんだけど!」
「きゃっ、怖い。どうしてエミ様ではなく、全く関係のないサクラ様が怒るんですか? わたくし、第二王子のロイ様の婚約者であるサクラ様とは、今後のために仲良くしたいと思っていますのにぃ……」
アレキセーヌは、ふるふると震えながら、碧眼を潤ませる。そんなアレキセーヌを、エリックは優しく抱きしめ、責めるような目でサクラを見る。
「おい、サクラ! 未来の王妃に向かって、無礼なのはどちらだ! 口を慎め!」
「はぁ!? 未来の王妃ぃ!?」
「そうだ。次期国王は俺だ。だから、アレキセーヌは未来の王妃だろう」
無駄にキリっとした顔で、エリックは自信満々に言い放った。アレキセーヌはうっとりした顔でエリックを見つめる。しかし、その場にいた召使い一同は呆れた顔をした。
そもそもサンクトハノーシュ王国の王位を継承するものは、「王族の血統であること」、「心身ともに丈夫であること」、そして「王としての素質があること」の3つが求められる。
つまり、実力主義なのだ。
第二王子であるロイより一年早く生まれた第一王子のエリックにアドバンテージがあるかと言えば、決してそうではない。むしろ先ほどの発言でエリックは自らのを愚鈍さを露呈させてしまい、かなり分が悪くなった。居合わせた召使い一同の中で、第一王子の株はダダ下がりである。数日中に宮中では、「エリック王子は愚鈍」との噂が広まることになるだろう。
これ以上身内の暴走を放っておくわけにはいかないと判断したのか、それまで黙っていたロイも、ため息を交じりに口を挟んだ。
「最近エリック兄さんがこそこそ隠れて何かをしているって気づいていたよ。でも、こんな卑怯なことを企んでいたなんてね。これまで何度となくエリック兄さんはエミ嬢に助けられてきたのに、こんな仕打ちをもって報いるのかい? 自分が恥ずかしいと、一瞬たりとも思わなかった?」
「うっ……」
ロイに正論を容赦なくぶつけられ、エリックは不貞腐れて黙り込む。次期国王と自分で名乗ったにしては、あまりにも情けない態度だ。その場にいたメイドたちや侍従たちも一様に「うわあ」という顔をしている。
食堂がいたたまれない雰囲気に包まれたその時、すっかり蚊帳の外だったエミが唐突に口を開いた。
「ええっと、あたしよく状況わかってないっぽいんだけど、ダーリンの好きピはアレキセーヌちゃんだってこと?」
バサバサのつけまつ毛に囲まれた透明な目で、エミはまっすぐにエリックを見つめた。エリックは「その通りだ」と、尊大に頷いてみせる。
「言っておくが、婚約破棄したくないと駄々をこねても無駄だ。これは決定事項だからな! 俺たちは確かな絆で、愛し合っている。アレキセーヌとの婚約は教会に正式に認められる予定だから――……」
「や~ん! じゃあしょうがないね! おめっと~♡ 末永くラブ&ピースで幸せになんな~」
エミの明るい声が気まずい空気を吹き飛ばした。
誰も祝福しないような元婚約者のあらたな婚約を、エミは心から祝福したのだ。あまりに予想外の一言に、その場にいた誰もが目を丸くした。エリックにひっついていたアレキセーヌでさえ、驚きのあまりあんぐりと口を開けている。
エリックは一瞬硬直した後、ややあってブルブルと震え始めた。
「は、はあ!?!? おま、お前、……この前、俺はお前の好きピだって……ッ」
「いやいや、そんなの関係ないって! 好きピ同士の二人がくっつくのが一番じゃん!」
エミはさっぱりした顔で言い放つ。
つい先ほどまで怒り心頭だったサクラが、信じられないものを見るような目でエミの横顔を見つめた。しかし、サクラの見つめるエミの横顔に、悲しみだとか、嫉妬だとか、そんな負の感情の雰囲気は微塵もない。エミは、本当に心の底から二人の幸せを祈っているようだった。
「婚約破棄、おけまるでーす!」
こうして、聖女エミはあっさりと一方的な婚約破棄を承諾した。あっさりと第一王子の婚約者の座をアレキセーヌ・フォン・ボリタリアに譲ったのだ。
サクラとロイが「この婚約破棄は不当だ」と何度も説得したものの、エミは笑って取り合わなかった。
かくして、救国の聖女エミは王宮を去った。
事態を静観していた国王は、聖女エミが王宮を去ったと耳にして、宰相にこう漏らしたという。『寛容にして清廉、聖女はかくあるべし』、と。
聖女の目を見張る活躍により、ようやく隣国との戦争も終わり、ようやくサンクトハノーシュ王国に平和が訪れた。もはや、人々は軍靴の音に怯えなくても良いのだ。人々は勝利を祝って夜通し歌い、街は戦いの主たる功労者である聖女たちを讃える声で溢れた。
戦後処理で慌ただしかった王宮もようやく落ち着きが戻ってきつつある。時は春過ぎ、サンクトハノーシュ王国が一番輝く季節。
そして、戦争の功労者であった聖女たち、つまりエミとサクラは、それなりに忙しい日々を過していた。
戦いの最前線にいた彼女たちは、二人の王子の婚約者として白亜の城に迎えられ、今やテーブルマナーやダンスの教師たちと戦っている真っ最中だ。二人は第一王子と第二王子の婚約者となったため、将来どちらかが王妃となる。そのため、二人は急ピッチで王妃教育を施されていた。
その日も、サクラとエミはクタクタになって食堂に現れ、夕食の席に着いた。二人は王室御用達の一流家庭教師たちによってみっちりしごかれたのだ。
先に席についていた聖女サクラの婚約者であるロイが、気づかわしげに二人を見つめる。
「二人とも、だいぶ疲労困憊のようだけど、大丈夫? 教育係に言って、すこしカリキュラムを減らしてもらおうか?」
「大丈夫だよ。一人だったら耐えられなかったけれど、エミたそも一緒だし」
サクラは疲れた顔をしながら、それでも朗らかに笑う。ロイはサクラの微笑みを前に少しだけ目元を赤らめると、「それなら良かった」と嬉しそうに頷く。
傍らで二人のやりとりを見ていたエミが、頬杖をついてニヤニヤしながら二人をからかった。
「なぁ~んかロイっぺとサクぴって、最近良い感じだよねぇ~」
「もう、エミたそ! 私はエミたそ一筋で、ロイとはそういうのじゃないから! あと、頬杖ついてるよ! いかなる時も頬杖禁止ってさっき教育係のマリアさんに言われたばっかりでしょ」
「あっ、ヤベ! 忘れてた! ホントこういうの向いてないわ~。サクぴはちゃんとできてるから偉いよお♡ ところで、あたしの彼ピはどこなんだろ?」
エミはキョロキョロと周りを見渡す。エミの婚約者であるエリックの姿はどこにもない。いつものエリックであれば、夕食の時間は誰よりも先に食堂に来て、お気に入りの席でふんぞり返っているのに。
しばらくエリックが来るまで待ったものの、なかなか現れなかったため、三人は仕方なく先に夕食を食べはじめた。
いたって和やかな食事だ。エミとサクラが話すのを、ロイが頷いて聞いている。聖女の二人が話すのは、今日起こった出来事や、異世界の生活のことなど。いつまでも話題が尽きることがない。
しかし、そんないつも通りの楽しい夕食で、思わぬ事件が起こった。
夕食も終盤に入り、デザートが運ばれた時、ようやく第一王子が現れた。見知らぬ金髪の女を同伴し、あろうことか仲睦まじい様子で腕を組んで。
デザートに舌鼓をうっていたサクラとエミは突然の闖入者に驚いて食事の手を止め、顔を見合わせた。
「……あの子、誰?」
「マジで知らんてぃん……」
ロイの顔が曇り、咎めるような視線を兄王子に投げる。
「エリック兄さん、どうしたんだい? ここには兄さんの婚約者のエミ嬢がいる。他の女性と腕を組んで現れるなんて、感心しないよ」
「ロイ、お前は黙ってろ。俺はエミと話をつけるためにここに来たのだ」
ロイの抗議の声に、エリックは一切取り合わず、呆然とするエミに顔を向け、額にかかった輝く金髪をフッとはらった。対するエミは不思議そうな顔をして、つけまつ毛に囲まれた大きな目をシパシパさせた。
「え、あたしに関係ある話なの~?」
「もちろん、お前に関係大ありの話だ」
しばらく咳払いなどをしてもったいぶったあと、エリックは高らかに宣言する。
「聖女エミ。今日をもって、お前との婚約を破棄する。理由は、お前がよく分かっているはずだ。お前みたいな危険な女は、俺の婚約者としてふさわしくない。これは、婚約破棄の正当な理由になりえる」
「えっ……」
「そして、俺の新しい婚約者を紹介しよう。アレキセーヌ嬢だ」
エリックの腕にその豊満な胸を押し付けながら、アレキセーヌと紹介された女はニッコリと勝ち誇った笑みを浮かべた。
「わたくし、今しがた第一王子様にご紹介に与りました、アレキセーヌ・フォン・ボリタリアと申します。どうぞお見知りおきを。よろしくお願いいたしますわ。……ああ、もっとも、聖女エミ様にはよろしくしていただかなくても結構でしてよ」
エミに対する露骨な敵意に、当事者であるエミよりも先にサクラが腹を立てた。サクラは、大事な親友であるエミを傷つけられるようなことを言われて黙っているほど、大人しい性格はしていない。
サクラは立ち上がってキッとアレキセーヌを睨みつけた。
「危険かどうかはともかく、エミたそはこの国の救世主なのよ? その態度、失礼過ぎると思うんだけど!」
「きゃっ、怖い。どうしてエミ様ではなく、全く関係のないサクラ様が怒るんですか? わたくし、第二王子のロイ様の婚約者であるサクラ様とは、今後のために仲良くしたいと思っていますのにぃ……」
アレキセーヌは、ふるふると震えながら、碧眼を潤ませる。そんなアレキセーヌを、エリックは優しく抱きしめ、責めるような目でサクラを見る。
「おい、サクラ! 未来の王妃に向かって、無礼なのはどちらだ! 口を慎め!」
「はぁ!? 未来の王妃ぃ!?」
「そうだ。次期国王は俺だ。だから、アレキセーヌは未来の王妃だろう」
無駄にキリっとした顔で、エリックは自信満々に言い放った。アレキセーヌはうっとりした顔でエリックを見つめる。しかし、その場にいた召使い一同は呆れた顔をした。
そもそもサンクトハノーシュ王国の王位を継承するものは、「王族の血統であること」、「心身ともに丈夫であること」、そして「王としての素質があること」の3つが求められる。
つまり、実力主義なのだ。
第二王子であるロイより一年早く生まれた第一王子のエリックにアドバンテージがあるかと言えば、決してそうではない。むしろ先ほどの発言でエリックは自らのを愚鈍さを露呈させてしまい、かなり分が悪くなった。居合わせた召使い一同の中で、第一王子の株はダダ下がりである。数日中に宮中では、「エリック王子は愚鈍」との噂が広まることになるだろう。
これ以上身内の暴走を放っておくわけにはいかないと判断したのか、それまで黙っていたロイも、ため息を交じりに口を挟んだ。
「最近エリック兄さんがこそこそ隠れて何かをしているって気づいていたよ。でも、こんな卑怯なことを企んでいたなんてね。これまで何度となくエリック兄さんはエミ嬢に助けられてきたのに、こんな仕打ちをもって報いるのかい? 自分が恥ずかしいと、一瞬たりとも思わなかった?」
「うっ……」
ロイに正論を容赦なくぶつけられ、エリックは不貞腐れて黙り込む。次期国王と自分で名乗ったにしては、あまりにも情けない態度だ。その場にいたメイドたちや侍従たちも一様に「うわあ」という顔をしている。
食堂がいたたまれない雰囲気に包まれたその時、すっかり蚊帳の外だったエミが唐突に口を開いた。
「ええっと、あたしよく状況わかってないっぽいんだけど、ダーリンの好きピはアレキセーヌちゃんだってこと?」
バサバサのつけまつ毛に囲まれた透明な目で、エミはまっすぐにエリックを見つめた。エリックは「その通りだ」と、尊大に頷いてみせる。
「言っておくが、婚約破棄したくないと駄々をこねても無駄だ。これは決定事項だからな! 俺たちは確かな絆で、愛し合っている。アレキセーヌとの婚約は教会に正式に認められる予定だから――……」
「や~ん! じゃあしょうがないね! おめっと~♡ 末永くラブ&ピースで幸せになんな~」
エミの明るい声が気まずい空気を吹き飛ばした。
誰も祝福しないような元婚約者のあらたな婚約を、エミは心から祝福したのだ。あまりに予想外の一言に、その場にいた誰もが目を丸くした。エリックにひっついていたアレキセーヌでさえ、驚きのあまりあんぐりと口を開けている。
エリックは一瞬硬直した後、ややあってブルブルと震え始めた。
「は、はあ!?!? おま、お前、……この前、俺はお前の好きピだって……ッ」
「いやいや、そんなの関係ないって! 好きピ同士の二人がくっつくのが一番じゃん!」
エミはさっぱりした顔で言い放つ。
つい先ほどまで怒り心頭だったサクラが、信じられないものを見るような目でエミの横顔を見つめた。しかし、サクラの見つめるエミの横顔に、悲しみだとか、嫉妬だとか、そんな負の感情の雰囲気は微塵もない。エミは、本当に心の底から二人の幸せを祈っているようだった。
「婚約破棄、おけまるでーす!」
こうして、聖女エミはあっさりと一方的な婚約破棄を承諾した。あっさりと第一王子の婚約者の座をアレキセーヌ・フォン・ボリタリアに譲ったのだ。
サクラとロイが「この婚約破棄は不当だ」と何度も説得したものの、エミは笑って取り合わなかった。
かくして、救国の聖女エミは王宮を去った。
事態を静観していた国王は、聖女エミが王宮を去ったと耳にして、宰相にこう漏らしたという。『寛容にして清廉、聖女はかくあるべし』、と。
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