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ふたりの悪役令嬢、のその後

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 長い沈黙のあと、ハルベリー伯爵はもう一度大きくため息をついた。

「……よろしい、許可しよう」
「お父さま! ありがとうございます!」
「まったく、ずいぶんここでの生活が気に入ったようだ。確かに、今のアルベルティーヌは顔色もだいぶ良くなった。表情も明るい。……このままここにいたほうが、アルベルティーヌのためなのかもしれぬな」

 蚊帳の外で息を飲んでふたりのやり取りを見ていたパメラが、おそるおそる口を挟む。

「……じゃ、じゃあ、アルベルティーヌさんはこれからも、ここでの暮らしは続行と言うことでよろしいんですの!?」
「ああ、そうだ。パメラ嬢、娘をよろしく頼んだぞ」
「もちろんです! 喜んで頼まれますわ!」

 パメラは揉み手せんばかりの笑顔で頷いた。ダグラスも、ホッと胸をなで下ろす。
 ハルベリー伯爵はマントを翻し、踵を返した。

「もちろん、ずっとこんな田舎に大事な娘を置いておく気はない。王子の一件を片付ければ、アルベルティーヌにはすぐに王都に帰ってもらう。――それからアルベルティーヌや」
「なにかしら?」
「これはハルベリー家当主としての命令だ。優秀な人材は、早いうちに捕まえておくように」

 優秀な人材たる当の本人パメラは「何の話……?」とポカンとしたものの、アルベルティーヌは笑顔で頷いて晴れやかな笑顔で大きく手を振った。

「もちろん、その辺は抜かりなく! キッチリわたくしの手元に置いて一生こき使う気ですわ~~!」

 そう、アルベルティーヌもまた、抜かりなく悪役令嬢なのであった。

◇◆

 こうして、一件落着し、引き続きサバイバル暮らし続行となった悪役令嬢ふたりは、今日も野原に立っていた。
 ふたりの縦ロールが、野を吹く風に揺れている。

「パメラさん。わたくしは良いお友達を持ったって思っているのよ」

 目をすがめて野ウサギを探していたアルベルティーヌが、ふと呟いた。パメラは真っ赤になる。

「か、勘違いしないでくださる!? この前の一件は、わたくしはあくまで自分の衣食住のためにやっただけですわよ!」
「ホホホ、お約束みたいな台詞ですわね。いわゆるツンデレってやつですわ」
「アルベルティーヌさんの口から俗っぽい言葉が出てくると違和感がありますわね……。まあ、そう言うことにしてあげても良くってよ」

 悪役令嬢ふたりは、お互いに見つめあって高笑いし、そして次の瞬間、目の端に映った野ウサギを揃って追いかけ始めたのだった。
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