【R18】女騎士は冷徹幼馴染の溺愛コマンドに屈しない! -Dom/Subユニバース-

沖果南

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本編

最低な初めて R(4)

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 Domは本能的にパートナーのSubに強い執着心を抱いてしまう性質がある。
 今こうしてイライアスがジェシカを抱くのは、ジェシカに愛しているからではなく、ただ単にSubを支配したいという強い欲求があるからなのだろう。
 つまり、ジェシカはDomとしての彼の本能を煽り、結果的に酷いことをさせていることになる。イライアスには片思いしている人がいると知っているのに。
 きっと、イライアスだってこんな形で好きでもないパートナーと結ばれたくなどなかったに違いない。
 イライアスが本当に抱きたかった人は、傷だらけのジェシカではなく、想い人である女性のはず。
 
(なし崩し的に繋がってしまうなんて、最低……)

 自分の軽率な行動が、幼なじみをここまで追い詰めてしまった。罪悪感が、じわじわと胸の中に溢れ出す。いくら犬猿の仲であっても、やって良いことと悪いことがある。

「ああ、これは、……ヤバい」

 ジェシカがぐるぐると考え込んでいる一方で、イライアスが小さく呟くように言う。
 ゆっくりと抽送されると、破瓜の痛みの中に、微かな快感が入り混じった。こんな時にも快感を拾ってしまうなんて、どうかしている。それなのに、この快感を浅ましい本能のせいだと切って捨てることができない。はしたなくぬかるんでイライアスを受け入れたそこが、どうしようもなく穢らわしいものに思えた。
 この身体は間違いなく悦んでしまっている。相手が、イライアスだからだ。冷たくて、ぶっきらぼうだけど、本当は優しくて、真面目な一面を知っている。
 想い人がいるにもかかわらず、幼なじみのジェシカを大事に思い、パートナーになってしまうような人。
 そんなイライアスに甘えてしまった自分が情けなくて、苦しくて、涙が滲んだ。

「クソ、狭すぎる……っ」
 
 イライアスは悪態をつきながらも、ジェシカの細い腰を掴んでいた手を移動させて、ジェシカの花芯に手を伸ばす。さきほど達したばかりでまだ敏感なそこを指の腹で擦ると、身体の奥から悦楽が溢れ出していく。

「ぁ、あああ、……あん……」
「ジェシカ、あまり、締め付けるな……っ!」
 
 余裕のない声が、頭上から降ってくる。深く埋め込まれた彼自身が、凶暴にジェシカを貫いていた。
 ジェシカは、思わずイライアスの頬に手を伸ばす。滑らかな頬に、指先が触れる。
 
「ごめんね、イライアス。本当に、ごめんなさい……」
「“謝るな”」
「……ッ、んん……」

 コマンドで謝ることすら封じられたジェシカは、揺さぶられてただただ喘ぐことしか出来なくなる。
 心は罪悪感でいっぱいなのに、身体は浅ましくもイライアス自身を貪欲に呑み込む。許してと叫んでも、決して許されることはないだろう。

(だったら、せめてイライアスが満足するまで耐えなきゃ……)
 
「んっ……、ああっ……」

 この場で拒絶の言葉を言うのは簡単だろう。セーフワードを言えば、全てが終わる。だが、散々Domであるイライアスの本能を刺激したのはジェシカだ。
 これは自業自得であり、これ以上イライアスを失望させるような真似をするのは憚られた。

「ジェシカ……、ジェシカ……ッ」
 
 イライアスが切羽詰まった声で、何度も名を呼ぶ。それと同時に腰が下から突き上げるように動いてくる。最奥を先端で突かれた瞬間、腰がびくんと跳ねた。

「っああっ!  あ、あ……っ!!」
 
 何も知らなかった身体が、快楽に染まっていく。目の前のDomに嫌われてしまったら、生きていけない。
 ほんのり朱色に染まったジェシカの眼の縁から、涙が零れ落ちた。

「あ、……ああっ……」
 
 剛直に濡れた柔肉を擦られるたびに、ぴくんぴくんと身体が痙攣した。再び無理やり高みに昇らされようとしている。
 強烈な快楽に、意識が塗りつぶされていく。イライアスも限界が近いのか、切羽詰まったように律動を早めた。
 与えられる強い悦楽は、もはや罰を受けている気分にさせられた。ジェシカは唇を噛み締めながら、押し寄せる波に身を委ねる。

「あっ……、イッ……ちゃ……」
「ジェシカ、……ぐっ……」
 
 イライアスの何かを堪えるようなくぐもった声が聞こえたその瞬間、頭が真っ白に染まるほどの絶頂が身体を突き抜けていく。それと同時に、胎内に温かいものが吐き出されるのを感じた。

「ぁ、あ……っ」

 荒い呼吸を繰り返していると、ずるりと中からイライアスが出ていく。その感覚にも感じてしまう自分が嫌でしかたがない。イライアスから解放された身体が、シーツに沈んだ。
 Subになってしまった後悔が胸をよぎる。Subにならなければ、こんなに身を引き裂かれるような辛い思いはしないですんだはずなのに。

「イライアス……」

 その瞬間、身体中に冷たいものが駆け巡った。
 イライアスの暖かな腕の中にいるはずなのに、寒くて仕方ない。身体がガタガタと震え出し、視界が明滅する。激しい眩暈とともに吐き気がこみ上げる。

(こ、この感覚は、サブドロップ? なんで……)
 
 野盗に望まないコマンドを強要された時と同じ感覚に、ジェシカは戸惑う。
 糸が切れたマリオネットのようにジェシカの身体は脱力し、そのままイライアスの身体にもたれ掛かるように倒れた。苦しい。息が上手くできない。
 イライアスはジェシカの異変に気付き、慌てて身体を支える。

「ジェシカ! “息を深く吸え”!」
「ふっ……」
「いいぞ、上手だ。“落ち着いて、身体の力を抜け!”」

 イライアスのコマンドに、ジェシカの身体は素直に従った。吐き気はなんとか収まり、呼吸が落ち着いてくるが、抗いがたい眠気を伴う倦怠感はまだ残っている。
 少しずつ煙る視界の向こうで、イライアスが泣きそうな顔をしていた。

「ジェシカ、すまない。こんな、こんなはずじゃなかった……。本当にすまない……」

 イライアスはジェシカを抱きしめながら、何度も何度も謝罪を口にする。それは、これまで聞いたことがないほど悲痛な声音だった。
 胸の奥が軋むように酷く痛む。
 
(イライアスは、謝らないで……)
 
 悪いのはイライアスではなく、結ばれないと分かっていてもなお分不相応な恋をしてしまった自分だ。
 そう口にする前に、ジェシカの意識はそこでプツリと途切れた。
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