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本編
ダンと一緒!(1)
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「おいおい、マジかよ! ジェシカとイライアスがパートナーになった!? しかも三か月も前から!?」
繁華街の食堂でジェシカと夕食を食べていたダンが、レストランのど真ん中ですっとんきょうな声を上げた。
今夜はイライアスが予定があるらしく、会う予定もない。そのため、仕事が終わったあと、ジェシカは「相談したいことがある」と言って、ダンを夕食に誘ったのだ。
トマトやオリーブがたっぷりのったブルスケッタに齧りついていたジェシカは、慌ててダンに注意する。
「ちょっと! 声が大きいってば!」
「すまん! 最近ジェシカとイライアスの喧嘩が減ったから、なにかあったんじゃないかとは思っていたが、まさかパートナーになってるとは思いもしなくて、つい……」
ダンはそばかす顔に困惑した表情を浮かべたまま、先ほどお代わりとして頼んで到着したばかりのスープをぐるぐるとかきまぜた。
王宮の舞踏会でレオナルドとリーデに会ってから一週間が経とうとしている。イライアスが長年片思いしている相手がいると聞いてから、ジェシカはずっと悶々としていた。
この一週間さりげなくその相手を探ろうとしたのだが、イライアスはその話題になるといつもあからさまに話題を変えるため、未だに片思いをしている相手が誰かはわからない。しかし、片思いしている相手がいること事態は否定しないため、相手がいるのは事実のようだった。
(ずっと片思いをしている相手がいるのに、私をパートナーにするなんて、イライアスったらなに考えてるのよ……!)
イライアスに片思いしている相手がいると知った以上、ジェシカはこのままパートナー関係を続けるのは間違っているのではないか、と考え始めていた。ジェシカがいては、イライアスも自由に好きな人と恋をすることもできないだろう。いつまでも、幼なじみという気安い関係にずるずる甘え続けるわけにもいかない気がする。
だが、それと同じくらい、イライアスと離れるのは嫌だという気持ちもあった。イライアスと一緒に過ごす時間は、ジェシカにとってかけがえのない時間だ。あの時間を失ってしまうと思うと、どうしようもない不安に襲われてしまう。
このままでは確実に良くないと分かっているのに、どうしていいかもわからない。そこで、ジェシカは意を決してダンに相談したのだ。
「驚かせてごめん。ダンだったら私がSubって知ってるし、口も堅いし、Domの気持ちも分かると思って相談したの。他にそんな相談できる相手がいないから」
「そう言われると悪い気はしないな。そうか、喧嘩ばっかりしてたお前たちがよりにもよってパートナー関係にねえ……。それで、悩みっていうのは?」
「……えっと、その、普通のプレイって、その、どこまでやるものなのかなぁって」
「ん? えっ、……はぁ?」
ダンは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。スプーンですくったばかりの野菜たっぷりのスープがだばだばとスープ皿に逆戻りしていく。
「ジェシカ、もしかしてお前、イライアスと最後まで……」
「してないのよ……」
「うわぁ、まじか。あのイライアスに限って、そんな甘っちょろいプレイをするとは思えないんだが」
「普通のプレイで、最後までするっていうのはあるってこと?」
「あるっていうか、それが普通だろ。プレイで肉体関係結ばない方が少ないんじゃないか?」
ズバリと言われ、次はジェシカが固まる番だった。初耳だ。ダンの言うことが正しければ、どうやらイライアスとジェシカのプレイは少数派だったらしい。
ダンは再びスプーンでスープを掬い、ズズッとすする。
「そりゃあダイナミクスのパートナーと結婚相手や恋人は別物、とか言われてるけど、プレイの延長線上にあるのが肉体関係で、その先に結婚があるって感覚の方が俺には馴染むよ」
「な、なるほど。じゃあ、最後までしてないってことは……」
「その先まで進める気はないってことだろ」
すっぱりと言われて、ジェシカは撃沈した。
薄々そんな気はしていたものの、第三者に言われると、ショックが大きい。
繁華街の食堂でジェシカと夕食を食べていたダンが、レストランのど真ん中ですっとんきょうな声を上げた。
今夜はイライアスが予定があるらしく、会う予定もない。そのため、仕事が終わったあと、ジェシカは「相談したいことがある」と言って、ダンを夕食に誘ったのだ。
トマトやオリーブがたっぷりのったブルスケッタに齧りついていたジェシカは、慌ててダンに注意する。
「ちょっと! 声が大きいってば!」
「すまん! 最近ジェシカとイライアスの喧嘩が減ったから、なにかあったんじゃないかとは思っていたが、まさかパートナーになってるとは思いもしなくて、つい……」
ダンはそばかす顔に困惑した表情を浮かべたまま、先ほどお代わりとして頼んで到着したばかりのスープをぐるぐるとかきまぜた。
王宮の舞踏会でレオナルドとリーデに会ってから一週間が経とうとしている。イライアスが長年片思いしている相手がいると聞いてから、ジェシカはずっと悶々としていた。
この一週間さりげなくその相手を探ろうとしたのだが、イライアスはその話題になるといつもあからさまに話題を変えるため、未だに片思いをしている相手が誰かはわからない。しかし、片思いしている相手がいること事態は否定しないため、相手がいるのは事実のようだった。
(ずっと片思いをしている相手がいるのに、私をパートナーにするなんて、イライアスったらなに考えてるのよ……!)
イライアスに片思いしている相手がいると知った以上、ジェシカはこのままパートナー関係を続けるのは間違っているのではないか、と考え始めていた。ジェシカがいては、イライアスも自由に好きな人と恋をすることもできないだろう。いつまでも、幼なじみという気安い関係にずるずる甘え続けるわけにもいかない気がする。
だが、それと同じくらい、イライアスと離れるのは嫌だという気持ちもあった。イライアスと一緒に過ごす時間は、ジェシカにとってかけがえのない時間だ。あの時間を失ってしまうと思うと、どうしようもない不安に襲われてしまう。
このままでは確実に良くないと分かっているのに、どうしていいかもわからない。そこで、ジェシカは意を決してダンに相談したのだ。
「驚かせてごめん。ダンだったら私がSubって知ってるし、口も堅いし、Domの気持ちも分かると思って相談したの。他にそんな相談できる相手がいないから」
「そう言われると悪い気はしないな。そうか、喧嘩ばっかりしてたお前たちがよりにもよってパートナー関係にねえ……。それで、悩みっていうのは?」
「……えっと、その、普通のプレイって、その、どこまでやるものなのかなぁって」
「ん? えっ、……はぁ?」
ダンは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。スプーンですくったばかりの野菜たっぷりのスープがだばだばとスープ皿に逆戻りしていく。
「ジェシカ、もしかしてお前、イライアスと最後まで……」
「してないのよ……」
「うわぁ、まじか。あのイライアスに限って、そんな甘っちょろいプレイをするとは思えないんだが」
「普通のプレイで、最後までするっていうのはあるってこと?」
「あるっていうか、それが普通だろ。プレイで肉体関係結ばない方が少ないんじゃないか?」
ズバリと言われ、次はジェシカが固まる番だった。初耳だ。ダンの言うことが正しければ、どうやらイライアスとジェシカのプレイは少数派だったらしい。
ダンは再びスプーンでスープを掬い、ズズッとすする。
「そりゃあダイナミクスのパートナーと結婚相手や恋人は別物、とか言われてるけど、プレイの延長線上にあるのが肉体関係で、その先に結婚があるって感覚の方が俺には馴染むよ」
「な、なるほど。じゃあ、最後までしてないってことは……」
「その先まで進める気はないってことだろ」
すっぱりと言われて、ジェシカは撃沈した。
薄々そんな気はしていたものの、第三者に言われると、ショックが大きい。
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