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本編

幼馴染の甘い一面 (5)

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 ジェシカの身体は今、イライアスの思うがままだ。指先ひとつで、いとも簡単に翻弄されてしまう。それはとても恥ずかしくて、そして同時に甘美な感覚だった。

(いま、私はイライアスに支配されてるんだ……)
 
 目の間の美しいDomに身も心も支配されたのだと理解した刹那、身体の奥からぶわりと何かが溢れ出した。下腹部の奥底に甘い痺れが走るような感覚に襲われる。
 イライアスの指がジェシカの首筋を掠めるようになぞると、いよいよこらえきれなくなったジェシカは甘い声を上げた。
 
「あっ、あっ……イヤ……っ」
「だから、イヤじゃないだろ」
 
 イライアスは少しだけ身体を離すと、ジェシカの唇を奪う。貪るようなキスだった。しかし、そのキスによって身体はさらに敏感になっていく。
 
「ん……っ、は……ぁ……」
 
 意識に薄い膜がかかったように、何も考えられなくなる。
 自分の全てが目の前のDomに支配されているという状況に、ジェシカはひどく興奮していた。Subとしての本能が満たされていく。ジェシカの身体はすっかり従順になって、イライアスから与えられる快楽に素直に反応して悦んでいた。
 この男にすべてを支配され、暴かれ、食い尽くされたい。身体の奥地まで、余すところなく。
 そんな思いが脳裏をよぎって、ジェシカは自分の思考に戸惑った。
 普段の自分ならこのような狼藉は決して許さないはず。それなのに、なぜそんなことを思ってしまうのかがわからない。それでも、イライアスに触れられると嬉しくてたまらない。もっと触ってほしい。もっと自分を求めてほしい。
 その感情だけがどんどん膨れ上がっていって、自分でもどうすることも出来ない。

(私、イライアスがすき……。イライアスになら、なにをされてもいい……)
 
 ジェシカはイライアスの背中に腕をまわす。もっと触れて、支配して欲しい。身体の奥底までも差し出し、あますことなく味わい尽くしてほしい。

「イライアス、もっと……♡」
 
 ぼんやりとした意識の中で、ジェシカは求める。もっと欲しい。もっと、もっと欲しい。身体のどこかが、欠けてしまっているようだ。その場所を、早く埋めてほしい。埋めてくれなければ、苦しくて仕方がない。
 ジェシカは手に力を込めた。二人の距離が近くなり、イライアスの荒い呼吸が耳にかかってぞくりとしてしまう。イライアスはジェシカの首筋に顔を埋めると、そこに噛み付いた。強く噛まれ、ピリリとした痛みが走る。その痛みさえも快楽へと変わり、ジェシカの身体は悦びに打ち震えた。

「あ……っ、あ……う」

 熱い涙が頬を一筋頬をつたう。生理的なものなのか、感情的なものなのか分からない。
 だが、ジェシカの涙を見たイライアスが、急に動作をピタリと止めた。

「あ……」

 イライアスはおずおずとジェシカを抱いていた手を解いた。急に遠ざけられ、ジェシカは首を傾げる。

「あ?」
「危なかった……」
 
 長い沈黙の後、イライアスはため息をついた。
 急にプレイを止められたジェシカは、しどけない姿のまましばし呆然とする。急に冷や水を浴びせかけられたような、そんな気分だ。
 
「イライアス、どうしたの……?」
「……これ以上は、やめよう」
「えっ、なに? 私、何かした?」
 
 不安そうな顔をするジェシカの頬を、イライアスは優しく撫でた。そして、子供に言い聞かせるように、彼はゆっくりと言い聞かせる。

「ジェシカは本当に無防備だな。そう簡単に、Domにすべてを許すな。イヤだと思ったら、セーフワードを言え」
「そ、そんなつもりじゃ……」

 ジェシカはそこまで言って口を噤む。まだ足りないし、支配してほしい。そんな考えが頭の中を駆け巡ったが、正直に口に出すのはためらわれた。
 後悔の滲む顔で、イライアスは小さく息を吐く。

「自制できず、すまなかった。今日は疲れただろう。もう戻ったほうがいい。俺はこの後に少し仕事があるから、今日は侍従に送らせよう」

 一方的にそれだけ告げると、イライアスは大股で部屋を出た。イライアスの背中を呆然としたまま見送ったジェシカは、急に静かになった部屋に残る。
 ベッドのわきにあるウォールランプの灯が、チカチカと瞬く。
 先ほどまで抱きしめられていた熱が、まだ身体に染みついているようだ。身体の内部が、さらなる刺激を求めるようにきゅんと甘く疼いた。もっと命令されたかった。支配されたいと思った。――イライアスにすべて委ねて、身体の内側まで満たされたかった。

(私、いったいどうしちゃったんだろう?)
 
 まだ先ほどの熱が残っているような気がして、ジェシカは侍従に名前を呼ばれるまで、自分の体を抱きしめたまましばらくその場に座りつくした。
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