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本編
幼馴染の甘い一面 (4)
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「ちゃんと自分が望むことが言えて、いい子だったな。ジェシカは本当に偉い。誰よりも真面目で、努力家で、こんなにも可愛い。だから誰もがジェシカのことを好きになるんだ」
背中に回された手に力が入る。二人の身体がさらに密着し、ジェシカはイライアスの逞しい肩口に顔を埋めるような格好になった。ジェシカがおずおずとイライアスの背中に手をまわすと、「いい子」とまた褒められて口元が緩んだ。
二人分の心臓の音が二人分の心臓の音が、とくんとくんと聞こえてくる。ジェシカは満足げにため息をついた。温かい風呂に長く浸かった時のように、頭がほわほわする。嬉しくてたまらない。
「こうやってジェシカを抱きしめられるなんて、夢のようだ。こうして、ずっと独り占めしていたい」
耳に息を吹きかけられるように低く囁かれる声に、肌が粟立つ。こうして抱きしめられているだけで、Subとしての精神的な喜びが満たされ、指の先まで痺れるような充足感で満たされていく。
プレイの相性というものがあるのならば、イライアスとの相性は最高だろう。この数回のプレイだけで、ジェシカはイライアス以外のDomとのプレイはしたくないとすら思い始めていた。
(ずっと、イライアスに抱きしめられていたい。ずっと、こうやって……)
イライアスの背中に回した手に力を入れた瞬間、首元に鋭い痛みが走った。
「いたっ!?」
「……なあ、今日は着替えから帰ってくる時間がやけに長かった。なんであんなに遅かったんだ? 誰と喋っていた?」
「えっ……」
「またダンと喋っていたのか? それとも、トビーやアレクセイあたりか? あいつら、いつもジェシカのこと狙ってるからな……」
返事を待たず、イライアスはもう一度同じところに噛みつき、きつく吸い上げて痕を残した。ジェシカは驚いて肩を震わせる。先ほどまでの甘やかな雰囲気が嘘のようだ。
「だ、だめ……っ! そこに痕がついたら、見えちゃう……」
「隠せない場所に痕をつけないと意味がないだろう。こうでもしないと、ジェシカはすぐに他の男に言い寄られるからな」
そう言いながら、イライアスはジェシカの首筋に次々と接吻の雨を降らせていった。
(ま、まるでイライアスが嫉妬してるみたい……)
そういえば、同僚のダンから、DomはパートナーになったSubに並々ならぬ執着心を持ち、他のDomとの接触を極端に嫌う傾向にあると聞いたことがある。
おそらく、イライアスもまたDomとしての本能で激しい嫉妬心を抱いたのだろう。
さすがに女騎士の同僚たちとイライアスの婚約者になる貴族令嬢は誰か、というゴシップで盛り上がっていたとは言える雰囲気ではない。曖昧な返事をして誤魔化すと、イライアスは肺の中の空気を全て吐き出すような重いため息をついた。
「……ジェシカはお人好しで無防備だから、不安になる。ジェシカに触っていいのは、パートナーの俺だけなのに」
「イライアス……」
更衣室から出てきて妙にぶっきらぼうだったのは、どうやらジェシカが他の男たちと喋っていると勘違いして、嫉妬していたからだったらしい。
冷徹騎士と呼ばれているイライアスにも、人並みに独占欲らしきものがあるらしい。なんだか奇妙な愛おしさが胸にあふれた。こうやって強く想ってくれていることが純粋に嬉しい。
気付けば、ジェシカはぎゅっとイライアスを抱きしめていた。安心させるように、ぽんぽんと背中を軽く叩いてやる。
「大丈夫よ。私なんて誰も恋愛対象として見てないんだから」
「だから、そういうところ……っ」
不意に視界がぐるりと反転した。背中に柔らかい衝撃を感じる。目の前にはイライアスの端正な顔と、その向こうに天井が見えた。
ジェシカに覆い被さるように両手をついてこちらを覗き込んでくる彼は、苦しげに眉根を寄せている。
「俺がどんなに我慢してるか、……ジェシカは知らないだろ」
「えっ?」
「いますぐ、ジェシカをコマンドでグズグズにして、俺だけのものにしたい。その身体にも心にも俺を刻みつけたい」
その瞬間、急に耳たぶを柔らかく食まれ、耳の穴に舌を差し込まれる。濡れた音が脳に直接響くようで、ジェシカは目を見開いた。
「ひゃあっ!?」
「“動くな”」
耳元で低く囁かれたコマンドが、ジェシカの身体をその場に縫い止めた。
ジェシカを見下ろす瞳に、獰猛な色が宿っている。まるで獲物を捕食する直前の肉食獣のようだ。
ジェシカのシャツのボタンを、イライアスの指が、ぷちん、ぷちんと外していく。露わになった鎖骨に、イライアスは噛みついて痕をつけた。鋭い痛みが、快感となって脳髄を貫く。
ジェシカは喉を反らして切なく喘いだ。
(あ、あれ……?)
いつものプレイと違うと、ジェシカはようやく気が付いた。
いつもであれば、優しく探るように触られるだけだ。それなのに、今日はジェシカの官能のありかを無理やり暴き、引き摺り出そうとしているような気がする。
ジェシカが困惑している間にも、イライアスの行為はエスカレートしていく。耳朶を弄んでいた舌が首筋を辿り、時折きつく吸い付かれる。そのたびに走る痛みすら快感を覚えてしまい、ジェシカは小さく声を漏らした。
「あっ……、ふぁあ……ん♡」
「ジェシカの声、たまらないな……。腰にクる……」
首筋をなぞっていたイライアスの唇の間から、肉厚な舌がチロチロと覗く。
戸惑いながらも、少しずつ与えられる刺激に身体は従順に応えていく。こんな感覚は知らないはずなのに、それが気持ちいいことだと身体に教え込まれている。
胸の先が熱を持ち、服が擦れる感覚すら、快楽として拾っていく。ジェシカは困惑しながらも、少しずつ思考が溶かされていくのを感じていた。
このままではいけないと思うものの、イライアスの腕の中から逃れようと思えない。むしろ自分からすり寄ってしまいそうな気さえする。
今や、ジェシカはイライアスの一挙一動に翻弄されていた。
首をそろりと撫でられると、いよいよ身体に力が入らなくなる。自分の意志では身体が動かないのに、イライアスの愛撫だけにはやけに身体が反応する。まるで、自分の身体ではなくなってしまったようだ。
背中に回された手に力が入る。二人の身体がさらに密着し、ジェシカはイライアスの逞しい肩口に顔を埋めるような格好になった。ジェシカがおずおずとイライアスの背中に手をまわすと、「いい子」とまた褒められて口元が緩んだ。
二人分の心臓の音が二人分の心臓の音が、とくんとくんと聞こえてくる。ジェシカは満足げにため息をついた。温かい風呂に長く浸かった時のように、頭がほわほわする。嬉しくてたまらない。
「こうやってジェシカを抱きしめられるなんて、夢のようだ。こうして、ずっと独り占めしていたい」
耳に息を吹きかけられるように低く囁かれる声に、肌が粟立つ。こうして抱きしめられているだけで、Subとしての精神的な喜びが満たされ、指の先まで痺れるような充足感で満たされていく。
プレイの相性というものがあるのならば、イライアスとの相性は最高だろう。この数回のプレイだけで、ジェシカはイライアス以外のDomとのプレイはしたくないとすら思い始めていた。
(ずっと、イライアスに抱きしめられていたい。ずっと、こうやって……)
イライアスの背中に回した手に力を入れた瞬間、首元に鋭い痛みが走った。
「いたっ!?」
「……なあ、今日は着替えから帰ってくる時間がやけに長かった。なんであんなに遅かったんだ? 誰と喋っていた?」
「えっ……」
「またダンと喋っていたのか? それとも、トビーやアレクセイあたりか? あいつら、いつもジェシカのこと狙ってるからな……」
返事を待たず、イライアスはもう一度同じところに噛みつき、きつく吸い上げて痕を残した。ジェシカは驚いて肩を震わせる。先ほどまでの甘やかな雰囲気が嘘のようだ。
「だ、だめ……っ! そこに痕がついたら、見えちゃう……」
「隠せない場所に痕をつけないと意味がないだろう。こうでもしないと、ジェシカはすぐに他の男に言い寄られるからな」
そう言いながら、イライアスはジェシカの首筋に次々と接吻の雨を降らせていった。
(ま、まるでイライアスが嫉妬してるみたい……)
そういえば、同僚のダンから、DomはパートナーになったSubに並々ならぬ執着心を持ち、他のDomとの接触を極端に嫌う傾向にあると聞いたことがある。
おそらく、イライアスもまたDomとしての本能で激しい嫉妬心を抱いたのだろう。
さすがに女騎士の同僚たちとイライアスの婚約者になる貴族令嬢は誰か、というゴシップで盛り上がっていたとは言える雰囲気ではない。曖昧な返事をして誤魔化すと、イライアスは肺の中の空気を全て吐き出すような重いため息をついた。
「……ジェシカはお人好しで無防備だから、不安になる。ジェシカに触っていいのは、パートナーの俺だけなのに」
「イライアス……」
更衣室から出てきて妙にぶっきらぼうだったのは、どうやらジェシカが他の男たちと喋っていると勘違いして、嫉妬していたからだったらしい。
冷徹騎士と呼ばれているイライアスにも、人並みに独占欲らしきものがあるらしい。なんだか奇妙な愛おしさが胸にあふれた。こうやって強く想ってくれていることが純粋に嬉しい。
気付けば、ジェシカはぎゅっとイライアスを抱きしめていた。安心させるように、ぽんぽんと背中を軽く叩いてやる。
「大丈夫よ。私なんて誰も恋愛対象として見てないんだから」
「だから、そういうところ……っ」
不意に視界がぐるりと反転した。背中に柔らかい衝撃を感じる。目の前にはイライアスの端正な顔と、その向こうに天井が見えた。
ジェシカに覆い被さるように両手をついてこちらを覗き込んでくる彼は、苦しげに眉根を寄せている。
「俺がどんなに我慢してるか、……ジェシカは知らないだろ」
「えっ?」
「いますぐ、ジェシカをコマンドでグズグズにして、俺だけのものにしたい。その身体にも心にも俺を刻みつけたい」
その瞬間、急に耳たぶを柔らかく食まれ、耳の穴に舌を差し込まれる。濡れた音が脳に直接響くようで、ジェシカは目を見開いた。
「ひゃあっ!?」
「“動くな”」
耳元で低く囁かれたコマンドが、ジェシカの身体をその場に縫い止めた。
ジェシカを見下ろす瞳に、獰猛な色が宿っている。まるで獲物を捕食する直前の肉食獣のようだ。
ジェシカのシャツのボタンを、イライアスの指が、ぷちん、ぷちんと外していく。露わになった鎖骨に、イライアスは噛みついて痕をつけた。鋭い痛みが、快感となって脳髄を貫く。
ジェシカは喉を反らして切なく喘いだ。
(あ、あれ……?)
いつものプレイと違うと、ジェシカはようやく気が付いた。
いつもであれば、優しく探るように触られるだけだ。それなのに、今日はジェシカの官能のありかを無理やり暴き、引き摺り出そうとしているような気がする。
ジェシカが困惑している間にも、イライアスの行為はエスカレートしていく。耳朶を弄んでいた舌が首筋を辿り、時折きつく吸い付かれる。そのたびに走る痛みすら快感を覚えてしまい、ジェシカは小さく声を漏らした。
「あっ……、ふぁあ……ん♡」
「ジェシカの声、たまらないな……。腰にクる……」
首筋をなぞっていたイライアスの唇の間から、肉厚な舌がチロチロと覗く。
戸惑いながらも、少しずつ与えられる刺激に身体は従順に応えていく。こんな感覚は知らないはずなのに、それが気持ちいいことだと身体に教え込まれている。
胸の先が熱を持ち、服が擦れる感覚すら、快楽として拾っていく。ジェシカは困惑しながらも、少しずつ思考が溶かされていくのを感じていた。
このままではいけないと思うものの、イライアスの腕の中から逃れようと思えない。むしろ自分からすり寄ってしまいそうな気さえする。
今や、ジェシカはイライアスの一挙一動に翻弄されていた。
首をそろりと撫でられると、いよいよ身体に力が入らなくなる。自分の意志では身体が動かないのに、イライアスの愛撫だけにはやけに身体が反応する。まるで、自分の身体ではなくなってしまったようだ。
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