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本編
変わってしまった幼馴染(3)
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しかし、かけがえのない親友同士だったイライアスとジェシカにも大きな転機が訪れる。
13歳になった年に、イライアスのダイナミクスがDomだと分かったのだ。
ジェシカはイライアスがDomだと分かっても、昔と変わらず接しようとした。彼がDomだろうと、Subだろうと、ジェシカにとってはどうでもいい。イライアスが大事な幼なじみであることには変わりないのだから。
しかし、イライアスは急によそよそしくなり、ジェシカと距離を取るようになった。
それと同じ時期に、父であるローデ伯爵に無理やり連れて行かれる形で、イライアスは母方の実家の屋敷から王都の屋敷に居を移した。伝え聞くところによると、イライアスは年の近い第二王子レオナルドの遊び相手として白羽の矢が立ったらしい。
イライアスは名門ローデ家の嫡男として王都で過ごすことが多くなり、ジェシカとは会う機会がなくなった。何度か手紙は書いたが、返事が来たことはない。
二人が再会したのは、第一騎士団の入団した十七歳の時だった。
イライアスは背が伸びて、いつの間にかジェシカより頭一つ分背が高くなっていた。どちらかと言えば可愛らしかった顔立ちも男らしく端正になり、すっかり大人びてしまっていた。
ジェシカはイライアスの変化に驚いたものの、再会を喜んで声をかけた。しかし、久しぶりに会ったにも関わらず、イライアスの態度は最悪だった。話しかけても無視されるか、愛想のない返事しか返ってこない。
まるで他人に接するような態度にジェシカは困惑した。なにかの思い違いかと思い、粘り強く話しかけ続けたものの、イライアスはジェシカにあからさまに冷たく当たり続けた。
当然、すれ違っても挨拶すらしないし、あれだけ楽しかったはずの会話は、すべて喧嘩になった。
仲の良かった幼なじみからとにかく仲の悪い同僚になったふたりは、第一騎士団で毎日のようにいがみ合う。
(どうして、私に冷たくするの? もう二度と、あの関係には戻れないの? ずっと一緒だって言ってくれたのは、嘘だったの?)
イライアスに冷たくされるたびに、心にぽっかり大きな穴が開いたような気持ちになる。胸の中の疑問は、二年経った今も日に日に大きくなっていくばかりだ。
仲直りの糸口を見つけようとしても、イライアスの態度は悪くなる一方で、ジェシカが何を言っても徒労に終わった。
いつしか、ジェシカはこう思うようになった。
きっとジェシカがイーライ呼んでいた少年は、どこかに消えてしまったのだ。その代わり、イライアスという血も涙もない冷血漢がジェシカの目の前に現れた。――そう思わないと、寂しさでどうにかなってしまいそうだった。
「どうして、こんなに嫌われちゃったんだろう……」
ジェシカは小さく呟く。しかし、その問いかけの言葉は誰にも届くことなく、ジェシカはさらに深い夢の奥底へ落ちていった。
13歳になった年に、イライアスのダイナミクスがDomだと分かったのだ。
ジェシカはイライアスがDomだと分かっても、昔と変わらず接しようとした。彼がDomだろうと、Subだろうと、ジェシカにとってはどうでもいい。イライアスが大事な幼なじみであることには変わりないのだから。
しかし、イライアスは急によそよそしくなり、ジェシカと距離を取るようになった。
それと同じ時期に、父であるローデ伯爵に無理やり連れて行かれる形で、イライアスは母方の実家の屋敷から王都の屋敷に居を移した。伝え聞くところによると、イライアスは年の近い第二王子レオナルドの遊び相手として白羽の矢が立ったらしい。
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まるで他人に接するような態度にジェシカは困惑した。なにかの思い違いかと思い、粘り強く話しかけ続けたものの、イライアスはジェシカにあからさまに冷たく当たり続けた。
当然、すれ違っても挨拶すらしないし、あれだけ楽しかったはずの会話は、すべて喧嘩になった。
仲の良かった幼なじみからとにかく仲の悪い同僚になったふたりは、第一騎士団で毎日のようにいがみ合う。
(どうして、私に冷たくするの? もう二度と、あの関係には戻れないの? ずっと一緒だって言ってくれたのは、嘘だったの?)
イライアスに冷たくされるたびに、心にぽっかり大きな穴が開いたような気持ちになる。胸の中の疑問は、二年経った今も日に日に大きくなっていくばかりだ。
仲直りの糸口を見つけようとしても、イライアスの態度は悪くなる一方で、ジェシカが何を言っても徒労に終わった。
いつしか、ジェシカはこう思うようになった。
きっとジェシカがイーライ呼んでいた少年は、どこかに消えてしまったのだ。その代わり、イライアスという血も涙もない冷血漢がジェシカの目の前に現れた。――そう思わないと、寂しさでどうにかなってしまいそうだった。
「どうして、こんなに嫌われちゃったんだろう……」
ジェシカは小さく呟く。しかし、その問いかけの言葉は誰にも届くことなく、ジェシカはさらに深い夢の奥底へ落ちていった。
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