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本編
異変(4)
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急に矛先を向けられたうえ、Sub呼ばわりされたオリヴェルの顔が引きつった。オリヴェルの反応に勢いづいて、野盗たちは口々にはやし立てる。
「おいおい、この反応! やっぱりSubじゃねえか。何を偉そうにふんぞり返ってやがる! SubはSubらしく、Domに媚びておけばいいんだよ!」
「見れば見るほど、女みてぇな面だな! 貧弱なSub野郎なんて、兄貴が簡単に屈服させてやるよッ!」
ゲラゲラと笑う男たちは、オリヴェルを完全にSubだと決めつけているらしい。ジェシカも内心、ゴロツキ達の言葉に頷いた。
(確かに、オリヴェル様は綺麗なお方だし、Subっぽいって言われてもおかしくないわ)
支配される性であるSubは、女性らしい容姿を持つ人物だという偏見を持たれやすい。だから、この男たちは美しい容姿のオリヴェルをSub呼ばわりしたのだろう。
確かに、オリヴェルは美しい。長い銀髪に、人形のような繊細な顔立ち。長いまつ毛に縁取られた目は見るものを魅了する。男性ながら、その雰囲気はどこか儚げで危うい感じがする。
とはいえ、依頼者の悪口をこれ以上言わせっぱなしにするのはさすがにまずい。
「ちょっとアンタたち! さっきから黙ってればべらべらと――」
ジェシカは、オリヴェルを庇うように一歩前に出てゴロツキ達を睨みつける。
刹那、Domだというリーダー格の男が口を開いた。
「“跪け”」
それは、短い単語だった。DomがSubを従わせるための特別な命令――コマンドだと、ジェシカはすぐに気づく。
Domは、Subにコマンドを与えることによって、相手を支配する。Subはコマンドに、無条件に従ってしまうものらしい。一般的にいえば、コマンドはDomからSubに対してのみ有効なはずだ。
Normal相手だと、ただの言葉としてしか認識されない――はずだった。
「ひゃん……っ!?」
自分の口から妙に間の抜けた声が上がったことに、ジェシカは驚いた。それと同時に、身体がぐらりと傾く。
心臓がバクバクと脈打ち、身体中の血が沸騰したように熱い。まるで、知らない街で迷子になってしまったような心細さがジェシカを襲った。誰かに支えられないと、立っていられないような眩暈がする。
(えっ、なんなの!?)
辛うじて踏みとどまったものの、目の前の男に跪き、屈服したいという気持ちが、胸の底から湧き上がる。ろくでもない男の命令に従うべきではないと、頭では分かっている。それなのに、身体が勝手に動いてしまいそうだ。
コマンドを口にした男が「へえ……」とニヤついた。ジェシカの身体が、勝手に震えだす。相手は自分よりも弱い相手だと分かっているのに、この男が怖い、従ってしまいたい、と本能が告げている。
「あ……ぁ……」
「ほーん。そこの生意気な女騎士、本当はSubだったのか。面白い」
「な、なに言って……」
「おいおい、この反応! やっぱりSubじゃねえか。何を偉そうにふんぞり返ってやがる! SubはSubらしく、Domに媚びておけばいいんだよ!」
「見れば見るほど、女みてぇな面だな! 貧弱なSub野郎なんて、兄貴が簡単に屈服させてやるよッ!」
ゲラゲラと笑う男たちは、オリヴェルを完全にSubだと決めつけているらしい。ジェシカも内心、ゴロツキ達の言葉に頷いた。
(確かに、オリヴェル様は綺麗なお方だし、Subっぽいって言われてもおかしくないわ)
支配される性であるSubは、女性らしい容姿を持つ人物だという偏見を持たれやすい。だから、この男たちは美しい容姿のオリヴェルをSub呼ばわりしたのだろう。
確かに、オリヴェルは美しい。長い銀髪に、人形のような繊細な顔立ち。長いまつ毛に縁取られた目は見るものを魅了する。男性ながら、その雰囲気はどこか儚げで危うい感じがする。
とはいえ、依頼者の悪口をこれ以上言わせっぱなしにするのはさすがにまずい。
「ちょっとアンタたち! さっきから黙ってればべらべらと――」
ジェシカは、オリヴェルを庇うように一歩前に出てゴロツキ達を睨みつける。
刹那、Domだというリーダー格の男が口を開いた。
「“跪け”」
それは、短い単語だった。DomがSubを従わせるための特別な命令――コマンドだと、ジェシカはすぐに気づく。
Domは、Subにコマンドを与えることによって、相手を支配する。Subはコマンドに、無条件に従ってしまうものらしい。一般的にいえば、コマンドはDomからSubに対してのみ有効なはずだ。
Normal相手だと、ただの言葉としてしか認識されない――はずだった。
「ひゃん……っ!?」
自分の口から妙に間の抜けた声が上がったことに、ジェシカは驚いた。それと同時に、身体がぐらりと傾く。
心臓がバクバクと脈打ち、身体中の血が沸騰したように熱い。まるで、知らない街で迷子になってしまったような心細さがジェシカを襲った。誰かに支えられないと、立っていられないような眩暈がする。
(えっ、なんなの!?)
辛うじて踏みとどまったものの、目の前の男に跪き、屈服したいという気持ちが、胸の底から湧き上がる。ろくでもない男の命令に従うべきではないと、頭では分かっている。それなのに、身体が勝手に動いてしまいそうだ。
コマンドを口にした男が「へえ……」とニヤついた。ジェシカの身体が、勝手に震えだす。相手は自分よりも弱い相手だと分かっているのに、この男が怖い、従ってしまいたい、と本能が告げている。
「あ……ぁ……」
「ほーん。そこの生意気な女騎士、本当はSubだったのか。面白い」
「な、なに言って……」
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