上 下
30 / 32
君がこの手に堕ちるまで。

予定変更。4日目、夜。颯太side

しおりを挟む

遼介さんが帰って来たのは電話してから間もなくで、慌ててたのか鍵を開けようとしてまた閉めたりなんかしてて、ガチャガチャしてた。

「颯太!!」

「遼介さん、おかえりなさい!あの、ごめんなさい…待たせてしまって……ぅわ!?」

勢いよく抱きしめられて俺はびっくりしてちょっと変な声が出ちゃって、遼介さんの腕の中でジタバタした。

「電話番号、聞いてなくてごめんな。聞きたかったけど、帰ったら家にいるんだからいつでもいいって思ってたのが間違いだった」

「……ちょ、待って!遼介さん、まずいって…っ」

俺はあわあわして遼介さんの胸を押した。

恥ずかしいからだけじゃなくて、今この部屋にいるのは2人だけじゃないからだ。

「おーい、周り見てからイチャイチャしろよ。兄弟が惚気てるの見るのって思ったよりキッツいなー」

ソファーに座ってる晶さんは、テレビのリモコンでチャンネルを変えながら心底嫌そうにそう言った。

「なんだ、晶か。なんで勝手に入ってんだよ」

「勝手にじゃない。颯太くんが怖がってるから駆けつけてやったんだろ。むしろ感謝して欲しいくらいなんですけど」

「お前が来るのは別の意味で安心出来ない」

「なんでだよ、クソ兄貴」

「颯太にある事ない事吹き込まれそうだからだよ。それはそうと、今日は女じゃないんだな」

「出先だったからしょうがないじゃん。それに颯太くん俺見て全然驚かなかったから、兄貴もうバラしたろ?せっかく妹だと思わせてたのに。つまんねぇー」

「お前の変な趣味を言わざるをえなかった俺の気持ちがわかるか?それに颯太を騙すんじゃねぇよ。遊んでんだろ」

「あのー…遼介さん、離してくれます?」

遼介さんは俺を抱きしめたまま俺の頭を撫ぜながら晶さんと会話をしてて、俺は身動きが取れなくて困った。

遼介さんのスーツから香るデオドラントとちょっとだけ汗の匂いが混じって、慌てて走って来てくれたのかと思うとやっぱり嬉しかった。

「俺が来た時、下の道を回ってみたけどもう不審な奴はいなかったぞ」

晶さんが煙草を咥えながらそう言ったから、遼介さんは怒った顔をして煙草を取り上げた。

「ここで吸うな。ベランダで吸え」

「わーかってるって。ちょっと咥えただけじゃん。火、点けてねーし。過保護かよ」

「颯太、その不審者って男で間違いないのか?女じゃなくて」

「は、はい。でも気がついたらいなくなってたんです。気のせいだったらいいんですけど…でも、実は昨日も見たんです。多分同じ人です」

やっと離してもらえたし、遼介さんが帰って来てくれて安心したのか俺はへなへなとソファーに座ったんだけど、晶さんの隣だったからか遼介さんが俺を立ち上がらせて横の1人掛けのソファーの方に移動させられた。

「ちょ、何気に傷つくんですけど。隣に座るのも駄目なんですか、クソ兄貴」

「お前の距離感ちょっとおかしいから、颯太に寄るの禁止な。ベタベタ触ったらマジで殺す」

「兄貴の愛って重いよなぁ。そう思わん?颯太くん」

化粧をしてなかったらイケメンの男性に見える晶さんは、笑ったら昨日会った時と同じ可愛い顔になって、でもやっぱり服装がスカートじゃないと姿形は男性そのものだった。

「え?えーと、心配してくれるのはありがたいです…」

「バカップルかよ」

「そ、そんな関係じゃないんです…けど…」

呆れた顔をしながら、晶さんは遼介さんから煙草を取り返して、咥えながらベランダに出て行った。

「颯太、それで、さっきの話に戻るけど、本当に男だったか?」

「……遼介さん、女の人に心当たりあるんでしょ」

言葉に詰まった遼介さんは、さっきまで晶さんが座ってたソファーに座ってため息をついた。

「女のストーカーは、過去に何人か……。断っても断っても待ち伏せされたり、盗聴器仕掛けられたり…警察にお世話になった事もあるから。でもここ最近は、特に気になってなかったんだよな。だから急にってのが気になって」

申し訳なさそうに目を伏せた遼介さんは、スマホを取り出して検索し始める。

「今日は、大事をとって焼肉はやめておこう。代わりに何か美味しいものデリバリーしないか?颯太、何かリクエストある?家で焼肉してもいいけど、材料買ってくると遅くなるから腹減るだろ?」

「遼介さん、俺今日買い出し行ったし、カレーかシチューでよければすぐ作れますよ?」

「だって、楽しみにしてただろ?もう作るの面倒くさくないか?」

「平気です。晶さんも一緒に食べてってもらいましょう?あ、それとも泊まっていくのかな?」

「冗談キツイわ。アイツを泊めるスペースなんて1ミリもないからな。颯太がいるから晶は泊めない」

なんだかよくわかんない理屈を捏ねた遼介さんは、シチューをしばらく食べてないからとシチューを選んだ。

「急いで作りますね」

「俺も手伝うよ」

「えー?じゃあ俺も手伝うー」

晶さんがベランダから戻って来て混ざろうとしたから、遼介さんは嫌がって晶さんを足蹴にしてた。

仲良いんだか悪いんだかわからない遼介さんと晶さんのやり取りに、さっきまでの不安な気持ちが少し軽くなる。

「颯太、手伝う前にちょっとだけ一服させてくれ」

そう言ってベランダに出た遼介さんについて晶さんもベランダに出て行って、2人で少しの間話をしててその間に調理に取り掛かる。

ベランダで2人して煙草を吸っている姿はやっぱり似てて、何を話してるのかちょっと気になった。

戻って来た遼介さんは少しの間不機嫌で、でも手伝ってくれてるうちにいつもの遼介さんに戻ってくれたから、俺は特にその事には触れずに2人でシチューを作った。

晶さんは料理が全く出来ないらしく、ずっとタブレットでゲームをしてて、その姿はどう見ても男でしかなくてちょっと寂しくて、今度会う時は女の子で来るって約束してもらった。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

処理中です...