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君がこの手に堕ちるまで。

待ち合わせ。4日目、昼。颯太side

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遼介さんが会社に行ってしまってから、俺は遼介さんが買ってくれたセーターとジーンズに着替える。

質がいいのかチクチクしない高そうな紺色のセーターは、遼介さんが持ってるのとちょっと似ててお揃いみたいで嬉しい。

ソファーに座って昨日あった色んな事を思い出して、クッションに顔を埋めて悶えた。

さっきまで遼介さんがいたから余韻に浸る暇もなかったけど、俺、昨日…。

「遼介さんとキスしちゃったよなぁ…」

もうキャパオーバー過ぎて自分でも笑えるけど、キスより先にもっと進んだすごい事しちゃってたのに、昨日した初めてのキスの方がもっとずっと俺にとって意味があってドキドキする行為だった。

深いキスは気持ち良過ぎて何がなんだかわかんなかったけど、遼介さんのキスはすごく優しくて、指を絡められだけで繋がってるみたいで胸の奥が苦しくなった。

でも、俺達って本当、どんな関係なんだろ。

セフレ?ってセックスしてないから違うし、遊ばれてるとかじゃなく遼介さんには大事にされてるっていう感覚はすごくある。

俺の歳を聞いて遼介さんは俺に触るのをやめてくれたけど、我慢してくれてるのをすごく肌で感じられて正直嬉しかった。

そもそも彼女がいるって嘘をついたのも、手を出さないようにっていう遼介さんなりの理由があったみたいだし、俺がもし18歳だったらそういう関係になってくれたのかなって期待してしまう。

ってか、18歳以上じゃないとセックス出来ないなら、高校生はセックスしちゃダメだって事にならない?

高校生同士は良くて、なんで片方が歳上だと淫行なんだか全然全く納得出来ない!!

日本の法律おかしくない?
同意があればいいんじゃないの?

別々に寝なくちゃいけないのは寂しかったけど、あんまり困らせたら嫌われそうで俺も我慢して一人で寝たんだ。

遼介さんが彼女はいないって本当の事言ってくれたから、これ以上自分の気持ちを押し付けたくなかった。

でも、じゃあ…。

「あの指輪は、なに……?」

昔の恋人とのものだとしても大事に取っておく理由が、恋愛偏差値が低い俺にはわからなかった。

よせばいいのにまた遼介さんの机の引き出しを開けて、指輪を持って文字を読んでみる。

『Always with you. N to R. 20XX.12.24』だって。

訳したらいつもあなたのそばに…って感じ?
しかも日付がクリスマスイヴじゃん。

「キザだなぁ…」

遼介さんほど優しくて格好良い人がずっとフリーなわけがない。
きっと愛し愛される相手がちゃんといたはず。

いや、もしかしたら今も?
このペアリングの片方を持ってる人が捨てていなかったら?

心の中に広がる黒い感情の正体は明確だった。
会った事もない名前も知らない誰かに嫉妬している。

どうして別れたのかなとか、どれくらい付き合ったのかなとか、溢れ出てくる聞いても絶対にいい気分にならないだろう事を聞いてしまいたくなってへこんだ。

それはきっと、遼介さんが俺の事を好きかどうかわからないからだ。

そもそも遼介さんは、男は恋愛対象になる…?

「……やめよ。落ち込むだけだ」

気を取り直して洗濯機を回して、部屋の掃除を邪念を振り払うように念入りにした。

今日は遼介さんと初めて外食するんだから、変な事ばっかり考えてちゃ駄目だって言い聞かせた。

冷蔵庫の中身を見て、夜は外食だからいいとしても買い出しは必要だから色々考えてスマホにメモった。

スーパーへ買い出しに出掛けて、その視線に気がついたのはもう家に帰る途中の道だった。

振り返っても怪しい人はいないのに、歩き始めるとやっぱり視線を感じて、人通りも多い道だし身の危険とかは感じなかったけど嫌な気分だった。

マンションに入って4階の遼介さんの部屋までダッシュで行って、ベランダに出て頭を出さないように慎重に下の道を覗く。

やっぱり気のせいじゃなかったみたいで、歩道からこちらを見上げてる多分だけど昨日と同じキャップを被った男の人が立ってるのが見えて背筋がゾッとした。

もしかしてつけられてた?
俺がスーパーで買い物してる間もずっと?

洗濯物を干した時に俺、外見たっけ?いや今日は天気が良くなかったからここに洗濯物を干さないで室内に干したんだった。

知らない男の人だし、若そうだけど顔はよく見えないし怖くなって、遼介さんに電話しようと俺はスマホを取り出した。

「…って、俺、遼介さんの電話番号知らないじゃん!」

ちゃんと教えて欲しいって言えば絶対に遼介さんは教えてくれたと思うのに、察して欲しいとか余計な事を考えて聞かれるのを待ってた俺の馬鹿!

勇気を出して教えてもらえば良かったって後悔しても後の祭りで、俺は正直困った。

もう時刻は夕方だし、もうすぐ日も暮れて待ち合わせの時間が来てしまう。
でも何となくここから出るのが怖くなってしまったからだ。

俺がストーカーとかされるとは思えないし、あるなら断然遼介さんのストーカーとかじゃない?

って駄目駄目!!遼介さんの家に俺がいるから恋人と勘違いして逆上して刺されたらどうしよう!

ドラマにありそうな展開を想像しては青くなって、俺は必死でどうするか考えて。

そして思い出したんだ。
晶さんと連絡先を交換してた事に…。

『……は?なんで颯太くん、兄貴の連絡先知らないの?一緒に住んでんのにおかし過ぎるでしょ。君達どんな関係なの?』

そう晶さんに言われて、俺はぐうの音も出なかった。

ちなみに、この時晶さんの声は素が出てたのかちゃんとした男の人の声だった。



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