上 下
13 / 32
君がこの手に堕ちるまで。

甘える。2日目、朝。颯太side

しおりを挟む

遼介さんと一緒のベットで寝れるのかって緊張してたくせに、いつの間にかしっかり寝てたみたいで布団の中で目が覚めた。

あれ…?何これ。身体がおかしいっていうか、関節がめちゃくちゃ痛い!!?

そう思った瞬間、おでこにタオルが乗せられてる事に気づいた。

起きあがろうとするとタオルが落ちて、タオルが濡れてるから布団も濡れそうで慌てて拾った。

ふと見るとベットサイドに洗面器が置いてあって、もしかしたら遼介さんが夜中にずっと取り替えてくれてたのかと思った。

…という事は遼介さんは全然寝てないんじゃ…?はぁ…俺、ほんっとここ来てから迷惑しかかけてないじゃん…。

枕元に体温計が置いてあったから測ってみると、38.4℃もあって、しっかり風邪を引いてしまった事を悔いた。

なんでだ?風邪引くような事したっけ?
昨日、お昼頃お風呂に入らせて貰ってから買い物に出かけたからか?

外で電話したりしてたからかも知れない。
いや、それよりきっと、最近心が休まらなかったのに急に気が抜けたんだと思った。

遼介さんの家はものすごく居心地がいい。
でもまた遼介さんに迷惑をかけてしまった。






「おい、ちゃんと口開けろ」

「いやいや、ほんと勘弁して下さいよぉ…」

おでこに冷えピタを貼られて、毛布でぐるぐる巻きにされたままテーブルに座らされて、俺は向かいに座った遼介さんにこともあろうか『あーん』を強要されているのだ。

「誰も見てないだろ、何が恥ずかしいんだ」

だから、遼介さんが見てるから恥ずかしいんでしょうよ!わかれよ!

解せない、と言った顔でスプーンの上のお粥をふーふーして、遼介さんはまた、ん、と俺の口の前に持ってきて口を開けさせる。

「自分で食べれますって…」

「わかってるよ。でも風邪引きの時くらい甘えればいいだろう?」

そんな気心の知れた仲でもないのに、どうやって甘えたらいいのかさっぱりわからない。

「まずいか?」

「いや、充分美味しいです…。遼介さん、実は料理上手いでしょ?」

「普通だよ。美味いならもっと美味そうに食えよ。何となく気になるだろ」

でも多分だけど、お粥の味は実際より薄めに感じてるのかも。

思えば昨日、肉じゃがを失敗したのは味覚が駄目になりかけてたのだと今気がついた。

「……もしかして、味薄いか?風邪引きだから味覚がぶっ壊れたのか。もう少し塩足すか…」

「いいです。本当、美味いです」

遼介さんが難しい顔で考えてるから、恥を忍んであーんと口を開けた。

「ははっ、あれだな。餌付けしてるみたいだ」

「なんとでも言ってください。早く終わらせたいです」

「急がせるなよ。火傷しても知らないからな」

「俺、猫舌じゃないんですよ、大丈夫です!」

ドヤ顔で言ってみると、遼介さんは俺の口にスプーンを突っ込んで、心底楽しそうに笑ってくれる。

食事が終わった後、薬を飲まされて強制的に寝るように促される。

「……なんだよ。そんなに恨めしそうな顔しても駄目なもんは駄目だぞ。風邪は安静にしないと治るもんも治らないだろ」

「寝ます。寝ますけど…」

「うん?」

「テレビが観たいなぁって…」

だって、寝室にいたら遼介さんが見えないから。

「我儘だな」

「……うっ、じゃあいいです」

「拗ねるなよ。駄目とは言ってない」

寝室から枕を持ってきて、クッションと2段重ねにして俺を手招きする。

「甘えろって言ったのは俺だから、責任持って満足するまで甘やかしてやるよ」

「うーん…。ちょっと遼介さん、いくらなんでも布団をかけ過ぎ…あっつ」

俺を寝かせてくれて、重いくらい布団をかけられるからつい文句を言ってしまう。

「アイス、あるぞ。好みがわかんないからいっぱい買ってきた」

「アイスですか!なんでも食べれます」

「そうか。でも食い切れないほど買っちゃったんだよな」

「遼介さんもアイス好きなんですか?」

昨日、ケーキを一緒に食べた時、そんなに甘い物は得意そうじゃないように見えたのに。

「俺、あんまりアイス食べないんだよ。だからさ、冷凍庫のアイス、処分してから出てってくれよ?」

「え、何個買ってきたんですか」

「あー、10個くらい?」

「………あの、えっと…?」

いくらなんでも10個は一気に食べられない。
今日の夜になったら出ていかなきゃいけないんじゃないの?

「お前さ、ここにいる理由をそんな必死に探さなくていいよ」

俺の頭を撫でる遼介さんの手は優しい。

「風邪、治るまでいたらいいし、アイス食べ終わるまで、いたかったらいてもいいぞ」

俺は具合が悪かったし、ちょっと弱ってたし、優しくされたらなんだか…こんな事いつもはないのに。

「……ばーか。泣くならもうちょい派手に泣けよ。声も出さずに泣くとか変な所我慢強いんだな」

遼介さんは、寝かせた俺を引っ張って結構苦しめにぎゅっと抱きしめてくれた。

「うっ…やば…。鼻水…ついた、ごめんなさい…」

「マジか…まぁ、洗濯するからいっぱいつけてもいいぞ。でも鼻噛むならティッシュにしてくれよ」

溢れる涙が止まらなくて結構激し目に泣いてしまったけど、遼介さんは泣き止むまでずっと抱きしめてくれた。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

処理中です...