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我慢だけ強いられてきた男が初めて好きな人を抱いた日の夜の話②。賢太side

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湊がシャツを脱ごうとして片手でボタンを外そうと試みるけど、やっぱり上手く外せなくてモタモタするから、可愛くてつい声を出して笑った。

「………何だよ、何がおかしいんだよぉ」

今にも寝落ちしそうな顔で俺を睨んだ湊がボタンを引きちぎってしまいそうな勢いで引っ張りだしたから、慌ててその手を止める。

「馬鹿、シャツ破れる。もうお前は何もするな、俺がやるから」

シャツを脱がせてやろうとボタンに手をかけると、湊は大人しくなって力が抜けたようにぐったり横たわってる。

あぁ、髪、伸びたな…。
しばらく切ってないのか長くなった髪が湊の可愛い目元を隠してしまうから、よく見えなくて何気なく猫っ毛の前髪を指で払う。

相変わらず、触り心地のいいちょっと柔らかい感触に癒される。
湊はさ、おでこも可愛いんだよな。

意識が無さそうだから音を立てないようにおでこにキスして、柔らかい髪をゆっくり撫でた。

無防備に自分を好きな男の目の前で、大胆に服を脱ごうとしたりする湊の警戒心のなさはどうかと思うけど、それだけ俺に対して気を許してるとも言えるから複雑だ。

まぁ、幼なじみに危機感なんか普通は覚えるはずもないけど、俺じゃなかったらもうとっくに手を出されてるんだからな、と思いながら胸のボタンを下まで起きないように片手で外してシャツを脱がせた。

あ、中にちゃんとTシャツ着てるな。残念。
湊のTシャツの柄はいつも変わってるけど、そんなダサい所とかいい所も悪い所もひっくるめて好きなんだよな。

中まで濡れてはいないみたいだからこのままでいいか?
うーん、でも下は脱がせたら怒るだろうなぁ。

「おい、湊?もうちょい頑張れ。下のズボン、脱げる?」

ふと目が開いて、湊の茶色くて色素の薄い目と目が合って、久しぶりにこんな近くで湊の顔を見てる事に浮かれた。

そういえばこの所、何故か湊に避けられてるような気がしていたから単純に嬉しい。

でも、今更ながらこのシチュエーションに湊が警戒するかと急に思いたって、平常心を装って安心させるように優しく話しかけた。

好きな子が具合悪い時に優しくするのはセオリーだしな。点数稼ぎとか言わないでくれ。

「湊、ジーンズはキツくて寝づらいから、俺が脱がせてスウェット履かせていい?」

「……え?やだよ…無理…。自分でできる…」

って、お前さっきから何にも自分で出来てないんだけど。

もっと酔い覚ましに水分取らせないと…また飲ましてもこぼすなら、着替える前に飲ませないとまた濡れるだけだ。

「着替える前にもっと水飲んでおくか?水飲めば、酒も早く抜けるし楽になるから…」

またこぼすかと思ってストローでも持ってくるかなと思案してると、しばらくぼーっとした顔で俺を見つめていた湊の顔が近くに寄った。

「……ふふ、ねぇ、賢太ぁ?」

舌ったらずなゆっくりした話し方が可愛くて、抱きしめたいという欲求が頭を支配してるのを感じつつ、俺の鋼の忍耐力で理性を保つ。

「なんでさっき、おでこにさぁ、ちゅーって…したの?」

………そこ今聞くのか?湊。意識があったのは想定外だった。うーん、まずいな。どうやって誤魔化すか。

「あーあれな。湊がよく眠れるように、おまじない?うん。昔はよくしただろ?」

苦しいな。うん。幼稚園児時代くらいっけ。湊とデコチューしてたの。
この応対に点数をつけたら10点だ。赤点だな。

「ごめんな、嫌だったか?」

「うーん。いやじゃない………やなわけないじゃん…」

……………ん?何この反応。

基本、湊は俺に対してはぶっきらぼうというか、リアクションが割と薄いから、聞き捨てならなくて食いついた。

「湊、俺にキスされて嫌じゃないって事?」

「……うん。うれしい…ずるい、おれもしたい…」

は?願ったり叶ったりなんだけど。
こんな可愛い湊、絶対に誰にも見せたくない。

「そっか。うん、いいぞ。ほら」

湊が俺のおでこにキスをしたいと言ったと思って、俺はおでこの髪を少し片手で上げて目を閉じた。

昔を思い出したのか、こんな可愛いやりとり今後は絶対なさそうだから、めちゃくちゃ貴重で脳裏に焼き付けないとな、と心の中で思った。

唇が当たった感触に驚いて目を開けると、俺の胸ぐらを掴んで湊は俺の唇を塞いでいた。

その手が震えてると気づいた瞬間に、俺の背中が鳥肌が立つようにゾクゾクと快感が走って、俺の中心に血が集まるのを感じた。

くそ、やばい、キスだけで勃った……。
俺の忍耐力、大した事なかったな。

触れるだけの可愛いキスが何度か続いて、恥ずかしそうな顔をした湊が俯いて呟いた。

「………いや、だった…?賢太…」

「嫌じゃないよ」

「だって、賢太……固まってるじゃん…」

「違う、湊からしたから驚いただけ」

でもそれ以上続けられると止められる自信が全くないから焦る。

「湊、覚悟がないならこれ以上煽るな。お前、初めてだろ?酒飲んでおかしくなってるだけならまだ引き返せる。ちょっと落ち着こう?」

食い気味に言うと、ちょっと傷ついた顔をして悲しそうに笑った。

「おれ、経験なくてつまんない?だから抱けない……?」

「だから、そう言う事酔った勢いで言うな。ちゃんと考えろ。初めては好きな人とするもんだろ?」

「……なんだよ、俺の事すきじゃないのは、賢太の方だろ?はっきり、いえよ……!」

急にポロポロと泣き出した湊に焦って、俺は思わず慌てて強く抱き締める。

「おい、泣くなよ…?俺はお前の事、めちゃくちゃ好きだって!俺は湊の事ずっとそういう意味で好きで、ずっと抱きたいと思ってたんだよ。そんな事言われたら、止まらなくなるだろう?」

ああ、こんな風に格好悪く伝えたくなかったのに、一度口に出したら止まらなくなる。

「好きだよ、湊の事。お前の好きとは違うかも知れないけど、ずっと…」

「ひっく、ち、ちがくない、おれ、賢太の事ずっとすきだし…」

………これは、完全合意だろ?愛斗さん。
もう文句は言わせない。

「俺の事、好きなの?湊」

「……うん、めっちゃすき…」

しゃくり上げながら伝えてくる湊の言葉を、まだ信じがたい気持ちで聞きながら、返事の代わりに湊をベットに押し倒して指を絡めて縫い付けた。

「うん、俺も湊が好き…」

目を閉じた湊の赤く染まった頬に唇を当てて、沢山キスを落としながら唇にたどり着いてゆっくり塞いだ。

何度も唇を合わせてると、歯が当たったりして上手いとは言えなかった湊が少しずつちゃんと俺のキスについていけるようになっていくのが不思議で夢みたいな心地よさだった。

ずっと、こうやってキスしたいと思ってた。
ずっと、抱きたいと思ってた。
しかも、湊から言ってくれるなんて、想定外。

もう絶対一生離してやらないと決めた。


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