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いくら仲良しでも適度な距離は必要です。

いくら仲良しでも秘密は守らないといけません②

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「制服、皺になっちゃったな…」

「誰のせいだよ。てか、見るなよ…」

そんなに見られたら穴開くわ!って言いかけて何となく不機嫌になった晴人の様子を見て止めた。

晴人は部屋の勉強机の椅子に座って、頬杖をつきながら俺が制服を着るのをじっと見てる。

「何を今更…昨日素っ裸散々見たんだけど」

「……は、晴人!?これからずっとそうやってセクハラする気か?誰か聞いてたらどうすんだよ」

「悠太がさっきから普通の幼なじみの会話に戻そうとするからだろ。それになんで帰るの?今日も明日も休みだろ」

「だ、だから…1人になって色々考えたいんだよ、これからの事とか」

晴人がこんな風に拗ねる事はあまりないから珍しくて、俺はちょっと困ってる。

元々今日は晴人と映画でも観に行くかって約束をしてたんだけど、俺は普通に街を歩くのは無理そうだったから、早々に行けない旨を晴人に伝えといた。

昨日、頭打って出来たタンコブなんかより、俺の身体の鈍痛の方がよっぽど重症でもう少し安静が必要なんだけど。

立ってるのがちょっと辛くてベッドに座ると、つい腰がまだ重くて思わず顔をしかめてしまう。

晴人は何も答えずに俺の後ろに回って、両手で腰を優しく触ってさすってくれる。

「…ごめん。身体そんなに辛いのか?」

「ちょ、大丈夫だって…その何となくいやらしい触り方やめてくれる!?」

「それはお前が勝手にそう感じてるだけだろ。俺やましい気持ちで触ってないけど」

「……やらしくなくても、くすぐったいし!ばっ、やめろって!あっはははっマジでやめろって…馬鹿っ!!」

俺が笑い疲れて脱力すると、晴人はくすぐるのをやめて俺を後ろから抱きしめたまま首元に顔を埋めた。

「…晴人?」

「今日はまだ一緒にいたいんだよ…ダメか?」

それは俺だって…でも、晴人のおばさんも帰って来て疲れてるだろうし、これから寝なくちゃいけないはずで。

これ以上ここにいるのは躊躇われた。
いつもなら平気で居座るのに、今日はやっぱり帰りたいんだ。

「なんか…昨日の事なかった事にされそうだから」

なかった事になんか出来るかよ。
コイツは自分が何をしたのか全くわかってないのかも。

忘れられない記憶を植え付けた昨日の事、これからも絶対一生なかった事に出来るわけがないんだから。

振り返って晴人の顔を覗き見ると、やっぱりちょっと面白くなさそうな顔をしてる。

何だか可愛くて、俺は晴人が回した手に俺の手を重ねて優しく撫でた。

ベッドに向かい合って、お互い胡座をかいて正面から向かい合って、俺は口を開いた。

「ちゃんと、話しよう。俺達」

晴人の綺麗な顔に見つめられると無駄にドキドキしてしまうけど、小声で確認する様に話す。

あんまり大きい声だと晴人のおばさんに聞こえそうで、まだ覚悟なんて出来てない。

「付き合ってる事にするのは、学校の中と真由香姉ちゃんの前でだけ。家族には、秘密にして」

「俺は話してもいいのに」

「何でも話せばいいってもんじゃないじゃん。味方ばっかりじゃないよ、多分」

「お互い好きなんだから何も問題ないけど、悠太がそう思うならわかった」

綺麗な顔が近づいて来て、触れるだけのキスをされるとつい目を瞑って受け入れてしまう。

「は、はると…そういうのも、誰もいない時に…して?」

「俺は色々もう我慢しないけど」

「だって、変な声とか俺出ちゃうんだもん…」

「…わかった。善処するよ」

面白く無さそうでもちゃんと俺の気持ちも汲んでくれて、やっぱり晴人は俺に昔から甘い。

「あと、土曜日だけどうちは父さんも母さんも仕事あるから多分もういないんだよね」

「…うん?」

「家、来る…?映画の代わりにDVDでも借りにいってさ」

「行っていいなら、行く」

「でも…誰もいないからって変な事は無しね。俺、晴人が思ってるよりダメージ大きい。あちこちの筋肉が痛いし…その」

心配そうな顔をした晴人から目を逸らすと、俺は正直に呟いた。

「特に股と腰が…それに太もも吊りそう…」

あんな体勢とか足を開くとか男にとっては無理な姿勢ばっかりなんだから仕方ないと思うけど、言ってしまってから恥ずかしくてやっぱり顔が赤くなる。

「俺のせいだから責任取るよ。抱っこして行きたいとこだけど、悠太嫌だろうからチャリの後ろに乗せてく」

2人して秘密を共有して、晴人はやっと少し笑ってくれた。

少し変わってしまった2人の関係だけど、やっぱり変わらない積み重ねて来た一緒にいた時間があるからきっと大丈夫だって思えた。








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