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いくら仲良しでも適度な距離は必要です。

いくら仲良しでも秘密は守らないといけません①

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目が覚めると隣に晴人の姿はなくて、抱きしめてくれてたぬくもりがないのがなんだかすごく寂しく感じた。

遠くでキッチンを使ってる音がして、サイドテーブルの時計を見て8時を過ぎてる事を確認する。

朝ご飯作ってくれてるのかも。
本当は目が覚めたら一番に晴人の顔を見たかったのになぁ。

「トイレいこ…」

起き上がるとやっぱり身体はまだあちこち痛むから、昨日の事は全部夢なんかじゃないんだと思い知らされた。

晴人に色んな事されて使い物にならなかった身体も、人間休めばちゃんと回復するみたいで、恐る恐る立ってみるとちゃんと立ち上がれた事にホッと息を吐いた。

良かった、晴人にまた抱き上げられるとかはなさそう…。

自分が晴人のTシャツ一枚なのはどうなのかと思って、昨日借りたはずの短パンを探したけど見つからない。

晴人の下着まで借りてるのに、これで晴人の部屋以外をウロウロするのは少し躊躇われた。

トイレだけ借りて、速攻で戻って来よう…。

トイレから出て部屋に戻ろうとすると、キッチンの方から女の人の声が聞こえて、晴人のおばさん帰って来てるのかなって思ってちょっとだけ覗いてみる。

「電話線抜くとか馬鹿じゃないの?晴人もゆうちゃんもスマホ繋がらないし、あたしがどんだけ心配したか…」

「心配なんかいらねぇよ。てか、帰ってくんなっつったろ」

「ココあたしの家なんですけど。朝まで待ってやったんだから感謝して欲しいわ」

真由香姉ちゃんの声が聞こえてきて、俺は戸惑いながら顔を出す。

「おはよう、真由香姉ちゃん…」

「おはよーゆうちゃん♡……ちょ、なんて格好させてんの晴人…彼シャツとか変態じゃん」

下履かせなさいよ!!ってその辺にあったティッシュの箱をぶつけられてる晴人と、俺をぎゅーっと抱きしめる真由香姉ちゃん。

いつもこんな感じなんだけどね。

「悠太、よく寝れたか?もう身体大丈夫か?」

晴人の心配そうな声にぎくしゃくしながら笑みを返すと、昨日までとは全く違って晴人が更にめちゃくちゃカッコ良く見えたりする。

頰を赤らめてもじもじしてるキモい俺と、俺を見た途端機嫌良く笑う晴人の顔を交互に何回か見て、真由香姉ちゃんはこの世の終わりみたいに呟く。

「……ヤッたわね」

「言っとくけど同意の上だぞ」

「あぁ……あたしの天使が…こんなろくでもない男に無理矢理奪われちゃうなんて…世も末ね…」

「だから無理矢理じゃねぇって」

「ちょ、真由香姉ちゃん何言ってんの?」

俺、そんなになんか変わった?

「ゆうちゃん…色気ダダ漏れよ。ああ…こんなとこに跡つけられて…これは犯罪だわ…」

俺の首筋の後ろを触りながら、真由香姉ちゃんは諦めたようにため息をついた。

晴人、見えないとこにつけるから大丈夫って言ったのに!!嘘つき…!

俺は一人っ子だからずっと真由香姉ちゃんは俺の事を弟みたいに可愛がってくれて、それが当たり前みたいになってるんだけど、実の弟の晴人とはあまり反りが合わないらしい。

真由香姉ちゃんは晴人を女の子にしたみたいにかなりの綺麗系のお姉さんで、でも性格は全然違って気どってなくてハキハキしてて、でも一途で可愛くてずーっと同じ人と付き合ってるんだよね。

「もう俺のなんだから気安く触んな…昔から姉貴は悠太にべたべた触り過ぎ。その手を離せ」

「いいじゃんー。どうせうちにお嫁に来るんだから、家族じゃないのー」

なんか変な事真由香姉ちゃんが言ってるけど、俺、残念ながらお嫁さんにはなれません。

「真由香姉ちゃん、その、反対じゃないの…?」

「反対よ。でもねぇ、昔の何にも知らないゆうちゃんにトラウマを作っちゃった身としては、許さざるを得ないってゆーか。思い出しちゃった?昔あたしがゆうちゃん泣かせちゃった事…」

昨日見た夢のせいで思い出したけど、昨日俺が晴人に言った男同士が普通じゃないって思い込んでた事って、全部真由香姉ちゃんから教えてもらったんだった。

「あ、やっぱ姉貴が余計な事吹き込んだな…。てか、泣かせたってなんだよ。聞き捨てならない」

「それはゆうちゃんが5歳くらいの時に、ゆうちゃんに相談されてさぁ…」

「………!!真由香姉ちゃん、それダメ…!」

口に人差し指を当てて言わないで欲しいと目で訴える俺に、真由香姉ちゃんは軽く頷いてくれる。

「はるとぉ、あんた初恋が実ってほんっと良かったわねぇ。執念の為せる技よね。さてと、あたしは様子を見に来ただけだから、彼氏の家に戻るわ」

もう一度俺の身体をぎゅーって抱きしめた真由香姉ちゃんは、晴人が作ったホットサンドをひとつ手に取って食べながらキッチンを出て行った。

「台風みたいだったな。悠太、もうスマホ電源入れていいぞ。姉貴からの着信とメールが大量に入ってると思うけど、全部削除して問題ないからな」

お、俺って晴人の初恋だったのか。

そう言えばずっと俺を想っていてくれたなら、初恋も俺だって事になるんだけど、急に恥ずかしくなって近づいて来た晴人から距離を取ってしまう。

「え、なんで逃げる…?ほら、おはようのキスとかないの?」

「す、するわけないじゃん!こんなとこで…おばさん、帰って来たらどうすんの」

「じゃあ、どこだったらいいの?」

「えっと、誰も見てない所…」

「わかった。部屋に朝ご飯持ってくから食べよう。ゆっくり…な?」

じりじりと迫ってくる晴人の圧力に押されて、部屋にすぐに連れ込まれた俺は朝っぱらから濃厚なキスをされる羽目になった。






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