いとしの生徒会長さま 2

もりひろ

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おさんぽ

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「んー、それはヒミツ。といっても、おいおいわかるだろうけどね。まあ、そのときまでのお楽しみってことで」
「えー。ケチ」

 今度は俺が口を尖らせた。

「じゃあ、どんな曲をやんの? 何曲ぐらい?」
「七、八曲?」

 と、奥芝さんは確認するように、ジョーさんにも顔を向けた。

「まあ、そんくらいか。一曲は俺たちのオリジナルなんだ」
「え、作んの?」
「毎年恒例でな」
「だったら、その七、八曲って、有名アーティストのやつじゃなくて、先輩たちが作ってきたのとか?」
「そうそう」

 奥芝さんが頷いた。

「うそ。めっちゃかっちょいー」
「だろうだろう。つか、演奏してる姿はもっと格好いいと思うぞ」
「ちげぇーし。ジョーさんが格好いいとかじゃなくて、そういう伝統みたいなのが格好いいってハ、ナ、シ」

 また図々しくこの肩を抱こうとしてきたジョーさんの手をパシッと弾く。

「じゃあ、その新しい曲ってのは、いま作ってる最中なんだ」
「うん。詞はね、みんなで考えるんだけど、曲はクロが一人でつけるんだ」
「ええっ?」

 俺は大声を上げた。
 ていうかあの人、バンドのメンバーに入ってるんだ……。
 まじか。

「黒澤サンも楽器すんの?」
「クロんとこは両親が音楽家だからね。あいつ、小さいころからピアノとバイオリンをやらされてたらしいよ」

 俺は、黒澤の顔を思い浮かべた。
 あの人がバイオリン……。
 第一印象があれだったから、そんなイメージはぜんぜん湧かない。
 俺はあんぐりと口を開けていたけど、ふとあることを思い立って、ジョーさんと奥芝さんを見上げた。

「もし、手伝えることがあったら言ってください。俺、ヒマなんで」
「あー……」

 てっきり、二つ返事で快諾してもらえると思ったのに、ジョーさんと奥芝さんはお互いを見合って、戸惑いの表情を見せた。

「なに? だめ?」
「だめっていうか、ねえ。ジョー先輩」
「ああ。卓にはやらなきゃいけないことができると思うからさ」
「は?」

 と、俺が顔をしかめたとき、タイミングよくミケが吠えた。
 奥芝さんが、ああっと大きな声を出す。

「ミケの散歩。忘れてた」
「あ、俺が行きます」

 ミケのところへ行こうとした奥芝さんを制して、俺は言った。
 先に綱を持つ。

「悪いよ」
「いえ。そのためにここに来たんで。せっかく早起きしたから、ミケの散歩でも行こうかなって」

 俺は、ミケが繋がれてる杭にも手を伸ばした。
 わかった、ありがとうと言って、奥芝さんはミケの綱を杭から外してくれた。俺から木刀を受け取り、お散歩セットのバッグを代わりにくれる。

「じゃ、行こう。ミケ」

 奥芝さんとジョーさんに手を振ると、二人も大きく振り返してくれた。
 坂を下りながら、さっきのジョーさんの言葉を思い返す。
 どの部にも所属していない俺がやらなきゃいけないことって、なにがあるんだろう?
 維新が言うには、おにぎりも屋台も担当が割り振らていて、当日に向け、準備は着々と進めれられている。
 俺はもう一度首をひねった。しかし、うんうん唸ったところでわかるはずもなく、頭の片隅に置いておくことにした。


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