16 / 56
手応えはありまくり
七
しおりを挟む
新しく注がれたカルーアミルクに口をつけ、今度は嬉しくなってきた。なんで、こんなに美味しいのか。僕は笑いながらカウンターに額をつけた。
そんな楽しさへ水を差すように、だれかが僕を揺さぶる。なんだと思い首をひねると、逢坂先生が見下ろしていた。
同情でもするような、ほとほと困り果てたような顔をしている。
どんな表情をしても、基礎が整っているやつは、格好よくしかならない。男の僕でも見惚れるくらいなんて羨ましすぎる。
神さまのバカヤロー。
僕だってそういう顔に生まれていたら、もっと生徒に慕われたかもしれないじゃないか。
でも、不思議と悔しい気持ちはない。ただただ、ないものねだりな自分がおかしくてしょうがなかった。
「俺、知らねえぞ」
土屋さんの声が聞こえた。
それもおかしくて、なんだか愉しくて、僕は笑いを止められなかった。
逢坂先生がぼそっと言う。
「やべえな」
「しかし、聞きしに勝るキャラだな。おい」
「てことで、そろそろ帰るわ。悪ぃけど、ツケにしといて。──渡辺」
逢坂先生が僕の肩を掴んだ。スツールから立たせようとする。
ここでまだ飲んでいたくて、僕はカウンターにしがみついた。やだやだと頭を振る。
さらに酔いが回ってきた。
「代行頼んでやるから」
「やだ。まだ飲む~」
「ああ?」
と、なぜか逢坂先生は凄んでいる。そして、顔を近づけてきた。
「いい加減にしろよ。……ったく、面倒くせえやつだな」
「つぐ、だからって前みたいに捨ててくなよ」
──捨てる?
それを聞いて、冗談じゃないと僕はしゃきっとした。したけど、すぐにぐでんとなった。
またおかしさが湧き上がる。
自分が変だという自覚はあるのに、それをうまくコントロールできない。
久しぶりの深酔いだった。そんな自分が、また面白くて仕方ない。
「捨てるかよ。休み明けには顔合わさなきゃいけねえんだから」
「おーさかせんせー」
「なんだよ。ほら、いいから立てって」
「僕、せんせーのうちへ行きたいでーす」
まだ飲みたい。この時間を終わらせたくない。
逢坂先生は「わかった」を繰り返しつつも、僕の体を無理やりドアへと向かわせる。
その力のものすごいこと。僕はもう逆らえず、自力でも歩いた。
お店を出るときに土屋さんへ一礼したら、つんのめってしまって、ついに逢坂先生に怒鳴られた。
それも、いまの僕には笑いの要素でしかない。逢坂先生にしがみついてケタケタ笑っていると、さっき言われた「捨てる」がよぎった。ちょこっと残った理性でなんとか正気を取り戻そうと踏ん張る。
踏ん張ったんだけど、そこからはよくわからなくなった。エレベーターらしきものに乗せられたところで、僕はとうとう意識をなくした。
そんな楽しさへ水を差すように、だれかが僕を揺さぶる。なんだと思い首をひねると、逢坂先生が見下ろしていた。
同情でもするような、ほとほと困り果てたような顔をしている。
どんな表情をしても、基礎が整っているやつは、格好よくしかならない。男の僕でも見惚れるくらいなんて羨ましすぎる。
神さまのバカヤロー。
僕だってそういう顔に生まれていたら、もっと生徒に慕われたかもしれないじゃないか。
でも、不思議と悔しい気持ちはない。ただただ、ないものねだりな自分がおかしくてしょうがなかった。
「俺、知らねえぞ」
土屋さんの声が聞こえた。
それもおかしくて、なんだか愉しくて、僕は笑いを止められなかった。
逢坂先生がぼそっと言う。
「やべえな」
「しかし、聞きしに勝るキャラだな。おい」
「てことで、そろそろ帰るわ。悪ぃけど、ツケにしといて。──渡辺」
逢坂先生が僕の肩を掴んだ。スツールから立たせようとする。
ここでまだ飲んでいたくて、僕はカウンターにしがみついた。やだやだと頭を振る。
さらに酔いが回ってきた。
「代行頼んでやるから」
「やだ。まだ飲む~」
「ああ?」
と、なぜか逢坂先生は凄んでいる。そして、顔を近づけてきた。
「いい加減にしろよ。……ったく、面倒くせえやつだな」
「つぐ、だからって前みたいに捨ててくなよ」
──捨てる?
それを聞いて、冗談じゃないと僕はしゃきっとした。したけど、すぐにぐでんとなった。
またおかしさが湧き上がる。
自分が変だという自覚はあるのに、それをうまくコントロールできない。
久しぶりの深酔いだった。そんな自分が、また面白くて仕方ない。
「捨てるかよ。休み明けには顔合わさなきゃいけねえんだから」
「おーさかせんせー」
「なんだよ。ほら、いいから立てって」
「僕、せんせーのうちへ行きたいでーす」
まだ飲みたい。この時間を終わらせたくない。
逢坂先生は「わかった」を繰り返しつつも、僕の体を無理やりドアへと向かわせる。
その力のものすごいこと。僕はもう逆らえず、自力でも歩いた。
お店を出るときに土屋さんへ一礼したら、つんのめってしまって、ついに逢坂先生に怒鳴られた。
それも、いまの僕には笑いの要素でしかない。逢坂先生にしがみついてケタケタ笑っていると、さっき言われた「捨てる」がよぎった。ちょこっと残った理性でなんとか正気を取り戻そうと踏ん張る。
踏ん張ったんだけど、そこからはよくわからなくなった。エレベーターらしきものに乗せられたところで、僕はとうとう意識をなくした。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
R-18♡BL短編集♡
ぽんちょ♂
BL
頭をカラにして読む短編BL集(R18)です。
pixivもやってるので見てくださいませ✨
♡喘ぎや特殊性癖などなどバンバン出てきます。苦手な方はお気をつけくださいね。感想待ってます😊
リクエストも待ってます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる