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一章 鮮やかなる国 ブライト
第一章 第二十四話 神様との交渉
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「あのルオマ様、その前に一点お聞きしたい事が」
「なんじゃ。早う済ませ」
「フェルンが逆らったというのは、もしかして」
頬を冷たい汗が伝う。
それまでに無表情だったのに、その顔には堪えようとしているが明らかに憎悪、怒りが顔に現れている。もう答えは言わなくてもわかる。
「万能の神の座に相応しくないと言ったのじゃ。作られ、従う天使でありながら!」
「そ、そうだったのですね。知らなかったとはいえ……この度は、ご無礼を」
ルオマ様に頭を下げる。
刃向かった者の味方をするという事は、敵になるも同義。神に逆らったと言っていた時点で、誰かしらの神に逆らう事になるのは覚悟していたが、まさかこの人とは。だが。
「ルオマ様……。今の彼女は無力な存在です」
「だからなんじゃ」
「その、何とか、見逃しては……くれませんか?」
手に汗を握りながら、声を絞り出す。
最初は仲間が増えた事に純粋に喜んでいただけだし、そんなに付き合いも長くない。だからとばっちりを食らったとも正直思ってる。
「何故、奴をお前が庇う?」
「理由なんて。知り合った人なら助けたくなるものでしょう?」
けれど。
困っている人が居るなら手を伸ばしたくなる。
それが数日の間でも、色々と教えてくれ、しかも仲間になるとまで言ったのならますますだ。
「フェルンを信じて欲しいなんて思いません。だから代わりに僕達を信じるのは出来ませんか?」
「殺そうとした者の信用を担保しようと言うのか? ハッ、片腹痛いわァ!」
強い怒気をルオマ様が放つ。その気は見間違いか神の権能か、スパークにも見える。
主張は最もだと思う。いくら今は弱いとはいえ、自分を殺そうとした存在は信用できなくて当然だ。そしてそれを肩代わりするなんて無謀も良い所。しかし俺には切り札がある。
「フェルンに貴方に金輪際関わらないとサナと契約させる。これなら?」
「お主の契約者か……。確かにあれならばフェルンを縛るのは可能じゃろうな」
「彼女は魔力で魔王を降臨させた存在です。拘束力は誰にも負けないかと」
「それは儂も承知しておる。じゃが、じゃがのお……ううぅむむむぅ……」
提案すると、少し怒気を引っ込め思案を始めた。
やっぱり魔王を降臨させるレベルの人間の契約の信用性は高いようだ。よし、もう一押しだな。
「僕達は今、魔王を倒す為に冒険をしています。旅路は長く過酷を極めます」
「そうじゃったな。つまり一行に加わるフェルンは、その間は確実に動けないと」
「仰る通りです。この条件でなんとか……」
信用させる、という意味ではこちらは出せる物は全て出したつもりだ。これ以上は切れるカードはないからもし駄目なら諦めるに他ない。
けど出来ればフェルンを諦めるのは嫌だから、これで信じてもらいたいけど。
「はあ、おかしな奴め」
「えっ?」
「もう一つ、奴が儂に牙を剥くなら其を必ず止める。これ含め守れるのなら信じてやろう」
「なら、良いんですね!」
よかった、ああ良かった!
今の俺やフェルンでは、この人には敵いっこないから止めるし、もし仮に力を取り戻しても知り合いでもあるこの人と命のやり取りをするのはやめて欲しい。だからその約束は守れるはずだ。大丈夫、何とかなる内容だ。
「それにお主はあまりに不遇であるしの」
「僕が不遇、ですか」
「神と召喚者、どちらにも力を与えられないばかりか魔王まで倒す事になってしまったじゃろ?」
サナから魔力を貰いはしたが、世界中に現れるであろう魔王を全て倒すのには足りない。
いや正直、未だにテウメスですら倒した構図も全く浮かばず、魔法の練習といった別の課題で使命である魔王討伐から、目を逸らしていたくらいだ。
「じゃから、少しは助け舟を出した方が良いと思っての。形は歪じゃし、遅れたが今回信じたのは転移にあたっての特典という事にしよう」
「ああ、成る程。そういう扱い方もあるのですね」
ハナから特典なんてアテにしていなかったから、ここでその口実を使ってもらえるのは助かるな。
まあ堕天させて亡き者としたフェルンを特典扱いというのは体良く押し付けられた、或いはお守りを任されたような気もするが、こちらから希望したのだからもう構うものか。
「突然でお邪魔したのお。儂からの要件はもう無いがそちらにはあるかの?」
「いえこちらからは現状ございません」
激情が収まったのか、前に会った時と同じような声色でそう聞いてきた。
今回のように怒りや憎しみといった激しい感情に飲まれた人を相手するのは、父さんのせいで多少は慣れている。
それでもやはり相手は神。全く生きた心地がしなかった……。
「さて、そろそろ夜が明ける。お主には目覚めてもねばな」
「もうそんな時間でしたか。それでは失礼します」
その場で寝転がり、瞑目する。
神を相手に話し合った事で白熱する思考を鎮まるようにしながら、徐々に意識を手放していく。
『愚かな我が子を、よろしく頼むぞ』
そう何処か愛情を感じる言葉が聞こえた直後、意識が霞のように消えていった。
意識がはっきりと覚醒する。
「やあおはよう、タクマ」
次に覚醒した視界に入ったのは白い病院の天井と気持ちのいい朝日、そして。
「おはようフェルン、今日もいい朝だな!」
赤と白の目をした、白髪の華奢な人物が目に入る。フェルンだ。
「そうだけど、うなされていたね。大丈夫かい?」
心配そうに見つめてくるフェルンがそう言う。
まあうなされもするだろう。何せ神様相手に交渉を終えてきた所なのだから。
「朝っぱらから悪いんだけど、フェルンについて重要な話がある。練習の前に話させてくれ」
「ボクの事でかい? キミがそう言うなら構わないが……一体何だろう」
心当たりないのか首を傾げるフェルン。
まあ俺も、まさか最初にこの世界で会った神様に逆らった天使を仲間にする事になるなんて思いもしなかったからな。無理もないか。
_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆
「——という事があった」
「ふむ。そんな事が」
朝食を食べ終えた後、今朝夢で神様と取り決めてきた事を洗いざらい話した。
当然驚かれるのは目に見えていたし、途中で質問を挟まれて話を忘れては困るので、とりあえずこちらの話を全て話させて欲しいと前置いた上でだ。
「色々言いたい事はある。先ず庇うよりボクを売って彼の元から帰って来る、という思考が無かったのに疑問を抱くのが正直な所だ」
「帰ってきてフェルンの顔を見た時、脳裏に過ぎったよ。そう来るだろうなあって」
夢の中では反射的に庇っていたが、朝フェルンの顔を見て気付いた。
何故逃げて来なかったって言うだろうと。実際その通りで今回は上手く行ったから良いものの、失敗していたら今頃俺は消し炭だ。
「気持ちは理解できない訳ではないから咎めないさ。けどキミには人類の切り札を活かすという役目があるのを忘れずにね」
「そうだよな、自分の命を真っ先に考えるよ」
そもそも自分の命に関わるようなシーンに出くわしたくはないが、俺が死ねばサナが同じ過ちを繰り返してしまう可能性がある。
そうなればどうなるか、さらにその後は。俺自覚も力も色々と足りてないなぁ。
「けどだ、タクマ」
「ああ、反省していく。気をつけないとな」
「いやそうじゃなくて。キミがボクを助けてくれたのは……まあ、なんだ」
手を後ろで組み、もじもじと言いあぐねている。
何が言いたいのか察しはつく。逃げろと言った手前中々言い出せないのだろう。
「ありがとう……と言っておくよ」
「どういたしまして。助けた甲斐があったな」
感謝にそう返すと、すぐそっぽを向いてしまった。後ろからでも見える耳が赤く火照っている。
もし自分の立場だったら、照れ臭くて同じ事をしている。何かフォロー出来れば良いんだけど、生憎言葉が思いつかない。
「まあ、魔法の練習行こうぜ?」
「ああそうだね、そうしよう!」
とりあえず棚上げだ。
いつもより半刻、三十分程遅くなってしまったし早く練習をして——
ピー、ピー、ピー
「うわっ、なんだこれ!」
服の胸ポケット辺りが赤く光を放っている。
そして耳障りな機械音。
これは、なんだ? 危険な物なのだろうか?
「フェルン、これは何なんだ? 胸ポケットの辺りが、光ってる!」
「落ち着けタクマ、それは呼び出しだよ」
「そう、なのか。じゃあ大丈夫なんだな」
「検査室へ行こう。何か急に呼び出す用件が出来たんだと思う」
頷き、部屋から出て検査室へ急ぎ足で向かった。
急ぎの呼び出しという事で、少し不安だけど考えても仕方ないな。
_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆
「ふうぅっ、ヒリングさんどうされました?」
「来ましたかタクマさん。まあそこへお座りになって下さい」
深く空気を吸い込み、荒い息を整えてから勧められた席に着く。
エレベーターを待ってる時間が勿体無かったから急いで来たが、用件とは一体何だろう。
「入院期間についてです。頭部だけならお連れ様の治療が良く、検査結果からして二、三日で退院頂けたのですが……」
「その言い方だと、長くなったと?」
「はい。魔力を激しく使用した影響か、回復が異常に早くなっています。元に戻す為治療が必要です」
真摯で優しさを感じる口調でそう進言してくれるヒリングさん。この人が担当でよかったよ。
けれど、その提案は空回りなんだよな。どこかの特例の塊みたいな奴のせいで。
「すみません、それ多分サナかと」
「はっ!? お連れ様が原因ですか?」
「ええ。僕の魔力はサナから供給されてるんです。急に少なくなったから多めに流してのかと」
「確かにタクマ様の魔力はサナ様のものとお聞きしておりましたが……まさか全てとは」
「すいませんね、驚かせてしまって」
逆に一部だけ誰かのものに出来るとかある方が俺からすると驚きだ。
まあ一部だけなら一部だけで、相性とかで苦労しそうな気もするな。全部なら全部でこういうのが起きるわけだけど。
「急に呼びたてしまってすいませんね。では検査時間も近いので、このまま検査に入らせて頂きます」
「わかりました。よろしくお願いします」
この後いくつかの問診を受けた後、特に問題はないと結果が出た為退院の予定日は本来と同じ日程となった。
「なんじゃ。早う済ませ」
「フェルンが逆らったというのは、もしかして」
頬を冷たい汗が伝う。
それまでに無表情だったのに、その顔には堪えようとしているが明らかに憎悪、怒りが顔に現れている。もう答えは言わなくてもわかる。
「万能の神の座に相応しくないと言ったのじゃ。作られ、従う天使でありながら!」
「そ、そうだったのですね。知らなかったとはいえ……この度は、ご無礼を」
ルオマ様に頭を下げる。
刃向かった者の味方をするという事は、敵になるも同義。神に逆らったと言っていた時点で、誰かしらの神に逆らう事になるのは覚悟していたが、まさかこの人とは。だが。
「ルオマ様……。今の彼女は無力な存在です」
「だからなんじゃ」
「その、何とか、見逃しては……くれませんか?」
手に汗を握りながら、声を絞り出す。
最初は仲間が増えた事に純粋に喜んでいただけだし、そんなに付き合いも長くない。だからとばっちりを食らったとも正直思ってる。
「何故、奴をお前が庇う?」
「理由なんて。知り合った人なら助けたくなるものでしょう?」
けれど。
困っている人が居るなら手を伸ばしたくなる。
それが数日の間でも、色々と教えてくれ、しかも仲間になるとまで言ったのならますますだ。
「フェルンを信じて欲しいなんて思いません。だから代わりに僕達を信じるのは出来ませんか?」
「殺そうとした者の信用を担保しようと言うのか? ハッ、片腹痛いわァ!」
強い怒気をルオマ様が放つ。その気は見間違いか神の権能か、スパークにも見える。
主張は最もだと思う。いくら今は弱いとはいえ、自分を殺そうとした存在は信用できなくて当然だ。そしてそれを肩代わりするなんて無謀も良い所。しかし俺には切り札がある。
「フェルンに貴方に金輪際関わらないとサナと契約させる。これなら?」
「お主の契約者か……。確かにあれならばフェルンを縛るのは可能じゃろうな」
「彼女は魔力で魔王を降臨させた存在です。拘束力は誰にも負けないかと」
「それは儂も承知しておる。じゃが、じゃがのお……ううぅむむむぅ……」
提案すると、少し怒気を引っ込め思案を始めた。
やっぱり魔王を降臨させるレベルの人間の契約の信用性は高いようだ。よし、もう一押しだな。
「僕達は今、魔王を倒す為に冒険をしています。旅路は長く過酷を極めます」
「そうじゃったな。つまり一行に加わるフェルンは、その間は確実に動けないと」
「仰る通りです。この条件でなんとか……」
信用させる、という意味ではこちらは出せる物は全て出したつもりだ。これ以上は切れるカードはないからもし駄目なら諦めるに他ない。
けど出来ればフェルンを諦めるのは嫌だから、これで信じてもらいたいけど。
「はあ、おかしな奴め」
「えっ?」
「もう一つ、奴が儂に牙を剥くなら其を必ず止める。これ含め守れるのなら信じてやろう」
「なら、良いんですね!」
よかった、ああ良かった!
今の俺やフェルンでは、この人には敵いっこないから止めるし、もし仮に力を取り戻しても知り合いでもあるこの人と命のやり取りをするのはやめて欲しい。だからその約束は守れるはずだ。大丈夫、何とかなる内容だ。
「それにお主はあまりに不遇であるしの」
「僕が不遇、ですか」
「神と召喚者、どちらにも力を与えられないばかりか魔王まで倒す事になってしまったじゃろ?」
サナから魔力を貰いはしたが、世界中に現れるであろう魔王を全て倒すのには足りない。
いや正直、未だにテウメスですら倒した構図も全く浮かばず、魔法の練習といった別の課題で使命である魔王討伐から、目を逸らしていたくらいだ。
「じゃから、少しは助け舟を出した方が良いと思っての。形は歪じゃし、遅れたが今回信じたのは転移にあたっての特典という事にしよう」
「ああ、成る程。そういう扱い方もあるのですね」
ハナから特典なんてアテにしていなかったから、ここでその口実を使ってもらえるのは助かるな。
まあ堕天させて亡き者としたフェルンを特典扱いというのは体良く押し付けられた、或いはお守りを任されたような気もするが、こちらから希望したのだからもう構うものか。
「突然でお邪魔したのお。儂からの要件はもう無いがそちらにはあるかの?」
「いえこちらからは現状ございません」
激情が収まったのか、前に会った時と同じような声色でそう聞いてきた。
今回のように怒りや憎しみといった激しい感情に飲まれた人を相手するのは、父さんのせいで多少は慣れている。
それでもやはり相手は神。全く生きた心地がしなかった……。
「さて、そろそろ夜が明ける。お主には目覚めてもねばな」
「もうそんな時間でしたか。それでは失礼します」
その場で寝転がり、瞑目する。
神を相手に話し合った事で白熱する思考を鎮まるようにしながら、徐々に意識を手放していく。
『愚かな我が子を、よろしく頼むぞ』
そう何処か愛情を感じる言葉が聞こえた直後、意識が霞のように消えていった。
意識がはっきりと覚醒する。
「やあおはよう、タクマ」
次に覚醒した視界に入ったのは白い病院の天井と気持ちのいい朝日、そして。
「おはようフェルン、今日もいい朝だな!」
赤と白の目をした、白髪の華奢な人物が目に入る。フェルンだ。
「そうだけど、うなされていたね。大丈夫かい?」
心配そうに見つめてくるフェルンがそう言う。
まあうなされもするだろう。何せ神様相手に交渉を終えてきた所なのだから。
「朝っぱらから悪いんだけど、フェルンについて重要な話がある。練習の前に話させてくれ」
「ボクの事でかい? キミがそう言うなら構わないが……一体何だろう」
心当たりないのか首を傾げるフェルン。
まあ俺も、まさか最初にこの世界で会った神様に逆らった天使を仲間にする事になるなんて思いもしなかったからな。無理もないか。
_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆
「——という事があった」
「ふむ。そんな事が」
朝食を食べ終えた後、今朝夢で神様と取り決めてきた事を洗いざらい話した。
当然驚かれるのは目に見えていたし、途中で質問を挟まれて話を忘れては困るので、とりあえずこちらの話を全て話させて欲しいと前置いた上でだ。
「色々言いたい事はある。先ず庇うよりボクを売って彼の元から帰って来る、という思考が無かったのに疑問を抱くのが正直な所だ」
「帰ってきてフェルンの顔を見た時、脳裏に過ぎったよ。そう来るだろうなあって」
夢の中では反射的に庇っていたが、朝フェルンの顔を見て気付いた。
何故逃げて来なかったって言うだろうと。実際その通りで今回は上手く行ったから良いものの、失敗していたら今頃俺は消し炭だ。
「気持ちは理解できない訳ではないから咎めないさ。けどキミには人類の切り札を活かすという役目があるのを忘れずにね」
「そうだよな、自分の命を真っ先に考えるよ」
そもそも自分の命に関わるようなシーンに出くわしたくはないが、俺が死ねばサナが同じ過ちを繰り返してしまう可能性がある。
そうなればどうなるか、さらにその後は。俺自覚も力も色々と足りてないなぁ。
「けどだ、タクマ」
「ああ、反省していく。気をつけないとな」
「いやそうじゃなくて。キミがボクを助けてくれたのは……まあ、なんだ」
手を後ろで組み、もじもじと言いあぐねている。
何が言いたいのか察しはつく。逃げろと言った手前中々言い出せないのだろう。
「ありがとう……と言っておくよ」
「どういたしまして。助けた甲斐があったな」
感謝にそう返すと、すぐそっぽを向いてしまった。後ろからでも見える耳が赤く火照っている。
もし自分の立場だったら、照れ臭くて同じ事をしている。何かフォロー出来れば良いんだけど、生憎言葉が思いつかない。
「まあ、魔法の練習行こうぜ?」
「ああそうだね、そうしよう!」
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いつもより半刻、三十分程遅くなってしまったし早く練習をして——
ピー、ピー、ピー
「うわっ、なんだこれ!」
服の胸ポケット辺りが赤く光を放っている。
そして耳障りな機械音。
これは、なんだ? 危険な物なのだろうか?
「フェルン、これは何なんだ? 胸ポケットの辺りが、光ってる!」
「落ち着けタクマ、それは呼び出しだよ」
「そう、なのか。じゃあ大丈夫なんだな」
「検査室へ行こう。何か急に呼び出す用件が出来たんだと思う」
頷き、部屋から出て検査室へ急ぎ足で向かった。
急ぎの呼び出しという事で、少し不安だけど考えても仕方ないな。
_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆_☆
「ふうぅっ、ヒリングさんどうされました?」
「来ましたかタクマさん。まあそこへお座りになって下さい」
深く空気を吸い込み、荒い息を整えてから勧められた席に着く。
エレベーターを待ってる時間が勿体無かったから急いで来たが、用件とは一体何だろう。
「入院期間についてです。頭部だけならお連れ様の治療が良く、検査結果からして二、三日で退院頂けたのですが……」
「その言い方だと、長くなったと?」
「はい。魔力を激しく使用した影響か、回復が異常に早くなっています。元に戻す為治療が必要です」
真摯で優しさを感じる口調でそう進言してくれるヒリングさん。この人が担当でよかったよ。
けれど、その提案は空回りなんだよな。どこかの特例の塊みたいな奴のせいで。
「すみません、それ多分サナかと」
「はっ!? お連れ様が原因ですか?」
「ええ。僕の魔力はサナから供給されてるんです。急に少なくなったから多めに流してのかと」
「確かにタクマ様の魔力はサナ様のものとお聞きしておりましたが……まさか全てとは」
「すいませんね、驚かせてしまって」
逆に一部だけ誰かのものに出来るとかある方が俺からすると驚きだ。
まあ一部だけなら一部だけで、相性とかで苦労しそうな気もするな。全部なら全部でこういうのが起きるわけだけど。
「急に呼びたてしまってすいませんね。では検査時間も近いので、このまま検査に入らせて頂きます」
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