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「あんた変な奴だからなぁ。ロミさんの事は団長からよく伺ってます。いつも団長がお世話になっております」
そう言ってクレイはロミに敬礼している。そんなクレイを見てロミは大げさに手を振った。
「わ、私は別に何もお世話なんてしていませんよ。あの方が勝手にいつも私を指名してくるのです」
「団長はああ見えてヤキモチ焼きなので、あなたが他の男と寝るのが嫌で一年間の契約をしたと伺いました。今後とも、どうぞ団長をよろしくお願いいたします」
そう言ってピシッと美しい敬礼をしたクレイに、ロミは頬を少しだけ染めてフイとそっぽを向いてしまった。
「ね、ね、どういう事?」
「ロミさんは団長のお気に入りなんだよ。何でも最初にこっぴどく行儀が悪いと叱られて感動したらしくて、それからずーっとロミさん一筋なんだ」
「へぇ! 団長さんは一途なんだね! それでもしかして最初に会った時、オリガさんがもう少しでロミちゃんに再興出来るでしょ? って言ってたんだ!?」
「ま、まぁそれは感謝しています。あの人はとんだ間抜けなのか、こんな私と一年契約する為にうちの負債のほとんどを賄える程の金額を提示してきたんです」
「それは凄いですね!」
ロミの話にスノーが目を輝かせて小さく拍手している。
「や、止めてください。この話はオリガさんしか知らないので、他の方には黙っておいてくださいね」
「もちろん!」
「はい!」
私達が頷くと、クレイはうんうんと頷きながらふとスノーを見た。
「そう言えばスノーさんは考古学者を目指しているんですよね?」
「ど、どうしてそれを!?」
「今朝、珍しく宰相が上機嫌だったので団長が理由を聞いたら、とても面白い人材を見つけてしまったと喜んでいたそうなんです。宰相が誰かに興味を持つのは王の次に珍しいので気になって聞いたら、あなたの名前が出てきたそうですよ」
そう言ってニコニコするクレイの言葉にスノーの頬は真っ赤だ。
「わ、私はまだ駆け出しでそんなに詳しい訳でもないのに……」
「いやいや、女性で考古学者を目指すのがそもそも凄い事ですから。それに宰相は歴史学者と地質学者の博士号を持っています。あの方はだから、学者を目指す人達が大好きなのです」
「そ、そうでしたか」
恥ずかしそうなスノーにクレイは笑顔で頷くと、最後に私を見て笑顔を消して白い目を向けてくる。
「え、何でそんな顔すんの」
「いや、今日は王が俺をここへ来るよう命令を出したんだが、俺にあんたがくれぐれもそこら辺の男に手を出さないよう見張っていてくれ、だとさ」
「ははは! 本当に信用ないな~!」
「命よりもそっちを心配されてたぞ」
「えー! でも大丈夫。一人だったら危なかったかもだけど、今日は友だちが居るからそんな事しないもんね!」
そう言って笑った私を見てクレイは信じられないとで言いたげに私を見つめてくる。
「そんなに色魔なのですか? ダリアは」
「それはもう。毎回戦場では慰み者達にお世話になりますが、今回保養所送りになったのはいつもの半分も居なかったんです。それは全部この人のおかげだったんですよ。途中までは本当にほとんど一人で相手してましたからね……だから戦場でついたあだ名がサキュバスなのです。王も他の兵士に口を酸っぱくして言ってました。命が惜しかったらハマるなよ、と」
「あの人、そんな事言ってたの!?」
「当たり前だ! 時間外までずっとヤッてたのはあんただけなんだぞ! 結局休暇だってほとんど取らないし、挙句の果てには戦争が終わって帰りの街での休憩時間だって王としてただろ!?」
「な、なんで知ってんのよ」
「王とあんたが宿にルンルンしながら入っていくのを見てた奴がいるんだ。あんな事は初めてだったから皆驚いてたんだぞ」
「そういうのは見て見ぬふりしなさいよ!」
「出来るか! それを聞いて団長も頭抱えてたぞ! このまま行ったら国をサキュバスに乗っ取られるかもしれないってな」
「それは無いから安心していいよ。私は王妃になんてなりたくないもん。出来れば一生サロンに居たいな~」
遠い目をしながらそんな事を言うと、ロミとスノーとクレイが、こいつヤバい、みたいな顔をしてくる。
「欲がないのでしょうか?」
「どうなんだろう……?」
「むしろ強欲ですよ。本当にサキュバスの生まれ変わりですよ! 結婚してて本当に良かった……」
クレイはそんな事を言いながら胸から下げているペンダントを撫でているが、私はただ単に自分に正直なだけだ。
そんな話をしているうちに街に到着して、私はロミとスノーとクレイに案内し
てもらいながら、まずはドレスを何着かと、下着を買った。
そしてロミの買い物をしてスノーの本屋に付き合い、ついでにクレイの家族へのお土産も購入してようやく念願のカフェに辿り着き、それぞれ注文をしてテラス席に移動する。
そう言ってクレイはロミに敬礼している。そんなクレイを見てロミは大げさに手を振った。
「わ、私は別に何もお世話なんてしていませんよ。あの方が勝手にいつも私を指名してくるのです」
「団長はああ見えてヤキモチ焼きなので、あなたが他の男と寝るのが嫌で一年間の契約をしたと伺いました。今後とも、どうぞ団長をよろしくお願いいたします」
そう言ってピシッと美しい敬礼をしたクレイに、ロミは頬を少しだけ染めてフイとそっぽを向いてしまった。
「ね、ね、どういう事?」
「ロミさんは団長のお気に入りなんだよ。何でも最初にこっぴどく行儀が悪いと叱られて感動したらしくて、それからずーっとロミさん一筋なんだ」
「へぇ! 団長さんは一途なんだね! それでもしかして最初に会った時、オリガさんがもう少しでロミちゃんに再興出来るでしょ? って言ってたんだ!?」
「ま、まぁそれは感謝しています。あの人はとんだ間抜けなのか、こんな私と一年契約する為にうちの負債のほとんどを賄える程の金額を提示してきたんです」
「それは凄いですね!」
ロミの話にスノーが目を輝かせて小さく拍手している。
「や、止めてください。この話はオリガさんしか知らないので、他の方には黙っておいてくださいね」
「もちろん!」
「はい!」
私達が頷くと、クレイはうんうんと頷きながらふとスノーを見た。
「そう言えばスノーさんは考古学者を目指しているんですよね?」
「ど、どうしてそれを!?」
「今朝、珍しく宰相が上機嫌だったので団長が理由を聞いたら、とても面白い人材を見つけてしまったと喜んでいたそうなんです。宰相が誰かに興味を持つのは王の次に珍しいので気になって聞いたら、あなたの名前が出てきたそうですよ」
そう言ってニコニコするクレイの言葉にスノーの頬は真っ赤だ。
「わ、私はまだ駆け出しでそんなに詳しい訳でもないのに……」
「いやいや、女性で考古学者を目指すのがそもそも凄い事ですから。それに宰相は歴史学者と地質学者の博士号を持っています。あの方はだから、学者を目指す人達が大好きなのです」
「そ、そうでしたか」
恥ずかしそうなスノーにクレイは笑顔で頷くと、最後に私を見て笑顔を消して白い目を向けてくる。
「え、何でそんな顔すんの」
「いや、今日は王が俺をここへ来るよう命令を出したんだが、俺にあんたがくれぐれもそこら辺の男に手を出さないよう見張っていてくれ、だとさ」
「ははは! 本当に信用ないな~!」
「命よりもそっちを心配されてたぞ」
「えー! でも大丈夫。一人だったら危なかったかもだけど、今日は友だちが居るからそんな事しないもんね!」
そう言って笑った私を見てクレイは信じられないとで言いたげに私を見つめてくる。
「そんなに色魔なのですか? ダリアは」
「それはもう。毎回戦場では慰み者達にお世話になりますが、今回保養所送りになったのはいつもの半分も居なかったんです。それは全部この人のおかげだったんですよ。途中までは本当にほとんど一人で相手してましたからね……だから戦場でついたあだ名がサキュバスなのです。王も他の兵士に口を酸っぱくして言ってました。命が惜しかったらハマるなよ、と」
「あの人、そんな事言ってたの!?」
「当たり前だ! 時間外までずっとヤッてたのはあんただけなんだぞ! 結局休暇だってほとんど取らないし、挙句の果てには戦争が終わって帰りの街での休憩時間だって王としてただろ!?」
「な、なんで知ってんのよ」
「王とあんたが宿にルンルンしながら入っていくのを見てた奴がいるんだ。あんな事は初めてだったから皆驚いてたんだぞ」
「そういうのは見て見ぬふりしなさいよ!」
「出来るか! それを聞いて団長も頭抱えてたぞ! このまま行ったら国をサキュバスに乗っ取られるかもしれないってな」
「それは無いから安心していいよ。私は王妃になんてなりたくないもん。出来れば一生サロンに居たいな~」
遠い目をしながらそんな事を言うと、ロミとスノーとクレイが、こいつヤバい、みたいな顔をしてくる。
「欲がないのでしょうか?」
「どうなんだろう……?」
「むしろ強欲ですよ。本当にサキュバスの生まれ変わりですよ! 結婚してて本当に良かった……」
クレイはそんな事を言いながら胸から下げているペンダントを撫でているが、私はただ単に自分に正直なだけだ。
そんな話をしているうちに街に到着して、私はロミとスノーとクレイに案内し
てもらいながら、まずはドレスを何着かと、下着を買った。
そしてロミの買い物をしてスノーの本屋に付き合い、ついでにクレイの家族へのお土産も購入してようやく念願のカフェに辿り着き、それぞれ注文をしてテラス席に移動する。
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