冷酷王の知られざる秘密

あげは凛子

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「一体、何の話だ?」

「へ?」

「俺がここを作ったのは、あくまでも自分用だが」

「ええっ!? じゃ、じゃあジャンヌ様は!? 寝取られたって言うのは!?」

「知らん。誰がそんなデマを流したんだ?」

「いやいや、オリガさんに聞いたんだけど!? ていうか、皆そうだと思ってるっぽいけど!?」

「確かにジャンヌとは多少寝たがそれだけだぞ? 片思いだの寝取られただの、そんな事実はないが」

「違うの!? じゃあ何で勃たなくなったの!」



 思わず私が言うと、オズワルドはビクリと肩を揺らした。



「それは……毎度毎度、側室達に痛いだの辛いだの言われてだな、だったら最大限まで大きくしなければ良いんじゃないかと思って試行錯誤していたら、勃たなくなったんだ……全く、余計な苦労をしてしまった」

「それはそれは……大変だったね。それじゃあここの目的って……」

「ここは元々側室を囲う場所だったんだ。そこに家を失ったジャンヌが勝手に転がり込んできたんだよ」

「どうしてジャンヌ様は家を失ったの?」

「あいつの父親が横領していてな。俺が取り壊したからだ」

「ええぇぇ!? そ、それで?」



 それはもしかしたらジャンヌは相当にオズワルドを恨んでいたのでは? 



「それで? あいつはある日突然やってきて自分を抱けと迫ってきたんだ。だが幼馴染だぞ? 俺からしたら妹に手を出すような感覚だ。それを理由に断ったら、今度は他の側室に圧力をかけて追い出そうとしはじめたんだ」

「ねぇ、聞いてた話と全然違うんだけど」

「全くだ。あまりにもしつこいから仕方なく何度か抱いたが、とうとう全然子どもが出来ないと怒り出してな」

「そりゃね。ずっと調整してたんだもんね、オズワルドは。その感じだと片思いしてたのはジャンヌ様の方だったのか~」



 何だか聞かされていた美談などどこにも無かったようだが、ジャンヌは少し可哀想だ。



 そう思うのに、オズワルドはと言えば冷めた顔をして続きを話す。



「違うだろ。あいつはただ王妃になりたかっただけだ」

「そうかなぁ? それでどうなったの?」

「それでか? その時、隣国の王が丁度遊びに来ていてな。ジャンヌは一晩だけ王と寝て見事に妊娠した。だから王にそのままジャンヌを引き取ってもらったんだ。王はジャンヌの事を一目見てすっかり虜になっていたしな」

「それってさ、体よくその隣国の王様にジャンヌ様を押し付けたって、そういう事?」

「まさか。確かに俺はメイドから聞いてジャンヌの危険日を把握していたし、その日を狙ってここに王を呼んだが、別にどちらにも何も言ってない。その道を選んだのはあの二人だ」

「それ、ジャンヌ様は単純にあなたの事が好きでヤキモチか何か焼いてもらおうと思ってただけなんじゃないの……子どもが出来ないって怒るからには、多少なりともあなたに好意があったんじゃ?」



 それでうっかり妊娠してしまっただけなのでは? そう思わないでもないが、オズワルドはジャンヌが自分に好意を寄せていたかもしれないとは微塵も思ってなどいないようだ。



「王妃になりたかったのか俺に好意があったのかは知らんが、どちらにしてもそんな事をする女はお断りだ。自分の気に入らない事があったら他の男と寝る女など、信用出来るか」

「それはそうね。何かごめんね。私も尻軽女だし……オズワルドは女運がもしかして悪い?」



 そういう女ばっかりが寄ってくるのは流石に可哀想になって思わず言うと、オズワルドは不思議な顔をする。



「お前は違うだろ?」

「いやいや、私を見て。誰とでも寝るよ」

「それは決まった相手がいないからだろ? お前は好きな奴への当てつけに男と寝てるのか?」

「ううん。ただセックスが好きなだけ」

「そうだろ。だが好きな奴が出来てその相手がお前ぐらいの性欲だったらどうだ? 嫌な事がある度に浮気するのか?」

「んな馬鹿な! ちょっと縛って射精管理してもうしません、ごめんなさいって言うまで虐めるだけだよ」



 私の答えにオズワルドは引きつりながら頷いた。



「だろうな。お前はそういう女だ。嫌なことがあったら直接本人に言うだろう。だがジャンヌのような事をする女は、セックスがしたくて男と寝るんじゃない。当てつけの為に男と寝るんだぞ? お前とは違う」

「なんか……ありがと。そんな風に言われたのは初めてだよ」

「そうなのか?」

「うん。仕事柄誰とでも寝るから彼氏なんて出来なかったんだ。どうせ他の男とも寝るんだろって何回言われたか!」

「それは男の方に問題があるんだ。変な奴に引っかからなくて良かったな」

「それはそうだけど、好きになりかけた人だっていたんだよ、私にも」



 流石に34年も生きていればそういう事もあったが、いつだって私は選んではもらえなかった。
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